だせなかったLove Letter:4

2010-04-28 | 自作小説:私小説
高校に入学して、1週間過ぎた頃、部活を選ぶことになった。
当然、部活をしたくなければ、入部する必要はない。
僕の場合は、どこかの部に入るつもりだった。
なるべく、かっこいい部。
そして、自分が活躍できる部にだ。
運動に関して、僕の自慢できるところは、たった一つだけ。
脚が早いことだ。
それを生かせるスポーツでかっこいいところ。
僕はラグビー部を選択した。

興味のないN原を説得し、僕はラグビー部が練習するグランドの前に来た。
定かに覚えてはいないが、
N原に、ラグビー部に入りたいという気持ちは伝えていなかったと思う。
彼は、どんな思いでラグビー部の練習を眺めていたのか?
僕は、そんなN原のとなりで入部する決断のタイミングを探っていた。
“ラグビー部に入りたいのか?”
後ろでそんな声がした。
振り返ると、白い服をきた人がいた。
白い服。
それは柔道着だった。
 “ラグビーはいいよ。おもしろい。”
今でいうところのイケメンだった。
後で知ったことだが、彼、T先輩は学校で一番の人気者だった。
バレンタインデーには、山のようなチョコレートをもらっていた。
そして、それを、友人に配っていた。
彼にすれば、善意なのだろうが、嫌味でもある行為だ。
しかし、それが全く、他意の無い行為であり、
心底邪魔なチョコをもらって欲しいだけだった。
だから、友達も気を悪くすることもなく、お裾分けにあずかった。
当然、その中に自分の好きな娘がいないかを
探る意味もあったのかもしれないが。
もてるだけのことはある。そんな屈託の無い性格だった。
僕は、そんなT先輩をずっとうらやましく思っていた。

あるとき、T先輩に僕はこんなことを聞いたことがある。
 ”先輩は女の子にもてていいですね。”
 ”そんなに、よくないよ。好きではない女の子にすかれるのに、
  好きな子には、なぜか、嫌われるんだよ。
  俺が好きだ、といっても、嘘に聞こえるみたいなんだ。
  遊ぼうと思っているって、勘ぐられる。”
彼に似合わないつらそうな表情だった。

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