
さて、やっと出発です。滑り出しは順調だったのですが、しょっぱなからブレーキが掛かります。なるべく村があるところでは、上陸しました。基準はアンテナのあるところ。20mぐらいの鉄塔型のアンテナがある村は目立ちます(人が住んでいるというマーク)。そして、店があればなるべく買い物をする、住民の人と話しをしたりして交流する、と言うのが僕のスタイルです。
ところが、一番最初に上陸した村で、警察署に呼び出しを食くらってしまった。小さな商店で買い物をしたが、店主が僕が出て行った後にたまたま前を通った警官に、外国人がいるよと話してしまったようだ。
署に連行され、話しをする。聞かれたのは、いつもの事だけど「どこから来たか、何をしているのか、これからどうするのか」。そしてパスポートとビザを念入りにチェックして、ビザ番号や僕のプロフィールをノートに書いていく。「なぜ、僕のパスポートの内容を写すのですか?」と聞くと「そういう決まりになっている」といいます。「何かそうすることでメリットはあるのですか?、今後何かするのですか」と聞くと「ただ写すだけだ、その後は何もしない」というのだ。僕にとっては意味のない事だけど、彼らはこれが仕事なんでしょう、付き合わなければいけない。警察署と言っても、ボロ小屋で、電気は来てない、電灯は車のエンジンに直結されていた。アンテナは、警察のものだったが、アンテナからの線は、小屋の中まで来ていたが、コードが切れてむき出しになっているだけで、受信機はなく、本署とは携帯電話で連絡を取っていた。

出発できたのは、1時間後だった。1時間ほど漕ぎ、次の村が見えてきた。アンテナが3本立っている。ちょっと悪い予感がした。川縁にポリが3人立っているのが見えたからだ。彼らは「我々はポリット(ポリス=彼らが使える唯一の英語)です。ここに来て上陸しなさい!」というのです。口調は強めです。1時間に一回上陸させられるなんて、げんなりです。ツーリング自体が成り立たなくなる可能性もあります。
僕は英語しか分からない欧米人の振りをしてニコニコ手を振ってそのまま通過しました。ところが敵もさるもの、漁師の漁船に飛び乗って、追いかけてきました。動力船ですから、こりゃにげきれません。素直に事情聴取に応じました。
分かった事は、「外国人が川を通過したら、何者かチェックすること」が警察の業務である事。上流の警察から、「これから外人がそちらに行くぞ」と連絡があったこと。そして、下流の警察に連絡するつもりでいることでした。「お前、どのコースで川を下るのだ」と質問されました。「僕は左岸寄りを行く」と答えました。
開放されてから、すぐ下流から川筋が10以上に割れるジャングルの中に入る事が分かりました。なぜか本流は右へ右へ流れます。仕方なく僕は当初考えていたコースとは違う路をたどりざろう得ませんでした。警察には悪いけど、僕のせいではありません、自然のなせる業、なのです。僕はリラックスして川下りを続ける事ができました。川筋が割れ、その中に迷い込む事で、結果的に警察の連絡網の外に出たようでした。