松本さんが遠く、沖を見ている。遅れて四位さんがやってきた。これからこの3人で決勝のサーフィンを競う。力強い握手を交わした。皆、最高にいい顔をしている。
ゲッティングアウトをしている時、松本さんが「あっちに行きます」と言って、会場左で割れる、グーフィーの波へ向かっていった。その後の飲み会で聞いたが、彼はグーフィーフィッター(グーフィー好き)だった。それを聞いてか、四位さんは右方向のレギラー波へ。僕はグーフィー、レギラー、どちらでもござれ派なので、真ん中に位置した。
松本さんのライディングを見る。福支部のHPにある動画で何度も見た、あのサーフィンだ。時や場所が変わっても、彼のサーフィンは変わらない。
四位さんは、2年前に一緒にサーフィンしたときと、大きくスタイルを変えていた。カヤックをタイトな小さい物に変えたせいか、ターンが鋭く、特にトップターンの位置がずっと高いところになっていた。
僕はというと、来た波にさかわらず、素直にゆるいサーフィンを続けた。それが僕のスタイル。コンペ向きのサーフィンでないことを、ジャッジをやらしてもらい、理解した。でも、自分のスタイルを変えるつもりはなかった。
試合の終了を伝えるフォーンがなった。帰艇。僕が先に上がり、松本さんと四位さんが後から上がってきた。3人で握手をする。出せるものは出し切った。3人とも本当にいい笑顔をしてた。皆、同じ気持ちなんだろう。この時、この3人の競演を一番喜んでいるだろう人の顔が頭に浮かんだ。おそらく、目の前のこの階段の上にその人はいるだろう。結果は松本さんが優勝だった。正直、結果は分かっていた。3回戦で彼とあたった時、こりゃ、同じ条件で5回勝負しても、5回とも負けるわ、と思った。そのぐらい差があったのだ。でも、おかげでいい宿題をもらった。
前夜の大西さんの講演で、松本さんは「世界大会参加に参加するのに、どのくらいお金がかかるか」と質問していた。ヨーロッパの物価は高い。でも、彼はきっと今月から少しづつ貯金を始めるだろう。そうあって欲しいと、僕は思うのであった。
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