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JMのバレーボール観戦記

テレビのバレーボール解説では触れられない戦術面や選手個人の特徴について、「全員応援」の立場から語ります。

S1対策 全日本男子の場合

2012-09-14 14:24:50 | 用語解説
全日本男子のS1は、全日本女子とは別の理由でかなり厳しいローテとなります。それは、ライトに入る左利きのスーパーエースの選手がレフトから打たなければならないからです。

・S1の問題点
スーパーエースの清水邦広選手は、左利きでレフト打ちが苦手です。また、ライトから打たなければならないレフトの選手は、高さが足りません。そのため、どちらのサイドに上げても、なかなか決められません。清水邦広選手はセンターに切り込んだりBクイックに入ったりできないため、ダブルクイック囮のバックレフトというコンビもできません。

・解決策1

とまで書いて愕然とするのですが、監督が監督なだけに、解決策って何もないんですよね。S1は「気持ち」とか「切り替え」とか「滝壺修行」では解決できない問題です。いくら「切り替え」ても、コート上で前衛のレフトとライトが入れ替わっている状況は変わらないのです。

海外の強豪男子チームでも、同様S1が回らない問題はありますが、全日本男子のふがいなさはワンランク上ですね。工夫もなければ、基本的な技術の向上もありません。

特に、清水邦広選手のレフト打ちの技術は、本当に良くありません。一般的に見て、確かに左利きの選手はレフト打ちが苦手と言えるのかも知れません。それは努力で何とかなるものなのでしょうか。この点について、次の記事で検証します。

全日本男子では、2人のレフトとリベロがサーブレシーブをするので、清水邦広選手はサーブレシーブ免除です。そのため、あくまでも一例ですが、サーブが打たれた瞬間に前衛センターとスイッチし、センターがBクイック、清水邦広選手がCクイック、前衛レフトが右端でサーブレシーブした流れでライトセミ、後衛レフトが左端でサーブレシーブをした流れでバックレフト、というコンビも考えられます。また、清水邦広選手が中央よりに構えてから、レフトの端まで斜めに走る助走も考えられるはず。こういった工夫と、基礎的な技術向上で、全日本男子のS1が改善されることを期待しています。

S1対策 全日本女子2012OQTの場合

2012-09-14 01:41:25 | 用語解説
前回記事では、S1ローテの連続失点を解説しました。では全日本女子のS1対策を見ていきましょう。

・S1の問題点
S1で前衛がRCLとなった時、Rには山口舞選手、Lには表レフトの木村沙織選手がいます。山口舞選手はライトですがもともとはセンタープレイヤーですので、クイックとブロードが命です。そんな山口舞選手がレフトからレフトオープンを打つわけですから、かなり厳しいローテになります。また木村沙織選手がライトに回ってしまいます。木村沙織選手はライト打ちは巧さはあっても体重は乗りません。さらに、相手もかなりマークしています。木村沙織選手でもS1でライトから決めるのには苦しみます。

・解決策1 木村沙織選手と佐野優子選手に頑張ってもらう
セッターの竹下佳江選手は、S1でかなり木村沙織選手に上げていきます。何度も何度も上げ、決まらなくても信頼は揺るがないようです。また、苦手ポジションから打つ前衛2人はサーブレシーブにも入るため、その2人の守備範囲を狭めるために、リベロの佐野優子選手は本当に広い範囲を守ります。

・解決策2 山口舞選手にセンターらしい動きをさせる
山口舞選手本来の良さを引き出すために、レフトからBクイックに入ってセンターとダブルクイックをしたり、レフトからBセミにブロードで入ってクロスに打ったり、センターのBクイックを囮にしてレフトからAセミにブロードで入ったりします。この場合、相手から返球されるまでのタイミングで木村沙織選手がレフトにスイッチし、前衛の並びをLCRに修正できます。

・解決策3 裏レフトの選手にバックレフトを打たせる
山口舞選手がレフトからセンターらしい動きをすると、レフトが空になります。そこに、普段はバックセンターを打つ江畑幸子選手や迫田さおり選手がバックレフトから打つことにより、レフト不在を補います。また、山口舞選手のBクイックは遅く、迫田さおり選手のバックレフトは速いため、このコンビは時間差のような効果もあります。

・解決策4 ライトに新鍋理沙選手を起用する
新鍋理沙選手は、レフト打ちも苦手ではありません。単に高さやパワーが全日本の他のレフトに届かないだけで、本人としては嫌ではないでしょう。新鍋理沙選手ならS1はピンチではなくなります。

OQTでは、このような解決策で何とか乗り切っていました。ロンドンでは、さらに驚きの対策が飛び出しました。これについては別記事で特集します。

S1ローテの連続失点

2012-09-13 19:28:16 | 用語解説
ここまでオーダーを解説してきましたが、その中で前衛のレフトとライトが入れ替わってしまうローテがあることに触れました。

世界の標準となったバックオーダーにおいて、セッターがサーブを打つポジションに入ると、全体のフォーメーションは以下のようになります。

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R C L
L C S

自分のチームがサーブを打つ場合は、サーブが打たれた瞬間にダッシュして以下のようにポジションスイッチします。

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L C R
C L S

しかし、相手チームがサーブを打つと、ダッシュしている暇がないため、前衛はRCLのままとなってしまいます。

こうなってしまうと、レフトとライトが本来のポジションと逆になってしまいます。さらに、前衛にいるセンターは、攻撃力が弱い裏センターです。これはまさにチームの危機。この危機的ローテをS1ローテと呼びます。

S1ローテではどのチームも連続失点が見られます。そのため、S1ローテを何とか回そうと、どのチームもあの手この手を尽くしています。次回の記事から、それぞれのナショナルチームがどんなS1対策をしているか、解説します。

フロントオーダーとバックオーダー

2012-09-13 11:27:32 | 用語解説
以前の記事でも触れましたが、バレーボールのサーブ順にはフロントオーダーとバックオーダーの2通りがあります。

・フロントオーダー
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R L C
C L S

・バックオーダー
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R C L
L C S

フロントオーダーの図を、サーブ順を一つ戻して書くと、以下のようになります。

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L C S
R C L

すると、フロントオーダーでは前衛でLCSの並び、バックオーダーでは後衛でLCSの並びが現れていますね。それが名前の由来です。当然LCSは最も自然な並びなので、それが前衛に現れるフロントオーダーの方が良く思いませんか?

実はそれは大きな間違い。フロントオーダーで、前衛がLCSになった後を追うと、前衛はRLC、CRL、LCRと推移していきます。すると、前3枚の3ローテでは、2ローテでレフトとライトが入れ替わってしまっています。そのため、サーブが打たれたら2回もレフトとライトが入れ替わって本来のポジションにダッシュして戻る必要があり、全く自然な動きになりません。多くのチームではレフトもライトもサーブレシーブに入るので、その2人がサーブレシーブを担当しつつサーブを打たれた瞬間にスイッチするのは不可能です。韓国女子はフロントオーダーですが、ライトのキムヒジン選手とファンヨンジュ選手はサーブレシーブに入らないため、サーブが打たれたらレシーブは他に任せてライトにダッシュして戻っています。韓国女子がサーブ直後に前衛がごちゃごちゃ動くのは、そのためです。2008年の全日本女子はフロントオーダーでした。これについては別記事で解説していきます。

バックオーダーでは、前衛はRCL、LRC、CLRとなります。そのため、前3枚の3ローテでは2ローテでレフトとライトがスイッチする必要がなく、自然な動きとなります。全日本女子ではライトと表レフトがサーブレシーブに入る上に、ライトの山口舞選手はレフト打ちが苦手のため、バックオーダーを採用しています。また、ライトに左利きのスーパーエースがいる男子型のチームでは、ほぼ確実にバックオーダーを使います。

さらに、単に前衛の並びだけではなく、誰がサーブレシーブを担当するか、セッターはどの経路でフロントセンターにダッシュするか、ライトがブロードを打てるか、表センターのAクイックとBクイックを打ちたがるかどうかにより、適切なオーダーは変わってきます。

レフトとセンターの表裏 全日本女子の場合

2012-09-12 20:14:09 | 用語解説
前回の記事では、基本的に表に攻撃力のある選手を入れる、と紹介しました。しかし、全日本女子の表裏は以下のようになっています。

表レフト:木村沙織選手
裏レフト:江畑幸子選手、迫田さおり選手
表センター:荒木絵里香選手、大友愛選手
裏センター:荒木絵里香選手、井上香織選手

これを見ると、あたかもレフトの江畑幸子選手と迫田さおり選手は攻撃力が無いように見えますが、本当にそうでしょうか。またセンターでは荒木絵里香選手が表と裏の掛け持ちをしています。全日本女子の表裏は単に攻撃力の比較で決まるわけではない、と分かりますね。

この理由はいくつかあります。

・サーブレシーブフォーメーション
全日本女子は、表レフト、ライト、リベロでサーブを取ります。そのため、レフトの中でサーブレシーブできるのが木村沙織選手だけなので、木村沙織選手は自動的に表に入り、江畑幸子選手と迫田さおり選手が裏に入ります。また、江畑幸子選手や迫田さおり選手はバックアタックが非常に良いので、前衛が2枚の時にバックアタックを打って攻撃参加できます。このようにして、全日本女子ではバックアタックが得意な攻撃専門レフトの2人を裏に入れています。

・バックライトが無い
全日本女子のライトの新鍋理沙選手と山口舞選手はバックライトから打たないため、ライトが後衛(つまりセッターが前衛)の時には右半分からの攻撃がなくなります。セッター前衛を2回経験する表センターには、ブロードでライト側に回れる選手を入れたいのです。そうでないと、マークが絞られてしまいます。そのため、ブロードが得意な大友愛選手は表、AクイックやBクイックが得意な荒木絵里香選手は裏に入ります。

・山口舞選手と井上香織選手のコンビ
井上香織選手はブロードが得意なため、本来は表に入ります。しかし、山口舞選手と井上香織選手は、隣に並んでダブルクイック、ダブルブロード、山口舞選手のBセミへの切り込み、山口舞選手のクイックを追い越してのブロードなど、多彩な攻撃を見せます。そのため、山口舞選手がライトに入るときには、井上香織選手は山口舞選手と隣り合うように裏に入ります。その際、荒木絵里香選手は表となります。この場合は、裏レフトがバックライトからも攻撃参加し、右半分からの攻撃を補います。

・控えセンターの攻撃力のなさ
OQT時は荒木絵里香選手が最も攻撃力のあるセンターでしたから、荒木絵里香選手が表に入りました。