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JMのバレーボール観戦記

テレビのバレーボール解説では触れられない戦術面や選手個人の特徴について、「全員応援」の立場から語ります。

Vリーグ男子ファイナル 見どころ 堺

2013-04-03 10:40:24 | 用語解説
堺はここに来て調子が上向きです。またパナソニックにリーグで勝っていますから、ファイナルでは熱戦が期待できます。

・ペピチ選手をどれだけ活かせるか?
ペピチ選手はリーグでの得点王ですから、当然ファイナルでも打数が増えるはずです。しかし、これまでの所属チームでは、さらに幅のある攻撃をしていました。例えば、同じライト打ちでも、アンテナまで伸ばしたトスを打つ場合と、1m弱ほど中に切り込んで、ロングDセミのような形で打つ場合があり、使い分けている印象でした。堺ではアンテナまで伸ばしたトスを主に打っていますが、パナソニックの低いセンターの白澤健児選手が前衛の場合は、中に切り込む攻撃も有効かも知れません。

・石島雄介選手のサーブとサーブレシーブ
調子を上げている石島雄介選手ですが、サーブだけは安全サーブ化していて、相手を崩せていません。パナソニックは、リベロがきれいにレシーブしたら、4人が一斉に攻撃に走り込むチームですから、安全サーブを打っていたら勝ち目はありません。弱く打つならパイプに入る選手の前に落とす、もしくは狙いが定まらなくても強打する、など、石島雄介選手のサーブの復調に期待です。特に、パナソニックは常時4人サーブレシーブできる選手がコートに立ち、そのうち1人が交代で守備免除になる変則ローテです。そのため、全員に休憩するローテがあり、誰か1人を潰すのは難しいため、打つ場所や強さで勝負するしかありません。また、堺の調子は、石島雄介選手のサーブレシーブの調子にも左右されます。場合によっては、本来はジャンプサーブのパナソニックの選手がフローターで石島雄介選手を狙うかも知れません。多少崩れるのは仕方ないとして、きちんとペピチ選手に打てるトスが上がるレベルのレシーブが出来るかどうか、注目しましょう。

・センターやレフト平行を使うのか?
堺は、ある意味ペピチ選手のライト攻撃に上げておけば点が自動的に入ってくるので、センターやレフト平行を無理に多用する必要はありません。しかし、ファイナルでもそれが通用するのでしょうか。センターやレフト平行を使ったとして、それは堺の戦略なのかパナソニックの思う壺なのか。少なくとも、Aパスならセンターかレフト平行、Bパスならペピチ選手、というはっきりとした使い分けをしてしまうと、パナソニックの思う壺になります。このあたりのトスワークからも目が離せません。

Vリーグ男子ファイナル 見どころ パナソニック

2013-04-02 18:40:45 | 用語解説
連載を中断して、今年のVリーグ男子ファイナルの見どころを取り上げます。まずはパナソニックから。

・ジョンパウロ選手の起用法
本来は普通にサーブレシーブに入るレフトであるジョンパウロ選手ですが、少し前にも書いたとおり、清水邦広選手の不在を埋めるために、後衛ではスーパーエース的役割も担うようになりました。そのバックライト打ちが思いの外良かったためか、セミファイナルからは前衛でもスーパーエース的役割をするローテがありました。この意図はいかに?単発のブロックチェンジかも知れませんし、もしかするとファイナルで使ってくるのかも知れません。

・変則ローテでの組み立て
ファイナルが引退試合となるセッターの宇佐美大輔選手にも注目です。パナソニックは3人の本職レフトに順々にスーパーエース的役割をさせる変則ローテを使っています。こうなると、印象付けという面で、セッターはかなり頭を使う必要があります。変則ローテとは言え思想的には世界標準バレーを手本にしているパナソニックですから、サイドへの高速トスによる印象付けは非常に重要で、それができないと福澤達哉選手のパイプも決まりません。セッター宇佐美大輔選手のトスワークからも目が離せません。

・ペピチ選手を使わせないサーブ戦略
堺のポイントゲッターであるペピチ選手をいかに止めるか、それがこの試合では重要になります。まずは、どこにサーブを打てばペピチ選手にトスが上がりにくくなるかの分析が必須。強いサーブで崩すと、それだけペピチ選手に上がってしまい、ペピチ選手は乱れたトスでも決められます。そのため、「ここにサーブを落とせばセンターの確率が高い」などの分析をし、その場所にサーブを落とし、ギリギリまで我慢しつつコミットでセンターを止めに行く、このようなサーブ戦術の方が効果的になるはず。その流れで、アクセント的にフルパワーのサーブや石島雄介選手を狙ったフローター等も織り交ぜると完璧だと思います。

・山本隆弘選手の勇姿は?
山本隆弘選手は、本来なら清水邦広選手のポジションでスタメンでもおかしくありませんが、そうなっていないので状態が悪いのでしょう。しかし、ピンチサーブやワンポイントブロックでは、まだまだ出来ることがあるはず。山本隆弘選手も見納めが近付いています。是非山本隆弘選手の勇姿を目に焼き付けましょう。

男子の世界標準バレーの先にあるもの クネオ

2013-03-27 02:18:33 | 用語解説
クネオは、あのマストランジェロ選手がセンターを務めるイタリアの強豪です。そのマストランジェロ選手が先月から欠場していて、今回の記事の内容もマストランジェロ選手欠場に端を発したものです。

・裏センターにスーパーエースを入れる
センターを一人欠いたクネオは、何とそこにスタメンスーパーエースのソコロフ選手を入れました。そして、前衛ではソコロフ選手がクイックに入り、サーブを打ったS4ローテではリベロと替わります。その次のS3ローテで控えのスーパーエースのアントノフ選手がサーブを打ってからは、アントノフ選手にリベロが入ります。後衛に戻ったソコロフ選手は、スーパーエースのように守備免除になって、バックライトを打ちます。

・何がクネオのオリジナルを可能にしたか?
これは、ソコロフ選手が前衛でセンターを出来ることに尽きます。しかし、実はソコロフ選手はそれほどクイックを打つのが上手いわけではありません。セッターのグルビッチ選手(シドニー金メダリスト)も、ソコロフ選手のクイックはアクセント程度にしか見ていません。それなのにソコロフ選手がセンターに入っているのは、やはり長身であり、センターブロックが出来るからではないでしょうか。クイッカーとしては三角でも、ミドルブロッカーとして満点以上なら、センターは務まるのですね。

このように、長身選手を、前衛でセンター、後衛でスーパーエースのように使う布陣は、時代の流れに関わらず、いろいろなチームで稀に見られます。アルゼンチン男子も、何年か前にやっていました。そのため、この布陣は、クイックとバックライトが打てる長身選手がいるときに、時代の流れに関わらず考慮すべき布陣と言えます。

クイックとバックライトを打てる長身選手と言えば、あの大御所がいるではありませんか。そう、山本隆弘選手です。山本隆弘選手を裏センターに入れる布陣を試してみても良かったのではないでしょうか。

また、クイックとバックセンターが打てる長身選手なら、前衛でセンター、後衛でレフトというような組み合わせも可能です。石島雄介選手、どうでしょうか。

男子の世界標準バレーの先にあるもの ブロード攻撃

2013-03-26 13:02:53 | 用語解説
ブロード攻撃は、高くて横幅もあるバンチリードブロックに対しては通用しない、ということで、男子バレーでは過去の遺物となりました。タイ男子はいまだセンターがブロードをしますが、これはライト攻撃の貧弱さを補う目的で、そもそもタイ男子自体があまり強くないため、参考にする必要は無いかも知れません。

しかし、世界標準バレーが完成されてからも、ブロード攻撃を打ち続けている選手がいます。

・ブラジル男子のシド選手のCワイド
シド選手の場合は、自分が前衛レフトにいて、そこからCクイックに入るために、長い距離を移動してやや空中で流れる感じになります。ジャンプは両足ジャンプですから、女子のワンレッグによるCワイドとは異なります。しかし、移動距離、移動速度ともに女子のCワイドと変わりませんので、変則助走のCワイドと認定できるでしょう。前記事でご紹介した通り、ブラジル男子の場合はCクイックが一つの重要な起点になります。その起点に到達するためなら、ブロード攻撃という手段も有効と言うことです。

・ブラジル男子のダンテ選手のL
こちらは、何も変則ではなく、正真正銘のL、つまりセンターからライトに移動し、片足ジャンプで空中移動しながら、上体をやや右に傾けて打つ攻撃です。ブラジル男子のナショナルチームでは、ダンテ選手は裏レフトですので、ライトから打つことはありません。しかし、ギリシャリーグ時代は、ダンテ選手は表レフトでしたから、S1でのライト打ちが発生します。また、稀にスーパーエースもしていました。この時、前衛ライトでのレセプションアタックは、全てLブロードで打っていたのです。S1ではもとからライトにいますので、移動するためにわざわざセンターに走り、そこからライトに引き返す形で打っていました。そう、山口舞選手の、Bセミ囮のLの一人時間差と同じです。しかし、ダンテ選手はBセミは打ちません。なのに毎回センターに戻ってまでLに入ったのは、一人時間差という意味ではなく、ダンテ選手がライト平行よりLの方が得意だったからとしか思えません。Lからなら、ストレートのラインショットや超クロスを多彩に打ち分けていました。

このように、コンビの中での必要性や、各選手の適性によっては、ブロードも現代バレーで使われます。S1では、左利きスーパーエースがブロード助走でレフトから打っても良いはず。ブロードは古いと決めつけられている現状は、大変残念です。

世界標準バレーの先にあるもの ブラジル男子

2013-03-26 12:41:12 | 用語解説
さて、この記事で、どうして私がこれまでブラジル男子の選手を世界標準の名選手に挙げなかったかが明らかになります。それは、世界標準バレーだと思われているブラジル男子が、実は世界標準バレーをしていないからなのです!

まず、レフト平行については、世界標準バレーと変わりません。しかし、それ以外の攻撃は、全く異なります。

・遅いCクイックと速いバックセンターでダブルクイック
まず、ブラジル男子ではCクイックが非常に目立ちます。そして、Cに限らず、クイックは速くありません。ややネットから離したゆとりのあるトスを、きちんと打ち分けます。逆に、バックセンターはAクイックやBクイックの後衛版のような速さになっています。そのため、前衛の遅いCクイックと速いバックセンターが、ダブルクイックのような形になっているのです。本来、世界標準バレーのパイプ攻撃とは、前衛のクイックを囮にして、そのブロックの落ち際にワンテンポ遅れたバックアタックを打ち込むというもの。それを同時のダブルクイックにしたのが、ブラジル男子です。クイック囮のパイプという時間差攻撃では、まず試合序盤にクイックから使いますが、これは相手がバンチリードの場合は大きな矛盾ですよね。ダブルクイック化すると、どちらを先に使っても良くなりますから、一発目からの被ブロックという最悪の事態は避けられます。さらに、返球がネットに近ければCクイックに上げやすく、ネットから遠ければバックセンターからのクイックに上げやすくなります。Bパスという概念がなくなりました。

・両足ジャンプのCワイドもどき
センターが前衛レフトに入るローテでは、上述のCクイックに入るには、かなりの距離を移動します。女子のブロードとは違って両足ジャンプですが、特にシド選手は、Cワイドのような形の移動攻撃をします。

・超高速のライト攻撃を、Cクイック囮のパイプとして代用
ブラジル男子のスーパーエースが左利きのアンドレ選手から右利きのビソット選手やウォレス選手に替わってから、ライト攻撃が大幅に高速化されました。以前の世界標準バレーにおけるパイプ攻撃と同等の速さです。そのライト攻撃の手前には、Cクイックが跳んでいます。そう、Cクイック囮でライトからパイプが打たれるわけです。

・何がブラジル男子のオリジナルを可能にしたか?
各選手の個人技はもちろんですが、やはりそれを戦術として組み合わせた監督の存在が大きいと思います。