妻はゼローダという錠剤の抗がん剤を2週間毎日飲んで、2日前から「休薬期間」に入りました。そして今日は、乳がんの転移が臓器や骨に及んでいるかどうか調べた検査の結果を主治医から聞く日でした。
いつものように朝8時ごろチェンマイ大学病院に着きました。まずは血液検査の順番待ちです。抗がん剤によって白血球等に異常が出ていないか調べるのです。受け取った順番票は382番、実際に採血するまで1時間半ほど待ちました。そのあと外来の待合ロビーで今度は診察の順番待ちです。
最近のチェンマイ大学病院は、検査の有無や診察内容によって外来患者の予約時間をかなり細かくずらすようになったので、医師の診察そのものの待ち時間は大幅に短縮されました。お蔭でいつもより1時間くらい早い10時過ぎに名前を呼ばれました。
妻の前に呼ばれた50代の女性は、乳がんが肝臓に転移していて、1か月くらい前まで抗がん剤治療(ウイクリー・パクリタキセル)を受けていたそうです。でも激しい副作用に襲われ、もう抗がん剤はまっぴら御免と言う気持ちになったのだそうです。彼女は「こんな苦しい思いをするなら、死んだ方がまし」と主治医に言うつもりだと妻に話しました。そして実際、そう言いました。主治医の老医師は「気持ちはわかるけれども、抗がん剤をやった方が大体は長く生きられるから、もう少し頑張ってみなさい」と諭していました。診察室の中の会話が入口のベンチに座っている妻に聞こえるのです。
さて、妻の番はすぐです。実は、妻は諸検査の結果を印字してある何枚かの紙を手にしていました。この病院では、診察を受ける前にカルテと一緒に検査結果のシートが受付の看護婦から患者に手渡されるのです。でも文章はすべて専門用語満載の英語です。妻にはさっぱりわかりません。妻の顔を見るとすごく不安そうです。
単語レベルでわからない部分はあっても、検査結果がよいか悪いかは一目瞭然でした。細かな記述の最後の方に「impression」と言う項目があって、そこを見るとがんの転移があるのか、ないのか簡単に分かります。骨と肝臓については「白」でした。私が「大丈夫だった」と言うと、妻の表情がみるみる安堵の表情に変化しました。でも肝臓については「脂肪の多い肝臓」と書いてありました。わが妻は、この5~6年で体重が全盛期より20キロくらいも増えています。肝臓も、脂肪分たっぷりになっているのです。
残るは肺です。妻が手にしている書類から肺のレントゲン検査の結果を書いたものがないか探したのですが、ありません。きっとレントゲン写真については主治医が直接判断するようになっているのだと思われます。もし肺に転移があれば、いずれは肺に水が溜まる厄介な症状が出ますので、危険です。
診察室に入ると、主治医は妻から、まだ診察結果を記入していない今日のカルテを受け取ったあと、目の前のパソコン画面に目をやりました。過去のカルテや検査結果等、レントゲンやCTの画像データも含めて、すべてオンラインで見ることができるのです。先生はまず、私が見たのと同じ骨と肝臓の検査結果を、紙ではなく画面で確認した後、胸部のレントゲン画像に目を凝らしました。私の位置からは、画像が小さいのでよくわかりませんでした。というより、素人には無理ですね。
先生は一通り検査結果をすべて見終わってから、妻の方へ向き直って言いました。「よかったね。骨も肝臓も肺も問題なしですよ。」先生の顔からも、ちょっと嬉しそうな表情がこぼれているように見えました。
次は、転移病巣のある右の腋の下周辺の触診でした。周辺部分が少し小さくなったと先生が言いました。そして再びゼローダという抗がん剤の処方箋を書いて、次の診察日を決めて本日の診察は終わりました。いつもより少し時間は長めでした。次に抗がん剤を飲み始める日がいつなのか、カレンダーの日付を指さしながら休薬期間(1週間!)を数えていた先生ですが、少々手間取りました。私が「30日、30日」と小声で、しかしタイ語でつぶやいたのですが、それが聞こえたのか聞こえなかったのか、「次は今月30日からです。2週間飲んでください。」はい正解でした。
ということで、今のところ転移は右の腋の下周辺だけという診断結果でした。妻は「手術はできないのですか?」と先生に聞きました。残念ながら、「周辺に広がっている可能性が高いので、手術しても殆ど意味がありません。年明けに始める放射線治療も、抗がん剤と一緒にやって大丈夫なので、それに期待しましょうね。」そう言って、老医師は明るい表情で妻を励ましてくれました。
心なしか、病院から帰ってきた妻は、元気百倍になったような風情です。「首の皮一枚」というのは、ちょっと悲観的に過ぎるかもしれませんね。
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首の皮一枚 と言われるお気持ちをお察しします。
「よかったね。骨も肝臓も肺も問題なしですよ。」
よかったですね~ 彼女の頑張りとうさぎさんの
心と願いが神様に通じたのでしょう。
治療は続けなければいけないですがこれからも
変わらずお元気なことを祈っています。
少し安心しましたよ~
抗がん剤を続けていくと、今のところはほとんど見られない副作用がこれから出てくると言われていますので、少し先が思いやられます。(手足の指先が荒れて、ひどい場合は手や足も洗えなくなるとか・・・)
でも転移が限定的なので、余命を案じる事態にはなっていません。現状維持でもいいから、「とにかく生きていくのだ」という強い意志を妻には持ってほしいと思います。
お~っ!すごい!!8人兄弟ですか!!!
タイでもめったにお目にかかれないですね。と言うか、とっても羨ましいです。
みなさまのご多幸をお祈りします。