Prog-ING日記

現在進行形Progressive Rockを中心に音楽や本の話題、日頃の楽しい出来事を掲載

老人と宇宙

2007-05-16 17:05:03 | SF本


去年と違ってハヤカワ文庫のSFの新刊の出版が今年は少ない様な気がする。なので、出る新刊本はたいがい購入してしまう。そんなわけで、あまり期待しないでジョン・スコルジーの「老人と宇宙」を購入した。宇宙を「そら」と読ませるらしい。21世紀版の「宇宙の戦士」(3大SF作家のひとり、ロバート・A・ハインラインの傑作)だそうである。パクリか?なんか表紙も「戦隊もの」みたいだし、なおさら期待薄だったので、いよいよ読むものが無くなるまで積んでおいたのだ。


ところが、この本は面白かった。最近無いくらい面白くてあっという間に読んでしまった。


近未来、地球に暮らすアメリカ人、ジョン・ペリーの一生は現代の我々とあまり違わない生活を送っていた。地球人の寿命が大幅に伸びることもなく、人々は普通に働き、普通に年を取り、普通に死んでいった。だが、宇宙ではスキップドライブを使って近隣の惑星系に植民が行われ、他の宇宙生物と熾烈な領土争いが展開していた。地球人の植民コロニーは主に後進国から移民を受け入れ、移民は地球に戻ることも地球と通信する事も出来ない片道切符で宇宙に旅立って行った。コロニーはしばしば他の宇宙人と衝突するため、コロニー防衛軍が組織され、領土の防衛に当たっていた。


コロニー防衛軍は地球人に取っては謎の組織だが、地球の各地に募集事務所が有って、65歳を迎えると入隊申し込みができ、申込者が75歳を迎えると入隊ができるというのだ。なぜコロニー防衛軍は75歳以上の老人ばかりで軍隊を運営しているのか?どうやら老人を軍務に着けるよう肉体改造できるらしい。それでもあえて老人に限定して入隊させる理由は何なのか。


妻を亡くし、75歳の誕生日を迎えたジョン・ペリーが入隊申し込みに事務所を訪れる所から物語りは始まる。そして、この突拍子も無い設定のもと、老人達がやがて初めての宇宙旅行や戦闘訓練を経て戦場で活躍するのだが、次第に「何故老人なのか」が明らかになり、しかもすごく納得の行く理由なのだ。ジョン・ペリーの一人称で語られるこの物語は抜群のテンポの良さとアイデア満載でページをめくる毎に意外な展開があり飽きさせない。しかも、しっかりしたテーマ性があって、老人の持っている「人生経験の価値」を再確認させてくれる。そしてもう一つの軸をなしているのが、この物語が主人公ペリーと亡くなった妻キャシーの愛の物語でもあるという事だ。しかも、シメっぽくなくあっさりと、かつ何故かすがすがしく描かれている。絶妙なセンスで作られた作品なのだ。


この本は「電車男」みたいにブログで1章づつ公開されたストーリーだそうだ。いまやそういう所から本が出来てくる時代なんだな。お勧めです。



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2 コメント

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誉められるとうれしい (Prog-ING)
2007-05-18 00:29:38
プチ幸福感有ります。有り難う。

なかなか趣味の領域が重なる人が少ないので、微力ながらSF人口の増加に寄与したいと願う私です。
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Unknown (ほりっち)
2007-05-16 21:40:01
おもしろそう…。
というよりもProg-ingさんのレビュー自体が
本の全体感を紹介しながら、かといってアウトラインだけじゃなくて、ちょっと中に入るんだけど、
感想を交えながら、
大事なところは見せてくれない文章が上手すぎです~

期待そそられます。

僕もレビューテク見習いたいと思います。
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