Prog-ING日記

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フェアリイランド

2006-09-06 21:48:26 | SF本

この表紙とタイトルが絶対誤解呼びますね。私も「オタクになったか?」と言われました。実際はアーサークラーク賞、ジョン・W・キャンベル賞を受賞したポール・J・マコーリイ原作の本格SFである。もう一つの21世紀。温暖化で水没したアジアからの移民で荒廃したヨーロッパでは、ドールが労働力を支えていた。子供大の大きさで青い皮膚を持ち、頭部に埋め込まれたマイクロチップにより行動を規定されたドールは生殖能力を持たず工場生産されていた。

第一部は荒廃したロンドンが舞台。この物語の主人公である化学オタクでデブのイギリス人アレックスは、企業の実験で天才的な知能を与えられた少女ミレーナと知り合う。ミレーナはドールのマイクロチップを改造し知性を与えた上、アレックスに合成させたホルモンを使って生殖能力を与えて生物種として機能する「フェアリイ」を作り出した。「フェアリイ化技術」を持ってミレーナは失踪。第二部ではアレックスはミレーナーの行方を追ってフランスの崩壊したデイズニーランド跡地に現れる。そこではフェアリイ達が奇妙な生態系を作り上げ、ミレーナが単為生殖で作り出した双子の娘がフェアリイの王として君臨していた。フェアリイの殺人を目撃してしまった医療ボランテイアのモーラグはフェアリイが分泌するドラッグにとらわれフェアリイ側のスパイとなった元兵士に命をねらわれることになった。アレックスに助けられ、モーラグは他の人間グループとフェアリイが支配する元デイズニーランドに突入するが、ミレーナは先手を打って事態を収拾すると再び消息を絶つ。第三部ではフェムボットという精神を支配するナノマシンに感染した「子供十字軍」の大集団の行進が進むアルバニアとギリシアの国境の森を舞台に自分の精神をWebにアップロードしようとする大金持ちグラスの軍団と「子供十字軍」の制御プログラムを入手して利用しようとするグループと、野生化したフェアリイの三つどもえの最終決戦に関与し「子供十字軍」を解放しようと奮戦するアレックスの前に現在は環境モデル「アントワネット」としてグラスに荷担するミレーナがバーチャル接触してきて自分はすでにネット上にアップロードされている事を告げる。

全体的に退廃し暴力とナノテクが蔓延した近未来社会を舞台に、少しもかっこよくない登場人物が正義感など無縁に繰り広げる駆け引きを描いたアウトロー小説になっております。決して羽の生えた妖精が飛び交う美しい世界などは出てきません。最後に人間の目を逃れて生き延びたずるがしこいフェアリイの存在が「フェアリイランド」への発展を暗示させる程度です。SFファンにはおすすめ出来る内容です。



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