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酢、原料・工程など積極発信  飯尾醸造

2007-02-12 10:20:30 | 専門通販

日本三景の天橋立で有名な京都府宮津市。飯尾醸造は棚田が美しいこの地域で明治26年(1893年)から御酢造りを営む。自前の田んぼや蔵での生産工程をブログで積極的に伝えたり、御酢を使ったレシピをホームページで紹介。顧客向けの蔵見学会の開催するなど細やかなコミュニケーションでリピーター作りを進める。

飯尾醸造のこだわりはコメ作り方はじめる御酢造り。地元の里山で無農薬で栽培したコメを使い、御酢を造るための本格的なもろみを自社の蔵で造る。そのもろみをさらに1年かけて発酵・熟成させてようやく御酢ができる。代表作は「純米富士酢」だ。まろやかな味を出すため、原料のコメの使用料は日本農林規格(JAS)で定める量の5倍使っている。

燃焼3億3,000万円(2007年3月期見通し)で御酢の業界シェアは0.07%にしかすぎないが、1升瓶15万本分の生産設備は業界400社の中で15位に入る。富士酢、食べる富士酢のほか、紅芋を使った果実酢など約30種ある。

通販事業の売上高は8,700万円。2001年8月にはじめたネット通販で玄米酢の濃縮カプセル「食べる富士酢」がヒットし、全体の売上高に占める通販の割合は6年前の2%~25%前後にまで伸びた。通販では「いかに顧客とのつながりを作るか」を意識する。力を入れているのがホームページでの原材料や作業工程の紹介だ。誰がどう作ったのかきちんと知ってもらえれば他社製品との違いが分かってもらえると考える。

特にホームページに連動したブログ「酢を造るといふ仕事」は最低2日に1回更新し、コメやもろみ、御酢造りの工程を写真をふんだんに使いタイムリーに公開している。蔵の見学会も受け付けている。通販顧客が田植えに参加する例も出ている。

顧客作りのもう1つの工夫はお酢を使ったレシピの紹介。もともとは蔵に見学に来た顧客に飯尾社長の妻が振舞うもの。果物のお酢などはラベルを見ただけではどんな料理に合うか分からないだろうという配慮がある。届ける商品にも季節に合わせたレシピを同梱する。レシピは現在200種類に増え、今春には本として出版される。

今後の課題は現在、通販売上高の約4%にとどまるギフトの売上を伸ばすことだ。ギフトの送り主には「こうした包みで送りました」と写真付きはがきを送っている。通常の購入者にも宮津の風物詩を紹介した手書きの絵はがきを送るなど細やかに対応してきた。

ただ、
① 需要が拡大しても生産量を急激に増やせない
② 広告にコストをかけると商品に反映せざるを得なくなるといった理由で積極的な広告やDMはほとんどしていない。

ただ、最近は通販の比率が高まれば、値上げせずに済むと考えが少し変わってきた。来期からはお中元・お歳暮の時期にはメール・DMで案内し、通販売上を3年で1億2,000万円に伸ばす計画だ。

田んぼを守る、農家を守るという活動に社を挙げて取り組む飯尾醸造。偽装問題などで食への不信感が広がるが、「本物を造って、しっかり伝えている企業には追い風」と受け止めている。