逃走
薬丸 岳 著 講談社文庫 / 2014.7
死んだはずのあの男がいた。
小さかった妹とふたりで懸命に生きてきた21年間はなんだったんだ?
傷害致死で指名手配されたのは妹思いで正義感が強い青年。
だが罪が重くなるとわかっていても彼は逃げ続ける。
なんのために?
誰のために?
渾身の全面大改稿、ほぼ書下ろしの秀逸ノンストップ・エンタメ!
自分が誤って殺してしまった人物が実は自分の父親だったと判る瞬間はよかったです。
その瞬間、足長おじさんや和歌山ラーメンなどの父親側の謎は解けるのですが、母親の謎が最後まで解けず、そこはなかなかウマイな~と思いました。
もう謎はないだろうと思ったら、祐輔と美恵子の真相が最後に残されていて、それはある意味、残酷だなと思いました。
美恵子の過剰なまでの兄への執着心が若干、後味を悪くさせているようにも思いました。
いつもの薬丸さんらしい激しさはなく兄妹愛だけが濃く描かれていて、物足りなさを感じたのと、謎を含んだ部分がわざとらしく感じられたり、判りにくいところがあったり、説明し過ぎるところがあったりと、そういうところも薬丸さんらしくないな~と思いました。
で、結局、逃亡してまで母親に会う意味が理解できなかったし、結局、会えなかったし、肝心な部分がやはり微妙でした。