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『tokotoko』

Fortune comes in at the merry gate.

『ふくすけ』

2012-08-03 | 立ち直っていく、という時に。
先日、『作/演出 松尾スズキさんの<<ふくすけ>>』の初日に行ってきました



ズッシリおなかの頭のこころの奥に沈み込む<<ふくすけ>>にとりつかれて、
何も書くことができませんでした。

これを1991年に初演したということも<<ものすごい>>けど、

1998年の再演以降<<いま>>この時代に再演する、
というところもすごい。



東京公演/2012年8月1日(水) ~ 9月2日(日) Bunkamuraシアターコクーン
大阪公演/2012年9月6日(木) ~ 9月13日(木) シアターBRAVA!



上演時間/2時間45分(1幕・1時間25分/休憩15分/2幕・1時間05分)



出演/古田新太/阿部サダヲ/多部未華子/皆川猿時/小松和重/江本純子/宍戸美和公/
村杉蝉之介/平岩紙/少路勇介/オクイシュージ/松尾スズキ/大竹しのぶ

青山祥子/赤池忠訓/井内ミワク/井澤崇行/井上尚/井本洋平/延増静美/
菅井菜穂/鈴真紀史/竹口龍茶/中尾ちひろ/羽鳥名美子/町田水城/矢本悠馬



1991年悪人会議プロデュースとして初演された作品。

悪人会議とは、松尾スズキさんと、
<劇団「パラノイア百貨店」(今はない)>の岡本圭之輔さん
当時劇団「WAHAHA本舗」のメンバーだった村松利史さんにより結成されました。

パラノイア百貨店は、スプラッタ・ホラーの劇団で山崎一さんとかがいらしたところです。

ホラーが苦手な私は残念ながら経験していません。
前列で舞台を観ると、すごく大変で怖かったが楽しかったと聞いたことがあります。

怖くて・・・楽しい
怖いのに楽しい
・・・ない

1998年には日本総合悲劇協会公演として再演されます。

<日本総合悲劇協会(略称ニッソーヒ)>とは、
大人計画がプロデュースする演劇ユニットのことです。

大人計画以外の役者さんも出演しています。



<<奇形児、薬害、宗教ビジネス、テロ・・・>>

『悪』もまた人の姿である。
本性を剥きだしにして、捻じれた愛を追いかける。

やっている方も、ものすごい体力と精神力が必要な舞台だと思いますが、
 それを<<受ける>>観る方にも、体力と精神力が必要です。



コンプレックスを抱える男エスダヒデイチ(古田新太さん)は吃音という設定。

劇団☆新感線の古田新太さんが、この作品では、
妻に翻弄される冴えない中年男性を演じていています。

行方不明になった妻マスを、14年も探し続けているという設定です。

精神のバランスを崩し失踪する妻エスダマス(大竹しのぶさん)。
裁判所の登場のシーン、ビックリしました。笑ったけど、怖かった。

薬害で奇形児として生まれたフクスケ(阿部サダヲさん)。

奇形児として生まれ、奇形人間しか愛せない異常な製薬会社の御曹司に、
青年になるまで監禁されていたという設定です。

古田さんの演じるエスダを、
その妻への純愛にほだされ、手助けするホテトル嬢役は、多部未華子さん。

現在連続ドラマも放映中(浪花少年探偵団)で、大忙しです。
6月半ばまでは『サロメ』に出演していたのに、いつ稽古?いつ撮影?



とある病院の怪しい警備員コオロギ(オクイシュージさん)は、
盲目の妻サカエ(平岩紙さん)に歪んだ愛情を抱いています。

テロリストであるコズマ三姉妹(小松和重さん/江本純子さん/宍戸美和公さん)は、
全く食べれない状態から、歌舞伎町の風俗産業で一発当て、飛ぶ鳥を落とす勢いです。

ひょんなことでマスと出会い、
生み出された<一度死んで生まれなおすゲーム>輪廻転生プレイが大ヒット。

ふくすけを監禁していた製薬会社社長ミスミミツヒコ(松尾スズキさん)は逃走中。

マスはエスダヒデイチとの間に、13年目にしてようやく出来た子供が死産。
この死産の原因は、ミスミ製薬の薬品事故でした。

しかもミスミ製薬の社長ミツヒコ。彼自身は奇形フェチだったのです。
表向きは死産だと偽らせ、実際にはその子供達を引き取って地下室で育てていたのです。

フクスケは、その奇形児達の一人でした。



登場人物たちは心身の何かが欠落しています。

歪んだ部分を持った人が、
持った人と関係し合うことによって、物語が暴走していくのです。

この作品がセンセーショナルで、どこか他人事だった時には、
もしかしたら、こんなふうに何日も抜け出すことができなくなるような重さを、

持たなくてもよかったかもしれません。

震災があり、原発の問題があり、
やさしさやあたたかさ、人とつながることの大切さを感じるいま、

それと同じくらいに、動機が理解できない異常な犯罪の報道に驚かされます。

「人間が描かれている」舞台。
「ほとばしる悪意」が動きまわる舞台。

その舞台と現実が近寄ってしまったからこそ、

ここで何を感じるのか、何を受けとるのか。

そんな意味のある舞台になっている気がします。



古田新太さん、阿部サダヲさん、多部未華子さん、皆川猿時さん、小松和重さん、
江本純子さん、宍戸美和公さん、平岩紙さん、大竹しのぶさん・・・

何もかもを、使って<<くる>>役者さんたちが、投げてきたもの。

松尾スズキさんという演出家が投げてきたものは、

ものすごく重い、剛速球で、
未だ私の心のおなかの底で、煙を出しくすぶっています。

まいりました




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