起業を成功させるポイントは、″いい人″をパートナーに選ぶこと
『「起業」の歩き方 リアルストーリーでわかる 創業から上場までの50のポイント』(藤野英人著、実務教育出版)に描かれているのは、資産運用会社のレオス・キャピタルワークス、水のホームオフィスデリバリーをしているウォーターダイレクト、健康食品や医薬品を電子商取引のかたちで販売しているケンコーコムと、著者自身が3つの企業と関わるなかで体験してきたリアルストーリー。それらを通じ、「創業から上場に至るまでに覚悟しておくべき50のこと」を解説しているわけです。
かつてはベンチャー企業やベンチャー経営者をいかがわしい存在だと思っていながら、結果的に投資家/起業家として成功した著者は、起業は必ずしも高いハードルではないといいます。しかし同時に、「私は起業するべきでしょうか?」というような質問をしてくる人には起業をすすめないとも。理由は、なにを言われても「やる人はやる。説得されてやめるような人は、起業に向いていない」から。
起業するかどうか悩んでいる人は、ぜひ本書を読んでみてください。そして何だか熱くなった人、あなたは起業に向いています。(中略)もし自分には難しそうだと思った人は、起業しない方が賢明な判断だと思います。(7ページより)
第1章「スタートアップ 信頼できる仲間とともに起業のタネを蒔く」のなかから、「Episode1 創業を乗り越えるために必要なもの」を見てみましょう。
「誰とやるか」
起業しようと思い立ったとき、「何をやるか」ということと同時に考えるべきが「誰とやるか」。そして著者が自身の経験や周囲の話を聞いて得た結論は、起業のパートナーは"いい人"かどうかが大事だといいます。この場合の"いい人"が意味するのは、「起業家自身の人生や仕事に対する価値観と近い人物である」ことと、「人格的に信頼できる人物である」こと。
人材選びの基準は「仕事ができる/できない」という能力軸と、「人格がいい/悪い」という人格軸をイメージするとつかみやすいとか。人材のタイプにはAタイプ「仕事ができて、人格もいい」、Bタイプ「仕事はできるが、人格が悪い」、Cタイプ「仕事はできないが、人格はいい」、Dタイプ「仕事ができず、人格も悪い」の4つがあり、当然ながら誰もが声をかけるのは、能力も人格も文句なしのAタイプ。しかし、あとひとり増やしたいときに著者が選ぶのはCタイプだそうです。
仕事ができても人格がよくないBタイプは会社を破壊しかねないけれども、Cタイプは無害であり、成長の可能性も高いというのがその理由。人格の修正は困難だが、スキルの習得は技術の問題。価値観の合う人と成長していく方が、会社の伸びしろは大きいというわけです。(19ページより)
創業時の最適な人数
著者が考える創業時の最適な人数は3~4人。2人だけだと粋が詰まり、5人を超えると当事者意識を持てない人が出現するリスクが高まるから。しかし3人なら、全員が当事者意識を持ちながらも、ほどよい客観性を持って意見を出し合うことができるわけです。
ただし創業当初の売上が立ちにくい場合は、思い切ってひとりでやるのも手。コストが小さく身軽で、決断から行動までをひとりでこなせればスピードも早いからです。事実、会社としてやらなければならないことをまず全部ひとりでやってみると、のちのち役に立つこともあるといいます。(23ページより)
起業に向いた性格
起業には明らかに「向いている性格」「向いていない性格」を分ける適性があり、自分に向かないことを正しく認識することも大切だと著者は主張します。そして「起業家に向く性格とは?」と問われてまず浮かぶのは、「変化に強いこと」だそう。信頼も実積もお金もないベンチャー企業は、周囲の評価によって環境が激変することが常。常に変化の大波小波にさらされているからこそ、そういった変化に対してあまり抵抗なく耐えられるタイプの方がいい。もっといえば、変化を楽しむくらいの度量があるとベターだということです。
ちなみに起業する人を職種タイプで分けると、優秀な実績をあげた営業タイプか、特定の技術開発を専門としてきた職人タイプが多いのだとか。営業タイプは売り上げをあげることが得意なので、創業当初は会社も順調。しかし、より高度な商品開発などを求められたときには、営業スキルだけでは対処しきれない場合も。一方で職人タイプは、優れた商品開発能力はあっても営業スキルが不足しがち。両者のバランスを保つためにも、自分に足りないところを補ってくれる仲間を見つけることが大切だといいます。(32ページより)