どうすれば笑顔の魅力を保てますか
鏡を見るとき,何をチェックしますか。おそらく髪形などの外見でしょう。では,笑顔もチェックしますか。歯が笑顔を引き立てる,ということに気づいていますか。
笑顔の魅力を保ちたければ,歯の手入れを怠ることはできないでしょう。大人の歯は,生涯ずっと使えるように設計されています。
ですから,特別な注意を払わなければなりません。歯があるおかげで,食べ物をかむことや明瞭に話すことができます。
それだけでなく,唇とほほの形が保たれ,笑顔はますます美しく輝きます。歯は本当に大切です。
歯の健康を保つために何ができますか
歯を健康に保つことは体内から始まります。カルシウムやビタミンA,C,Dを含む,バランスの取れた食事は,胎児のときから大人の歯が生えそろう時まで,歯の発育を助けます。
*(下記、脚注 1参照)
良い食習慣を保てば,いつまでも健康な歯でいられるでしょう。しかし,砂糖を多く含む食品には気をつけてください。虫歯になる可能性が高くなるからです。
砂糖の摂取と虫歯の関連が繰り返し取り上げられてきたにもかかわらず,北アメリカに住む人が普通1年間に消費する砂糖の量は50㌔から60㌔にもなるということです。砂糖を取るとなぜ虫歯になりやすいのでしょうか。
虫歯の原因は,歯垢(プラーク)に含まれる2種類のバクテリア,つまり「ストレプトコッカス・ミュータンス菌と乳酸桿菌(ラクトバチラス菌)」です。
歯垢とは,食べた物の残りかすとバクテリアから成る,歯の表面のねばねばした付着物です。歯垢の中のバクテリアは糖分を取り込んで有害な酸に変えます。
その酸によって腐食が始まるのです。糖分の種類によっては,すぐに酸に変わるものや歯に付着しやすいものがあり,歯垢が腐食を進行させる時間はそれだけ長くなります。
*(下記、脚注 2参照)
歯茎に沿ったところに残った歯垢は,硬くなって歯石になることがあります。
歯垢(プラーク)のコントロール,特にストレプトコッカス・ミュータンス菌の活動を抑えることは,虫歯の進行を食い止めるのに肝要です。
それで笑顔の魅力を保ちたいなら,いつも口の中を清潔 にしておくことが不可欠です。コロンビア大学歯科・口腔外科学部によれば,「デンタルフロスを併用した歯磨きは,歯とそれを支える組織の健康と活力を維持するために行なえる最も重要な事柄」です。
歯ブラシとデンタルフロスの上手な使い方は下記参照。あなたのかかりつけの歯科医は,歯をよく手入れして笑顔の魅力を保つのに役立つ,ほかの道具や方法も勧めてくれるかもしれません。
歯医者さんに対する見方
ある調査で,恐れているものは何かと人々に尋ねたところ,歯の治療を受けることが,人前で話すことの次に挙げられました。そのような不安を感じるとしても仕方がないのでしょうか。
豊かな国々では,高速回転ドリルや局部麻酔のおかげで,たいていの処置は,患者に苦痛や不快感をほとんど感じさせません。治療のそれぞれの段階でどんなことが行なわれるかについて知っておくと,恐れの気持ちも幾らか和らぐかもしれません。
歯科医院に行くと,専門的に歯をきれいにする歯石除去を行なってくれるかもしれません。これは,ふつう歯科衛生士が行ないます。
この処置では,歯ブラシやフロスの届かない場所の歯石や歯垢を取り除きます。そして歯を研磨して,歯垢がたまらないようにし,笑顔を台なしにする歯の汚れをきれいに取ります。
歯医者さんには何ができますか
歯科医は,脱灰によるダメージを少なくするため,予防手段を講じることにいっそう熟達するようになっています。損傷が小さいうちに処置を施すことにより,多くの場合,歯の腐食過程を逆転させることができます。
それゆえ,早期の発見と処置を主な目的とするなら,歯科医院に行くことは必ずしも不快な経験ではなくなります。
とはいえ,歯垢の作り出した酸が歯の表面に残っていると,やがて虫歯になります。虫歯は治療しないと悪化してしまうので,必ず治療しなければなりません。虫歯が,神経の通っている歯髄にまで達していない場合,たいていは歯に詰め物をして治療します。
歯科医はドリルを使って,虫歯になっている部分をきれいにし,詰め物をしやすいように穴の形を整えます。それから,穴に詰め物を入れます。アマルガムの詰め物はすぐに固まり,歯の形に合わせて整形されます。
一方,合成樹脂の詰め物は青色の可視光線を当てて硬化させます。虫歯が治療されずに放置され,歯髄にまで広がると,根管治療や場合によっては抜歯をしなければならなくなるかもしれません。
根管治療を施せば,傷んだ歯の根の部分に詰め物をしたりそこをふさいだりするので,抜歯をせずに済みます。クラウン(冠)はひどく侵された歯にかぶせるもの,またブリッジ(橋義歯)や義歯(入れ歯)は失った歯の代用として用いられます。 *(下記、脚注 3参照)
なぜ努力する価値がありますか
もしかしたら,歯の治療を受けることにまだ不安があるかもしれません。もしそうなら,不安な気持ちを歯科医に話してください。治療の前に,痛いと感じたときにそのことを知らせる方法(例えば,手を挙げるなど)を話し合っておきましょう。
治療のそれぞれの段階で何が行なわれるのかをあらかじめ聞いておくのもよいでしょう。またお子さんに対しては,歯の治療が大切であることを理解させ,歯科医院を,悪いことをしたときに連れて行かれる場所のように思わせなければ,お子さんの歯の健康を守ることにもなるでしょう。
モントリオール大学口腔衛生学科の教授,ダニエル・カンデルマン博士はこう述べています。
「今日,歯科衛生上のこの価値ある目標を達成すること,すなわち生涯にわたって健康な自分の歯を保ち,輝く美しい笑顔で過ごすことは不可能ではない」。そうです,努力するだけの価値があるのです。
(脚注 1)
完全に成育した歯は,妊娠中および子どもが乳児期にあるときに母親がどんな栄養を摂取していたかを示す,変わることのない記録です。その時期に歯茎の下で歯が形成されるからです。歯の成育は子どもが十代後半もしくは二十代初めになるまで続きます。
(脚注 2)
歯科の専門家は,キシリトールという天然甘味料が,虫歯の原因となる,歯垢中の有害なバクテリアの働きを抑えるのに役立つことを発見しました。キシリトールは,一部のチューインガムに含まれています。
(脚注 3)
義歯については,次回,「義歯をつける必要がありますか」という記事をご覧ください。
歯ブラシの使い方
歯ブラシで歯を磨く方法はいろいろありますが,注意すべきこともあります。練り歯磨きの量は少しだけにしましょう。練り歯磨きに含まれる研磨材は,「人間の歯より100倍も硬い」場合があります。
1 毛を歯茎のラインに対して約45度傾ける。歯茎のラインからかみ合わせの面に向かって歯ブラシを優しく細かく動かす。歯の表側も裏側もすべて確実にきれいにする。
2 歯ブラシを細かく掃くように動かしてかみ合わせの面をきれいにする。
3 歯ブラシが垂直になるように持ち,前歯の裏側をきれいにする。歯茎のラインからかみ合わせの面に向かってブラシをかける。
4 ブラシを掃くように動かしながら舌と口蓋をブラッシングする。
デンタルフロスの使い方
歯科医は,毎日フロスをすることと食後に必ず歯を磨くことを勧めています。
1 フロスを,少しの間隔が明く程度に両方の手の中指にまきつける。
2 片方の手の親指ともう片方の手の人差し指を使って,フロスをぴんと張った状態にする。フロスを前後に動かしながら歯の間に入れる。
3 フロスをアルファベットのCの形にして上下に動かし,両方の歯の側面を磨く。歯茎のラインの下にまでフロスをそっと持ってくる。その際,フロスを歯茎に押し当てたり,前後に動かしてこすったりしない。
資料: 「ファミリー・デンタルケア・ガイド ― コロンビア大学歯科・口腔外科学部」(英語)
*画像は無料フリー素材