安倍晋三 回顧録/中央公論/2023年
本の位置づけとしては、帯にあるように、憲政史上最長の政権は如何にして維持されたのか、その手の内のすべてを総括した歴史的資料である。
本の紹介文はこうなっている。
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知られざる宰相の「孤独」「決断」「暗闘」が明かされる
2022年7月8日、選挙演説中に凶弾に倒れ、非業の死を遂げた安倍元首相の肉声。なぜ、憲政史上最長の政権は実現したのか。
第1次政権のあっけない崩壊の後に確信したこと、米中露との駆け引き、政権を倒しに来る霞が関、党内外の反対勢力との暗闘……。乱高下する支持率と対峙し、孤独な戦いの中で、逆風を恐れず、解散して勝負に出る。この繰り返しで形勢を逆転し、回し続けた舞台裏のすべてを自ら総括した歴史的資料。オバマ、トランプ、プーチン、習近平、メルケルら各国要人との秘話も載録。
あまりに機微に触れる――として一度は安倍元首相が刊行を見送った、計18回、36時間にわたる未公開インタビューを全て収録。知られざる宰相の「孤独」「決断」「暗闘」が明かされます。
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新聞記事を読みながら、当時の首相はどう考えどう決断し行動しているのかについて関心を持っていた人には、予め予想されていたことが書かれている、はずである。
ただし、それらがほとんど伝言ではなく、本人の肉声で語られている内容であることが重要。
重要箇所は、中国との関わり、消費税延期を巡る財務省との暗闘の部分。小池百合子に関するトピックス的な記事も面白い。
外交的には、中韓と距離を置いた記述が目立つ。日韓関係については、慰安婦問題日韓合意はあったものの、「裏切られた慰安婦合意」「韓国、GSOMIA破棄へ 日韓関係は悪化の一途」くらいしか見出し的には見当たらない。その韓国に対し、輸出管理厳格化を発案したのは、今井政務秘書官、長谷川首相補佐官だったそうだ。
難解なのは、安倍談話に関する記述。
他の項目と比較し何度も精読する必要があるほど示唆に富んだ内容に仕上がっている。文章的に練りに練って作成され、推敲、謝罪一辺倒の政治路線変更が困難な状況の中、歴史認識に係わる国際社会における日本の位置づけを変えようとして関係者一体となって熟慮に熟慮を重ねた渾身の作品であることがわかる。
重要と思われる箇所中心に読んだ感想となるが、改めて、あの世におられる安倍晋三先生に感謝しつつお疲れ様でしたと申し上げたい気分である。
安倍元総理の不幸な逝去は、今の日本国の損失と考えています。
中川昭一先生の分まで頑張られたと思っています。