イノさんシゲさん

井上出と重松彬の往復メール

塾禁止(イ)

2006-12-27 14:55:08 | Weblog
「予備校、塾は法律で禁止すべし」

日本以上に進学熱の高い韓国では大部昔の事になりますが学校教師による家庭教師そして予備校経営を禁止した事があります。 ところが禁止令は長くは続かず又解禁になり今では日本以上にエンジェル係数(子供に掛ける家計費に占める教育費の比率)は高くなって居ます。 少子化は日本以上の韓国ですから親やその祖父母達は何とか一流大学に行かせたいと言う事で小学校から子供を塾に通わせたり家庭教師を付けたりして居ます。

日本でも学校で居眠りしても塾では一生懸命と言う子供が殆んどで最近では学校は卒業資格を取る為に通わせて居ると言う様な考えの親が増えて居ます。 学校側も予備校の先生を講師で呼んで特別のプログラムを組むと言うところまで出て来て居り大きな問題になって居ます。 教師のレベルの低下がこんな現象を生んで居るのです。

昔は東大は貧しくても優秀な学生が行ける大学で私の父も岐阜の美濃の山奥の村から祖父に連れられて北海道の十勝にある芽室と言う小さな村に開拓農民として移住しその小さな村の学校から東大に入学し学んだのですが最近は東大の学生の親の平均収入は私立の一流大学の親の収入を上回ると言う現象が起きて居ます。

金持でないと東大に入れないと言うのはどう言う事かと言うと金持でないと幼児期から家庭教師を付けたり一流予備校に通わせたり出来ないからだと言うのです。 神戸には東大医学部を目指す小学生の為の予備校までありその月謝が5万円と言うのですから驚きます。又埼玉県で200床規模の病院を経営して居る友人が居るのですが自分が私立医大出身なので一人息子は何としても東大医学部に入れたいとして家庭教師を何と4人も雇って子供の尻を叩いて居たと言うケ-スもあります。

前述の友人の息子の場合3人の家庭教師がそれぞれの科目を分担し毎日教えその後監督役の教師がその復習を担当したと言うのです。 そして遂に東大医学部に入学しましたがその息子は大学卒業し米国の大学に留学中に白血病で亡くなりました。 亡くなった後私の友人は「こんな事だったら好きな事をさせてやれば良かった」と後悔の念を語って居ましたがこんな風にして東大に入学する子供が多いのです。

世間の一般常識も遊びも知らずに親の強い意志の下入学の為の勉強に明け暮れた子供達は社会に出てから遊びを覚えたりお金の亡者になったりして問題を起すのです。 ノ-パンシャブシャブや役人達による汚職そして公私混同による公金横領事件等もこの延長線上にあるのです。

こんな折政府の教育再生会議の野依良治座長(ノ-ベル化学賞受賞者)が「塾の禁止」を繰り返し主張して居られると知り何とか野依氏の主張が政府への意見書に盛り込まれる事を願って居たのですが残念ながら第一次報告の原案には「塾の禁止」は盛り込まれませんでした。

野依氏は「塾は勉強の出来ない子が行く為には必要だが普通以上の学力の子供は塾に通う事を禁止すべきだ。 公教育を再生させる代わりに塾を禁止する必要がある」と再三にわたって強調されたとの事。 更に野依氏は「昔出来た事が何故今出来ないのか? 我々は塾に行かずにやって来た。 塾の商業政策に乗って居るのではないか。」と訴えて居られるとの事ですが教育を食い物にして巨大化して居る予備校のチェ-ン等は何等かの形で先ずは規制する必要があります。 それを第一歩として禁止にまで持込んで欲しいと願って居ます。

井上 出    (06/12/25受信)