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魍魎の匣

2008-04-17 08:57:05 | ブックレビュー
最近S君の薦めもあって、京極夏彦をよんでいます。
昨夜は魍魎の匣―文庫版 (講談社文庫)を読破しました。
大層面白い本で、ついつい明け方まで一気に読んでしまい、現在大変眠い状態です。
前作の姑獲鳥の夏も面白かったですが、2作目になってさらに磨きがかかっている感じです。
文庫版でありながら持ち歩くのが億劫になるほどの厚さの分量でありながら、
冒頭から終盤まで、無数の伏線を織り交ぜながら一気に読ませる物語の構成力はただごとではありません。
この文庫自体がかなり四角い箱です。中には、物語を綴る言葉が一部の隙もなくみっしりと敷き詰められております。

京極夏彦の描く世界観は、心身二元論の世界です。
世の中には物質だけが存在し、心はその影のようなものだとするのでも、
世の中には精神しかなく、世界は精神が描き出す夢のようなものだとするのでもなく、
精神と物質の両方が、確かに存在するのだという世界観です。

いま、私たちの目の前に広がっている世界。
この世界は、目を開けば意識に上り、目を閉じれば消えてしまう。
ここから、私たちの意識が自分の外部にあるなにものかに依存することがわかります。
しかし、目を閉じていても、夢の中ではその世界のイメージを再生することが
できます。ここから、私たちの意識には自分たちの外にあるものには依存しない
なにものかも紛れ込んでいることがわかります。

私たちが世界をみるとき、半分は自分の外の対象をみていますが、
半分は自分自信をみている。

意識とは、心と物との間の関連クラスなのです。

京極夏彦の小説は必ず妖怪をモチーフにしますが、妖怪はこの関連クラスの中に湧くものらしい。妖怪を一種の道具として、この関連クラスの存在を認めなければ癒されることのない苦しみを癒していく、というのが本作に限らず京極夏彦の小説のテーマのような気がしています。

そういう意味で、おどろおどろしくもありますが、本質的にはとても優しい、救済の物語であるともいえます。実際私も忙しくて大変な状況のなかでかなり癒されました。

なにを言っているのかわからない人は、ぜひご一読を。難しいこと考えずとも文句なしに楽しめます。

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