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ブックレビュー:成功する要求仕様 失敗する要求仕様

2006-12-24 14:18:04 | ブックレビュー


タイトル: 成功する要求仕様、失敗する要求仕様
原題: Just Enough Requirements Management
著者: Alan M.Davis
訳: 高嶋優子
監修: 萩本順三/安井昌男

要求開発とか、要件定義を題材にした書籍は既に数多く出版されています。
私の読んだ範囲では、それらは以下の3つのカテゴリに分類できると思います。

1. 特定の技法の紹介
2. 要求開発に関するTips集
3. そもそも要求開発とはなんぞや、みたいな考え方を述べる

1. と2. はボトムアップ型のアプローチで、
内容が具体的なので読んだらすぐ役立ちそうに見えるのですが、
ある特定の技法なりTipsは大抵は特定の状況にしか通用しないので、
いざ現場に適用しようとすると意外とこまってしまうことも多いように
感じています。

3. はトップダウン型のアプローチで個人的には興味をもっていて
好きなトピックなのですが、なにぶん抽象的で難解になりやすく、
現場に適用するにはかなりの応用力が必要になります。

さて、今回紹介する「成功する要求仕様、失敗する要求仕様」は上記の
分類のうち、3.に分類される本です。
しかし、今までの本よりも、
格段にやさしく、わかりやすく、具体的に要求開発のポイントが
述べられていると思います。

この本の思想の中心となっているのは、原題にある「Just Enough」
ということです。要求開発は、コストをかけすぎず、かつ適当すぎず、
「ちょうど良い」レベルで行うとよい、という主張です。

この考えは私も完全に同意です。
そもそもなぜ要求開発なんかやらなくちゃいけないのか、
いきなりコードを書き始めたらいけないのか、というと、
要求開発をやらないと開発したものが実際に必要とされているものと
異なるリスクがあまりにも高くなってしまうからです。
私は、要求開発でどれくらい頑張らなければならないかは、
ソフトウェアの構築のコストに反比例すると思っています。
極論すると、ソフトウェアの再構築作業が5秒で終わるなら、
別に要求開発なんかやらなくてもそんなに問題ないはずです。
期待したのと違うものが出てきたら、やり直させればよいのですから。

現在の技術レベルでは、いろんなツールとかを駆使すれば
オープン系のシステム開発のシステム開発の構築コストは言うほど高くは
ないので、要件定義に投入するコストも「それなり」の方がむしろ
Betterだと思います。
要はシステムのふるまいを全て厳密にきめようと頑張っているあいだに、
実際に作りはじめてしまった方が良い場合もあるよね、ということですね。

それ以外に紹介されている具体的な要求開発のやり方も
私のチームでやってる要求開発のやり方と大体同じだったので、
今後、うちのチームの要求開発の教科書にしようかと思っています。
この本には過度にコストをかけることなく、うまくリスクを軽減しつつ、変更を受け入れつつ
要求開発を成功に導くにはどうしたらよいか、実践的なアドバイスが満載です。

だから、要求開発にかかわるすべての人が、まずはじめに本をよんで欲しい本です。
うしろにくっついてる参考文献リストも素晴らしいので、まずこの本を起点に、
必要に応じて他の本を読んで行ったらよいと思います。

結局要求開発のポイントは、本書の第6章「まとめ」でたった7ページでまとめられている
ことがほとんど全てだと思います。私はそのことが早く、システム開発の業界の常識に
なってくれたらいいと思っています。



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