昨日、和郷園の木内さんにあって、今や農業界の寵児、和郷園が、あの山田町にあることに、今昔の感を覚えた一晩であった。
私は、70年代後半、夏は、千葉県の山田町で過ごしていた。
角屋という、四つ角にある旅館を根城に、我々大学院生が、町の農家などと、議論しながら、農業の勉強をしていたものである。
丁度70年代、成田の工事の最盛期の頃で、成田ビューホテルがぽつんとあったろうか。成田を通り過ぎるときは必ず不審尋問を受けたものだった。
その山田町新里の和郷園代表、木内さんは、当時8-9歳の子供だった事になる。
70年代後半に山田町を紹介してくださった、田さんはいまだにご活躍だという。木内君が気を利かせてくれて、昨晩田さんと、実に25年ぶりぐらいで話をしたものである。
そんなこんなで、農業経営学者としての本性が刺激され、久しぶりに、和郷園の成功の秘密を考えてみたくなった。
千葉県の山田町、和郷園
①現在14億円の販売額がある。基本は、青果物の出荷販売組織である。
平成3年に、5名の農業者で産直活動を始めたのがきっかけという。
きっかけは、どこにでもある様なもの。しかしこの組織がなぜ14億円をあげるようにな理、タイにも現地法人を作るまでになったのか?
②営業力
ます第一は営業力であろう。
明治屋、生協、ローソン、ダイエー、ユーコープなどの大手クライアントを開発していく。産直はこれで一気に加速し、平成8年有限会社和郷を設立する。
それぞれの農業は、出荷販売組織のおかげで成長していく。5人の農場は、それぞれ、和郷園の小見川農場、栗源農場と言った位置づけになっていく。
それでも、出荷販売組織は、それ自体としてクライアントのニーズに対応するため、複数品目を必要とし、そのために多くの専業農家を傘下におかざるを得ない構造になっていく。
その数、00年で、約50戸。11市町村の専業農家の協力を得ている。
花卉出荷の要請もあり、現在はさらにおよそ40戸の花卉農家が加わり、約90戸の専業農家の出荷販売組織となっている。
③ロジステックスの必要性
農業経営の成長には、出荷販売組織が必要であることを物語っている。
ただ、その必要性は営業だけではなかった。クライアントが増え、参加農家が増え、出荷産品が増えてくると、最も大変なのは、ロジステックスだった。
つまり農業の成長には、一口に出荷販売組織が必要と言うが、ロジをきっちり行える組織は意外と多くない。
マクロな視点で見れば、我が国の農業は、農協の官僚化と現場離れによってこの機能を極端に衰退させた。農協にしてみれば、兼業農家が増えたためにまともな農業出荷が担保できないと言うことなのだろう。
④とにかく必要なのは、「客の動向がわかる営業と物流機能」ではないか。
じつは、和郷園は、それを最初の産直対応でかなり上手にやってしまったのですよ。
それが和郷園の成長のもとでしょう。
⑤もっとも必要であるにもかかわらず、最も不確定・不安定で、最も儲からないセクター、それが出荷販売組織なのです。
仕組みを構築するまでには、何度もトライアンドエラーしながらやらなければならない①非常に難しいシステムを持っている。ですから、頭で考えてすぐできるものではまったくありません。②さらに、利幅が薄いため、専門に働く人の人件費すら確保できないことがあります。農産物は天候に左右されるためなおさらです。
営業でクライアントの拡大は必要なのに、拡大すればするほど、ロジスティックスは困難となり、また不安定要因が増える、という構造にある。
最も不確定で、最も儲からないセクターが、農業の成長のためには最も必要ということなのです。
⑥仲間を増やす意味
しかし和郷園の場合、ここが、単なる産直組織と違っていたのですよ。
和郷園の皆さんは、仲間を増やすことによって、ニーズ対応への深みを作っていったのでした。
つまり、取引が増加すればするほど、農業生産者のネットワークが必要になってきたのです。これはある意味法則と言っていいでしょう。
法則をあらためてもっともらしく言えば、「①農業経営の成長のためには、個人出荷もさることながら、独自の出荷販売組織が必要です。②さらに出荷販売組織が成長するには、多様な業態の多くの専業農家の参加が必要になってきます、という法則」
⑦自分のお客が何を考えているかわかるか?
その背景には、ニーズは多様であり、多品目要望が必ずあるということがあります。
さらに「お客がわかる」事、という大命題が横たわっています。
⑧ともあれ、「最も必要だが、最も儲からない」といったこのジレンマの解消が必要です。
和郷園の次のステップはこれを、カット工場や、冷凍工場、直営店舗等で、保証しようとし、しかもそれが成功しているところにあります。
独り立ちできない出荷販売組織を、他の部門でサポートして自立させているのです。
また、それ以上の成功理由も実はあるのです。たとえば、信頼の確保法や、経営者の成長ステップをきちんと踏んでいること、自然循環など自然の摂理を大事にしていること等ですが、今日はこの辺までにしておきます。
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橘井崇人
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