昨年11月23日のツイッター短信の続きです。
11/22に気がついて唖然とした、ピークオイルならぬ「ピーク原発」現象は仮想的なものでしたが、福島原発の事故によって一気に顕在化してきました。
日本の原発の発電容量の推移と予想のグラフを、原子力資料情報室のプレゼン資料(@気候ネットワークのシンポジウム)より紹介しておきます。
・このグラフの中の、棒グラフの推移(40年運転のケース)が現状推移シナリオ(いわゆるBau)であったことに注目ください。
2010年のあたりから原発の設備容量もピークを過ぎ、減り始めることが明示されています。
・官産学の思惑としては、全ての原発の寿命の60年までの延長によって、このピークを平たいプラトー化させて、現状の電力生産を長く維持させたい、あるいは、最近の意向として、温暖化対策名目で14基新設程度増加させることを主張していました。その現状維持のためのシナリオが、原発60年運転のケースの線グラフで示されています。
(つまり、この線グラフは、原発でまかなうべき電力需要の想定曲線とみることができます。)
以下、福島原発の事故によって起こることを予想してみましょう。
・今回の福島原発の事故によって起こった一番大きな経済的損害は、原発が事故で廃炉となり、二度と使えなくなることそのものと言われるようになるでしょう。(もちろん健康被害については、もっとも多くの人に及ぼす影響ではあっても、電力会社の責任として賠償を支払うことは徹底的にしらばっくれるでしょうから経済的なものにはなりません。これは過去の公害訴訟の経緯でも明らかです。)
今回原発事故でシャットダウンした原発は9.7GWとされています。一千万kWの生産能力が失われて、そのうち、まだ使える(と電力会社が主張する)原発も、運転再開まで何年かかるか、しれません。
つまり、棒グラフの2011年の年が、縦軸の一メモリ分落ち込むという新たな動きとなりました。
・14基の新設そのものについては、与野党の新設計画見直し、発言が続いています。数年間は動きそのものが停滞するでしょう。
・60年の寿命延長も、どの面下げて言い出せるのか、ということになります。
こうして、突如現れた今年の急減とそれに続く、老朽化廃炉に伴う右肩下がりによって、想定される需要(=水平の線グラフ)と供給(新たな棒グラフ)の間には、くさび形の急激に拡大する需給ギャップが見えてきます。
これを、ピークオイルにならって、原発ピーク危機と呼ぶことができます。
参考:ピークオイルのグラフ
「ん」の字形に急激に拡大する需給ギャップにより、安くて安定した石油供給がありえなくなるという問題、石油資源の成長の限界が「ピークオイル」です。そして、今はまさにピークオイル時代です。
(ピークオイル問題は、日本では議論にもならずに来ましたが、昨年11月に、IEAは2006年が世界の在来原油の生産量ピークだった、今後の原油供給は高価でかつ不安定なものとなる、と認めています。つまりピークオイル問題が、2005年から08年にかけて続いた最高値1バレル147ドルという原油価格高騰の大きな要因であったことを認めたことになります。)
あるいは、福島原発事故は結果として、ポストピークオイルの危機を急速に具現化させた、と呼ぶこともできます。
ピークオイル危機と原発ピーク危機の複合危機に対して、官僚たちのエネルギー政策は、あまりにも無力です。
官僚たちが作って来た「Bau、Bussiness as Usual」はかつては安心と無関心をもたらすものでしたが、完全に破綻しました。
この問題と視点を抜きにした今後のエネルギー政策は、チェルノブイリ原発事故を引き金にして始まった、旧ソ連の崩壊と同じ規模の社会不安をもたらすことでしょう。
P.S.後日記
ISEP(環境エネルギー政策研究所)の試算を以下に紹介しておきます。
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