伊方原発の廃炉のために

2006年から「伊方原発のプルサーマル問題」として続けてきましたが、伊方原発の廃炉のために、に15年に改名しました。

本の紹介『第6の大絶滅は起こるのか 生物大絶滅の科学と人類の未来』を読む

2022-02-16 10:37:07 | 続・温暖化いろいろ

 少し以前、緑の党GJ mlで書いたもの。XRの言葉の由来にもなります。エクスティンクション=絶滅の話ですね。

ーーー

 せっかくなので書いておきますと、小倉の大学での専門は機械工学系で、1年だけ居た研究室は伝熱工学・ふく射熱物性(太陽熱利用関係)でした。
大学を出てから10年間ほど、某エアコンメーカー兼フロンガスメーカーの研究所にいて、ときには代替冷媒・新冷凍システムの調査やらをしたり、関連で地球環境問題としてのオゾン層破壊問題やら地球温暖化問題に触れていた、ということがあります。
こういう経歴だと人に何かを説明したり理解してもらう、ということのためには役には立たないことがよく分かる、という弁解をしておきましょう。

 それでも、注目していなかった別の科学のジャンル、考古学((汗)違いますね地質学)の中で、こういう本が出てきていることについてはかなり怖いものがあります。 


本の紹介 
「第6の大絶滅は起こるのか 生物大絶滅の科学と人類の未来」ピーター・ブラネン著 築地書館2019年

以下、序章から抜粋ーーー

 問題はここ1千万年の間、いや1億年もの間見られなかった変化を私たちは身をもって経験しているのだ。
「二酸化炭素の濃度が高い時代、中でも二酸化炭素のレベルが非常に急激に上昇した時代は明らかに大量絶滅と一致する」とワシントン大学の古生物学者でペルム紀末の大絶滅の専門家でもあるピーター・ウォードは書いている。ここに絶滅の推進
力がある。
 文明化がはっきり示しているように、岩に閉じ込められた大量の炭素を急速に大気中に送り出すのは巨大火山だけではない。人類は今、古代生物によって何億年もかけて地中深くに埋められた炭素をせっせと掘り起こし、地表にあるエンジンや発電所でいっせいに燃やしている…

 これは地質学によって近年明らかになった驚くべき新事実であり、現代社会にとって最も憂慮すべき行く末を示している。
地球史に記された5回の最悪なエピソードは、すべてこの惑星の炭素循環の極端な変化に関連するものだった。基本元素である炭素は生体と地質の貯蔵庫の間をゆっくりと時間をかけて行ったり来たりしている。火山ガスから大気中に散った二酸化炭素はやがて海中の炭素系の生物に取り込まれる。
それらの生物は死ぬと海底で炭酸塩の石灰岩になる。そうしてできた石灰岩が少しずつ地球の内部に押し込まれて熱で溶かされて貯蔵されていた二酸化炭素をまた火山によって大気中にまき散らされるその繰り返しだ。だから炭素「循環」と言われている。…

 研究者たちの間で続けられているこうした話し合いと、社会全般で広く取り上げられている話題との間には驚くほど大きな食い違いがある。気候変動を駆り立てる二酸化炭素の役割に関する最近の議論はその繋がりが理論上だけ、あるいはコンピュータモデルだけに存在すると思わせるようなものがほとんどだ。ところが私たちが進めている実験ー大気中に膨大な量の二酸化炭素を一気に投入するという実験は、実は地質学的過去にも何度も行われており、めでたしめでたしで終えることはありえない。

気候モデルに見られる満場一致の恐るべき予測に加え、この惑星の地質学的過去には二酸化炭素によって引き起こされた気候変動の事例史まであるのだから参考にするのが賢明というものだろう。

ーーー

 目次より関係のありそうなところを抜粋しておきます。

 

第1章 物語の始まり

第2章 オルドビス紀末の大絶滅

 気候を支配する二酸化炭素 60

 大気中の二酸化炭素と山脈の浸食と石灰岩 64

 酸素の増加で死滅した生き物たち 74

第3章 デボン紀後期の大絶滅

 陸上に進出した樹木が引き起こした木々 94

 超大陸パンゲアと侵入種ー生物多様性の喪失 119

第4章 ペルム紀末の大絶滅

 化石燃料を焼き尽くしたシベリアの洪水玄武岩 148

第5章 三畳紀末の大絶滅

 再び火を吹いた大地 181

 気候変動で傷ついた生き物たち 188

 消えたサンゴ礁 192

第6章 白亜紀末の大絶滅

 再び洪水玄武岩デカントラップ 242

 続く論争 247

 チクシュルーブ衝突が火山活動を誘発 253

第7章 更新世末の大絶滅

 人類が滅ぼした生物種はたったの800  287

第8章 近い将来

 気温はどこまで上昇するのか 305 

 2100年以降の世界 310

第9章 最後の絶滅

 地球は幸運な星なのか 335

 

●第2章 オルドビス紀末の大絶滅

 気候を支配する二酸化炭素 60より

“だが最後の最後になって、南極の位置にあったアフリカを覆う大氷河が急激に膨れ上がり海から水を奪ったことで海水面が100メートルほど下がってしまった。世界中の生き物の大半が大陸に続く浅い海で暮らしていた時代にあってそのように急激で大幅な海水面の下降はまさにこの世の終わりに匹敵する。

それまで住処としていた大陸に隣り合う広大な浅海は延々と続く荒れ果てた地面に変わり果て、後には崩れた石灰岩が風に舞う光景が残るばかりとなった。”

 

‘’このサンゴ礁から大きなひとかたまりを削り取って研究室に持ち帰り、そこでちょっとした地質化学の魔法をかけたフィネガンのチームは、オルドビス紀末に熱帯の海の水温が突然およそ5℃下がったことを突き止めた。5℃の変化は大量絶滅に結びつかないように思えるかもしれないが、岩石は異なる証言をしている。「この分野では、オルドビス紀末の大絶滅は気候変動と密接な関係があると言う点で、全体的に意見が一致しています」“

 

 大気中の二酸化炭素と山脈の浸食と石灰岩 64

“大量の二酸化炭素を素早く取り除いて、この地球全体のサーモスタットを壊す方法の1つは、熱帯地方の真ん中に突然、何千キロもの長さを持つ火山性の壮大な山脈を出現させるものだ。気温も湿度も高くて風化作用が最も激しい場所に、どんどん岩石を押し上げていく。マクドナルドは言葉を続けた。「要するに、風化させるための新しい岩の表面を次々に作るんです。で、新しい岩の表面を作る上手なやり方としては、山をとにかく実際に盛り上げて、それをどんどん削って、侵食し続ければいいわけですね」”

 

“そのような激しい岩石の風化作用が氷河時代へとつながる証拠はあるのだろうか?その証拠は見つかっている。岩石記録のストロンチウム同位体を調べると、地球の歴史で特別に風化作用が激しかった時期を探ることができる。例えば、現在も続いている氷河時代の場合には、インドがまずアジアに衝突してヒマラヤ山脈を空高く押し上げて風化作用を促すと同時に、ストロンチウム同位体の記録はめちゃくちゃに乱れている。マクドナルドは次のように言った。「衝突はちょうど南極の氷床ができ始めた頃に起きたんです。その時期の一致には大きな説得力があって、無視することなんかできません。じゃあ、それより前に赤道直下で生まれた、次に大きくて長い山脈はどれかと考えました。それにはオルドビス紀にまで遡る必要があります」”

 

“これまでに、大量絶滅の3つの要素が出揃った。生き物の世界が浅海を住処としていたこと、壮大な山脈が二酸化炭素を減らして地球を凍らせたこと、そして超大陸が南極をまたいでいたために氷を蓄える格好の場所となったことだ。だがこれが物語の全てではない。”

 

 酸素の増加で死滅した生き物たち 74

“フィネガンは腕足動物の種に関するデータベースを丹念に調べ、オルドビス紀に到来した氷河時代で最初に死滅したのは低酸素の環境に最もよく適応していた深海の種だという、驚くべき事実を発見した。”

“気温がはるかに高かったオルドビス紀の世界では、このような循環はもっと緩やかで、深海にそれほど多くの酸素が送られてはいなかっただろう。そんな時、いきなりアフリカに巨大な氷河が出現したために海水循環の強力なエンジンが始動し、大量の酸素が深海に送り込まれることになった可能性がある。”

 

“黒いシェールが化石記録の中に見つかると、それはSOSに近いことがある。酸素が危険なまでに減少しているという残酷な知らせだ。黒いのは死んだ海洋生物の炭素がいっぱいに詰まっているからで、生物の死骸が海底に沈んだが、そこで酸化つまり腐敗することができなかった。そしてそのまま生命のない無酸素の海底に蓄積していった。”

“オルドビス紀末に戻ってきた海がなぜこれほどの酸素欠乏に陥っていたのかは議論の的だが、その原因になった可能性がある要素の1つとして、アフリカの大陸氷河が急激に溶けて大量の水が海に流れ込んだ点を挙げることができる。真水は塩分を含んだ海水の上にたまるので、海の中が層状になり、深い場所の海水では酸素が不足する。”

 

 

●第3章 デボン紀後期の大絶滅

“ギルボアの化石の森によって始まった画期的な変化について、スタインのチームは「ネイチャー」誌に次のように書いている。「デボン紀中期までの樹木の登場は陸上生態系が大きく変化する前兆であり、風化作用の増加、大気中の二酸化炭素の減少……そして大量絶滅を始め、長期的な影響を及ぼす可能性を秘めている」”

 

 陸上に進出した樹木が引き起こした危機 94

“ギルボアの木は、実際にはただの奇妙で巨大な雑草だった。私たちが見た樹木だとわかる最初の木が出現したのは、デボン紀の中でももっと後で、アーケオプテリスの登場による。ほっそりしたヒマラヤ杉に似たこの木は、30メートルもの高さにそびえた。この見事な身長を支えるために、アーケオプテリスは世界で初めて地中深くまで届く根を備えている。その根は有機酸を分泌して原始の大地を掘り進み、大陸の岩石を物理的にも化学的にも攻撃して、繁殖するにつれて次々に岩を砕いていった。

 これらの樹木が最初の土壌を生み出し、土はやがて川に流れ込むと、最後には浅海にまでたどり着いて、海を先史時代の液体肥料で溢れさせた。 アーケオプテリスの王国は瞬く間に地球全域に勢力を広げたので、それらの樹木が岩石から解放した栄養塩が下流の海でブルームに拍車をかけ、現代の産業型農業用化学肥料と同じように、海の生き物の息の根を止めた。”

 

” 樹木が世界に広がっていくにつれて、大気中の二酸化炭素濃度は、最終的に90%以上も下がったと考えられる。さらに、世界初の森と土壌に閉じ込められた炭素に輪をかけて、栄養塩の流入によるプランクトンの大発生によって酸欠状態になった海にも、大量の炭素が埋められた。当然、こうしたすべての炭素貯留がやがて気候に、そして生命に、影響を与えることになる。

「デボン紀後期で最も大規模だった2回の大量絶滅事変は、急激な寒冷化と大陸氷河作用に関連していた」と、アルジオは言った。”

 

 超大陸パンゲアと侵入種ー生物多様性の喪失 119

” デボン紀後期の危機には、とても多くの要因があるように思える。樹木の広がり、氷河作用、火山活動、富栄養化と海の酸素欠乏、侵入種、その他の要素によって、地球システムの循環が急角度に変化した。殺しのメカニズムは、そんなに優雅なものではない。 だがおそらく、これは予想できることだ。「大量絶滅は地球の歴史上で数えるほどしか起きていないのだから、史上最悪の出来事に違いないわね。あらゆるものが揃う、あらゆる条件が揃う、そうすると大量絶滅につながる」。ローレン・サランはそう言った。”

●第4章 ペルム紀末の大絶滅

"デボン紀に恐る恐る陸に這い上がった魚は、この時までには陸上に定着し、2つの爬虫類の系統に枝分かれしていた。…驚くことにペルム紀の世界を支配していたのは(やがて哺乳類になる)後者のグループで、爬虫類の系統の大部分は世界で優勢を誇れる順番を待っている状態だった。この原始哺乳類の支配階級は、見慣れないむしろおぞましいと言える獣が生み出したパラレルワールドで、しなやかな体を持って威嚇する頂点捕食者や、超大陸パンゲアの水飲み場の周りに群れをなすサイほどの大きさで重い足取りの植物食動物など、多様多種多様な動物の集まりだった。"

 

"ペルム紀末にはシベリアで大地がひっくり返るほどの巨大噴火が起きて、何百万平方キロメートルもの範囲に溶岩が流出し、大気に火山ガスが充満した。とりわけ1つの気体が、地球史上最大の大量死を招く主要な死因として際立っている。研究者たちがこの過去最悪の大惨事を研究するのは、純粋に学究的な好奇心からではないし、病的好奇心からでさえない。ペルム紀末の大絶滅は、大気中に二酸化炭素を詰め込みすぎると何が起きるかの絶対的な最終版ー最悪のシナリオになる。"

 

"テキサス州グアダルーペ山脈にある、エルキャピタン。この石灰岩の岬は、実際には2億6000万年前のペルム紀のサンゴ礁でできている。この古いサンゴ礁を作り上げた大昔の生き物たちカイメン、サンゴ、腕足動物、ウミユリ、フズリナ、アンモナイトなどの種-は、ペルム紀末までにほとんどすべて絶滅に追い込まれた。"

 

"ワシントン大学の古生物学者ピーター・ウォードは2007年に書いた著書「緑の空の下でアンダーアグリーンスカイ」で、二酸化炭素の排出は官僚にとっての規制上の頭痛の種だけでなく、地球の歴史全体を通して実際に「絶滅の推進力」になってきたと論じている。…ウォードの話から、私は二酸化炭素による地球温暖化が政府のスーパーコンピューターにある気候モデル上のシミュレーションだけでなく、地球が遠い過去にすでに何度も行ってきた実験であることを教わった。さらに衝撃的だったのは、化石記録上で最も過激な絶滅に、地球温暖化がかかっているかもしれないと言う事実だった。「それは再び起きているのだろうか?」と、ウォードは「緑の空の下で」で問う。「ほとんどの人はそう思っているのだが、遠い過去を訪ねて、それを現在及び未来と比較する人は、まだほとんどいない」

 

 化石燃料を焼き尽くしたシベリアの洪水玄武岩 148

"いわゆるシベリアトラップは私たちが知っている噴火とは全く異なる形式の噴火によって、しかも想像を絶する規模で生まれた。見栄えのする現代の成層火山とは異なり、シベリアトラップの噴火は「大陸洪水玄武岩」として知られるものだ。

ペルム紀の末、洪水玄武岩がロシアの5,000,000平方キロメートル以上の地域を覆いしばらくシベリアを混乱状態に陥れた。…

1991年にはカリフォルニア大学バークレー校の地質年代学者ポール・レンヌが、シベリアトラップの噴火はペルム紀末の絶滅とほぼ同時期に発生したと算定し、小惑星の衝突という説に夢中になっていた当時の研究者たちを驚かせた。"

"彼(オスロ大学の地質学者ヘンリクスヴェンセン)が描き出した全体像は、ペルム紀末の火山活動に新たな脅威を付け加えるものだった。シベリアトラップのマグマは、地球の奥深くから上昇してきた時、ツングースカ堆積盆に貫入した。この堆積盆地は、古代の森を起源とする炭酸塩、頁岩、石炭、さらに干上がった過去の海から生じた巨大な塩の層で満たされていた。場所によっては、これらの堆積物が12キロメートル以上の厚さに積もっていた。…マグマが上昇して塩の層にぶつかった時、行き詰まって横に広がって大規模な溶岩のシルを形成し、それがペルム紀に地下に埋まっていた古代の石炭石油天然ガスに火をつけたと、スヴェンセンは言った。そしてードッカーン。…スヴェンセンが調査した管には粉々に砕けた岩石がいっぱい詰まっていた。燃えるような高熱のガスが地下から急上昇して地表で激しく爆発し、直径800メートルに及ぶクレーターを残した後の姿だ。これらの大爆発は大気中に二酸化炭素とメタンを急激に放出したはずだ。メタンは二酸化炭素よりも強力な温室効果ガスで、分解し、二酸化炭素に変化する。この化石燃料の燃焼こそが、絶滅と同時期に起きた炭素同位体の大幅な揺れを引き起こし、さらに絶滅そのものまで引き起こしたと、スヴェンセンは説明する。"

 

"現在、人類は1年に40ギガトンという信じられない量の二酸化炭素を放出しておりおそらくこの数値は地球史の過去三億年ーお気づきのごとくペルム紀末の大絶滅も含んだ期間ーで最速のペースだろう。地球上にあるすべての化石燃料を最後の1滴最後のひとかけらまで燃やし尽くすと、およそ5000ギガトンの炭素が大気中に投入されることになる。.

だが、ペルム紀末の大絶滅期に放出された炭素の量も人類に負けず劣らず異例のもので、壊滅的な1万ギガトン人類がもやせる量の2倍から計り知れない48,000ギガトンまでの範囲と推定されている。その結果ペルム紀末の大絶滅の時点とその後に推測される気温も信じられない高さだ。…熱帯地域では海水温が現在と同じ位の25度から40度へと上昇した可能性がある。これは風呂のお湯と同じ温度で、多細胞生物は単純に、このような地球規模のジャグジーでは生きていけない。"

 

 シベリアトラップの再現 154

"溶岩がツングースカ堆積盆にあった1500メートル以上の厚さを持つ塩のたい積層を焼却処分にした時、この爆発物のレシピは恐ろしい化学物質の毒入りカクテルを作り出しただろう。ハロゲン化ブタン、臭化メチル、塩化メチルを始めとした物質が生じ、それらはオゾン層を破壊したと考えられる。スヴェンセンによれば致命的な紫外線UV -B波の放射量も、もうそれ以上は死の要因など必要としない世界に追い打ちをかけていた。"

"(シンシア・ローイらが)広範囲のペルム紀末の地層から、風変わりな奇形の胞子と花粉粒を発見しており、それらは紫外線UV -B波によって生じた変異の結果の可能性がある。"

"だが、二酸化炭素急増の成り行きは温暖化だけには留まらない。二酸化炭素は地球を熱するだけでなく、海水と反応して酸性度を高め、海から炭酸塩を奪う。多くの動物が -サンゴプランクトンまたアサリや牡蠣のような殻を持つ生き物のように-骨格を形成するために狭い範囲の水素イオン濃度の値と豊富な炭酸塩を必要としているから、短期間で大量の二酸化炭素が海に投入されれば命取りだ。現代の海洋のペーハーの値は急速に低くなっていて産業革命の開始時期に比べると海水の酸性度がなんと30%も高くなっている。地球温暖化の山ほどの証拠には動じない人たちも、海洋の酸性化には反論の余地は無い。わかりやすい科学だからだ。

私たちの世界にとって最も恐ろしいのは、スタンフォード大学の古生物学者ジョナサンペインの考えによると、ペルム紀末の海で最も重要な死の要因が海洋の酸性化だった点だ。この時簡単に言えば、ほとんどすべての生き物が死んだ。"

 

"古生物学者は、自分自身の立てた仮説が現実に起きるところをその目で見ることなどめったにないが、人新世の現在の海は、ペインとその仲間にとってありがたくない概念実証のようなものになっている。今では海で暮らす種の4分の1を支えているサンゴ礁は、控え目であっても二酸化炭素排出のシナリオが続けば、絶望的な状況に陥りそうな気配だ。だが、食物連鎖の最下層はすでに、新たに人間が出した二酸化炭素の溢れる海で悪戦苦闘している。現在南氷洋の海水の酸性化が進み、南極の食物連鎖の底辺の1部を担う翼足類が殻に穴の開いた状態で見つかっている。2050年までには海水の酸性化によって南氷洋全体が翼足類の住めない場所になり、生態系は破滅的状況に陥るだろう。この話題は今のところほとんど注目されていないが、今後数十年間の海洋酸性化の予測は、確実に世界を変える可能性がある。"

その次の節では硫化水素仮説が出てきますが以下略。

●第5章 三畳紀末の大絶滅

 再び火を吹いた大地 181

 ”2013年にオルセンとテレンス・ブラックバーンの率いるチームがオルセンの青春時代の化石発掘の舞台となった絵のような断崖絶壁が形成された年代を推定し、三畳紀末の大絶滅と同時期だったことを突き止めた。

モロッコ及びカナダのファンディ湾で採取した岩石コアと、ニューヨーク市からジョージ・ワシントン・ブリッジを渡った先の賑やかなハイウェイ分岐点の下で採取した岩石コアを分析し、この大量絶滅が中央大西洋マグマ分布域の噴火と同時に起きただけでなく、地質学的な時間でほとんど瞬時に起きたと断定したのだ。 それまでになく正確な放射性炭素年代測定法を用いたチームは、最初の大噴火が2億156万年前に起きたと判断し、それは世界的な絶滅の時期とぴったり一致していた。この大陸洪水玄武岩は、当時60万年をかけて4回にわたって噴出した。”

 

 気候変動で傷ついた生き物たち 188

 ”化石の植物が二酸化炭素の急増を証明する。植物は、葉の表面にある小さな気孔を通して二酸化炭素を吸い込んでおり、気孔の数が多いほど吸い込みやすくなるが、その反面、乾燥して枯れやすくなる。

だから、植物は、気孔の数を最小限に保っていて、吸い込むのに足りるだけの数を用意し、必要以上には増やさない。 二酸化炭素濃度の高い時代には、気孔の数を少なくしても、二酸化炭素を豊富に含んだ空気を吸って十分に生きていける。古生物学者ジェニファーマッケルウェインは2億年前の化石植物を調べ、古代の葉にある気孔の数が三畳紀末の大絶滅を境に急減していることを発見した。火山ガスによる二酸化炭素の氾濫に対応するためだったに違いない。”

 ” ペルム紀末ほど極端ではなかったにせよ、三畳紀末の大絶滅は「グレートダイイングジュニア」と呼べるほどのもので、火山から大気への膨大な炭素投入と、その結果生じた致命的な超温室効果が原因となった。だが、三畳紀末の太絶滅は、私たちがこれから経験する数世紀にとって、ぞっとするような鋳型の役割を果たしているのかもしれない。「このときの噴火による変化のペースは、現代の地球温暖化と海洋酸性化のペースによく似ている」とオルセンは言った。”

 

 消えたサンゴ礁 192

 ”「三畳紀の末期、サンゴ礁は、実に豊かに栄えていて、その典型的な例はオーストリアアルプスとドイツアルプスです」とマーティンデイルは話す。これらの山脈を作り上げているサンゴ礁は、ヨーロッパがまだパンゲアの東海岸にあった熱帯のテチス海を囲むように集まっていた頃に形成されたものだ。 

マーティンデイルは次のように言った。「三畳紀とジュラ紀の境界に達した後、およそ30万年もの間、岩石記録にはサンゴ礁もサンゴのかけらもありません」。「三畳紀とジュラ紀の境界に起きた事変の注目すべき点は、現代のサンゴに対する過去最大の打撃だったことです。だから重大なんです。」”

 ” 三畳紀末の海で何が起きていたかを理解するためには、現代のサンゴ礁系を見ておくことが役に立つ。それは1980年代初期に比べて、おそらく30%は縮小してしまった(地質学的に見れば驚くほどの短い時間で、一瞬の落雷のようなものだ)。またサンゴの成長速度はここ20年間で20%落ちていて、大規模な白化現象ー海水温の上昇によって、サンゴが栄養分を得るのに頼っている体内の藻類を失うことで白く見える現象ーが日常的になっている。 人類は現在、1年に2ppmずつの割合で大気中の二酸化炭素濃度を高めていて、ある画期的な研究によれば、この傾向が続いて海洋の酸性化がさらに進めば、世界のサンゴ礁は今世紀半ばまでに「急速に崩壊してがれきの山になる」。

産業革命が始まって以来、現代の海はもう大気中の二酸化炭素に反応して、酸性度が30%も高まった。貝殻、サンゴの骨格、様々な種類のプランクトン、そしてイカの頭の中の平衡石のようなものも、炭酸カルシウムでできている。…だが、過度の二酸化炭素は海水の酸性度を高めるだけでなく、化学的性質の変化によって炭酸塩を生物の利用できない重炭酸塩に閉じこめて海から奪い、動物が貝殻や骨格を作れなくしてしまう。

 酸性度が高く、炭酸塩の少ない海水の中では、サンゴの石灰化は難しくなる。

2007年の調査によれば、オーブホーググルトベルグ率いる研究者たちが450から500ppmの二酸化炭素濃度でサンゴ礁の破壊が石灰化の速度を上回るようになると推定した。言い換えれば、これがサンゴ礁とその存在に依存している動物たちの崩壊が本格的に始まる濃度になる。

現在の炭素排出の傾向がそのまま続けば、今世紀半ばまでにはこの濃度に達しそうだ。

それに加え、サンゴは温度の変化に極めて敏感だ。水温が異常に高くなると、褐虫藻との関係が崩れ始め、サンゴは苦し紛れに褐虫藻を体外に追い出してしまうと考えられている。

海洋酸性化のゾッとするような現実が科学者たちの間で詳細に理解されるようになってきたのは、まだここ10年余りのことだ。地球温暖化もさることながら、化石記録をよく理解している人たち、また海の未来を考えている人たちは、海洋酸性化を最も悲観している。”

 

 

●第6章 白亜紀末の大絶滅

 再び洪水玄武岩ーデカントラップ 242

 ” ケラーがそう断言できるのは、ただ何にでも反対意見を差し出すと言う辛抱強い精神の証などではない。驚いたことに10億年で最大の小惑星が地球を襲ったのとほとんど同じ時期に、インド西部の地下3000メートル以上の地点から溶岩が溢れ出していたのだ。このインドの火山活動はどうもなく大規模なもので、米国本土全体を200メートルの深さの溶岩で覆うことができるほどだった。”

”ケラーが主張しているのは、二酸化炭素が原因となったK-Tでの激しい気候変動だ。それはナミビア沖の深海をはじめチュニジアやテキサスから採取したコア試料で得た、化石プランクトンの同位体から解読したものだとしている。”

 

 チクシュルーブ衝突が火山活動を誘発 253

” 地震の規模とそれが火山の噴火を引き起こせる距離の間には、どうやら関係があるらしい。リチャーズの同僚のマンガがあらましを話していたのはそのような関係についてだった。チクシュルーブで起きたと思われる地震の規模に近い実際にはありえないマグニチュード11にまで計算上の数値を上げてみると、マンガが計算した誘発距離は実質的に地球全体になった。つまりマグニチュード11の地震は世界のどこにある火山でも噴火させる力を持つ。 チクシュルーブの衝突によって起きた規模の地震なら、インドの平凡な火山をこの世の終わりを引き起こせるほどの存在に変えることができたはずだ。”

”だが、彼の同僚のポール・レンヌはそんなに弱気ではなく、次のように言った。「もう何年も前から、一体どうしてと言うことがー他の大量絶滅は、全く衝突なんかと関係していなくて、大規模な絶滅は全てデカントラップみたいな洪水玄武岩に関係しているって言うのに、ーこの奇妙な一致はどうしてなのか、大きな謎だったからね」「チクシュルーブは鉄砲で、デカントラップは弾丸だったのかもしれないよ。」”

 

 

後日、また追加していきたいと思います。この年表は別の本から。

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ご本の紹介の感想 (渡辺尚)
2022-02-05 20:16:44
小倉様。徳島の渡辺と申します。
プルサーマル問題の時より、貴ブログを時々拝見いたしております。今回、生物史の本のご紹介がありましたので、最近のサイトで以下のものをご紹介したく思い投稿させて頂きました。
名前は「こども革命独立国」というもので、URLは次のとおりです。
https://shiosta.hatenablog.com/
ヤフーからもグーグルからもこの名称で検索できます。これは小説の形式をとっていますが、3.11以降の次世代に示唆に富んだものと思われ、核時代の人類の進化について特有の仮説が述べられているようです。よろしければご一読ください。
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