バンマスの独り言 (igakun-bass)

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この曲が好き! Vol. 22 「ラシアンズ - Russians 」  スティング 

2013年06月02日 | この曲が好き!
今まで聴いてきた膨大な量の音楽の中でも特に大好きでかつ思い出深く、そして自分の音楽スタイルやライフ・スタイルに少なからず影響を与えた曲を一曲づつ紹介していくシリーズの22回目です。

80年代のスーパーバンド「ポリス」が半ば解散状態になってすぐ、リーダー格のヴォーカル&ベースのスティングが主にジャズ畑で活躍する若手のミュージシャンを集めてソロ・アルバムをリリースしました。

それが「ブルー・タートルの夢」(1985:The Dream of the Blue Turtles)です。

当時、ロック・トリオのポリスはリーダーのスティングがジャズやクラシックというそれまでとは対照的な音楽を志向しつつあり、彼はその幅広い音楽性を自ら証明したいという欲求があったのだろうと僕などは想像してしまうのですが、同時に世界に認められたポリス・サウンドから距離をおきたいという気持ちも自然に発生していたんだろうと思ったのです。

最近の日本は近隣諸国(韓国・中国・北朝鮮)と領土や歴史問題そして安全保障面でいろいろと難問をかかえていますが、ちょっと前までは「東西冷戦」などという別の意味で緊張していた時代もあったわけで、今回紹介するスティングのこの曲は、いまでは少しピントがズレてしまっていますが、当時はけっこうシリアスな歌詞をもった曲だったのでした。

このアルバムが世に出た時代は、お隣の韓国は「竹島~~~!」と騒いでいたわけでもなく、中国も「尖閣諸島~~~!」のことなんて忘れていたような時で、日米としては当時「ソヴィエト」と呼ばれた巨大な東側の国家がバーチャルな感じで「脅威」と思っていたのです。今の若い人には「ソヴィエト」とか「フルシチョフ」という固有名詞はなじみが無いでしょうが、僕が若い頃はこれらの名前は誰もが知っているものでした。

で、スティング・・・彼はそんな東西冷戦時代に対し非常に強い批判的メッセージを世に投げかけるアルバムを作ったわけです。それが「The Dream of the Blue Turtles」

アルバムに収録されている曲はほとんどが重苦しいメッセージを持ち、どう聴いてもポップス系の音楽ではなかったのです。

その中でもこの「ラシアンズ」(ロシア人)はとりわけ僕には印象に残った音楽でした。

悲しいまでに冷たく愁いを帯びたブルーな曲想はそのちょっと今では言い過ぎの面もある表現の
強いメッセージを詰め込んでありました。


Russians

In Europe and America, there's a growing feeling of hysteria
Conditioned to respond to all the threats
In the rhetorical speeches of the Soviets
Mr. Krushchev said we will bury you
I don't subscribe to this point of view
It would be such an ignorant thing to do
If the Russians love their children too

How can I save my little boy from Oppenheimer's deadly toy
There is no monopoly in common sense
On either side of the political fence
We share the same biology
Regardless of ideology
Believe me when I say to you
I hope the Russians love their children too

There is no historical precedent
To put the words in the mouth of the President
There's no such thing as a winnable war
It's a lie we don't believe anymore
Mr. Reagan says we will protect you
I don't subscribe to this point of view
Believe me when I say to you
I hope the Russians love their children too

We share the same biology
Regardless of ideology
What might save us, me, and you
Is if the Russians love their children too


中でもこんなフレーズが印象的でしたし、僕などは当時から<エっ?ちょっとどうよ・・・>と思えるような部分でもありました。

We share the same biology, regardless of ideology

 I hope the Russians love their children too

この前の1983年には、アメリカ大統領レーガンが、一般教書演説で、ロシアのことを「悪の帝国」と非難し、デタントから対決ムードへとシフトしました。そんな流れの中で、サイボーグのようなロシア人チャンプと対決するロッキーなども製作されています。つまり、当時の西側でのロシア人に対するイメージは、冷酷で非情な人種といったものでした。そういったロシアに対するメッセージが「ロシア人も自分の子供を愛することを願う」と繰り返して歌う部分に表れています。

繰り返しますが、今となってはこのメッセージが古臭いものととらえられてしまうそうですが、当時はこれが現実でした。

さらにこの曲で特筆すべきは曲中でロシアの作曲家プロコフィエフの「キージェ中尉」(本当の発音はキジェーだそうです)の第2曲「ロマンス」のメロディーが巧みに使われていることです。
プロコ大好き人間の僕は初めてこの曲(ラシアンズ)を聴いた時、驚き、感動しそしてスティングは天才だ!と心からそう思いました。

プロコのメロディに合わせてスティングは「ラシアンズ」を後から作ったのではないかとさえ思っています。
重く冷たい北国の厚い雲の下に流れる凍てついた大河のようなどうにも切ない感情がシリアスな歌詞とハスキーなスティングの声とあいまってすごい世界を語りかけています。

いずれにしても彼はこのファースト・ソロ・アルバムでポリスの世界から離れました。
そして翌年、ロシアのチェルノブイリであの忌まわしい事故が起きるのです。

今回はアルバムより「ラシアンズ」を取り上げましたが、最後のトラックもまた素晴らしいものでした。
「FORTRESS AROUND YOUR HEART」
なんといっても曲の盛り上がりが今までの重く沈みがちな気分を心地良いものに変えてくれます。ちょっと5音階風なバックに軽く合わせたような歌がありますがその後のサビはまさに元気になるような気持ちが良いサウンドが続きます。
最後のこの曲にどこか有難さみたいなものを感じてしまいました。


RUSSIANS


FORTRESS AROUND YOUR HEART


参考までに
プロコフィエフ 「キージェ中尉」より「ロマンス」

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4 コメント

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感動しました☆ (meguu)
2014-03-04 00:00:22
はじめまして。
STINGのことを調べてるうちに、こちらのサイトを見つけました。
昨日行ったコンサートで、チェロの演奏の「ENGLISHMAN in NY」を聴いて、久しぶりにオリジナルを聴いて、やっぱりSTINGステキだな、なんて思いながら他の曲も聴いてみたら、この「RUSSIANS」に聴き入ってしまいました。
当時リアルタイムで聴いてましたが、まだ中学生で詩の内容までは、詳しくわかりませんでしたが、フルシチョフ、レーガン、冷戦のことを歌ってるのかな?なんて、勝手に考えてましたが、声とメロディーが好きで良く
聴いてました。
それで、こちらで、プロコフィエフというロシアの作曲家の曲が流れていると知り、びっくりしました。
失礼ながらプロコフィエフは知りませんでしたが、STINGがこんな手の込んだ曲作りをしてた事に、感動しました!
やっぱりSTINGは素晴らしいミュージシャンだと、改めて思いました。
丁寧に説明してあったので、お礼を言いたくコメントさせていただきました。
ありがとうございました(≧∇≦)
返信する
はじめまして (バンマス@発行人)
2014-05-30 15:38:39
>meguu さま

2月から今日までこのブログの更新をしませんでした。それであなた様の投稿に気が付きませんでした。申し訳ありません。

さて、この頃のスティングはかなり政治的な内容の濃い歌を作っていましたね。
ポリスの音楽とはアプローチこそ違うものの、本質は変わっていませんでした。

ただこの曲の例が示すように、かなり広範な音楽を自分のものとして取り込んでいることは分かります。

コメント、とてもうれしく読ませていただきました。
ありがとうございました!
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Unknown (Phc TW)
2019-04-06 23:05:40
僕もRussians, Children crusadeなどがだいす大好き 、20世紀の現実映しちやったと、Stingが天才だって思います。
返信する
確かに天才的ですね (バンマス@発行人)
2019-04-08 21:37:28
>Phc TW さま

ご訪問、コメント、ありがとうございました。
このころの彼の楽曲はとても社会性のある辛辣な批判や政治的な内容が多かったように思います。加えて、バックのミュージシャンをジャズ系にしたことにより以前にもましてその音楽に力が足されたと印象でした。
こういう骨のあるポピュラー系のミュージシャンが少なくなりましたね。寂しいことです。
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