いつの頃からなんだろう?
この時期の夜道がこんなに騒々しくなったのは・・・・。
あの超暑かった夏が手のひらを返したように秋と入れ替わった今日この頃ですが、みなさんは今の時期の夜道を歩いていて、そのちょっと騒がしい<鳴き声>が頭上の木々の梢から聞こえてくるのを気にとめていますか?
フィリリリー、フィリリリーと鳴く連続した笛のような高い音。
いつのまにか都会では初秋の風物詩となりつつある、秋の虫「アオマツムシ」の大合唱がこれなんです。
僕がまだ十代後半の頃、ガールフレンドとR教大学の裏手の夜道を彼女を家に送るために歩いていました。季節は今ごろ。古びたコンクリートの塀のすきまからコオロギのか弱い鳴き声があちらこちらから聞こえてきました。
あたりはもうとっくに日が暮れていて街灯がぼんやりと灯っていました。
塀沿いにある大きな木の影がその光によって消される場所が一定間隔で続いていて、その細い裏道はリズミカルでもありました。
やさしいコオロギの声はあたりをはばかるかのようにそれは静かに、しかし延々と鳴き続けていました。
時は経ち、先日ちょっとした用があってその道の近くを通りがかったので、車からちょっと降りて、数百メートルを歩いてみました。もうとっくに彼女とどんな会話をしたかなんて忘れてしまいましたが、コオロギが鳴く声を聞けばあの頃の思い出がよみがえってくるようなセンチメンタルな気分だったんです。
その道は、道幅も塀も街灯の間隔もあまり変わっていない様子でした。
が、肝心の悲しげに鳴くコオロギの声が、うるさい外来種の仲間によって頭上からかき消されていたのです。
そのまま心は満たされずにその場を後にしましたが、こんどは家の周りの桜並木でまたこの虫たちの大合唱。
とにかく車の窓を締め切っていても漏れ聞こえてきます。
都会の夜はここ2~30年で完全に喧騒型へと変わりました。
静かな秋の虫(昔からいる日本の秋の虫)のあの控えめな物悲しい声は、ハードロックな外来の秋の虫<アオマツムシ>によって完全にかき消されました。
羽の色が地味なメス
この虫は外国よりの帰化昆虫と考えられています。一番最初に見つかったのは東京都内で1898年だそうですが1970年頃より急に増え、東京などではほとんどの街路樹に棲みつくようになっています。8月末より甲高い笛の音のような大きな声で連続的に鳴くのです。都会では最も多い鳴く虫で、今や都会の秋を告げる風物詩となってしまいました。
<アオマツムシ>
鮮やかな緑色のなかなか綺麗なコオロギです。普通、コオロギの仲間は黒か褐色をしているのですが、このアオマツムシは木の上にいるため葉と同じ色をしているのでしょう。おもに夜、夏から秋にかけて、街路樹など比較的高い木の上で鳴きます。もともと外国から来た虫らしく、かつてはほとんどいなかったのですが、いまでは東京付近ならごく普通に鳴き声が聞かれるようになりました。姿は美しいものの、声は非常に大きく、情緒のかけらも感じられない、というのが正直なところです。他のコオロギの繊細な調べもこの声にかき消されてしまうので、秋の虫の声を楽しむにはアオマツムシが鳴き止む夜遅くまで、あるいは秋が深まるまで待たなければなりませんね。
アオマツムシが輸入植物にまぎれて日本にやってきたのはおよそ100年前。東京のど真ん中、赤坂で確認されて以来、街路樹をつたいながら1980年には奥多摩にまで到達しました。今では関東以西から九州まで勢力を広げています。このように、アオマツムシはいわば都会の秋の虫なのです。
向かうところ敵なしという感じのアオマツムシにも、過去には何度か危機がありました。それが1923年の関東大震災と第二次世界大戦の東京大空襲です。この時の火事で、東京の街路樹の多くが消失してしまいました。住みかを失ったアオマツムシは日本で絶滅の危機に瀕したのです。
また、戦後の補給物資にまぎれて侵入した、有名な害虫のアメリカシロヒトリを駆除するために行われた大量の農薬の散布も、アオマツムシに打撃を与えました。けれども、これらの困難にも打ち勝って、アオマツムシはしぶとく勢力を拡大していったのです。
この先どこまでアオマツムシの進軍が続くのかわかりませんが、最近になって、樹上生活をするアオマツムシが地上の草むらに降りてきつつあることが確認されました。ところが、地上には同じ仲間のコオロギ類が棲んでいます。これまで、樹上と地上という棲みわけができていた両者の間に、ニッチ(生態的地位)をめぐる争いが起こらないともかぎりません。生態系を揺るがす大事件と発展しなければいいのですが。
都会で虫の声が聞けるのは悪いことじゃありませんが、秋の虫の声がアオマツムシの声ばかりになってしまったら淋しいですね。
しかしあのかわいい鳴き声(童謡でチンチロリン♪)をもつ<マツムシ>と同じような名前を付けた人のセンスを疑いますね。
在来種のあの秋を代表するような鳴き声とは全く違うこのパワフルさ!
魚を例にとればブラックバスが鮎を駆逐するようなものです。
正直、あの鳴き声を聞いていて、あ~いい季節になったなぁ、なんてロマンティックな気分にはなれないのです。
夜道の風はやさしく吹くようになったけれど・・・・。
この時期の夜道がこんなに騒々しくなったのは・・・・。
あの超暑かった夏が手のひらを返したように秋と入れ替わった今日この頃ですが、みなさんは今の時期の夜道を歩いていて、そのちょっと騒がしい<鳴き声>が頭上の木々の梢から聞こえてくるのを気にとめていますか?
フィリリリー、フィリリリーと鳴く連続した笛のような高い音。
いつのまにか都会では初秋の風物詩となりつつある、秋の虫「アオマツムシ」の大合唱がこれなんです。
僕がまだ十代後半の頃、ガールフレンドとR教大学の裏手の夜道を彼女を家に送るために歩いていました。季節は今ごろ。古びたコンクリートの塀のすきまからコオロギのか弱い鳴き声があちらこちらから聞こえてきました。
あたりはもうとっくに日が暮れていて街灯がぼんやりと灯っていました。
塀沿いにある大きな木の影がその光によって消される場所が一定間隔で続いていて、その細い裏道はリズミカルでもありました。
やさしいコオロギの声はあたりをはばかるかのようにそれは静かに、しかし延々と鳴き続けていました。
時は経ち、先日ちょっとした用があってその道の近くを通りがかったので、車からちょっと降りて、数百メートルを歩いてみました。もうとっくに彼女とどんな会話をしたかなんて忘れてしまいましたが、コオロギが鳴く声を聞けばあの頃の思い出がよみがえってくるようなセンチメンタルな気分だったんです。
その道は、道幅も塀も街灯の間隔もあまり変わっていない様子でした。
が、肝心の悲しげに鳴くコオロギの声が、うるさい外来種の仲間によって頭上からかき消されていたのです。
そのまま心は満たされずにその場を後にしましたが、こんどは家の周りの桜並木でまたこの虫たちの大合唱。
とにかく車の窓を締め切っていても漏れ聞こえてきます。
都会の夜はここ2~30年で完全に喧騒型へと変わりました。
静かな秋の虫(昔からいる日本の秋の虫)のあの控えめな物悲しい声は、ハードロックな外来の秋の虫<アオマツムシ>によって完全にかき消されました。
羽の色が地味なメス
この虫は外国よりの帰化昆虫と考えられています。一番最初に見つかったのは東京都内で1898年だそうですが1970年頃より急に増え、東京などではほとんどの街路樹に棲みつくようになっています。8月末より甲高い笛の音のような大きな声で連続的に鳴くのです。都会では最も多い鳴く虫で、今や都会の秋を告げる風物詩となってしまいました。
<アオマツムシ>
鮮やかな緑色のなかなか綺麗なコオロギです。普通、コオロギの仲間は黒か褐色をしているのですが、このアオマツムシは木の上にいるため葉と同じ色をしているのでしょう。おもに夜、夏から秋にかけて、街路樹など比較的高い木の上で鳴きます。もともと外国から来た虫らしく、かつてはほとんどいなかったのですが、いまでは東京付近ならごく普通に鳴き声が聞かれるようになりました。姿は美しいものの、声は非常に大きく、情緒のかけらも感じられない、というのが正直なところです。他のコオロギの繊細な調べもこの声にかき消されてしまうので、秋の虫の声を楽しむにはアオマツムシが鳴き止む夜遅くまで、あるいは秋が深まるまで待たなければなりませんね。
アオマツムシが輸入植物にまぎれて日本にやってきたのはおよそ100年前。東京のど真ん中、赤坂で確認されて以来、街路樹をつたいながら1980年には奥多摩にまで到達しました。今では関東以西から九州まで勢力を広げています。このように、アオマツムシはいわば都会の秋の虫なのです。
向かうところ敵なしという感じのアオマツムシにも、過去には何度か危機がありました。それが1923年の関東大震災と第二次世界大戦の東京大空襲です。この時の火事で、東京の街路樹の多くが消失してしまいました。住みかを失ったアオマツムシは日本で絶滅の危機に瀕したのです。
また、戦後の補給物資にまぎれて侵入した、有名な害虫のアメリカシロヒトリを駆除するために行われた大量の農薬の散布も、アオマツムシに打撃を与えました。けれども、これらの困難にも打ち勝って、アオマツムシはしぶとく勢力を拡大していったのです。
この先どこまでアオマツムシの進軍が続くのかわかりませんが、最近になって、樹上生活をするアオマツムシが地上の草むらに降りてきつつあることが確認されました。ところが、地上には同じ仲間のコオロギ類が棲んでいます。これまで、樹上と地上という棲みわけができていた両者の間に、ニッチ(生態的地位)をめぐる争いが起こらないともかぎりません。生態系を揺るがす大事件と発展しなければいいのですが。
都会で虫の声が聞けるのは悪いことじゃありませんが、秋の虫の声がアオマツムシの声ばかりになってしまったら淋しいですね。
しかしあのかわいい鳴き声(童謡でチンチロリン♪)をもつ<マツムシ>と同じような名前を付けた人のセンスを疑いますね。
在来種のあの秋を代表するような鳴き声とは全く違うこのパワフルさ!
魚を例にとればブラックバスが鮎を駆逐するようなものです。
正直、あの鳴き声を聞いていて、あ~いい季節になったなぁ、なんてロマンティックな気分にはなれないのです。
夜道の風はやさしく吹くようになったけれど・・・・。
今日はかなり蒸しますね。台風の影響でしょうか。
秋の虫の風情は日本人独特の感性からくるものだと思います。僕のNY時代にアメリカ人と秋の虫について話していたら(似たような秋の鳴く虫は向こうにもいます)「うるさいだけ!」と一様に言っていました。
その時はこんなヤツらと一緒にいたくない、と心底思ったものです。
ちなみにこのアオマツムシは中国南部の出だそうです。
(中国語はうるさいからなー、と妙に納得)
虫の世界のエイリアン状態ですね。
鈴虫やコオロギが蛍のように貴重な種類にならなければいいですが・・・・。
雅な秋の虫が思い出を引き立ててくれるなんて、素敵ですね。