天愛元年

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新元号『天愛』元年にスタート

喝采

2020-01-11 21:27:22 | 日記

 朝3時過ぎに尿意で目が覚めたので、さっとラジオを点けNY相場を聞いたら、週末だからか50ドル余りダウが下げていた。漏れる直前に用を足し、布団に戻ると、見事な声の歌を流していた。誰だか確認してから寝直そうと思っていたら、ちあきなおみだった。ただでさえ聞き逃せない歌手なのに、アナウンサーがまた憎たらしいことに、賞金の出ないクイズですとか言って、ちあきなおみさんが4歳の時に習っていたのは何でしょうかと設問を出した。そんな下らないことに引っ掛かからなくても良かったのだけれど、一タップダンス、二将棋、三バイオリン、四髭ダンスと、問題を聞いてしまった。四を除外して、あの渋いちあきなら将棋かもしれないし、あの音程の寸分狂いの無さからバイオリンかもしれない、と考えだすと答えが待ち切れなくなった。しかし、厭らしいアナウンサーは、考え中のあなたにカバー曲2曲をお贈りします、と焦らしやがった。まず答えを言えよと腹が立ったけれど、『どうせ拾った恋だもの』『東京の花売り娘』に、つい聞き入ってしまった。正解は意外にもタップダンスで、これをマスターして、5歳で日劇の舞台で踊っていたと解説していた。さあお休み、とスタンドを消したら、先ほど聞き逃した方のために、福袋として3曲をまたお贈りするというので、気になってしまった。目を瞑りながら聞くと、何と『喝采』が流れてきて、逆に目が冴えた。歌謡曲で一番好きで、自分の十八番ではないか。次いで『矢切の渡し』、さらに『黄昏のビギン』と続いた。もう寝ているどころではない。美空ひばりを濾過して、脂肪分を取ったような涼しい声に聞き惚れた。隠微な魅力のほくろさえ浮かび上がってきた。もう、司会の為すがままにされた。『夜が笑っている』『柿の木坂の家』『カスバの女』と、みんな聞くことになった。特に、『夜が...』の歌いだしの「酒があたいに惚れたのさ」に痺れてしまった。星野哲郎作詞、船村徹作曲と紹介していたけれど、同じ捨て鉢でもこんなロマンのある昭和33年に戻りたい気がした。「昔の約束ァ、どうするッてさ」「夢があたいに絡むのさ」なんて名人の章句は、箪笥とともに消えてしまっている。根性の悪い司会者は、こんな難しい曲をみなさんもカラオケで挑戦してみてください、と煽っていた。歌のセリフのように、「きらいさ、嫌いさ」と歌い返してやりたくなった。結局4時まで付き合わされ、ダウは40ドルほど安に変わっていた。ようやく安眠しようとしたら、大村崑ちゃんの泣き笑い人生インタビューが始まって、5時すぎまで引っ張られた。
 ラジオに生活を滅茶苦茶にされ、頭がぼーっとするので、映画でも見ることにした。今週の新聞、週刊誌に、韓国映画『パラサイト 半地下の家族』を激賞していたので、これにした。一つなど、4、5人の評者が軒並み最高点の星五つを付けていた。褒めるのに人間がこんなに表現力豊かになれるものかと感心した。しかし、自分の鑑賞力の無さにうち萎れた。視点の低さを暴露するようで恥ずかしいけれど、『万引き家族』の方が相性に合う。なんか松岡美優の可愛らしさや、樹木希林の味わい、安藤サクラの色っぽさに、より親しみが持てた。どっしょ、映画に娯楽と痛快性しか求めていないのだから、あしたは『フォード vs フェラーリ』を観に行くことにした。

拙くも
いつものやうに
うた謳ふ
詠へるふりして
歌ってるだけさ