BELOVED

好きな漫画やBL小説の二次小説を書いています。
作者様・出版社様とは一切関係ありません。

大事なものは目蓋の裏 1

2024年05月19日 | ツイステ×薄桜鬼クロスオーバー腐向けパラレル二次創作小説「大事なものは目蓋の裏」
「薄桜鬼」「ツイステッドワンダーランド」二次小説です。

制作会社様とは一切関係ありません。

BL・二次創作が苦手な方はご注意ください。

リドルとアズールが純血の鬼設定です、捏造設定ありですので、苦手な方はご注意ください。

「ねぇアズール、ひとつ聞きたい事があるんだけれど・・」
「何ですか、フロイド?」
「俺達、何処に居んの?」
「それはこっちが聞きたいですよ~!」
アズール=アーシェングロットとその幼馴染であるジェイドとフロイド=リーチ兄弟は、見知らぬ場所を先程から全速力で駆けていた。
事の始まりは、ナイト=レイヴン=カレッジ内にある鏡舎で三人が取引先へと向かおうとした所、何かのトラブルが発生し、気づけば見知らぬ場所に居たのだった。
「ここ、金魚ちゃんの実家でもねぇし、学校でもねぇじゃん!」
「確かに、妙な建物がありますね。それに、先程から僕達を追い掛けている方達は、一体どなたなのでしょう?」
「そんなの知るか!」
「待て小僧~!」
「逃がすか~!」
三人を執拗に追い掛けていたのは、偶々彼らと目が合っただけの、変な身なりをした男達だった。
「これでは埒が明きませんよ、お前達、何とかなさい!」
「え~、無理言うなよ!」
「全く、しょうがないですね。」
アズールの言葉を聞いた双子は寮服の胸ポケットからマジカルペンを取り出し、男達に向かって攻撃魔法を繰り出したが、何も出なかった。
「え?」
「は?」
「こうなったら、仕方ありませんね・・」
ジェイドはマジカルペンを握り締めたまま、男達の内一人に回し蹴りを喰らわせ、もう一人の側頭部をマジカルペンで殴りつけた。
「暴力・・やはり暴力で全ては解決出来ます。」
「ジェイド、すげ~」
フロイドがそう言って笑っていると、突然三人の前に白髪の化物が現れた。
「ジェイド、フロイド、やっておしまいなさい!」
「了解~!」
フロイドは口端を上げて笑うと、化物の頭を潰した。
「何こいつ、チョ~弱ぇじゃん。」
「フロイド、余所見してはいけませんよ!」
「わかっているってぇ~」
ジェイドとフロイドが化物を倒していると、向こうから揃いの服を着た男達がやって来た。
「あれぇ、君達、何をしているの~?」
「ゲッ、何かやばそうな奴が来た。」
「少し厄介な事になりそうですね。」
「どうしました、二人共?」
ジェイド、フロイド、アズールが一斉に背後を振り向くと、そこには癖のある茶色の髪を揺らしながら、翡翠の瞳で自分達を睨みつけている男の姿があった。
「へぇ、君達が“あれ”を倒したんだぁ。」
「あの、申し訳ありませんが退いて頂けないでしょうか?僕達は先を急いでいるので・・」
「はいそうですかと、僕が逃がすと思う?」
男はそう言うと、白刃を煌めかせた。
「ふぅん、アズール、こいつ絞めていい?」
「お待ちなさいフロイド!何か考えないと・・」
拳を鳴らすフロイドを制したアズールは、あの化物が自分に向かって来ている事に気づいた。
「アズール、危ない!」
慌てたフロイドがアズールに駆け寄ろうとしたが、化物はアズールの眼前に迫っていた。
だがその化物の爪がアズールに届く前に、一人の青年が化物を一撃で斬り伏せた。
「あ~あ、僕が倒そうと思ったのに。はじめ君、仕事早いね。」
「俺はやるべき事をやっただけだ。それよりも総司、こいつらは・・」
「さぁ・・でも、“あれ”を見ちゃったから、見逃す訳にはいかないなぁ。」
「彼らの処遇を決めるのは俺達ではない。」
アズールがフロイドの元へと向かおうとしていると、冷たいものが首筋に押し当てられる感触がした。
「逃げるな、背を向ければ斬る。」
アズールが振り向くと、そこには一人の男が立っていた。
月光に照らされた、美しい黒髪に紫の瞳、雪のような白い肌を持った彼は、まるで―
「アズール、何をしているんです?」
「ジェイド、フロイド、この方達に従いましょう。このままここで揉めても埒が明きません。」
「えぇ~、こいつら絞めたかったのに。」
「フロイド、アズールの言う通りにしましょう。」
「つまんねぇの。」
フロイドはそう言って舌打ちして不貞腐れたが、赤髪の恋人の姿を見るとすぐに笑顔になった。
「あ~、金魚ちゃんだぁ!」
「フロイド、どうして君がここに?」
「僕達も居るんですがね、リドルさん。」
「ジェイド、それにアズールまで・・一体、何で・・」
「それはこちらの台詞です。さぁリドルさん、行きましょうか。」
妙な所でアズール達と会ったリドル=ローズハートは、アズール達と共に浅葱色の服を着た男達とその場を後にした。
「トシ、その子達は?」
「今から話す。」
アズール達が黒髪の男に連れられた所には、数人の男達が座っていた。
「土方君、話をする前に、まず自己紹介をしないといけませんね。」
「そうだな。俺は新選組副長・土方歳三。俺の右隣に居るのが局長の近藤勇、近藤さんの隣に居るのが総長の山南敬助だ。みんなは、山南さんと呼んでいる。」
「皆さん、宜しくお願いしますね。」

こうして、アズール達は新選組で暮らす事になった。

―リドル、“あの事”はお友達には知られていないのね?
―はい、お母様。
―そう、なら良かった。リドル、あなたはもっと自分の魔力を管理しないといけないわ。
―はい、お母様・・

また、あの夢を見ていた。

リドルがオーバーブロットし、ウィンターホリデーに実家に帰省した際、母と交わした会話。

―あなたは、・・なのよ。”それ“を自覚して頂戴。

母が決めたルールは守らなければ。
そうしなければ。

「うっ」
リドルは急に胸の上が鉛のように重くなり、思わず呻いた。
ふと目線を上に向けて見ると、そこには自分に覆い被さっているフロイドの姿があった。
身長191センチの彼に覆い被さられ、リドルは必死に藻掻いてフロイドから逃れようとしたが、彼の身体はビクともしなかった。
「ウギィ~!」
「うるせぇな・・あ、金魚ちゃん?」
「首をはねてやる!」
リドルの怒声で、新選組屯所が揺れた。
「皆さん昨夜は良く眠れましたか・・フロイドさん、どうなったのですか、その顔は?」
「おやおやフロイド、その様子だとまたリドルさんにちょっかいを出しましたね?」
ジェイドはそう言うと、フロイドの顔に残る赤い手形を見た。
「リドルさんはどちらへ?」
「彼なら土方君の所です。」
「へぇ~・・」
「フロイド、顔が怖いですよ。」
大広間でアズール達が朝食を食べている頃、リドルは副長室に呼ばれていた。
「そうか。つまりお前達は、ここではない世界に居て、ここへ来てしまったと・・」
「はい。僕達が居た世界は、魔法が使えたのですが、この世界は魔法が使えないのです。」
「そうか・・まぁ、これからお前達の処遇を考えなきゃなんねぇが・・」
土方はそう言うと、眉間に皺を寄せた。
「あのデカい図体の奴らをどうするのかが問題だな。」
「ジェイドとフロイドの事は、アズールに任せておけば大丈夫だと思います。」
「アズールっていうのは、あの眼鏡の奴か?あの二人とどんな関係なんだ?」
「アズールとジェイド達は、幼馴染なんです。」
「朝飯の前に呼び出して悪かったな、もう行ってもいいぞ。」
「はい、では失礼します。」
リドルが副長室から出て大広間に入ると、フロイドが彼に抱きついて来た。
「金魚ちゃん、サメ方と何話していたの?」
「サメ方?」
「土方君の事ですよ。何でも、フロイドさん土方君の事が怖いみたいで・・」
「だってあの人、苦手なんだもん。海の中に居た頃、天敵と出くわした事を思い出しちゃってさぁ・・」
「海の中、とは?」
山南がフロイドの言葉を聞いて戸惑った顔をしていると、そこへ帳簿を持ったアズールが入って来た。
「フロイド、またリドルさんにちょっかいをかけているのですか?」
「アズール、それ何?」
「新選組の帳簿です。先程朝食の準備をしていたら、少し気になる事がありまして・・」
「気になる事?」
「食材が余っているというのに、その半分が腐っています。それで、食材をどう仕入れているのか気になりましてね。」
「アズール、相変わらずだね~」
フロイドはそう言って笑いながら、道場へと向かった。
「あ、やっと来た。」
そう言ってフロイドを迎えたのは、新選組一番隊組長・沖田総司だった。
出会った時から、フロイドと沖田はウマが合わないらしく、互いの目が合えば、「何、斬られたいの?」と沖田が言えば、「あ、絞められてぇの?」と、フロイドが返す始末だ。
「絞めてやるから、覚悟しろよ!」
「へぇ・・」
木刀で激しく打ち合う音が道場から聞こえ、ジェイドは洗濯物を干す手を止めた。
「どうしたんだ、ジェイド?」
「いえ・・まだフロイドと沖田さんがやり合っているなと思いまして・・」
「同じ顔をしていても、性格は全く違うんだなぁ~」
「ええ。」
ジェイドが藤堂平助とそんな事を話していると、道場の方からリドルの怒鳴り声が聞こえて来た。
「おやおや、何かあったのでしょうか?」
「行ってみようぜ!」
ジェイドと平助が道場へと向かうと、そこには顔を真っ赤にしてフロイドに怒鳴るリドルの姿があった。
「何で、僕だけが女物の着物なんだ!?」
「だって、仕方無いじゃん、金魚ちゃんは小さいんだから。」
「ウギィ~!」
「そんなに怒らなくていいじゃん~」
フロイドはそう言って唇を尖らせると、ジェイドはそれを見て溜息を吐いた。
「一体、何の騒ぎです?」
「ジェイドさん、いい所に。実は、リドルさんの着物を副長が選んで下さったのですが、どれも女物でして・・」
新選組三番隊組長・斎藤一が状況をジェイドに説明すると、ジェイドは噴き出した。
「何だ、そんな事でしたか。」
「ウギィィ、みんなまとめて首をはねてやる!」
「金魚ちゃん、落ち着いて・・」
「おい、一体何の騒ぎだ?」
「副長・・」
「おや土方さん、いい所に。」
沖田がフロイドに殴りかかろうとしているリドルを押さえていると、そこへ土方がやって来た。
「土方さん、リドルさんはあなたが選んだ着物が気に入っていないみたいなのです。」
「そうか・・リドルには色々見繕っていたんだが、男物には似合う物がなくてな・・済まなかった。」
「いいえ、事情を知らずに怒ってしまって、申し訳ありませんでした。」
リドルはそう言って土方に頭を下げると、道場から去っていった。
それから数日後、アズールは渋面を浮かべながら副長室へと入った。
「失礼致します、副長。実は、外出許可を頂きたいのです。」
「外出許可?理由は?」
「実は、ジェイドが一週間分の食糧を食い尽くしてしまって・・このままでは、僕達飢え死にしてしまいます。」
アズールは溜息を吐いて紫の着物の袖口で口元を覆った。
「わかった、許可しよう。」
「ありがとうございます。」
アズールはジェイドとフロイドを連れ、ジェイドが食べ尽くした一週間分の食糧を買いに、初めて京の町へと出た。
「何もかも僕達が住んでいる世界と違いますね。」
「えぇ。」
「ね~、これ重てぇんだけど~」
「フロイド、文句言わないで運びなさい。」
京の町は、アズール達にとって別世界そのものだった。
「な~、もう帰らねぇ?」
「そうですね。ですがその前に、昼食を済ませましょうか?そこに丁度いい店がありますし。」
「賛成~!」
「そうしましょう。」
アズール達は、買い物帰りに小料理屋で昼食を取る事にした。
「ジェイド、それ何杯目なの?」
「十杯目です。このおうどん、きのこが沢山入っていて美味しいです。」
そう言いながらうどんを啜るジェイドを、アズールとフロイドは呆れ顔で見ていた。
「アズール、見て下さい!きのこ雑炊にきのこの炊き込みご飯・・これは、頼むしかありませんね!」
「いい加減になさい、これ以上食べてどうするつもりですか!?」
「ねぇジェイド、俺帰りてぇんだけど・・」
「アズール、お店のご主人にきのこ雑炊のレシピを聞いて来ます!」
「もう帰るぞ!」
店に居座ろうとするジェイドをアズールとフロイドが二人がかりで店から引き摺り出した。
「あぁ、もっと食べたかったのに・・」
ジェイドは嘘泣きしながらアズールとフロイドを見て、彼らと共に屯所へと戻った。
「お帰り、遅かったね。」
「ええ、ジェイドが色々と寄り道をしていたので、帰りが遅くなりました。」
「そう。で、そのジェイド君は?」
「アズール、フロイド、お待たせしました!」
「ジェイド、お帰りなさい・・」
「うわ、土臭ぇ!」
「ただいま戻りました。」
そう言いながら満面の笑みを浮かべたジェイドは、背負子に大量のきのこが載った籠を積んでいた。
「お前、それは何ですか?」
「きのこです。小料理屋の店主から余ったきのこを頂きました。」
「それだけ貰ったんだ、こんな量を食べきれると思っているのか!?」
「僕が全部食べるからいいでしょう?」
「いい訳ないだろうが!」
アズールの怒声が、屯所に響いた。
「うわぁ、すげぇ量のきのこだな!」
厨に入って来た平助は、大量のきのこを見てそう叫んだ。
「今日はきのこの炊き込みご飯にしようと思います。」
「え~、俺いらない!」
「フロイドがそんな事を言うなんて、悲しいです、しくしく・・」
ジェイドは嘘泣きをしながらきのこの炊き込みご飯を作った。
「お、今日は美味そうなきのこの炊き込みご飯だなぁ・・」
「僕が作ったのですが、お口に合うかどうか・・」
「いやぁ、美味い!」
近藤の言葉を聞いたジェイドは、頬を赤らめた後俯いた。
「アズール君、リドルちゃん、土方さんが呼んでいるよ。」
「わかりました、すぐ行きます。」
夕食の後、アズールとリドルが副長室に入ると、土方は渋面を浮かべていた。
「失礼します。」
「お前達か・・」
土方の口から、アズールとリドルは信じられない言葉を聞いた。
「僕達が、島原に潜入ですか!?」
「あぁ。」
「お言葉ですが、何故僕達が島原に潜入―しかも女装して潜入しなければならないのでしょう?」
「うちは男所帯で、しかもガタイが良い奴ばかりだ。」
「・・それで、僕達に白羽の矢が立ったと・・」
「まぁ、そういう事だ。」
「わかりました、引き受けましょう。但し、後で“対価”を頂きますよ・・と言っても、もう頂いていますけれど。」
「は?」
アズールは口端を上げて笑うと、土方にある物を見せた。
それは、“豊玉発句集”だった。
「沖田さんに見せて頂きましたが、とても素敵な趣味をお持ちですね。」
「返せ・・」
「潜入捜査が終わり次第、お返ししますよ。」
そう言ったアズールは、何処か嬉しそうな顔をしていた。
こうして、リドルとアズールは島原に芸妓として潜入する事になった。
芸妓として完璧に“化ける”為、リドルとアズールは短期間で舞や琴・三味線などをマスターした。
「わたしの酒が飲めんのか?」
「こんな安酒如きで僕の心を買おうなんて片腹痛いですよ、僕に袖にされたくなければ高い酒を頼みなさい!」
「この程度で僕を満足させようだなんて、良い度胸がおありだね?」
島原に土方が来ると、置屋の女将が彼を出迎えた。
「二人の様子はどうだ?」
「それが、贔屓のお客様が増えてしもうて、二人共忙しそうに働いていますえ。」
「そうか。」
土方が女将とそんな事を話していると、奥の座敷の方から誰かが言い争うような声がした。
「離して下さい!」
「良いではないか。」
座敷へと土方が向かうと、そこには金髪紅眼の男と争っているアズールの姿があった。
「お前ぇ、何者だ!?」
「この者を、我妻として貰い受ける。邪魔をするなら斬り伏せる。」
「悪いが、そいつをてめぇに渡す訳にはいかねぇなぁ。」
「ほぉ・・」
土方と金髪の男が火花を散らしていると、そこへ一人の大男がやって来た。
「風間、こんな所に居たのですか、帰りますよ。」
「やめろ、離せ!」
「ご迷惑をかけて申し訳ありません。」
大男はそう言って土方とアズールに一礼した後、金髪の男を座敷から引き摺り出していった。
「怪我はねぇか?」
「はい。」
潜入捜査を終えたリドルとアズールは、副長室に呼ばれた。
「句集は返しますよ。」
「ありがとう。それとアズール、お前に絡んで来た金髪の男とは全く面識がないのか?」
「はい、あの方とは初対面です。」
「そうか。島原では、倒幕派の浪士達の動きに目立ったものはなかったな。」
「そうですね。ですが、おかしな噂を聞いたことがあります。」
「おかしな噂?」
「ええ。何でも、不老不死の“妙薬”を売り捌いている者が居るとか・・」
「不老不死の“妙薬”ねぇ・・」
土方はアズールの言葉を受け、渋面を浮かべた。
「心当たりがあるのですか?」
「あぁ。ちょっとついて来い。」
土方に二人が連れられたのは、山南の部屋だった。
「山南さん、ちょっといいか?」
「ええ。どうぞお入りください。」
「失礼致します。」

アズールとリドルが山南の部屋に入ると、そこには謎の液体が入っているフラスコが置かれていた。
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