抱っこ法の「抱っこ」とは、
心のぬくもりを伝えあう、
『心の抱っこ』の象徴です。
子供が持っている感情に直接働きかけ、
情緒的な発達を促したり、
人とのかかわりを伸ばしたりすることができます。
それは、障がいを持つ子供の心の発達を、
伸ばすためにもとても有効です。
障がい児と抱っこ法をご説明するために、
私の息子が抱っこ法と出会った時のお話をします。
私の息子が6歳のころの話です。
息子のじょうは、自閉症という障害を持っています。
その頃のじょうは、子供の声や鳴き声、機械音など、
たくさんの苦手な音があり、
外にいるときは常に耳をふさいで、『あ~』と声を出していました。
(こうすると、自分の声が耳の中に響いて、外の音が聞こえません)
また、こだわりも強く、
道順や、電気のつける順番、
通常あるべきものへの執着等々、
日常の生活にかなりの支障が見られていました。
そして、少しでも苦手な音を聞いてしまったり、
こだわりを守れないと、大パニックが起こります。
このころは、まだ抱っこ法に出会っていなかったので、
パニックを起こしたときに、どう対応していいのか全く分かりませんでした。
なので、精神科の先生や、友達から聞いたとおりに、
パニックになったら、静かな場所に移動してあげ、
落ち着くのを待つ。
落ち着いたら好きな本などを私気分転換を図る。
という方法をとっていました。
ですが、一度パニックになると、自分の頭を壁に打ち付け、
自分の顔をひっかき、
いつも頭はぼこぼこ、顔は血だらけでした。
私は息子の行動が理解できず、
ただ、ただ、この不憫な息子をかわいそうと思うのと同時に、
息子を理解できない自分がとても嫌でした。
その後、ホワイエの『ゆうゆう言葉の教室』で療育に通うようになり、
そこで、七野先生から
抱っこ法のセッション(援助者に抱っこ法を受けること)を受けました。
もともと、横抱きは大の苦手で、とても嫌がるのですが、
セッションで横抱きにした時、
案の定、大泣きをしました。
ハラハラしてみていると、
七野先生が語りかけていきます。
その語りかけに反応して、じょうが泣いたり暴れたりします。
でも、初めて見た私には、
嫌がるじょうを抱っこしているから泣いてるんじゃ…
かわいそう…と思っていました。
「横になるとなんだか苦しそうね。横になることで、何か嫌だったことってある?」
七野先生の問いかけに、私が答える前にじょうが、
「おっぱい~ミルク~」と叫びました。
「そうだったの、ミルクのことで、何か苦しさがあるの?」
という七野先生の問いかけに、はっとしました。
「そういえば、じょうは赤ちゃんのころ、
入院をして、母乳からミルクに変えました。
また、乳糖不耐症といわれ、
特殊ミルクを飲んでいました。」
という話になりました。
その話を始めると、火がついたように大泣きになります。
まるで、『そうなんだ、それがつらかったんだよ』といわんばかりです。
なんて不思議なんだろう。
もう6年も前の、まだ何もわからない赤ちゃんの事なのに、
何でこんなに、泣いて訴えるんだろう…
私はとっても不思議な気分でした。
でも明らかに、じょうが何かを訴えています。
その後、いくつかの話をして、
七野先生がじょうを慰めてくれ、
セッションは終了しました。
あんなに泣いて大丈夫かしらと心配する私をよそに、
じょうは、なんだかすっきりして、にこにこです。
『よくわからないけど、じょうにとっては抱っこ法はとても気分がよくなるものなんだ』と、
分かりました。
では、次回に、この続きを紹介します。
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