私が、「障害を持つ方の心のケアは何のためにするんだと思う?」
と聞かれて答えるとすれば、
「その人が持つ心をピカピカに輝かせるお手伝いをするためかな?」と答えます。
「ピカピカに輝かせる?」ってどういう意味か分かりませんよね~
では、一人の障がいをもつ方のお話をします。
R子さんは、28歳の女性の方で、
自宅に住んでいて、お昼はお仕事をする作業所に通っていました。
R子さんは、何か心配事や困ったことがあるとき、
人や物に危害を加えてしまします。
ある日、朝からとっても怒った顔つきをしていました。
作業所の職員が、不機嫌の理由を探していると、
どうも、大切な傘がなくなっていたようです。
職員がいくら探してもないので、
たぶん、作業所の中にはないようです。
また、自宅にもなく、どうやら誰かが間違って持って帰ってしまったようです。
その傘は、R子さんがお母さんに買ってもらった、
大切な傘だったようです。
しばらく一生懸命我慢していましたが、
とうとう、ガマンの気持ちがあふれてしまい。
職員の腕を噛み、机を倒し、その辺のものを投げました。
その後、自分の指に、かぶりつきました。
すぐに職員は、R子さんの手を両脇から抱え、横たわる形になりました。
これは、R子さんが自分の体を傷つけるのを防ぐとともに、
職員や、ほかの利用者さんを傷つけるのを防ぐためです。
そのまま、R子さんが動かす手と同じ強さで、体のお話を始めていきました。
R子さんの力が強くなるとしっかりと持ち、
ゆるくなりと、力を緩めます。
すると、R子さんの感情の爆発が、
体のお話しによって発散されていきます。
それと同時に、「傘がない~」
「悲しいよ~」
「大事な傘なのに~」
「誰が持って行ったの」
「返してよ!」
という風に、R子さんの気持ちを、
職員が代わりに言葉に出します。
これを、気持ちの代弁といいます。
気持ちの代弁をすると、
その気持ちにぴったりとあてはまると、
とても体が大きく反応します。
まるで、体で「そうなのよ。私はそれが悲しいの!そういう気持ちなのよ」
と言わんがばかりです。
そうやって、職員の代弁とともに、体の話を進めていきました。
30分くらい話をしていると、
急に体の力がふっと抜けました。
表情がとても生き生きとしています。
そこで、持っていた手を離し、
横に並んで座ってゆっくりとした時間を過ごしました。
すると、とても落ち着いた表情で、
自分の口から
「傘返せ~」
「くそ~」
と声を出しました。でもその表情はニコニコ顔。
『傘がない』という悲しい出来事に
雨雲が立ち込め、どしゃ降りの雨が降っていた心が、
【心のケア】の中で、お話をしていくうちに、
真っ暗だった雨雲の後ろから、
本来、R子さんの心に持っている、
ピカピカに輝く心が出てきたような感じがします。
でも、ピカピカの心は、今出来上がったものではなく、
もともとR子さんの心の中にあったものです。
心のケアによって、苦しい気持ちを発散したり、
心が整理されることによって、
本来持っていたピカピカの心が前面に出てきたんですね。
その後、R子さんは、職員とゆったりした時間を過ごした後、
通常の作業に戻ることができました。