社会課題解決2020

実に10年ぶりにブログリニューアルです。ここでは主に社会の課題解決、SDGs関連を取り上げて行きます。

定額給付金の支給決定を受けて・・再度「米百俵の精神」

2009-03-05 00:40:29 | Weblog
 2009年3月4日、とうとう衆院で3分の2の可決で定額給付金の支給が議決された。
それを受けて比較的小規模な町村では既に住民に手渡しで支給したりと工夫がなされている。

 定額給付金の目的についてこれまで二転三転の説明をしていた麻生総理も最終的には「目的が景気刺激ということで(高額所得者の)私も受け取る」ことを正式表明した。FNNの世論調査では「景気対策として適切ではない」と回答した人が76・9%、『ばらまき』政策で好ましくない」が78・7%に上っているが、実際に支給されるとなるとほとんどの人が「もらう」と答えていると言う。

 もらえるのであればもらう、でもそういうやり方はいかがなものか・・これが
現代社会の多くの一般人の認識であることがわかる。

 これから1から2ヶ月で定額給付金の支給の結果が各地から報告されると思うが、その政策目的通りに、国民が思い切って消費に使い、さらに消費の誘引剤になることを願う。

そしてある一定期間が経過したらその費用対効果を検証して将来の教訓を抽出する
政策評価を政府や自治体は行うべきである。

 ところで物資に恵まれている現代人はばらまき政策について冷ややかに見ているのに対して物資に恵まれてなかった頃の人たちは必ずしもそうでなかったようだ。その逸話が米百俵物語。

戊辰戦争に敗れた越後長岡藩に見舞いとして送られた百俵の米を、藩幹部の小林虎三郎が「米を皆に分けろ」と迫る藩士に対して、「1日か2日で食潰して何が残るのだ。後世に残るものに使おう」と説得し、米を売却して得た資金で学校を設立したという話である。

このことを政策評価的に考えると、「誰を対象に、何を意図して、何に反映させるか」ということになる。最終的な反映先は「住民が誇れて安心して暮らせるまちづくりの実現」である。これは「その時点の住民満足度の向上」とは異なる。

長岡藩の例では、米を皆に分け与えることはその時点での住民満足を実現する最優先の施策であった。もし当時、住民満足度調査が行われていれば、「住民が最も望む施策は即時に米を皆に分けること」との結論だっただろう。実際にそのような声が大半だったと言われている。

しかし小林虎三郎は、そうしたバラマキ政策を選ばずに人材育成施策を選んだ。もし当時、政策評価が導入されていれば、「現状の住民を対象に、現状の飢餓を解消すると言う意図は、短期的には充たされる。しかし長期的には住民の行政依存をさらに進め、結果として究極のまちづくりには結び付かない。」との評価結果であっただろう。

小林が主張した人材育成施策の目的は「未来の住民」を対象に、「自尊心を持って逸材になってもらう(誘導)」と言う意図で、「人づくりによるまちづくり」に結び付けると設定出来る。米のバラマキの目的とは対象も意図も異なるのである。

小林の考えを最後は受け入れた長岡藩士であるが、彼らはトップダウンに従ったわけではない。当初は当然の如く米のバラマキを主張したが、長岡藩の家訓である「常在戦場」を思い出した。常在戦場とは、「いつも戦場にいる気持ちで事に当たれ」と言う武士の心得である。現代流で言えば「いつも公務にいる気持ち」、つまり公務員倫理であり、まちづくりに向けて住民を誘導する「舵取り」役の立場を貫くということである。

つまり自分達はどういう位置にいるべきか、納税者、受益者、住民自治の主役、既得権保持者といった様々な立場の住民に対してどう向き合うのかという基本理念である。

米百俵の売却代金で間もなく、国学、漢学などを教える充実した国漢学校が建設された。ただし単にハード整備の公共事業に止まらなかった。それによって住民に教育の重要性が理解浸透されたのである。それは米百俵売却を単に美談に終わらせたくないという自尊心があったのではないかと見る。国漢学校と前後して住民による読み書き、算術を教える私学校が設立された。さらにその後、士族と住民の融和と経費節減の目的で、2つの学校が合併となり、長岡学校(現在の長岡市立阪之上小学校と新潟県立長岡高校の前身)となった。

学校施設や駅前駐車場、文化ホールや道路など施設を単に整備することが投資的事業ではない。建設時は国が面倒を見てくれるので負担は少なくとも、維持管理段階では一般会計に負担をもたらす経費的事業になるだけである。

むしろそれによって受益者となる住民がいかに住民自治の主役として、その事業の意図を正しく理解し、後世に伝えるかである。要は、施設に投資するのではなく、住民に投資するのである。

長岡学校のように住民がそのことをある意味ではプレッシャーとして受けとめ、それを危機意識と前向きな改革改善行動に駆立てる政策評価こそが現在の政府や自治体に求められるのではないだろうか。

参考文献:「米百俵 小林虎三郎の思想」(長岡市役所庶務課)


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