劇作家、平田オリザさんが語るコミュニケーション論。
2~3年くらい前に日本語教育関係のシンポジウムで平田オリザさんの講演を聞いたことがあったんですが、そのときはとにかく話がおもしろくて説得力があった印象が記憶に残っています。そのあとで、実は内閣官房参与とか、阪大のコミュニケーションデザインの仕事とかやっててけっこうすごい人だと知ったわけなんですが、特にここ最近ではいろんなところで名前をみかけるようになった気がします(書店で著作が平積みになってたり、津田マガで特集インタビューやったりとか)。
本書は決して学術的に筋が通っているものではなく、ご本人が言うように、コミュニケーションを「その程度のもの」ととらえたうえでわりと直感的に書かれています。それこそエッセイとも呼べるのかもしれませんが、そこで出てくるエピソードはわかりやすくておもしろいし、そこから導き出される現代コミュニケーションの問題点やそれに対する主張も、けっこうストンと頭に落ちてくる感覚でした。
なかでも大枠に限って言うと、「コミュニケーション能力のダブルバインド」と「協調性から社交性へ」というあたりは、いまいち「コミュニケーション能力」というもの実態がよくわからないことの原因や、どういう方向に持っていけばそれが解決できるかということが端的に書かれていたように思います。
それから、コミュニケーションの育成過程にも注目するという点では、学校教育に対する主張もはっきりしていておもしろかったです。
<私自身は、もはや「国語」という科目は、その歴史的使命を終えたと考えている>(p.59)
と言い切って、初等教育では「表現」と「ことば」という科目に分けるという提案とか。
演劇を授業に取り入れるっていうのも、冗談じゃなくもっとやってみたらおもしろいんじゃないでしょうかね。