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いろいろレビュー(旧サイト)

本と映画とときどき日記

スキージャンプ・ペア

2014年02月16日 | 映画(ドキュメンタリー)

羽生結弦が金メダルを取って、ソチ冬季五輪真っ盛りの今日この頃(といっても、実は全然見ていないのですが……)。それに関連してなのか、Huluでプロモートされていた『スキージャンプ・ペア』をなんとなしに見てみました。

シュールコメディっぽいことはなんとなく紹介コメントとかで予想していたんですが、実際は予想を上回るおもしろさでした。
いやー、びっくり。というか、そもそも「スキージャンプ・ペアって何??」という感じですね。

まるでNHKスペシャルのような手の込んだドキュメンタリーを装っており、案内人が谷原章介というのも、なんだか本当にありそうで全然違和感ない。何も知らない人が「ほいっ!」ってこれ見せられたら、それこそほいほい信じてしまいそうです。

特に前半はそのドキュメンタリー調の色合いが濃く、教授とかもっともらしい外国の博士とかが出てきて「ペアジャンプ」を科学するという、一見まじめな内容(よく見ると完璧に荒唐無稽なんですが)。しかし中盤、なぜか猪木が出てくるところから急激にボルテージが上がり始めて、競技シーンでCGが入ったあたりからはもうオフリミット状態。最後は爆笑でした。

いいですねー、こういうくだらないの。

SENNA

2012年05月02日 | 映画(ドキュメンタリー)

アイルトン・セナの追悼ドキュメンタリー。
意外にも公開は2010年とごく最近で、セナが94年に亡くなっていることを考えると、かなり時間を経てから制作された映画のようです。

ブラジル出身の一人の青年だったセナが、F1の世界で3度のワールドチャンピオンに輝き、これ以上ない栄光を手にするサクセス・ストーリー。
一方で、チームメイトでライバルだったアラン・プロストとの確執や、F1界の政治性に翻弄される暗部も描かれており、その光と闇の葛藤を炙り出すような構成になっています。

もっとも印象的だったのは、冒頭での「レースには政治と金がつきまとう」といった発言と対をなす形になっていた、最後のインタビュー・シーン。

「叶うなら'78か'79年に戻りたい。何の制約もない純粋なレースをしていた頃に」

レーシング・シーンの頂点まで登り詰めたあとで、F1デビュー前、まだカートレーサーだったころを振り返る様子は、稀代のヒーローならではの果てしない寂しさを感じさせます。

サンマリノ・グランプリでの事故で、34歳という若さで他界したセナ。
コーナーに向かってほぼ直進したまま、200km/時を超える速度でクラッシュ。
オンボードカメラの映像を含め、その様子は驚くほど克明で、それこそ映画のワンシーンのような劇的さでした。

あと余談になりますが、何度か出てくるジャパン・グランプリの様子も、ちょっとした驚き。
当時は鈴鹿サーキットにこれだけの日本人が押し寄せて熱狂していたんですね。

ザ・コーヴ

2011年08月28日 | 映画(ドキュメンタリー)

2009年にアメリカで公開され、日本では昨年、その偏向的な内容が物議をかもした反捕鯨ドキュメンタリー映画『ザ・コーブ』。
なかなか興味深い作品でした。

イルカ救出のため、アメリカ人のクルーたちが大がかりな計画と準備を仕込み、
ほぼ盗撮に近い形でイルカ漁の真相を暴こうとする様子を追った内容。
カメラに向かって大声をあげる和歌山の漁師たちや、イルカの血で真っ赤に染まる海を見ると、
確かに見てるほうの感情に訴えかけてくるものがあるのかもしれません。

撮影手法や関係者の証言など、各箇所の信憑性についてはいろいろと議論があるようですが、
個人的には撮影側のモチベーションという点で、いろいろと思うところというか、率直に言うと反発的な印象を抱きました。

そもそも、今回本作を見たきっかけは、
前回のブログで書いた池澤夏樹さんの『母なる自然のおっぱい』で捕鯨のことが触れられており、
それでこの映画のことを思い出したからです。
そこから一部を引用すると、

「…反捕鯨論はなぜか非常に感情的なものにすりかわり、クジラのような知性のある動物を殺すのは罪だという倫理の問題にまでなってしまった。倫理はもちろん議論の対象にはなるが、しかし自分たちの倫理を他人に押しつけるのはずいぶん反倫理的なことだ」

20年近く前に書かれた文章らしいですが、基本的にはこの映画の方向性に対しても当てはまるものじゃないでしょうか。

そしてもう一つ思い出したのが、吉本隆明×糸井重里『悪人正機』に出てきた「アメリカの正義は主観的なおせっかいだ」というタイトルの一節。
たびたび引用になりますが、

「アメリカの民主主義というか、ヒューマニズムが初めからそういう、いわばおせっかいとも言えるような世界観とか普遍性を持っているんでしょうね。世界のどこで何があろうが、許せねえものは許しておけねえぞっていうような」

この感覚もまさにぴったりで、
わざわざ海越えて和歌山まで正義を実行しにくるエネルギーの根底には、こういうことがあるのかと符合しました。

そんなわけで、とにかく非常にアメリカ人っぽい一面が出たドキュメンタリー映画という印象でした。

キャピタリズム マネーは踊る

2011年01月14日 | 映画(ドキュメンタリー)
さあきたぞ、マイケル・ムーア。
といってももう一年以上前の映画になってしまい、
テーマとしてはすでにちょっと古くなってしまった感もありますが。

リーマンショックに端を発する世界同時不況。
2009年から2010年にかけ、日本でも資本主義や新自由主義に対する大バッシングが起こりましたが、
その本拠地ともいうべきアメリカでは何が起きていたのか?

大恐慌を招いた張本人でありながら、公的資金による支援を受ける保険・金融の大手企業、
その一方で、仕事を失い、家を追い出される人々。

「苦しむのはいつも弱者。でもいつまでも黙ってるわけじゃないぜ」

巨大な悪と弱い者を明確に対比させ、
人々の感情を刺激しながらアメリカの問題を浮き彫りにし、
同時にちょっとブラックな皮肉で笑わせてくれる、
いつもながらの巧みなドキュメンタリーでした。

映像のつなげかたと、それに乗せるナレーションが「やっぱうまいね」という感じで、
古代ローマから、古き良きアメリカの面影、各証言者のインタビュー、そして最後の「カトリーナ」の被災映像まで、
ドキュメントでありながらエンターテイメント性のある編集は、ある意味、十分楽しめるものです。

ただ、AIGとかゴールドマン・サックスに乗り込んで「市民逮捕だ!」っていうパフォーマンスは、
警備員にもあんまり相手にされず、ちょっと現実味が欠ける感じ。
キューバでの強行取材を敢行した『SiCKO』のときほどのインパクトというか、
意気込みみたいなものが感じられず、ちょっと形骸化している印象でした。

ユナイテッド93

2010年09月13日 | 映画(ドキュメンタリー)

2001年の9.11から9年。
追悼記念というわけではないですが、この機会に『ユナイテッド93』を観てみました。

アメリカの同時多発テロ事件では、4機の飛行機がハイジャックされて、
そのうちアメリカン航空11便と、ユナイテッド航空175便が世界貿易センタービルに、
アメリカン航空77便がペンタゴンに衝突しました。

そしてこの映画で取り上げられているユナイテッド航空93便なんですが、
これは4機の中で唯一ターゲットに衝突しなかった、つまり未遂に終わった航空機ということです。
なぜそうなったのかは映画を見てみるとわかるんですが、
標的のワシントンに向かっていたその機内で、乗客がテロリストに立ち向かったためとされています。

どこまで再現性が正確なのかはよくわかりませんが、
テロリストが犯行に及ぶ経緯、管制センターや米軍司令室でのパニックの様子、
乗客・乗務員の制圧と抵抗などが、緊迫感溢れる映像におさめられています。

ドラマ的な要素がなく、取材に基づいてつくられた純粋なノンフィクション映画という感じ。
おもしろいとかは抜きで、とりあえず観ておいてよかったと思います。