フランスのアルプス山脈にあるという、グランド・シャルトルーズ修道院のドキュメンタリー。嫁さんが見たいとのことで、神保町の岩波ホールで鑑賞。
グランド・シャルトルーズは、カトリック系のなかでも極めて厳格な男子修道院らしく、道士たちは俗世からは断絶した生活を送っている。そのためか、撮影条件も、以下の引用のようにかなり限定されたものだったらしい。
“ドイツ人監督、フィリップ・グレーニングは1984年に撮影を申し込み、ひたすら返答を待つ。そして16年後のある日、突然、扉が開かれた。
彼は修道会との約束に従い、礼拝の聖歌のほかに音楽をつけず、ナレーションもつけず、照明も使わず、ただ一人カメラを携えて6カ月間を修道士とともに暮らした。なにも加えることなく、あるがままを映すことにより、自然光だけで撮影された美しい映像がより深く心にしみいり未知なる時間、清澄な空気が心も身体も包みこむ”
(
オフィシャルサイトより)
上映時間はなんと2時間49分。修道院の季節の移ろいや、道士たちの生活を、ただただ淡々と映し続ける。
自分なら暇すぎて発狂しそうだなと思いながら見ていたが、お祈りをしたり、鐘を鳴らしたり、食事を作ったり、猫に餌をやったり、雪かきをしたり、服を仕立てたり、薪を割ったり、髪を切ったり、靴を修理したり、生活するうえではやはりそれなりにいろんなことをするものらしい。いわゆる文明の利器のようなものは読書灯やマイク、電動バリカンなどごくわずかで、アナログな道具を使って静けさの中で生活を営む様子をこれだけじっくり見せられると、それはそれで新鮮に映る。
それにしても、BGMがまったくないというのは、見るほうにもけっこうな緊張を強いる。物音や咳払いなど、ノイズともいえない一つひとつの音がとても生々しく聞こえる(ついでに映画館で寝ている人のいびきもすごい存在感を放っていたが)。
正直かなりヘビーな映画だったが、それだけに見終わったあとの達成感もひとしおという感じ。年に1~2回はこういうのを見るのもいいかもしれない。
ちなみに、ほぼ日でも特集(
「山伏の坂本大三郎さんと『大いなる沈黙へ』を観た。」)されるなど、文化系の方面ではけっこう話題になっていたみたい。岩波ホールでは今月22日が最終日とのこと。