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いろいろレビュー(旧サイト)

本と映画とときどき日記

町長選挙

2009年06月26日 | 小説(男性作家)

もうすっかりおなじみになった逆さまの赤ちゃんの表紙。
伊良部シリーズの第3弾です。

今回のはみんながよく知っている実在の有名人をモデルにした作品「オーナー」、「アンポンマン」、「カリスマ稼業」、
それから最後の「町長選挙」という4本立てでした。

個人的にははじめの「オーナー」が好きでした。
世間を騒がすワルモノの大御所プロ野球オーナー、
これだけで実際には誰のことかわかってしまうと思いますが。

ハッピーエンドという言い方がいいかわかりませんが、とにかくいい終わり方でした。

他のシリーズもそうですが、読んだあとは元気が出ます。
いろんな小さい悩みが、「なんだ、たいしたことないじゃん」っていう気になってくる
相変わらず注射を打ちまくるだけの精神内科治療は怪しいものですが、
とりあえずこの本自体がその役割を果たしているみたいです。

伊良部先生とマユミさんに感謝。

4ヶ月、3週と2日

2009年06月22日 | 映画(洋画)

ルーマニアが舞台の映画。

女子寮で暮らす学生の女の子。
ルームメイトが妊娠してしまい、非合法の堕胎を手伝うことに。
お金の工面、ホテルの予約、医者との面会。友人のためにいろいろと面倒を引き受けます。
しかし、いざ医者を連れて来ると、妊娠した当人はすでに4ヶ月を過ぎていたのに
まだ2ヶ月だと嘘をついていたことが発覚。
怒り出す医者に対して彼女は説得を試みます。

ストーリーのなかでも、演技でも、主人公の女の子がすごくがんばってました。
「うまい」というより「がんばってる」っていう感じ。
逆に妊娠しちゃったルームメイトのほうは、自身の問題を全部他人任せにしてしまい、
そのコントラストにじりじりと苛立ちが募ります。
二人の関係がずっと不安定な均衡を保ち、
エンディングはそのまま心停止した心電図が鳴り続けるみたいな終わり方でした。

なんとなく印象に残ったのがやたらと長い食卓のシーン。
彼氏のお母さんの誕生日に呼ばれ、親戚に囲まれていかにも居心地の悪そうな彼女。
それをよそ目に、大人たちがポテトの作り方や、教会の話や、学校の話や、兵役の話なんかをするのを延々と同じアングルから撮り続けます。
間延びする一方で「人々目線のルーマニア」が凝縮されてるような感じでした。

スカイ・クロラ

2009年06月21日 | 映画(アニメ)

妙に悲しい余韻が残る映画でした。
映像がきれいなのはもちろんですが、それに限らず透明感を感じる作品です。

タイトルは英語だとSky Clawler。「空を這いずる人」ということらしいです。

「世界が平和であることを実感するためには、常に戦争が行われなければならい」
そんな発想からつくられた二つの戦争請負会社。
終わりのない戦いに参加するのは「キルドレ」と呼ばれる、永遠の子どもたち。
(実際はけっこう大人っぽくて20歳くらいの印象でしたが)
年を取らず、戦争で命を落とすまで戦い続け、死んだ後もまた姿を変えてキルドレになる(ようです、多分)。

ストーリーにいろいろと設定があるので、予備知識が多少あったほうが見やすいかも。
原作はわりとボリュームのあるシリーズものらしく、余裕があればそっちも読んでみたいなぁと思います。

個人的には草薙水素(声は菊地凛子)のキャラクターが印象深かったです。
タバコがよく似合う。

プリンセス・トヨトミ

2009年06月17日 | 小説(男性作家)

万城目学。
『鴨川ホルモー』に続き、期待を裏切らないすばらしい作品でした。
好きだなー、この人。

『鴨川』の舞台は京都でしたが、今回は大阪です。
大阪城の真下にあるもうひとつの「大阪城」、
そして100万以上の大阪の男たちが守り続けてきた「大阪国」の秘密。
驚くような大スケールのストーリー展開と、
大阪のローカルな描写や土着文化がうまくかみ合ってぐいぐい話に飲み込まれてしまいます。
そしてちょっとほろりとくる場面もあったりして・・。
大阪出身の人が読んだらけっこう感慨深いものがあるんじゃないかぁ、と思います。

ところで、話の中で重要な「会計検査院」。
行政・立法・司法の三権から独立して、公社などの会計審査をするところということで、
小説の中のことと思っていたんですが、実はこの機関ってほんとにあるんですね。
全然知らなかった・・。

なにはともあれ、メインキャラクターであるこの会計検査院の3人が最高。
常に眉間にしわを寄せ、妥協を許さぬ会計検査のスペシャリスト「鬼の松平」(でもアイスが大好き)
モデルのようなフランス人ハーフのエリート女性検査官「旭ゲーンズブール」
低身長、小太りでうっとうしい、でも人並み外れた何かを持っている「ミラクル鳥居」

オープニングの3人の登場シーンがかなり好きでした。

エリン・ブロコビッチ

2009年06月13日 | 映画(洋画)

実話に基づく映画です。

仕事が見つからない3児の母、エリン・ブロコビッチ。
交通事故でむち打ちになって訴訟を起こすもあっさり敗訴になってしまいます。
頭にきて担当した弁護士の事務所に、「仕事がないから雇ってくれ!」と押しかけ、
アシスタントとして働くことに。

もちろん法律関係の仕事はど素人で、職場の同僚からも白い目で見られます。
しかし有害物質を垂れ流す企業のしっぽを掴んで転機が訪れます。
訴訟を起こし、がむしゃらに働きながら莫大な和解金を獲得するというサクセスストーリー。

主演のジュリア・ロバーツがアカデミー主演女優賞を獲った映画なんですが、
たしかに熱の入ったアグレッシブな役でした。
『プリティ・ウーマン』とか『ノッティングヒルの恋人』とかの優雅なイメージとはかなり違います。
セクシー強調の派手な格好、粗野な言動、短気な性格。
上司に対しても青筋立ててどなりちらし、思ったとおりズバズバ行動するたくましい女性。

ボーナストラックで本物のエリン・ブロコビッチのインタビューがあったんですが、
「昔の自分がいるよう」と、ジュリア・ロバーツの演技を高く評価してました。

被害者に親身になって巨大企業と闘っていく過程では、感動要素や社会問題意識なども盛り込んでいて、
うまいこと作ってある映画だと思います。