晶文社の<就職しないで生きるには>というシリーズの本で、帯には「「ハチロク世代」の働き方マニュフェスト」。
脱サラしてブロガーになった1986年生まれのイケダハヤトさんが語る、これからの働き方。
内容をざっとあげると、
・安定雇用が望めない若者世代の現況
・会社を辞めても独立して働く心構えの重要性
・「問題意識」に根差した働き方(自分で課題を見つけ、それを解決することを仕事にする)
・それを実践するための具体的な方法(ITの利用法など)
という感じでしょうか。
章立のわかりやすさ、文章の読みやすさ、そして各章末にはご丁寧にまとめも書かれているという親切さ。こうした本の作り方も何となくハチロク世代なのかなという感じです。
イケダハヤトさんについては、一度だけシンポジウムみたいなので実際に話していたのを聞いたのですが、立て板に水という感じの流れるような早口と、常に他の人の話とかをMacBookでタイプしている姿が印象的でした。そのとき一緒だった小田嶋隆さんも言ってたけど、情報処理の速度が速く、しかもそれが身体的に染み付いている感じ。世代間格差を実感しました。
で、本書について言うと、内容的にはもっともだと思うのですが、私のような30代のサラリーマンから見ると、半分共感というところです。
自分の問題意識に依って(いわゆる「旗を立てて」)働き方を決めるというのはすばらしいことだと思いますが、たぶん世の中のみんながそれをやったら、全体としての労働は回っていかないような気がする。
人のつながりやITを使ってできることもたしかにたくさんあるけれど、製造や物流といった、物理的なモノやヒトが必要な事業については限界があるんじゃないかな。極端な話、「いい車を作って世界中で売りたい」と思った場合、そこではやはり、奴隷を使ってピラミッドを作るような規模の経済性と労働者が必要になると思うけど、それに従事する若者はどうなっちゃうんでしょう?
まぁそんなのも企業で働く人間の負け惜しみと言えばそうかもしれませんけど。いざ明日会社がなくなったらやっぱり困るし……。
「旗を立てて生きる」ってことは賛成だけど、それを必ずしも働き方の独立性と結びつけるんじゃなくて、「企業にいてもできること」に目を向けるのも、若者にとって大事ではないのかな。