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いろいろレビュー(旧サイト)

本と映画とときどき日記

雑談力が上がる話し方

2013年12月28日 | 一般書

ちょっと前に書店でよく見かけていたタイトル。
立ち読みしてみたらサクッと読めそうな軽い内容だったので、今回は試しに電子版で買ってみました。

「雑談とは「生きる力」」と言い切る著者の齋藤孝さん。ことば関係の一般書に関しては、平田オリザさんなんかとならんでヒットメーカーですね。こんな感じの目次で、雑談のノウハウをあれこれ語っているのですが、内容はどれも具体的で読みやすかったです。

これ読んで実際に雑談力がアップするかは人それぞれだと思いますが、日々の生活や仕事で雑談力が実はかなり大切ということには同意。(私の身近にも雑談上手な人がいますが、明らかに「人生得してる」って感じです!)

でもこういう本が売れるってことは、やっぱり誰しも雑談ができなくてそこそこ苦労してるってことなんでしょうか。コミュニケーション力を本気で重視するなら、学校の授業なんかでも雑談の練習とかしてみればいいのにね。

アースダイバー

2013年12月21日 | 一般書

「ブラタモリ」などで、東京の昔と今を重ね合わせるということが一時期ブームになっていましたが、この『アースダイバー』もその並びとして前からなんとなく気になっていた言葉でした。実は7月の東京国際ブックフェアで割引買いしたのですが、なかなか読み進まなくてやっと読了……。

東京を含む南関東は、昔はけっこう海に沈んでいた土地だったようなのですが、その洪積層と沖積層という地層の違いを軸に、東京の各地の物語を中沢新一さんが読み解くという内容の本書。言い伝えのある昔話や史実のほか、かなり中沢さん自身の解釈も織り交ぜた人文学的なエッセーという感じでした。

例えば「タナトスの塔 ―東京タワー」という章では、東京タワーを「この世とあの世との境界にかけられたエッジ」のシンボルと見立てて、映画『モスラ』との関わりを次のように述べています。

生物の死と再生がおこなわれる場所として、東京タワーくらいふさわしいものはない。東京に内蔵されてきた最古の記憶が、モスラを芝公園に呼び寄せたのだと言える。>(p.90)

わかったようなわからんようなという気もしますが、こんなふうに想像力を広げて、東京の各地を死の世界やセクシャルなものと結びつけたりしながら考察していくわけです。

私のように、漠然と「東京っていろんなとこがあっておもしろいね」っていうだけの人間からすると、いささか過剰でついていけないような掘り下げも多々ありましたが、こうことに興味を持って街を見ることができると、もっとおもしろいんでしょうね。

社会の抜け道

2013年12月01日 | 一般書

古市憲寿さんと、國分功一郎さん。それぞれ人気の若手社会学者と哲学者の対談(というか雑談にも近い)形式の本です。

日本が不思議なのは、一億三〇〇〇万人という人口を有するのに、非常に中央集権的な国家だということです。例えば北欧では、国民国家でありながらも、地方分権が進んでいる国が多い。だけど日本は、住民が自分たちのガバナンスをするという経験があまりなかった。それでうまくいっていた時期はいいと思うんです。でも、どうやらこのままではこの社会はうまく回らないとみんな気付いてきた。だけど、経験がないから「社会」の肌触りが分からない。それで結局「社会を変える」といった抽象的な発想にジャンプしてしまうと思うんです。>(p.250)

というのは古市さんの言なんですが、この「『社会』の肌触りが分からない」っていうのは、なるほどと思わせる言い方でした。

で、こういうことに対して國分さんが「あとがき」で述べていた本書の主旨というのが、「巨視的(マクロ)な社会観察に甘んじるのではなく、微視的(ミクロ)な視点で具体的に社会を考える」ということ。そしてそれを実践すべく、ショッピングモールや自給自足の暮らしをするための農場、保育園などを訪れ、そこで対談をするという、ちょっと変わった試みをしていました。

例えば、消費社会の象徴のひとつみたいなIKEAに行ってみると、主婦の方々が子どもを連れて唐揚げとかを食べながらおしゃべりをする、交流の場になっていたりする。この、北欧発の家具販売店であるIKEAで唐揚げを食べてるという「IKEAの唐揚げ」事例みたいに、実は本来のシステムと違うんだけど、ミクロレベルでは実際いろんなことが行われている(≒いろんな「抜け道」がある)という興味深い視点があれこれ挙げられていました。

あとそういうのを哲学的に説明する國分さんの語りもおもしろい(哲学者って普段からこんな風に考えてるのかな、大変だねぇって感じですけど……)。ずっと読むタイミングを逃してきたけど『暇と退屈の倫理学』もそのうち手を出してみたいです。

追記:文化系トークラジオ LifeのHPで、紀伊国屋サザンセミナーでのイベントの録音がちょうどアップされてました。

銃・病原菌・鉄

2013年11月04日 | 一般書
このまえ読んだ『知の逆転』で興味を引いたジャレド・ダイアモンドの『銃・病原菌・鉄』。1998年度のピューリッツァー賞を受賞した大作なんですが、文庫版で上下巻800ページほどあり、内容も論文調。読み通すのはけっこうつらく、だらだら1ヶ月以上かかってしまいました。

本書の発端は1972年にニューギニアのヤリという政治家から問われた一つの質問、「あたながた白人は、たくさんのものを発達させてニューギニアに持ち込んだが、私たちニューギニア人には自分たちのものといえるものがほとんどない。それはなぜだろうか?」

ユーラシア、アフリカ、アメリカ、オーストラリアと人間が暮らしてきた地域は広く世界に渡るのに、その中でヨーロッパが他の大陸に先駆けて発展し、結果として今日に至っている要因は何なのか?

ダイアモンドはその直接の要因を凝縮して表現したものとして、本書のタイトルである「銃・病原菌・鉄」を挙げるわけですが、そこに辿り着くまでの理由を簡潔にまとめたのが、「エピローグ」にある以下の言葉。

<私ならこう答えるだろう。人類の長い歴史が大陸ごとに異なるのは、それぞれの大陸に移住した人々が生まれつき異なっていたからではなく、それぞれの大陸ごとに環境が異なっていたからである、と。>(下巻p.365)

これを説明するために、1万3000年に渡る人類史を追っていくのですが、その要因と流れをかいつまんでいくと、

・栽培化や家畜化の候補となりうる動植物種の分布状況が大陸によって異なる
 ↓
・ユーラシア大陸ではそうした動植物が存在し、さらに東西に長いため、それらの伝播・拡散においても緯度の違いによる影響が少ない
 ↓
・ユーラシア大陸の広い地域で余剰作物の蓄積が可能になる
 ↓
・非生産者階級の専門職を養うゆとりができ、人口の稠密な大規模集団を形成
 ↓
・軍事面、そして技術面や政治面で発展

というようなことが導かれます。

とにかく分量のある本なので、個別の内容をいちいち挙げていったらキリがないんだけれど、全体的な主張を思いっきり丸くしてまとめると、「たまたまそういう環境にあったから、結局今みたいなことになった」と言えなくもない。

ただ、補足としておくと、本書で語られている人類史はいい加減な検証に基づいているわけではなく、エピローグで「科学としての人類史」というタイトルが付けられているように、歴史学にとどまらず、他の分野からの科学的な比較を通して長い因果の連鎖を考察しています。他書にはないそうした手法が、本書の大きな意義なんでしょうね。

日常では思い至ることの少ないスケールの大きな内容には、月並みな言葉だけど知的興奮が喚起されます。

こんなこと言ったら顰蹙ものかもしれないけど、プロローグとエピローグでだいたいのアウトラインはわかるので(といってもそれだけでそこそこの分量はあるけど)、とりあえずそこだけ読んでおくのでもいいかも。

NISAで始める資産運用

2013年11月02日 | 一般書

アベノミクスの追い風を受け、2014年からいよいよ始まるということで話題になっているNISA。

毎年100万円の非課税投資枠が5年間適用されるということでなんとなくの概要は知っていましたが、実際にやる上でよくわからないことも多いので、書店で目についたイントロ的な本書を買ってみました。

基本的な仕組みとしてはそんなに複雑ではないNISAですが、1人1口座のみしか開設できなかったり、非課税枠の繰越などに関して中長期的にどこまでが非課税になるのかわかりにくいところもあり、いろいろと制約も多そうです。

それと、結局一番の関心事は「で、NISAでどんな金融商品を買ったらいいの?」ということなわけですが、これについてはビギナー向けのアドバイスが書かれていて、いくつか参考になるところがありました。

下落幅の最大値を基準にどこまでリスクを取れるかを考慮し、そのうえでいくつかのファンドを組み合わせるというのが本書の基本的なススメ。具体的には、国内債券を中心にしたインデックスファンドをベースに組んだバランス型が、一番安全でいいのではないかという感じです。

終わりのほうの、老後の蓄えの必要性やそれを見越した資金運用の重要性のところはまぁ一般的な話なので、読み飛ばしてもいいかもしれません。