5年ほど前、彼は奥さんと子供を連れ、突然、東京から山口県に移り住んだ。
衝撃だった。。
彼も設計を仕事としている。
地方に行けば設計の仕事が少ないのは、当時も変わらない。
・建築設計って都市じゃなきゃできないのか?
・地方にも設計事務所はあるけれど、、
地方ほど、本当はしっかりした設計者が
必要じゃないか?
そう思っていた。。いや、今もそう思う。
彼にどんな事情があったのかは知らない。
その年の春先
「インフルエンザでひどかったんだ・・」
そんな話しを電話でしていた記憶がある。
でも、突然彼は行ってしまった。
寂しかったけれど、、、うらやましかった。
・・・
今年の年賀状・・うっかり住所を書き間違えて、随分経ってから戻って来た。今さら出してもしょうがないからメールを送った。。
2日して、突然彼から電話が来た。
予測もしない人から電話が掛かってくると言葉を失うものだ。。
「過疎の村に、古家を借りて住んでるだ!」
「過疎率が高い村でさぁ~」
明るく彼は笑う。。
2件目の家を探している時に、それを知ったその村の人が、空家を提供してくれたという。
「5年たって、やっと自分の仕事できるように
なってねぇ~」
「役場からも街づくりで声がかかるように
なったんだ!」
楽しそうに彼は言う。。
ほっとしていると思う。大変だったと思う。
よそものが突然住み着いて仕事するのだから・・・
まして 設計 なんて。。
よかった・・
「上の子はかみさんよりでかくなったんだ・・」
彼には、中一の子を頭に4人の子がいる。
きっと、村のじいさんばあさんに温かく見守られているのだろう。
明るいの光りの中でのびのび育っているのだろう。
海で魚を釣ったり、農家の手伝いをして米を作っている、と前に聞いた。
豊かな時間なんだろう。
豊かな暮しなんだろう。
「元気な声が聞けてよかったー!」
そう言って彼は電話を切った。
。
。
ポカポカの陽だまりの気配が残った。。
。
。
。
いつか田舎で暮します