ある日の気づき

それぞれの正義と絶対の正義、そして国際法

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0. 「それぞれの正義」について
1. ドンバスの両共和国とコソボ地位問題
2. 西側諸国とロシアで国際法は共通のはず
3. プーチンの国際法理解
4. 日本での国際法への無理解
5. 立場が入れ替わったとして「絶対の正義」を考えると?
付録A. "JFK & the Unspeakable" より
更新履歴

0. 「それぞれの正義」について^

機動戦艦ナデシコ - Wikipedia
第25話 『私らしく』自分らしく
...
「いいかい、どんな人間にも立場があるように、それぞれの正義を持ってるもんさ。
ちなみに僕の好きだったアニメでは、ちゃーんと敵にも味方にも正義があった。
もっといろんなアニメを見るべきだったね。」

昨今のウクライナ情勢についての言論状況では、あまりにも、ロシア(とドンバスの2つの
共和国)の立場や正義を考慮しない人が多すぎる。なお、ロシアがドネツク、ルガンスク
という2つのドンバスの共和国を承認した際に締結した友好条約により、少なくとも、現在
進行中の紛争に関連した軍事行動について、これら3国の立場や正義は一致していると見ら
れるので、以下では、「ロシアの立場や正義」と表現しておく。ただし、ある国家にとっての
立場や正義は、本来(あるいは本質的ないし究極的には)、その国民の利益あるいは幸福を
代表している事に注意しておきたい。

1. ドンバスの両共和国とコソボ地位問題^

なお、「国家の承認」についてウクライナでの武力紛争に関連する国際法付録3で述べた
(あるいは↑引用した Wikipedia 記事に記述されている)事から、 他国による承認が無くても
国家の要件を満たしている場合もあるので、ドンバスの2共和国が、その国民(どうしても
気に入らなければ、住民と読み替えてもよい)を代表している側面
を無視すべきではない。

2. 西側諸国とロシアで国際法は共通のはず^

上記で述べたように、ドンバスの両共和国の独立については、コソボ独立経緯との類似性/
並行性に注意すべき。
コソボ - Wikipedia
コソボ地位問題 - Wikipedia
現在に至るまで、セルビアはコソボ独立を承認していない一方、国際司法裁判所がコソボ独立を
合法とする「勧告的意見(法的拘束力はない)」を2010年に出して「国境線不変更の原則」を
無効と宣言した。なお、アメリカや日本がコソボを承認した時点では、その勧告的意見が出て
いなかった事に注意。∴国際法に普遍妥当性があるとするならば、アメリカや日本には「国際法の
原則に基づいてロシアのクリミア承認やドンバスの2共和国承認を批判する権利や資格がない」
事は明らか。ロシアのクリミア承認やドンバスの2共和国承認は、問題の勧告的意見が出た後
なので、ロシアには「国際法を守っている」と主張する正当な根拠がある。
一方、アメリカや日本が国際慣習法をないがしろにした過去が消えるわけではない。

3. プーチンの国際法理解^

こうした経緯を踏まえると、下記のプーチン語録の中で国際法に言及した発言の意味が分かり
やすくなる。
ウラジーミル・プーチン - Wikiquote
-「EUは恥を知れ!国際社会のルールに反する勝手は許されない」(2008年2月、コソボ独立に
強く反対して)
-「アメリカ合衆国に率いられた西側諸国は、国際法に従うのを好まず、銃の統治を好む」
(2014年3月18日、クリミア半島編入条約締結後の、議会での演説で)
上の2番目の発言と同じ趣旨が、下記に和訳がある最近のプーチン演説で複数の具体例を引いて
説明されている。
【演説全文】ウクライナ侵攻直前 プーチン大統領は何を語った? | NHKニュース
なお、上記の表題には「侵攻」とあるが、ロシアの立場では「集団的自衛権の行使」である
ことは「ウクライナでの紛争に関連する国際法」の記事で述べた。上記のプーチン演説は、
集団的自衛権の発動要件の一つに「攻撃を受けた国からの救援要請」がある事(Wikipedia の
集団的自衛権」の説明の根拠であるニカラグア事件での国際司法裁判所の判例)を踏まえる
など、国際法の適用条件の細部にまで(さりげなく)注意を払った表現が随所に見られる。
それもそのはずで、プーチンは「ガチで(=文字通りの意味で)」*国際法の専門家*
逆に言えば、国際法観点からの分析は、プーチンの考えを読み解く鍵に成り得る。例えば、
2023年2月21日年次教書演説の分析例を参照。

4. 日本での国際法への無理解^

それに引き換え、日本でのウクライナ紛争に関連する国際法を巡る言論状況は、あまりにも
国際法の現実と乖離したものが目立ち過ぎている。例えば、下記の例のどこがどうダメかは、
本ブログの他の記事での説明から明らかなはず。
- https://mainichi.jp/articles/20220309/k00/00m/030/194000c
- https://www.jcp.or.jp/akahata/aik21/2022-03-06/2022030603_01_0.html
- https://news.yahoo.co.jp/articles/916bf0c66e62909834170be46f8d47fedd878b6c
# 注)「答え合わせ」は以下の記事を参照。
# 「国際法観点からのウクライナ紛争関連政策提案
# 「国連総会でのロシア非難決議の違法性
# 「違法かつ大愚策なロシア「制裁」とウクライナ「援助」
# 「ウクライナ紛争関連記事の論点を「投書形式」で整理して見る
# 「ドンバスの2つの人民共和国
# 「プーチン演説中の国際法への言及について補足
# 「ウクライナでの武力紛争に関連する国際法

国際法適用時に関連する事実を十分に押さえていないことも、トンチンカンな理解になっている
一因。例えば、下記の「ドンバスから発信された記事」で表明されている現地の状況への無知
あるいは無視に対する怒りや失望感を真摯に受け止めるべき。
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-822.html
「「No To War」と叫ぶ左翼陣営の欺瞞。今それを言うか!」
また、前掲のプーチン演説は、もっと真剣に受け止めるべきだ。少なくとも、行間から溢れる
「本気」や「決意」に気づかないフリをしていては、国策を誤ることになる。

5. 立場が入れ替わったとして「絶対の正義」を考えると?^

ここで、「沈黙の艦隊」というマンガ(アニメ化もされている)のセリフも引用しておこう。
沈黙の艦隊 - Wikipedia
「同胞の命を守ることは、絶対の正義だ。それは歴史が証明している」

公平に見て、上記作品中で日本政府が置かれた状況より、現在ロシア政府が置かれている状況の
方が、同じセリフの持つ説得力が大きいように思われる。
上記作品中では「米軍から脱走した数十名の軍人達」の命を守るための行動を首相に迫るという
状況だが、現在ロシア政府はウクライナ人口の20%程度を占めるロシア系住民(その大部分は、
ドンバス地方に住んでいるので、2つの共和国の国民)をウクライナ政府軍や親衛隊から守る
こと、そしてロシア国民の安全を将来に渡って確保することを「大義名分」にできる状況にある
のだから。少なくとも、プーチン演説の内容から、これこそが「ロシアの立場あるいはロシアの
正義」である事に疑問の余地はない。

付録A. "JFK & the Unspeakable" より^

下記で引用されているジョン・F・ケネディの言葉は、昨今の西側公式言説への警鐘にも見える。
https://alzhacker.com/jfk-the-unspeakable/
「いかなる政府や社会システムも、その国民が美徳を欠いていると見なされなければならない
ほど邪悪なものではない」
「核保有国は、自国の重要な利益を守る一方で、敵対国に屈辱的な撤退か核戦争かの選択を
迫るような対立を避けなければならない。核の時代にそのような道を選ぶことは、われわれの
政策が破綻している証拠であり、世界に対して集団的な死を望んでいる証拠でしかない」

更新履歴 ^
2022-03-13 08:10 : 「「もっといろんなアニメを見るべき」人が目立つ今日この頃」作成
2022-05-23 23:45 : 改行位置変更、リンク追加、コメント行追加、#国際法 タグ付与
2022-06-24 13:21 : 字句修正、フォント修正、他記事からの参照位置にid付与
2022-09-12 21:54 : 字句修正、リンク動作をタブ/ウィンドウを開くように修正
2022-09-20 13:11 : リンク動作の修正もれ訂正
2022-10-14 11:39 : レイアウト変更
2022-10-16 23:53 : フォント修正
2023-07-05 09:03 : プーチンの国際法理解専門家ならではである事と、その含意を追記
2023-07-15 10:05 : JFK & the Unspeakableからケネディの言葉を引用
2023-10-28 21:13 : 記事の表題変更。cf. 旧表題

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