耕助のブログの中国に関する記事 (2025年5月19日-6月14日)
cf. 5月18日まで→前記事、6月15日以降→次記事。
参考記事追加:1:トランプ関税は中国との力関係から失敗+国際法と米国の国内法に違反
2:書籍「負債論」引用箇所、書評、マイケル・ハドソンの影響(e.g. 古代…、文明…、債務… )
No. 2560 ASEAN-中国-GCC、つながりを次のレベルへ 2025/06/11
「マレーシアで開催された史上初のASEAN・中国・湾岸協力会議(GCC)の首脳会議」
ASEAN議長のマレーシア首相アンワル・イブラヒム「古代のシルクロードから東南アジアの
活気ある海洋ネットワーク、そして現代の貿易回廊に至るまで、我々の民族は長い間、商業、
文化、そしてアイデアの共有を通じてつながってきた」→「21世紀の新シルクロード精神」→
「自由貿易(⊃中国・ASEAN自由貿易圏3.0+中国・GCC自由貿易協定交渉)」+
「地域通貨と国境を越えた決済協力」+「物流回廊やデジタルプラットフォームの開発」…
→「マイケル・ハドソン教授がBRICS諸国の工業化に必要と考える動き」
=「地主階級、独占企業、ヨーロッパの植民地主義の残滓が消えなければならない」
=「外国人投資家への支払いを大幅に削減」=「「レンティア階級」を制圧する」=
「いかにして賃借料や債権者への支払いなどから、経済を自由にするか」←中国の例=
「革命後、金融階級を持たなかった∴資本形成、工場、住宅、公共インフラ、都市交通、
高速鉄道などへの投資に使う「お金」を私有の銀行ではなく、国家自身が公的に創出」→
「自分たちのお金を創造する必要がある+エリートたちは逆進性のある税制から恩恵を
受け続けてはならない」
# ここでの「お金」は「信用創造」も含む。
cf.「ジェフリー・サックスは(上記会議の直前)新シルクロード精神を簡潔に表現:
日本、韓国、中国、ASEANの技術を合わせれば、誰も太刀打ちできない+
外交にはテーブルと2脚の椅子が必要。軍事には年間1兆ドルが必要。どちらが良い?」
No. 2559 三体コンピュータ・コンステレーション 2025/06/10
「世界初の軌道上スーパーコンピュータ・ネットワーク」
# ライトノベル「とある魔術の禁書目録」のスーパーコンピュータ「樹形図の設計者」は
# 単一の人工衛星に搭載されている設定だが、こちらは複数の衛星による分散処理を想定。
# (打ち上げ時の重量制限や演算時熱管理の都合で、個々の衛星の大きさには限界がある。
# なお、地上でも装置の大きさ制限はあるから、最近のスーパーコンピュータは分散処理型)
# なお、衛星間はレーザー光で通信。使用する衛星の数は、当初は12、最大構成で2800。
「昨年11月、浙江省で開催された世界インターネット会議で発表された三体プロジェクト」
「宇宙空間にインフラを構築し、地球上のデータ処理よりも計算効率を高める」+
「目標は1,000ペタ(1エクサ)フロップスの総計算能力」(1000Peta = 1Exa)+
「宇宙ベースのコンピューティングが従来の地上コンピューティングの問題を解決。(1)-(3)
(1) 電力:(宇宙では天候に左右されず、大気通過での減衰もない)太陽エネルギー。
+中国は宇宙空間に長さ1マイルの巨大なソーラーパネルを建設中
(2) 熱管理:宇宙を拠点とする→空間に熱を放射するだけ+場所の制約なし。
(3) データを地球に伝送して処理することなく、直接データを収集・処理
既存のセンシング衛星や地球観測衛星はデータを地上に送信+地上のコンピュータが
データを処理→大気圏内通信での帯域制限、信頼性の制約でデータを90%以上喪失。
cf. 軌道上コンピューティングは生データではなく、分析結果を地上局に伝送するだけ
→データの漏れをなくし、コストを削減し、意思決定のスピードと質を向上」
No. 2558 中国の国家安全保障はどこにあるのか? 2025/06/09
# 要旨:「国家安全保障」は中国では文字通り「自国の安全確保」、米国では「一極覇権」の意
「中国は中国の中で中国であろうとしているだけ←言葉だけでなく地図からもわかる」
「司令部=軍の作戦部門←すべて中国国内+中国の国家安全保障上の関心は、自国内」
# cf. 米国統合軍のうち、AFRICOM、EUCOM は、司令部自体、国外(欧州)に置かれている。
「米国統合軍の「責任範囲」(=地球全体)←アメリカ大陸全体をカバーするノースコム
(NORTHCOM)とサウスコム(SOUTHCOM)があり、アフリコム(AFRICOM)、
EUコム(EUCOM)、セントコム(CENTCOM)、パコム(PACOM)がある」←
「『米国、同盟国、およびパートナー』という不格好な公式の下に隠れている帝国」=
「ホワイト・エンパイヤ(白人の帝国)」←「海外に750以上の軍事基地」vs
中国「ジブチに1つだけ海外基地」
「武器輸出(中国が唯一リードしていない輸出分野):米国は43%、中国は6%(減少中)+
武器輸出の3分の2近くはパキスタン一国に集中」←
「中国・パキスタン経済回廊(China-Pakistan Economic Corridor:CPEC)=
マラッカ海峡が封鎖された場合の石油のバックアップルート」←関連記事1、2、3
「中国軍は中国に集中←vs→米国軍は、複数の戦争、大量虐殺、占領にフォーカス」
「米国が中国を怒らせるポイント
(1) 台湾:毛沢東「帝国主義は中国とアラブを恐れている。イスラエルとフォルモサ
(台湾の旧称)はアジアにおける帝国主義の拠点。彼らの目的は同じ」+
(2) 米国は中国のイスラム教徒を擁護しているかのように装って、新疆ウイグル自治区に
また新たな戦争の扉を開こうとした←CPECの出発点を不安定にしようとしている」
台湾←中国の一部(「一つの中国」)→「統一は国家刷新の過程で避けられない」
# ↑中華民国憲法に従えば、現在の中華人民共和国の全領土とそれ以上の領土を
# |台湾の支配下に置かねばならない→「中華人民共和国から台湾だけを独立させる」→
# ↓国際的合意+中華人民共和国憲法(前文)+中華民国憲法(第4条+第64条) に違反
「米国も台湾を中国の一部とみなしていて、ただ後ろから糸を引いている」=
「ロシア←ウクライナ←(前線基地化)←米国→(前線基地化)→台湾+韓国+日本→中国」
→「米国は台湾を破壊することはできるが、台湾を守ることはできない」
∵「韓国や日本のような被占領国やオーストラリアのような属国を含めても、依然として
米国は数で劣り、武器でも劣っている」+
クラウゼヴィッツ「自軍を集中させておくことほど、高度で単純な戦略の法則はない」+
中国「戦力を中国周辺に集中←戦略目標が世界支配に及んでいないから」+
米軍「帝国全体で過剰に拡張され、複数の戦争で過剰に支出」=
「中国は中国国内でゆったりとしているが、米国は世界中で勢力を失っている」
No. 2554 中国が米国を凌駕する理由 2025/06/05
「我々の唯一の最優先課題は一般市民の生活の向上である。-- 中国国家主席、習近平」
「米国ではミリオネアが社会に価値を提供することなく、一夜で億万長者になることが
可能だ。ウォール街で紙の資産を取引するスキルに長けているかどうかにかかっている⊃
企業が自社の株式を数百億ドルも買い戻し、株価を押し上げて紙の移動から莫大な利益を
搾取する→資本が生産性向上、研究開発、従業員の訓練、イノベーションなどに使われて
いないにもかかわらず、完全に合法∴富は生産性、効率性、イノベーションではなく、
金融工学によって生み出され、インセンティブは根本的に間違っている」
「資本を生産的な投資先に配分していれば、貧困の増加、中間層の縮小、ホームレスの
急増、生活水準の低下、先進国で最も老朽化・陳腐化したインフラを抱える状況になる
ことなどない=米国では資本は生産的な投資先に配分されていない」
# ∵金融資本主義/新自由主義ではでは、レント(経済的地代)追求が生産より優遇される。
「中国政府は金融工学、資産剥奪、利益追求よりも生産性と成長を優先→金融システムを
手段と見なし、その目的は「全体の改善」=繁栄と調和の取れた社会の創造」
「一帯一路イニシアチブ(BRI)」という史上最大かつ最も野心的なインフラプロジェクト」
「2013年から2024年にかけて中国はBRIプロジェクトに1兆ドル以上を投資」
「これは資本主義対共産主義の問題ではない。良い政府対悪い政府の問題である。
「自由市場」システムから搾取された利益のほとんどは、最もお金が必要ない人々、
そして『公共の利益』に何の価値も貢献しない人々のポケットに流れ込んでいる。
一方、中国政府はほぼすべての資金を、すべての人々の利益になる改善に投入し、
国を21世紀の現代社会の模範例に変貌させた」
No. 2553 米国の大学は中国に代わってインドやナイジェリアの学生を募集 2025/06/04
要旨「中国人留学生の減少により、米国の大学で財政危機」←↑ cf. 英文→GT
中国(長年、最大の留学生出身国)「米国経済に年間140億ドル以上貢献」→留学生急減
米国の大学「中国からの入学者数の不足を補おうと、インドやアフリカから募集→
(一時的には)インドからの留学生急増→留学生の出身国として中国は第2位に→
インドの昨年の入学者数は9万9000人減少、ナイジェリアも、1年間で2桁の割合で減少+
(結果として、↑中国が最大の留学生出身国に復帰した=中国の留学生以上に急減した+)
より深刻な問題=『中国人学生は、アメリカの大学ランキングで最高額かつ最も学費の
高いプログラムに集中』+『インド人、特にナイジェリア人学生は、はるかに学費の安い
プログラムに通う』→トランプの大学予算削減と合わせて、大学の財政危機要因」
# ↑留学生の減少には、米国の「ソフトパワー」低下という意味もある。
No. 2551中国産業成功の秘策 2025//06/02
=「賢い国家計画と熾烈な市場競争」←「新自由主義」蔓延前の「混合経済」言説に類似
「他国の発展経路を観察し、そこから学んだ中国は、過去70年以上の間に3つの異なる
経済モデルを経験した:
* 1949年-1978年 ソ連の中央計画段階を模倣し、重工業の基礎を築いた。しかし
十分な生活水準を提供できなかった。
* 1978年-2012年 自由奔放な自由放任主義の資本主義段階。急速な経済成長、
生活水準は向上したが、貧富の格差、環境悪化、低付加価値の工業化も見られた。
* 2012年-現在 国家計画と市場競争が混在する段階。国家主導の産業高度化
プログラム、市場ベースの激しい競争、産業の高度化の急速な向上が特徴で、
中所得層の罠を乗り越えて産業大国のリーダーになることが期待されている」
↑現モデルの成功例⊃「メイド・イン・チャイナ2025プログラム(MIC2500)」
中国の国家計画「国家計画者は優先産業を選び、政策的インセンティブを提供→
市場が勝者を決定(←国家計画⊃競争的(=産業資本主義的)環境の維持/促進)」vs
米国の産業政策「政府が勝者を選ぶ∵政策を発表する際、バイデンもトランプも既存の
テクノロジー大手の経営幹部たちに取り囲まれている=受益者は、その場にいる企業=
市場競争は中国ほど決定的なルールではない(=独占資本主義)」
# ↑中国は「「産業資本主義」から「独占資本主義=金融資本主義」への移行」を回避中
No. 2549 関税政策失敗後の米中関係を再考する 2025/05/31 cf. 同テーマの記事 (by MoA)
# 別の訳@マスコミに載らない海外記事=関税破綻後の米中関係再考→No.2544、No.2541、No.2539
「アメリカの対中政策は、極めて不道徳なだけでなく逆効果=自らをひどく傷つけた」
## 「不道徳」というか違法=国際法と米国の国内法に違反→米国の裁判所から停止命令。
「六週間足らずで、トランプ大統領は関税の大部分を30%に引き下げた。見返りとして、
中国から何も得られなかった。中国政府は、トランプ大統領が中国製品関税を20%から
30%に引き上げるのを認めた以外、一切譲歩しなかった」
→「トランプ大統領の最も熱烈な支持者、ブルーカラー男女は行きつけのデパートで
更に10%高い買い物」=「トランプ大統領が、超富裕層向け大規模減税を約束する一方、
労働者階級の税金はなんと10%も引き上げられた」
「米中貿易戦争の一時休戦を、ドナルド・トランプ大統領は勝利と主張するだろうが、
金融市場はそれを降伏と解釈」
「中国の台頭は世界秩序におけるアメリカの優位な地位に対する深刻な脅威だという認識
…この誤った前提こそが、アメリカの対中政策を形成し、我々を軍事衝突に導いている」
# cf. 中国側は↓外交理念↓に基づきアメリカとの共存共栄を望んでいる。
「共に繁栄する、開放的で包摂的な、清潔で美しい世界を構築する」習近平国家主席
cf.「我々の最も基本的な共通点は、この小さな惑星に暮らしていることだ。我々全員
同じ空気を吸っている。我々全員子どもの未来を大切に思っている」ジョン・F・ケネディ
No. 2546 レアアースと 「再工業化」 2025/05/28
# レアアースほかの重要鉱物の対米禁輸措置は、貿易戦争における中国側の切り札
「中国が出した真の切り札はレアアースの対米禁止措置」
「ミラン、ナバロ、ベッセント、ルトニックのような『金融の天才』はわかっていない」
「希土類元素が特別なのは、ハイテク生産に欠かせないユニークな特性を持つこと」
「レアアース産業は中国が独占…埋蔵量の優位…採掘の優位…コストと品質の競争力」
「オーストラリアで採掘されたアンチモンでさえ、中国で精製しなければならない」
「国防総省の重要な鉱物サプライチェーンの88%が中国の影響(下にある)」
「北京の輸出禁止措置はタングステンやテルルにも拡大」
「米国が中国に課したチップ禁止措置の応酬として、中国は米国へのレアアース関連技術と
機械の流入にも同様の制限」
# 中国レアアース産業は長期的工業化政策(←米国の現政治体制では再現困難)の結果
「中国が世界の工場として台頭したのは偶然ではなく、綿密な産業計画による」
「中国はEV、風力タービン、スマートフォン、チップ、軍用ハードウェアなどのハイエンド
製造業のサプライチェーンの最も重要な部分を支配することを数十年前から計画」
## ↑政策指導者の多くが理系出身であることの効果
「国や地方の指導者のほとんど←工学の訓練→レアアースやその精製・加工技術、将来の
産業にとっての重要性などを理解」e.g.
「中国の過去3人のリーダーは工学の学位を持っている。江沢民は上海交通大学で
機械工学の学位を、胡錦濤と習近平は清華大学で水力工学と化学工学の学位を取得」
「弁護士や金融業者として訓練された政治家に、このような(産業計画についての)
決定を下す能力を期待することはできない。∵ものを作ることは、株式投機や死んだ
大統領の肖像が描かれた小さな緑の紙切れの印刷機を動かすことよりもずっと難しい」
## ↓金融資本主義(新自由主義)の米国では「金融工学(システム化された投機)等の
## ↓キャピタル・ゲインを含む経済的地代(レント)追求」が「生産活動」より有利+
## ↓中国では金融部門(⊃お金の社会への供給)が公営←レント追求の動機がない。
「米国企業は短期的な利益主導型であるのに対し、中国の国有企業は長期的な目標主導型」
⊃「レアアースの事例→米国は中国に依存する最も重要な産業で再工業化できそうにない」
No. 2545 グローバルAI競争で中国が攻勢 2025/05/27
No. 2544 重要鉱物が米国の単独行動を抑制する道 2025/05/26
# ↑米国の論理的一貫性を欠く行動への批判を無理に避けた、論理的一貫性を欠く記事。
「トランプ流の貿易政策は断続的な攻撃と持続的な不確実性の時代を約束」
# ↑米国による中国への敵対的貿易政策はバイデン政権でも継続されていた。
「2024年12月以来、中国は半導体生産に欠かせないガリウム、ゲルマニウム、アンチモンの
米国への輸出を禁止している。
同時にEV用バッテリーに欠かせないグラファイトの輸出規制も強化しており、
これが米国でのバッテリーセルの生産コストが中国よりも約50%高い主な理由」
# ↑米国による中国への敵対的貿易政策への報復であることに言及しないのはおかしい。
「火に油を注ぐように、中国の制限措置はリスクの高い報復措置も招いている」
# ↑先に「なぐりかかった」のは米国/西側∴*中国の制限措置の方が報復*であり、
# 米国/西側の敵対的貿易政策こそが「報復リスク」を無視した無謀な行動。こうした
# 記述開始時点の恣意的設定は、西側公式言説に特徴的な嘘の手口の一つ。
「2012年、日本は長期にわたったが中国をWTOの紛争解決手続きに提訴して成功し、
重要な鉱物に対する輸出制限を撤回させた」
# ↑=中国はWTOでの裁定に従った=国際法を遵守している。
「WTOの紛争解決手続きの強化が必要」but
「ワシントンは2019年から中国の大規模な国有企業補助金に対する司法の過剰介入と
偏向を理由に、上訴機関の判事任命を阻止し、WTO紛争解決を事実上無力化している」
# ↑=米国は国際法に従う意志がない。∴クリーンハンズの原則により、米国は国際法
# による保護を受ける資格がない→上記記事は、非論理的と言わざるを得ない。一般に、
# *論理的一貫性を欠く西側*視点の論説は(上記記事のように)レトリックに頼る。
No. 2543 中国人はテスラを買うが、米国人はBYDを買えない 2025/05/25
# ↑中国市場は現に米国に開放され、米国市場は中国に開放されていない諸々の事例。
# =トランプ政権の「市場開放要求」に対する痛烈な皮肉。
No. 2542 世界的な住宅危機が起きている 2025/05/24
中国の経験「過去20年間に4億人の中国人が都市に移り住んだ。新しく建設された
住宅のほとんどは工場で大量生産され、最終組み立てのため現地に輸送された」
世界共通の問題「住宅・商業の両部門で新築コストが高騰+原材料の入手は困難」
→「若者への影響は壊滅的→結婚率と出生率が低下→家族形成はほんの一世代前に
比べて10年以上も遅れている」
住宅危機解決策=「モジュラー・ビル/住宅→建設費は約3分の2、工期は半分以下」
∵「熟練労働者のほとんどは工場内→高コストの現地作業員の必要性が減る」+
(中国の強力な)サプライチェーン
# 私見:西側では「既存の住宅所有者たちの新しい住宅を建設する努力への反発」が
# 中国の場合より大きい/対応が難しいと思われる。∵新自由主義のレント優遇政策。
No. 2541 トランプ関税と中国 2025/05/23
# 西側評論家の多くの論説とは異なり、中国製品は案外容易に代替市場を獲得している。
「中国は、本来米国の消費者向けであった大量の製品を、すでに近隣諸国に販売」=
「近隣諸国が大量に購入→中国は輸出売上高を8.1%増加→アナリストを驚かせた」
「トランプの対中関税は今後数年で中国と世界の貿易関係を強化するだろう」
「輸出品のほとんど→インドネシア、ベトナム、タイ、その他(東南アジア)の国々」
「ブルームバーグのアナリストは2%増、ロイターは1.9%増と予測」
「中国の対米貿易は4月に前年同月比で21%減少したが、東南アジア諸国との貿易は
同率で増加し、EUとの貿易は8%増加」
まとめ「米国は世界においてわずか4.25%のコミュニティであるという現実」→
「中国は人類の残りの95%を(米国に代わる)顧客として問題なくやっていける」
No. 2540 現代空中戦における DeepSeekの瞬間 2025/05/22 ←リンク修正済
要旨「パキスタン・インド空戦の教訓:システム戦争が単体兵器よりも未来を決める」
「中国製の兵器システムを装備したパキスタン空軍はインド空軍の戦闘機を多数撃墜したが、
まったく損失は被らなかった。この空戦では、中国製のJ-10C戦闘機、PL-15空対空ミサイル、
HQ-9防空システム、ZDK-03 AWACSが使用された。インドが失ったと報告されているのは
フランス製ラファール戦闘機3機、ロシア製Su-30戦闘機1機、MiG-29戦闘機1機、イスラエル製
ヘロンUAV1機」=
「1機2億4000万ドルでインドに売却され、しばしばヨーロッパの最新鋭戦闘機と称賛される
ラファール戦闘機が、J-10Cとの対決でまったく歯が立たなかった」
「なぜインド空軍は、はるかに規模の小さいパキスタン空軍を相手に屈辱的な一方的敗北を
喫したのだろうか?←答:パキスタンが使用した中国の統合兵器システムの強さ」=
「インド←フランス、ロシア、イスラエル、アメリカから調達した兵器の寄せ集め」vs
「パキスタン←中国製の高度に統合され同期化された航空戦闘システム一式」
「J-10C戦闘機は、KLJ-7A AESAレーダーを搭載←探知距離は300キロを超える=
ラファールが探知する60-100キロも前にロックオン」+
「PL-15空対空ミサイルは、200キロ以上の射程距離」+
「HQ-9防空システム←高度30キロまでの最大射程が200キロ」+
「ZDK-03 AWAC←リアルタイムの戦場調整←地上司令部や味方航空機とのデータリンク」+
「パキスタンの開発を中国が支援した双方向通信データリンク「リンク17」
→HQ-9防空システムはインドのラファール戦闘機の情報をJ-10C戦闘機に伝え、
→J-10C戦闘機はラファールのミサイルの射程外からL-15E空対空ミサイルを発射
→ZDK-03 AWACがミサイルとのデータリンクを維持し、ミサイルを標的に誘導
→ラファールは、J-10Cとミサイルの射程内で交戦できずに撃墜された」
∴「インド空軍の敗北は、統合航空戦システムの欠如による」
「インドの兵器システムはコストがかかる上に非効率」=。
「2億4000万ドルのラファール戦闘機が18万ドルのPL-15Eミサイルを搭載した4000万ドルの
J-10Cによって撃墜された」=「軍事界は独自の「DeepSeekの瞬間」を体験」
# インドはロシアのみに航空システムを依存することを「地政学的独立性を損う」との
# 観点から忌避し、航空システムについては、調達先に西側を追加+国産化路線を採用。
# →今回、想定外の弱点が判明→ロシアとの協力路線(調達+共同開発)に復帰??
# cf. トルコ∈NATO:元々は専ら西側から兵器を調達。しかし、防空システムでは
# ロシア製の圧倒的優秀性が近年の実戦で判明+インドより切実な「地政学的独立性」の必要→
# ロシア製S-400を調達→米国に*代金支払い済み*のF-22、F-35引き渡しを拒否された
# →独自に第5世代ジェット戦闘機を開発+F-22,F-35代金の返還を要求
# フランスに第5世代戦闘機はない+米国は信用できない→インドの選択肢はロシアだけ?
No. 2539 中国はトランプより良いカードを持っている 2025/05/21
# 貿易対象物品の「代替可能性」の差
「この貿易戦争におけるパワーバランスを評価する上で重要なのは、「代替可能性」」
「中国は米国から輸入する代わりに世界市場で他の国から購入することで対応できる」
「少なくとも短期的には、米国には中国のレアアースや鉱物の代替品がない。それらは
多くの分野で必要不可欠であり、中国はそれを知っている」+
「中国からの特定の輸入品への米国の依存度を下げることは簡単なことではない」
∵「中国は現在、物流、製造サプライチェーン、エンジニアリングにおいて比較優位=
中国で製造するほうがずっと安価」
# 自国経済への影響の差
「貿易戦争は主に米国にとっては輸入に関するショック(供給の問題)、中国にとっては
自国の製品に対する適切な市場を見つけることに関するショック(需要の問題)」
## 中国での需要の問題はデフレ要因だが、ケインズ政策で短期での対応が可能+既に実施中
「中国には需要不足を補うだけのノウハウと決断力、そして資源」→ケインズ政策が可能
## 米国での供給の問題はコストプッシュインフレ要因+スタグフレーションの懸念も
「米国が必要とする供給側の調整は実行が難しく、投資、訓練、インフラを何年もかけて
強化する必要」←トランプ政策の予測不可能性により困難の度合いが高まっている
=「かけたりやめたりする関税+DOGE(いわゆる政府効率省)が実施した公共部門削減
→民間・公共部門ともに混乱→米国に生産拠点を移すには巨額の先行投資が必要だが、
4年後どころか3ヵ月後の経済環境についても確信が持てない」
トランプ「製造業の雇用を取り戻す」←「製造業は米国の雇用の10%にも満たない+
非工業化地域の労働者に良い雇用を生み出せない+生産ラインの仕事は低賃金+
米国のサービス貿易黒字が減少する←トランプ政策が米国のソフト・パワーにダメージ
=観光業は急激に落ち込んでおり、外国人学生は米国で学ぶことをためらっている」
# 長期的展望を左右する高等教育政策の差
「大統領は国内の主要大学に対して大規模な戦いを繰り広げている」
「中国は、過去10年間に何十もの新しい大学を建設」
No. 2538 属国アメリカ 2025/05/20
# 要旨:中国は*交渉の前提条件*として*米国の誠意*を要求+米国は逆らえない。
「中国から見ればこれは、米国を伝統的な中国の衛星国家のようなものに縮小する
非常に長いプロセスの最初の段階であると信じるだけの理由がある。(←↓出典←書評)
デイヴィッド・グレーバー『負債論 貨幣と暴力の5000年』第12章(いまだ定まらぬ…) p.550」
# ↑マイケル・ハドソンの経済史研究(文明の命運、古代の崩壊、彼らの債務を赦せ)の影響
「He Lifeng副首相は今週末、ジュネーブでスコット・ベッセント商務長官に会う。
それは交渉のためではない。
ベッセント商務次官が中国側の交渉開始の前提条件を理解しているかどうかを尋ね、
もしベッセントが理解していると答えれば、会談は面白くなるだろう」
「誠意を示さなければ交渉は成立せず…半年以内にアメリカも立ち行かなくなる」
∵「関税に関する議論が順調に進んでいる場合にのみ、中国がレアアース金属のような
非関税輸出に関する議論を開始」←「これらの金属がなければ、アメリカの自動車、技術、
そして防衛産業はクリスマスまでに停止」
「He Lifengはベッセントに対して、もしこの問題を交渉で解決したいのなら、
彼の政権は関税の一方的な悪影響を認識し、WTOのルールに従い、誠実に交渉し、
中国に逆らうのではなく中国と協力し、対等な立場で協議して問題を解決しなければ
ならないと言うだろう。もし米国が言うこととやることが違えば、または強制や恐喝を
続ければ、中国は交渉を打ち切るだろう」
# ↑地政学/地経学的な資源は圧倒的に中国の方が多い→米国による一極支配幻想の終り
# cf. 全世界に重要なシグナルを送る中国@マイケル・ハドソン研究会
No. 2537 第二次世界大戦の4つの神話 2025/05/19
「中国とロシアの重要な貢献←西側諸国(のナラティヴ)において無視、軽視」+
「このような選択的記憶は、国民の理解を歪め、今日も世界政治に影響」←というか*今日の*
「歪曲は現代の地政学を形成し続けている4つの根強い神話に由来」←大戦後のプロパガンダが形成
神話1「戦争の始まり=1939年のドイツによるポーランド侵攻」←
「日本やイタリアなどによるそれ以前の侵略行為を無視」
# 私見:第一次大戦+ベルサイユ条約での米英仏側の帝国主義、ソ連への干渉戦争+
# ルール地方占領⊂*英、米、仏、ベルギーの侵略*、西側諸国の中国侵略への野心、
# 英、米のソ連敵視政策⊃ナチス利用なども、西側のナラティヴでは無視/軽視
# されている。背景として、アジア、アフリカの欧米による植民地化自体も問題。
神話2「東部戦線におけるナチス軍の敗北におけるソ連の役割を過小評価」←
「1944年に西部戦線が開戦する前に、ソ連は大きな代償を払ってドイツに対して敗北を
与えた。2,700万人もの死傷者を出したソ連の貢献は、連合軍の最終的な勝利を確実に
するために不可欠」←というか、決定的∵ドイツ軍の損害の80-90%はソ連軍による。
# 私見:(1) ソ連の被害の軽視、(2) 中国で関東軍をソ連が破ったことの決定的重要性の無視も
# 大問題(どちらも、元記事が触れているオーストラリアの役割より、ずっと深刻な問題)。
# ∵(1) は、朝鮮戦争やベトナム戦争での米軍の空爆による被害、米軍/NATOによるイラク、
# セルビア、リビア、シリア侵略被害、ドンバスのロシア語話者被害等の軽視/無視の原型。
# +独ソ戦への欧米の思惑の影響は(最近は綻びが目立つが)イスラエルの虐殺軽視に類似。
# +(2) ソ連による関東軍打倒は、第二次大戦最後の大規模戦闘+日本降伏の直接的原因。
神話3「戦争における中国の役割は、西側のナラティブでは軽視されがち」←
「日本に対する中国の抵抗は、枢軸国の最終的な敗北に不可欠」
# 私見:特に日本で「中国に負けた事を認識しない」問題が大きい。また、蒋介石には
# 欧米の傀儡的な側面があった∴大戦後の内戦で、民衆の支持は中国共産党に集まる。
神話4「日本が第二次世界大戦の被害者として、特に原爆投下後の日本がそう描写される」
「日本を被害者とすることは、アジアにおける侵略者としての日本の役割を覆い隠す傾向」
# 私見:「日本が第二次世界大戦の被害者」であるかのような言説は、主に日本での問題。
# 欧米では、そもそもアジア人の犠牲者のことは無視。←アジアにおける侵略者としての
# *欧米の役割*(第二次大戦後の独立ラッシュ+朝鮮戦争、ベトナム戦争…で露呈)を
# 覆い隠す傾向。朝鮮、ベトナムの分断は、これらの国の解放に貢献していない(むしろ
# 宗主国=侵略者の役割を引き継いだ)米国の傀儡政権が直接原因であることに注意。
「西側諸国がソ連の役割について選択的に記憶していることは、特に冷戦後においては、
より広範な政治戦略と結びついている+西側の学者たちは、中国の抵抗とソ連の犠牲に
ついて、よりニュアンスの異なる理解を求めるべき」
# 私見:西側のプロパガンダの結果なので↑こういう「綺麗事」ではどうにもならない。
# ∵西側諜報機関の御用学者たちは、むしろプロパガンダ拡散主体の一部を構成。
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