ある日の気づき

ドンバス紛争の開始契機と民間人犠牲者数について

節へのリンク
1. 紛争の開始契機(=ドンバス両共和国の独立宣言契機)
2. 紛争の犠牲者数
更新履歴

「ドンバス紛争」とは 2014 年のドンバスの両共和国の独立宣言以降のウクライナ政府軍との
武力紛争を指す。「バングラデシュ独立戦争」との類似性から、「ドンバス独立戦争」と呼ぶ
ことも可能に思える。


今次ウクライナ紛争の基本的背景として(というか、一体として)捉えるべき事象であるにも
関わらず、西側マスコミでは報道されず、政治課題として取り上げられてもいない。これこそ
西側言論空間での事実認識に深刻な歪みをもたらし、西側「公式言説」を現実から乖離させて
いる最大の原因であろう。いわゆる「NATO 東方拡大問題」とも「ウクライナ現政権の傀儡性
という共通因子により強く関連している。すなわち、「NATO 東方拡大問題」がロシアの言う
レッドライン(最後の一線)」を越えたのは、ウクライナ領内で膨大な量の武器集積が継続
され、その中に複数の生物兵器研究所および核兵器配備意欲の公然たる表明すらも含まれた
からに他ならない。

1. 紛争の開始契機(=ドンバス両共和国の独立宣言契機)^

いわゆるオルタナメディアやロシア+ドンバス側の資料は、数多く発表され続けてきているが、
ここでは、何より、西側報道機関の情報や国連報告書からも独立宣言=紛争開始までの経緯は
十分追えることを見ておこう。こうした目的では、下記サイトの記事が、極めて有用である。
https://ameblo.jp/cargoofficial/
西側のプロパガンダに公的資料で反論する【ウクライナ情勢】②
2022-03-22 06:45:52
以下は、上記サイトの記事からの抜粋である。文脈が気になるなら、元記事を参照。

「オレンジ革命とマイダンのクーデターの背後でアメリカがどのような政治工作を行ってきた
のかは、以下の記事が詳しい。
・・・・・・・・・・・
・ガーディアン; https://www.theguardian.com/world/2004/nov/26/ukraine.usa
・フォーリン・ポリシー: https://foreignpolicy.com/2011/02/17/revolution-u-2/
・ジャコビン誌(デヴィッド・シロタが編集を務める): 
 https://jacobinmag.com/2022/02/maidan-protests-neo-nazis-russia-nato-crimea
・IWJ(日本語記事): https://iwj.co.jp/wj/open/archives/128095
・・・・・・・・・・・」

「クーデターの演出のため表舞台に立ったのが、バイデン副大統領(当時)、ヌーランド国務
次官補、故マケイン元大統領候補(共和党)、パイアット大使(当時)らである。バイデンは
この時期になんと6度もウクライナに足を運び、大使館などでスピーチを行っている。
https://www.nytimes.com/2019/11/10/us/politics/joe-biden-ukraine.html

アムネスティ・インタナショナル「東部ウクライナの拷問犠牲者に正義は行われない」」
2016年5月27日
アゾフら国家警備隊、保安局(SBU)などからの当局からの報復を恐れるあまり、被害者が
声を上げられず、弁護士も引き受けない、ほとんど起訴もされず、ニュースにもならない
ということだ。
マイノリティーであるロシア語話者の分離独立派は、拷問等の被害を受けても告訴もできない
圧政下にある。
被害者が声も上げないのだから、多くの事案が国連やOSCEの報告書に載ることもないのだ。」

国連・OHCHR 「ウクライナの人権状況に関する報告書」」2014年4月15日
「上記はクーデター直後の、国連・OHCHRによる初の報告書となる。
新政権はウクライナ語を唯一の公用語としてしまい、ロシア語を排除した結果、ロシア語話者
への差別が公的なものになってしまった。
また、マイダンの抗議デモで50名以上を殺したスナイパーも殆ど捜査されていないことが
わかる。
このスナイパーは自作自演作戦の一環であり、右派セクター党の者だと疑われているが、その
右派セクターの幹部はクーデター後の新政権で教育省大臣となり、オデッサ安全保障担当や
軍の顧問にも指名されたという。
こういう背景が疑われることから、政権がスナイパーの捜査に及び腰であるのだと疑念を持た
れても仕方がない。」

国連・HRMMU「ウクライナの人権状況に関する報告書」」2014年5月15日
「現在50名以上が殺害(依然行方不明者も多い)されたことが確認された「オデッサの惨劇」
では、被害者にはレイプの痕跡が認められ、妊婦までが殺された。
この暴動には1500名が参加し、多数が殺害行為に加わったが、警察に拘留されたのはわずか
11名であったばかりか、現在まで有意義な捜査が行われていない。
他の国連報告書では「オデッサ警察が、首謀者と疑われた内務省副長官を拘留中に恣意的に
逃がした」という驚くべき記述まである。
https://www.ohchr.org/Documents/Countries/UA/UkraineReport28August2014.pdf 86項)」
また、犯行の実行グループは右派セクターとされるが、上述した通り、彼らの地位は政権に
優遇されるだけである。
内務省は、アヴァコフ内務大臣を筆頭に、副大臣やキエフ警察署長にアゾフの司令官が就任し、
その管轄下にNational Corps(アゾフ)やアイダル大隊ドニプロ大隊右派セクター
武装部隊を置くなど、ネオナチ系組織の中核である。
この事件の結果、連邦制に賛成していただけの住民が、ドンバスの2州で独立を宣言するに
至った。
なお、この後、オデッサ州にはグルジアでカラー革命を成し遂げたサーカシビリ元大統領
(米国との二重国籍)が呼び寄せられた。彼はウクライナ国籍を取得し知事に就任、ロシア語
話者に対し圧制をしいた。」

その後の紛争の概要も含め、下記の現地住まいが長そうな(恐らくスペイン系の社会活動家と
思われる)人の記事が、紛争の全体像を概観する上で有用。
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-822.html
「No To War」と叫ぶ左翼陣営の欺瞞。今それを言うか!

下記の軍事専門家による情報もある。
https://note.com/14550/n/ne8ba598e93c0
スイスの元軍事情報将校「ウクライナで何が行われ、何が起こっているのかを実際に知る
ことは可能なのか?」
「ウクライナの軍事情勢
ジャック・ボー著
https://cf2r.org/documentation/la-situation-militaire-en-ukraine/
...
ウクライナ紛争の根源を検証してみよう。それは、この8年間、ドンバスの「分離主義者」
あるいは「独立主義者」について話してきた人たちから始まる。これは誤称である。
2014年5月にドネツクとルガンスクの二つの自称共和国が行った住民投票は、一部の不謹慎な
ジャーナリストが主張しているように「独立」(независимость)の住民投票ではなく、
「自決」(самостоятельность)の住民投票であった。
「親ロシア」という修飾語は、ロシアが紛争の当事者であることを示唆しているが、実際は
そうではなく、「ロシア語話者」と言った方がより誠実であっただろう。しかも、これらの
国民投票は、ウラジーミル・プーチンの助言に反して行われたものである。」

2. 紛争の犠牲者数^

現在の国連公式情報では犠牲者数は約 14000人とされている。ただし、この数字は調査方法の
問題などにより、過小評価と考えられる。ここでも、まずは https://ameblo.jp/cargoofficial/から
引用しよう。
西側のプロパガンダに公的資料で反論する【ウクライナ情勢】②
2022-03-22 06:45:52
...
国連やOSCEの報告も、事実とは言えない
...
結局、国連やOSCEの報告書は、ほとんどウクライナ側にしか事情聴取せず、殺人事件の犯人や
正確な死者数すらもわからない等と、事実の一部しか反映されていないことがわかる。」

西側のプロパガンダに公的資料で反論する【ウクライナ情勢】⑤
2022-03-31 21:32:03
...
【国連やOSCEなどの国際機関による報告書の不備と、考慮すべき事項】
・内戦が始まった2014年当初は、ドネツク/ルガンスク共和国の行政機構が確立されていな
かったため、ドンバス側から十分な事情聴取ができていない。
(他方でウクライナ政府からの情報に偏る非対称性があった)
・2014年当初のOSCEの監視官はドンバス地域でわずか158人(国連の監視官はウクライナ全体で
34名)しかいなかったため、網羅的な情報収集・調査が困難であった。
...
・ドンバス側の被害者の多くは、拷問などを受けても治安部隊(SBU)やネオナチ系有志大隊の
報復を恐れ告訴もできない。同様の報復を恐れ弁護士さえつかない。
・ウクライナの司法機関は、自陣の犯行と疑われる民間人の殺害や拷問などの事件を捜査・
解決する気がない。
・捕捉しきれていない行方不明者が2000~数千人存在する。(ICMP・赤十字の報告)
・100万の国外難民のうち、大半がロシア・ベラルーシに避難している。
...
「OSCEの調査がいい加減」であることを示す「ドンバス・インサイダー」による以下の指摘
妥当に思える。
ドンバス・インサイダー」はドンバス側の報道機関である。
(*このサイトは、現在DDoS攻撃を受けているようで繋がりにくい)
・・・・・・・
▼ドンバス「OSCEは、砲撃による民間人犠牲者の半数しか記録していない」
...
加えて、OSCEはロシア・ドネツク・ルガンスクからの再三の要請にもかかわらず、要約報告書
では民間人の犠牲者を一括りにし、砲撃、小火器、対人地雷の犠牲者を混ぜ合わせており、
民間人犠牲者が誰の責任であったのかが不明確なままである。
...
OSCEは、民間人犠牲者について(例えば停戦違反の場合など)詳しく説明するよう繰り返し
要求されているにもかかわらず、完全に歪んだ数字によって不可解な報告を発表し続けている。
DPRは、OSCE組織内のロシア代表に対し、OSCEのイメージを損ねるこの嘆かわしい傾向を正す
よう圧力をかけるよう求めてきた。
・・・・・・・
OSCE報告は、実数に比して半分しか記録していない。
国連報告にも不備がある。
...
2019~2021年は、砲撃や死者が最も少なかった時であったが、この比較的混乱の少ない時期で
あっても報告書の確度が低いことがわかる。
...
なお、以下に示したような図は、激戦時期であった2014~2016年の分は存在しない。これも
統計の不備によるものと思われる。
....」

国連は「人手不足」としても、OSCE はウクライナ側戦争犯罪の共犯か事後従犯にすら見える。
OSCE 加盟国の大半が西側諸国であることからも、OSCEが十分に中立的と信じることは難しい。
# 2022-11-19: 後にドンバス駐在のOSCE職員の中にウクライナ政府側のスパイがいたと判明。
https://qrude.hateblo.jp/entry/2022/09/25/032108
# というか、OSCEのドンバス駐在現地組織は、組織ぐるみでウクライナに加担していた。
https://qrude.hateblo.jp/entry/2022/04/26/132831
# ↓OSCE議長国ポーランドが、れっきとしたOSCE構成国であるロシアの会議出席を拒否
OSCE: 西側主導の「国際」組織に未来はない + OSCE は NATO の支部に過ぎない
# ↑また一つ、ドンバス紛争開始時点でOSCE は中立の国際組織などではなかった証拠が...

前掲の「「No To War」と叫ぶ左翼陣営の欺瞞。今それを言うか!」には、下記の一節がある。
「「公式」の民間人犠牲者数は、実数より限りなく少なく、14,000人が殺されたとしている。」

例えば、イラク戦争での下記調査のような、現地機関の資料のみに頼らない綿密な調査をやり
直さない限り、実際の犠牲者数は、数倍違っていても不思議はない。
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/8459/
「イラク戦争の犠牲者は推定50万人
2013.10.17」

実際、イラク戦争の場合、公式発表を累計した数字と再調査の結果は数倍違っていたのだから。

イラク戦争 - Wikipedia
「民間死亡者数
イラクボディカウントによる調査(2003年から2011年12月14日まで)によれば、イラク市民の
紛争による死亡数は10万3160名-11万3728名とされ、これに12,438名を新たに加えている」
https://en.wikipedia.org/wiki/Iraq_Body_Count_project
"The project uses reports from English-language news media (including Arabic media 
translated into English), NGO-based reports, and official records that have been 
released into the public sphere to compile a running total."

更新履歴^
2022-04-28 16:36 : リンク追加
2022-04-28 17:15 : リンク追加
2022-04-28 17:26 : 字句修正
2022-04-30 15:26 : 編集ミスで数字の 1 を一つ消していたのを修正
2022-05-11 17:34 : 字句修正
2022-09-11 16:44 : リンク追加、字句修正
2022-09:24 20:19 : リンク動作修正
2022-10-05 23:17 : 記事先頭へのリンク追加
2022-11-19 13:17 : OSCEの非中立性スパイ武器提供)を示す記事をリンク
2022-11-23 14:17 : OSCEの非中立性別の根拠リンク
2022-12-08 17:10 : 更新履歴形式変更、OSCEの非中立性について別のリンク追加

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