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「みんなの年金」公的年金と企業年金の総合年金カウンセリング!                 

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誰も知らない厚生年金基金-代行返上前のドキュメント →18

2010年11月13日 | 厚生年金基金
4. 年金の請求

2005.09.02.
★年金カウンセリング → 年金の請求書

Q まもなく60歳になるが、年金の請求書は社会保険事務所へ取りに行かなければならないか?
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A 現行の公的年金は、請求主義ですから、ご本人の年金請求が無ければ、年金の支払いは行われません。このため、裁定請求書の提出が不可欠です。
厚生年金の請求書は現行60歳からですから社会保険事務所へ出向きます。
国民年金のみ請求の方は65歳に出向くことになります。
社会保険事務所へ出向いて年金加入記録を確認して、請求書を受け取り、個々人により異なる添付書類を用意して、誕生日前日以降に再度提出のため出向きます。郵便での受付はしておりません。つまり、社会保険事務所には2度出向くことになります。ほんとに長い間、そうしてきました。
ただし、平成17年10月(該当月の3ヶ月前)からは、社会保険庁では「裁定請求書の事前送付」を始めます。60歳・65歳の該当者の住所あてに送付されます。
つまり、厚生年金該当の人は昭和21年1月2日以降生まれの人、ならびに国民年金のみ該当の人は昭和16年1月2日以降生まれの人からは「裁定請求書の事前送付」が行われますので、社会保険事務所へ取りに出向かなくても良いことになります。
ではありますが、住所変更等によって届かない場合もあります。その場合は、足を運ばなければなりません。
厚生年金基金の請求書は、国の年金とは別に提出する必要がありますが、通常、当該基金から用紙が送付されてきます。厚生年金基金連合会から受ける場合も、用紙の送付はありますが、少し時間がかかっているようです。国と同じように住所変更等により届かない場合もありますので、受給時点に一本、当該基金か厚生年金基金連合会に電話されるといいと思います。
厚生年金基金連合会の電話は昼間混雑でなかなか出ないようですから、退け時の4時から5時にされるとよろしいと思います。
ちなみに、厚生年金基金連合会の問い合わせ電話は、03-5366-2666です。


2006.02.14.
★年金カウンセリング → 現況届の代理提出

Q 母が平成10年に死亡しているが、年金が振り込まれるので、年々受け取っていました。兄弟が7回忌に集まったとき、母は死亡しているのだから年金は受けられないと言われ、あわててお訪ねいたしました。現況届は、母の年金として何か受けられるのだろうと考え、代理で記入し提出していました。
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A まず、お母さんの戸籍謄本を見せてください。
これだと、死亡日は平成10年ではなく、平成12年になっていますよ。死亡されたとき、市役所には死亡の届をあなたがしたことになっていますねぇ。そのとき、年金を受けていた社会保険事務所には死亡届をされていないのですねぇ。
毎年、お母さんの誕生月に現況届が郵送されていますが、代理人で記入されていたのですね。現況届はその方が生存されているのを確認するものですから、死亡されているのなら、その時点で社会保険事務所へ死亡届を出してもらわなければならなかったのです。
これで行くと、原則平成12年から前回の支払分まで、おおよそ6年強の年金を返していただくことになります。この死亡届を頂いて、事務処理がすみましたら、ご案内を郵送しますので、しばらくお待ちください。


5. 年金生活

2005.08.27.
★年金カウンセリング → 年金返したくない!

Q 社会保険庁から、厚生年金基金加入中の標準報酬月額が相違していて、年金を過払いしていたので返金してほしいと言ってきた。自分としては、自分のミスではないので返したくないが・・・・・・・
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A 厚生年金基金の代行返上や基金解散に伴い、基金事務所は全加入員の全標準報酬月額を社会保険庁の記録と突合(とつごう)し、全部の記録が一致しないと返上や解散ができません。
この過程で、まれに記録の不一致が発見されます。その結果、年金が過少であったり、過大であったりします。
確かに、ご自分のミスではないので、返済に応じたくないお気持ちは分かりますが、現行法では応じざるを得ないと考えられます。5年の時効以外は。
そこで、残された道は、社会保険庁に対して審査請求ということになります。


2005.09.09.
★年金カウンセリング → 縦割り行政の穴ぼこ

Q 年金が振り込まれていない!
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A 現況届を出し忘れると、年金は差し止められます。
住所が変わったとき、市役所や郵便局に住所変更しただけではいけません。
肝心な年金の住所変更をしなければ、現況届が郵送されてきません。
要するに、住所変更してなければ、現況届が来ない。よって現況届が出せない。
結果、年金が振り込まれないということになります。
このイタチゴッコは、縦割り行政の穴ぼこということでしょうが、住民票の変更をしても、その情報は社会保険庁に自動的に提供されないのです。
いましばらく、この縦割り行政の穴ぼこは続くようです。

【改正】
社会保険庁は、平成19年から従来の現況届の提出を住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)の使用によって原則不要といたしました。
ただし、何らかの理由により住基ネットが使えない人には従来どおり現況届が郵送されますので、提出が必要です。


2005.09.23.
★年金カウンセリング → 年金の税金が高くなったのだが

Q 67歳男性です。ここのところ年金の税金が高くなったのだが、どうして?
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A 平成17年1月から、政府は65歳以上の税法の老年者控除を廃止したりして税金を高くしました。
この結果、一例として65歳以上の年金300万円の人で、増税額(2004→2006年)は104,000円にもなる予定です。
税法改正の背景には、年金の世代間格差の現実があります。
40年加入者の厚生年金(月額・妻あり)で、おおよそ次のような格差があります。
 1)昭和20年生まれ  20~22万円位
 2)昭和1ケタ生まれ  25万円位
 3)大正生まれ     30万円位

政府は、世論に配慮してこのような格差解消の一環として税法の改正を行ったものと考えられます。
ここで一点、問題は、税収は国税に入ってしまい、年金会計には入らない点です。
年金財政的には、なんら改善されないママです。
政府会計のどんぶり勘定がここでも露呈したということなのでしょうか。分別管理は常識ではないのです。

2005.11.01.
★年金カウンセリング → 基金の源泉徴収票

Q 企業年金連合会から年金を受けていた者が死亡したのですが、準確定用の源泉徴収票はどのようにしたら手に入りますか?
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A まず、企業年金連合会に死亡の連絡を電話でします。
そうすると、連合会から自宅住所宛に届書一式が郵送されてきます。
その書類を整えて、企業年金連合会に返送しますが、その際、源泉徴収票がほしい旨、メモ書きを同封いたします。
そうすると、連合会から自宅住所宛郵送されてきます。
一方、国の年金のほうの源泉徴収票は、社会保険事務所の窓口に、「源泉徴収票再交付申請書(準確定)」というのがありますので、その用紙を窓口に提出すると、自宅住所宛に1ヶ月位すると郵送されます。
受けている年金のすべての源泉徴収票を取り揃えて税務署で確定申告をすることになります。
モチロン、個別基金から年金を受けている場合は追加する必要があります。


2005.11.18.
★年金カウンセリング → 5年分1,100万円 !

Q 流行り歌の作曲家だが、このたび、65歳になるので厚生年金の請求をしたところ、1,100万円ほど振込みがあった。これは何? 返さなくていいのだね。
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A 厚生年金の支給開始は、あなたの生年月日(昭和15年生まれ)ですと、60歳からですから、5年分のさかのぼり精算が行われ、振込みされたということですねぇ。返す必要はありません。
そんな大金が自分の通帳に振り込まれたらびっくりしたでしょう! そんなこと無かったですか? (バリバリの頃は、年収4,000万円もあり、はした金だそうです)


2005.12.16.
★年金カウンセリング → 芋づる式

Q 今日(12月15日)、銀行で記帳したら、年金が振り込まれていない! どうしたんだろう。
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A ちょっと、待ってください。年金の番号分かるもの有りますか?
Q 前にもらった振込通知書があるけど・・・・・・・。
A コンピューター、見ますから・・・・・・・、現況届出してありますか?
Q 出したと思うけどなぁ。
A あぁ、出ていませんねぇ。今、ここで現況届書いてください。
Q 出したはずだがなぁ・・・・・・・。
A お住まい、最近変わりませんでしたか?
Q 半年ほど前に、転居したけど。
A じゃあ、現況届の用紙は古い住所あてに送られていてお手元に届かなかったのですねぇ。
Q そうか、そういうことだね。
A じゃあ、住所変更もしましょう。この葉書に書いてください。ところで、奥さんはお元気ですか?
Q 1年前に、先に逝ったよ。
A そうですか、それはさびしいですねぇ。
Q さびしいなんてものじゃ、ないよ。
A そうでしょうね。その届は、されましたか?
Q なんの? 妻は、年金を受けていなかったから、何もしていないよ!
A でも、ご主人の年金に奥さんの加給年金が付いたままですよ。
Q えっ、そんな!
A いつ、でした?
Q 去年の11月15日。
A そうすると、加給年金をさかのぼり、ちょうど1年分262,300円を返していただかなければなりません。
Q そうなるんだ。現金で返すのかな?
A いえ、ご主人の次の年金支払期から、年金額の1/2を限度に相殺されます。ここに、署名、捺印してもらえますか。
Q ううん、こりゃあ、参ったねぇ。
A 芋づる式でしたねぇ。
Q まったく、たまには、社会保険事務所に来てみるもんだねぇ。
A それは、言いえているかもしれませんねぇといいますのも、ご主人、昔、企業年金に加入していたでしょ?
Q さて、それは何?
A 会社でやっていた年金ですよ。
Q 厚生年金基金とか、いうやつかな。
A ええ、それそれ。基金加入が30ヶ月ありますねぇ。この分、年金受けていますか?
Q いいや、・・・・・・・。
A およそ、5万円位、終身受けられるんですよ。
Q そお、そりゃア、どうすればいいんだろう?
A 企業年金連合会というところへ、至急、電話(03-5366-2666)してください。
Q 棄てる神あれば、救う神ありというところだねぇ。いやいや、いろいろ、ありがとう。
A とんでもないですよ、制度が魑魅魍魎なんです。過去分はさかのぼり、5年は受けられると思いますよ。
Q そぉ、じゃあ、早速、電話してみるわ。



【出所:「事例で学ぶ年金」 平成18年】


誰も知らない厚生年金基金-代行返上前のドキュメント →17

2010年11月12日 | 厚生年金基金
3. 年金の仕組み

2005.09.04.
★年金カウンセリング → 連合会のハガキ

Q 会社(基金加入)を辞めたとき、厚生年金基金連合会から年金資金を引き継いだ旨のハガキが郵送されてくると聞いたが、1年たつが来ていないのだが・・・・・・・
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A 厚生年金基金を脱退したとき、原則基金加入10年未満であれば、将来厚生年金基金連合会から終身年金を受けることになるので、6ヶ月後くらいに厚生年金基金連合会からその旨のお知らせがあります。
ただ、この住所は退職時の住所なので、ハガキが来ない場合には住所が変わったと厚生年金基金連合会に電話するといいと思います。とはいえ、住所変更は、一般的には年金を受ける直前だけでかまいません。厚生年金基金連合会の電話は、昨日の日記を参照してください。
原則基金加入10年以上で辞めたときは、当該基金から将来年金を受けることになるので、当該基金からお知らせがあります。
若い人で、このハガキか、厚生年金基金加入員証がお手元にある方は大事に保管しといてください。将来年金になるかもしれない宝物です。短期間で基金を辞めた人の基金の年金は国の年金受給権が発生したとき、厚生年金基金連合会からまとめて支払われます。これをもらい損ねている人が大勢いらっしゃいます。


2005.09.19.
★年金カウンセリング → 企業年金の一時金

Q 以前、勤めていた会社を辞めるとき、企業年金は一時金を取ってしまったので、もらえないのだよね。
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A 一時金を取ったのは、加算年金部分でしょう。代行部分は一時金にはならないから、将来年金として受けられます。
通常、10年未満でその基金を脱退すると、その代行部分の年金資産は厚生年金基金連合会に移管されます。
将来、国の年金が受けられるようになると、厚生年金基金連合会から年金が支払われます。
10年以上加入の場合は、当該基金から支給されます。
この基金分の年金の未請求者がごっそり発生しています。国の年金とは別だということをご存知ない方がたくさんおります。
基金制度の複雑さ、代行返上、基金解散とかで、現在混乱していますので、未請求がますます増える心配があります。
昭和40年代以降に転職した人、要注意です。
基金加入の事実確認でしたら、社会保険事務所でもできます。厚生年金基金連合会に問い合わせるのもよろしいでしょう。
このことは、誰もやってくれるわけではないのです。厚生年金基金の説明責任を問題にしても仕様が無いでしょうし、自己責任の範疇ですし、自分が成功報酬を手にするかどうかの話です。


2005.10.02.
★年金カウンセリング → 確定拠出年金へ移管

Q 以前、厚生年金基金に3年ほど加入していて、厚生年金基金連合会から資産を預かっている旨のハガキをもらっているが、今度、その金を確定拠出年金に移すことができるようになるとか聞いたのだが。
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A この10月1日から、厚生年金基金連合会は企業年金連合会に名称が変わり、
HPもリニューアルされました。
併せて、連合会に移管されている確定給付年金から確定拠出年金への移管ができるように法律改正が実施されました。
ただし、10月1日から、連合会に移管された中途脱退者の基本部分(代行分+プラスアルファ分)以外の分を、連合会から個人型と企業型の確定拠出年金へ移管可能になったということのようです。
詳細は、 http://www.pfa.or.jp/chuto/seido/index.html で、確認してください。


2005.10.08.
★年金カウンセリング → ポータビリティ(年金の持ち歩き)

Q 企業年金連合会で、この10月からポータビリティ(年金の持ち歩き)のインフラが整備されたようだが、これは一種の個人勘定と考えられるか?
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A ご自分が全面的に管理できれば個人勘定と考えていいのかも知れませんが、しかし、今回の施行は確定拠出年金という法律上のフレーム・ワークに沿ったものですから、関係する管理機構等がきっちり機能した場合という危うさを持っています。まだまだ、試行錯誤が繰り返されることでしょう。
その点で、個人勘定と考えるにはいまだしという感じがします。その実験が始まったというレベルだろうと思います。
また、これは企業年金の一部で行われることであって、大半を占める公的年金は従来フレーム・ワークのままですから、なんと言うこともないのが現実だと考えられます。
とはいえ、日本の年金の世界に、個人勘定へ向けたポータビリティの仕組みが採用されたことは画期的なことだと思います。
政治家や官僚に弄繰り回される従来フレーム・ワークにアンチの狼煙を上げたということでしょう。


2005.10.23.
★年金カウンセリング → 基金の年金

Q 60歳の女性ですが厚生年金加入(2年)をすべて脱退一時金で受け取っていますが、2年間のうち1年は基金加入になっていて、基金も解散していません。この場合、基金の方から何か支給を受けられる可能性はあるのでしょうか?
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A ご質問には、基金加入の1年は何歳のときであったかという点が不明です。なぜかと申しますと、厚生年金基金を中途で脱退したとき、取り扱いが二つに分かれます。
厚生年金基金を脱退(=会社を辞めたとき)したとき、
(1)基金加入原則10年未満・55歳未満で脱退の場合・・・・・年金原資移管・年金支払者は企業年金連合会
(2)基金加入原則10年以上・55歳以上で脱退の場合・・・・・年金原資保管・年金支払者は当該基金
また、
(3)基金解散の場合・・・・・年金支払者は企業年金連合会
(4)代行返上の場合・・・・・年金支払者は社会保険庁(厚生年金)
ご質問からすると、(1)に該当するのではないかと推察されます。よって企業年金連合会から支給されるはずですが、厚生年金は脱退手当金を受給済みで、厚生年金の受給権は今後とも発生しないと考えられます。
企業年金連合会の年金支給基準は、現在では厚生年金受給権を持っている者にしか年金を支給しません。よって、支給は無いと考えられます。以前は、1ヶ月の加入期間であっても終身給付をしていたときもありました。
しかし、(2)の事例の場合でしたら、基金ごとに区々です。当該基金にお尋ねになってください。
問題の焦点は、この方の年金原資が企業年金連合会に移管されているか、当該基金に残っているかによって、支給の有無が上記のように分かれます。
さてさて、ここからが摩訶不思議な領域の話になります。
脱退手当金の計算は、加入期間中の平均標準報酬月額に加入期間別給付乗率をかけて求めます。
ということは、代行分も含めた状態で国から支払われるのです。
すなわち、脱退手当金の中に、既に基金分は含まれているのです。
さあ、何がなんだか分からなくなったでしょう。これは、基金設立メリットであるし、でたらめなことが行われているとも言えるでしょうし、制度の欠陥でもありましょう。
付け加えれば、国民皆年金制度になって、昭和16年4月2日以降生まれの人には脱退手当金の仕組みは廃止されています。今後の若い方にはこの仕組みはありません。
以上、年金カウンセラーの実務経験からお話しました。
詳しくは、企業年金連合会のホームページで確認してください。


2005.10.31.
★年金カウンセリング → 基金を誰もしらない!

Q 最近、縁あって、社会保険事務所で年金相談員をはじめました。周りの人に聞いても、仲間の社会保険労務士に聞いても、誰も厚生年金基金のことを知りません。こんなことってあっていいの!
--------------------------------------------------------------------------------
A 社会保険事務所で基金のことをお聞きになってもほとんどわからないのが現実です。社会保険労務士でさえ、一般的に基金のことを学習する機会はないのですから承知していません。
このような実情ですから、まず、原則、加入していた厚生年金基金にお聞きになるべきでしょう。基金名が分かるのでしたら、電話帳や104で調べられます。
厚生年金基金を中途脱退している場合(原則10年未満)や基金解散の場合は、企業年金連合会(電話03-5366-2666、http://www.pfa.or.jp )ですし、代行返上の場合は、当該基金または社会保険事務所、加算型等の残留部分は当該基金ということになります。
厚生年金基金そのものの一般的な相談先というのは、厳密な意味ではありません。
上記の相談先は、おのおの担当部分に限定されます。それでも、企業年金連合会がそれにあたるといえるかもしれません。
なお、年金カウンセラーのSKYDrive(検索)の「厚生年金基金ア-カイブ」で厚生年金基金をベースにした公的年金・企業年金の総合年金カウンセリングを行っています。体系的な説明資料はありませんが、ドメスティックな資料がたくさんありますので、それら資料から読み取っていただくことはできます。


2005.11.26.
★年金カウンセリング → 社員の老後の年金!

Q 会社が代行返上するって言ってきたが、何なの、これって!
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A 代行返上とは、企業が厚生年金基金の運営が困難になって代行分を国に返還することを言います。
本来であれば、企業の厚生年金基金から支払われることになっていた代行分年金を政府に返還して、政府のほうから厚生年金と一緒に支払われるようになります。
ただ、ここで要注意は、代行返上しても企業または厚生年金基金に残る部分があるということです。この、残存分をもらい損ねる人がいるというのも現実です。
この残存分は、一般的に下記の3つの選択肢によって加入者に提供されます。
1.一時金で精算。
2.5年有期年金。
3.終身給付。
ただし、この取り扱いは、各基金によっていろいろです。詳細は、当該基金にお問い合わせください。
ところで、なぜ、代行返上なのでしょう。
まず、厚生年金基金は、企業と加入員から掛金を徴収し年金資産を積立てて、その全資金(ファンド)を資産運用して、加入員の老後資金を捻出して、終身年金で支払う制度です。
厚生年金基金制度発足の昭和40年代、日本経済は右肩上がりの景気で戦後復興を実現しつつありました。当時は、終身雇用・年功序列・企業内組合の三種の神器で経済運営がなされ、経済は拡大の一途をたどっていました。
それが、ここ10年ほどの日本経済の低迷により、様相が一変してしまいました。
新規加入員の激減、資産運用の低利回り、年功序列賃金の衰退等によって、厚生年金基金運営は成り立たなくなりました。
要するに、経済環境の激変に、企業も、厚生年金基金も、敗北したのです。すばらしい理念、「社員の老後の年金!」 をあっさり放棄したのです。経済合理性という美名に隠れて。


2005.12.04.
★年金カウンセリング → 基金のプラス・アルファ分

Q まもなく定年です。会社から厚生年金基金は代行返上すると言ってきたが、代行分は厚生年金に含まれて受給できるようだが、プラス・アルファ分はどうなってしまうのだろう。
--------------------------------------------------------------------------------
A 厚生年金基金は、厚生年金の報酬比例分を基金が代行して、基金から支給される仕組みになっていますが、厚生年金基金設立認可を受けるためにはプラス・アルファ分を加えないと認可されません。
ということは、基金には必ずその基金独自のプラス・アルファ分があることになります。
代行返上により、代行分は厚生年金に戻るからよしとしても、プラス・アルファ分はいったいどうなってしまうのでしょう。これが会社の都合で無くなってしまうというのでは、権利侵害もはなはだしいし、そんな無法なことが許されることは無いでしょう。たとえ、なんでもありの日本であっても。
代行返上や基金解散の場合のプラス・アルファ分の取り扱いは、当面、おおよそ次のような形で保証されています。
1.終身年金
2.5年とか10年の有期年金
3.一時金で清算
一般的には、上記3つの選択肢から1つを選ぶことになります。この案内が基金から郵送されてきますので、今後の経済情勢、会社経営の状況等を勘案して、選択することになります。
長生きのリスクの点では終身年金の選択が望ましいのですが、会社経営のリスクから考えると有期年金も考えていいかも知れません。モチロン、会社が信用置けないというのでしたら、一時金で清算ということになりましょう。


2005.12.05.
★年金カウンセリング → 中脱と待期

Q 基金のある会社を3年勤めて今週で辞めるのですが、基金分の年金ってどうなりますか?
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A お見かけするところ、年金にはまだ若すぎるようですね。
将来、国の年金が受けられるようになったとき、基金分の年金も国とは別に受けられます。請求先は、企業年金連合会になります。
厚生年金基金加入を原則10年未満で脱退した人を中途脱退者(中脱)といい、原則10年以上加入して辞めたときは、待機期間者(待期)といいます。
中脱者は、企業年金連合会から、待期者は当該基金から、将来年金を受けることになります。
中脱者には、退職後6ヶ月くらいすると、企業年金連合会から「年金支給義務承継通知」が郵送されてきますので、大切に保管しといてください。
待期者には、当該基金からご案内があります。


2006.03.19.
★年金カウンセリング → 基金の代行分

Q 厚生年金基金の代行分って、何だったのですか?
---------------------------------------------------------------------
A さてさて、最近、難しい問題ばかりですねぇ。
そもそも代行分とは、国の厚生年金の報酬比例分を基金が代行して支払う世界に例の無い方式ですよねぇ。
基金制度発足のときの事情で、後々の問題発生を深く考えもせず、退職金と厚生年金の調整の一環として官と民の妥協の産物として成立した経緯があります。
基金は代行分を自己の資産として取り込み、規模のメリットで資産運用をして運用利回りを稼いでいたのですけど、日本の10年に及ぶ経済の低迷で大幅な赤字に転落したというわけです。
その上、ここに来て、世界的な会計基準の見直しの一環で、時価会計導入が基金に適用され、赤字幅の限界に達して基金解散や代行返上が一気に進んでしまい、1200基金(単独・連合基金のみ)がこの3月1日現在では166基金に激減となってしまいました。
この背景には、この代行分の会計上の取扱いの混乱も足かせとなっている事情が潜んでいます。
要するに、もともと、この代行方式には年金の手法としては無理があったということなんでしょう。ただ、この代行方式の唯一の効能は、日本の土壌に「一時金」ではない、「年金」という理念を根付かせたという点だけは評価されていいと考えられます。
今後の年金は、この経験知の発展として、個人勘定へ集約されるのではないでしょうか。政府も財界もかかわりがもてない年金の仕組みが必要なんだろうと思います。



誰も知らない厚生年金基金-代行返上前のドキュメント →16

2010年11月11日 | 厚生年金基金

2. 年金の加入記録

2005.09.10.
★年金カウンセリング → 解散基金の問合せ先

Q 前に加入していた厚生年金基金が解散したと聞いたのだが、どこへ聞いたらよいか?
--------------------------------------------------------------------------------
A 解散基金の代行分は、将来厚生年金基金連合会から年金として支払われます。 
代行返上であれば、厚生年金に合算されて社会保険庁から支払われます。
いずれの場合も、当該基金に残っている部分があると思われますので、当該企業にお尋ねになるのがよろしいと思います。
基金加入期間の確認は、社会保険事務所でできます。
一般的な問合せ先は次のとおりです。
1.基金解散 厚生年金基金連合会 電話 03-5366-2666
2.代行返上 社会保険事務所 
3.基金中途脱退 厚生年金基金連合会 電話 03-5366-2666
4.基金原則10年以上加入 当該企業


2005.10.09.
★年金カウンセリング → 基金加入員証

Q 基金加入員証というカードが出てきたのだが、これはなんかの年金だろうか?
--------------------------------------------------------------------------------
A それは、お宝ですねぇ。
以前、勤務されていた会社に企業年金のひとつ、厚生年金基金があり、それに加入していたという証拠の品です。
加入期間が何年何ヶ月あるかは、当該基金へ電話するか、または社会保険事務所に年金手帳等持参して確認できます。
加入期間が原則10年以上の場合は当該基金、10年未満の場合は企業年金連合会 (電話03-5366-2666)が取り扱い先です。
通常この年金は、国の年金の受給権が発生したときに終身受けられるようになります。
あなたの基金加入期間が3年あったとしたら、おおよそ年5万円ほどの年金が死亡されるまで受けられます。
終身にわたって金をくれるというのですから、放って置くことは無いでしょう!
こんなわけで、加入員証はお宝以外の何物でもないでしょう。
これをもらい損なっている人が大勢おります。友人にも、口コミしてください。
実を言うと、国の厚生年金は、基金加入のある人の場合、基金加入期間中の報酬比例分は支払われていないのです。つまり、国の年金はご本人が基金分を請求する、しないにかかわらず、それをマイナスして支払うのです。
ということは、ご本人が基金分を請求しないで放ってある場合、ご本人が損していることになります。
このことを誰も教えてはくれないでしょう。自分から動くしかないのです。


2005.11.29.
★年金カウンセリング → あなたの成功報酬

Q 以前、社会保険事務所で調べた厚生年金の加入記録があるのですが、43ヶ月でした。後、3号被保険者期間が20年です。これで、年金受けられますか?
--------------------------------------------------------------------------------
A 厚生年金と国民年金合算の場合は25年(300ヶ月)ないと受けられません。
Q やだ、受けられないの。
A でも、大丈夫じゃないですか、・・・・・・・
Q 何で?
A ご主人との婚姻期間があるでしょう。結婚はいつですか?
Q 昭和45年4月ですけど。
A その間、ご主人は厚生年金加入で働いていましたよね。
Q ええ。
A 昭和61年3月までの婚姻期間をカラ期間として使えるのです。
Q その期間を300ヶ月の計算に入れられるの?
A そういうことです。
Q じゃ、受けられるのですね。
A 戸籍謄本で、婚姻日の確認というのが残っていますけど。それよりも、旧姓はなんと言います。
Q 佐藤ですけど。
A 高円さんと佐藤さんですね。・・・・・・・。下の名前は、カヅコさん、カズコさん、ワコさん・・・・・・・。
Q 「かずこ」ですけど・・・・・・・。
A ううん、昭和37年ごろに働いていたこと無いですか、茨城の方で。
Q そんなこと、言われても、・・・・・・・忘れたわ、思い出せないわ!
A 「か」の付く会社なんですけど。
Q 「か」?・・・・・・・。中学を出て、すぐね! どこだったかしら。
A 工業会社ですよ。
Q 「か」なんとか工業?
A 思い出してくれないと、これは追加になりませんよ、しっかり思い出してください。
Q そんな風に言われても、・・・・・・・、関東工業、そお、関東工業でしょう。
A 正解! これが35ヶ月ありますから、年金としては、年10万円ほど上乗せになります。
Q 本当に! うわぁ、すごい! 10万円も。
A あなたの成功報酬ですよ。60才から平均年齢の85歳(?)まで、25年受けたとしたら、幾らになりますかねぇ。・・・・・・・250万円ですよ。
Q ほんとに、そうなるの?
A ええ。
Q それにしても、社会保険庁の記録管理はすごいのねぇ。40年も前の記録がパッと出てくるなんて。すごい! 驚きだわ。感動しちゃった。
今日は、本当に良かったわ、年金相談に来て! ありがとうございました。
A いえ、こちらこそ、お役に立てて良かったです。こういう機会を頂いて、わたしも嬉しいです。良く、思い出してくれました。相談員冥利でした。
Q 友達にも、早速口コミするわ。
A どうぞ、よろしく。


2006.02.11.
★年金カウンセリング → アメリカ帰り

Q アメリカに3年居まして、日本に帰ってきた39歳(男性)ですが、当面、国民年金に入っておこうと思うのですが、・・・・・・・。
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A 住民登録は移してありますか? それに、アメリカでは向こうの年金に入っていました? Social Securityカードを持っていますか?
Q いいえ、ありませんでした。住民票の手続きもまだです。
A でしたら、まず市役所に行かれて、その手続きをされたうえで、国民年金の加入手続きをされたらどうでしょう。
Q そうですか。パスポートで足りますかねぇ。
A さて、どうでしょうか? まず、行ってみてくださいよ。
Q そうしましょう。で、この年金手帳で、私の年金加入状況、わかりますか?
A ええ、すぐ出来ますよ。ちょっと、見てみましょう。
Q アメリカに行く前に3つの会社に勤めていたのですが、・・・・・・
A そのようですねぇ。自動車会社ですね、うち2つには厚生年金基金の加入もありますねぇ。それと、国民年金の加入も少しありますね、でも、今は日本の年金には加入していない状態になっています。全体の加入月数は、168ヶ月になりますよ。14年ですか・・・・・・・。
Q それが300ヶ月(25年)にならないと、年金にならないのですか?
A ええ、アメリカは10年ですねぇ。
Q う~ん、そうですよね、人生半ばにきて、老後が心配になってきて・・・・・・。
A そうですねぇ。あなたの年齢でしたら、ここでしっかり、老後のイメージを作ることで、充分間に合いますねぇ。
Q 大丈夫でしょうかね。
A 老後に最低限、国民年金があるようにしたいですねぇ。それが、長くなっている老後に対する最低限のリスク・ヘッジです。若いときの認識不足とか、その他もろもろの事情で、国民年金さえない悲惨な老後を迎えられる人もたくさんおりますからねぇ。国民皆年金とは名ばかりで、無年金者が増大していますねぇ。
Q そういう人が多いのですか?
A ええ、さまざまな理由でリスク・ヘッジが出来ないままの人がいます。そういう人は、生活保護に行かざるを得ないわけです。
Q そうですか。でも、なかなか国民年金保険料さえ払えない、払わない人も多いのでしょう。
A そうですねぇ。役所の不祥事があったり、制度不信が増幅したり、就職もままならない若い人も増えていますから・・・・・・、難しい局面を迎えています。
Q 世代間扶養で年寄りが余計年金を受けて、若い者ほど年金が少なくなりつつあるそうですねぇ。
A 確かに、そういう現実もありますねぇ。月30万円の年金世代と月20万円の年金世代がありますからねぇ。
Q そうなんですか、じゃあ、われわれの世代はもっと少なくなるんですか?
A そう、推察できますねぇ。政府はそういう世代間格差解消の一手段としてなのでしょうか、平成17年度から65歳以上の年金の税金を高くとって、格差を均そうとしているようです。
Q 政府も認識はしているのですねぇ、世代間格差を。それにしても、アメリカから帰って特に感じるのですが、日本は全ての面において、間口を狭めるというか、チャンスを与えないですねぇ。
A 閉鎖的ということでしょうか、鎖国的、島国的な気質、そこから派生するシステム、経済インフラ等もそのようになってしまうのでしょうね。
Q いったん道を外れると二度と戻れないんですね。そんなわけで、再就職が難しいんですねぇ。
A オープン・システムではなく、クローズですか?

A クローズ・システム故でしょうねぇ、大企業の定年退職者がここに来て言うセリフに「聞いてない!」というのがあります。社内のことは承知でも、社外のこと、世間のことを知らない無知蒙昧な人が多いですねぇ。そういうセリフを吐く人って、何様のつもりなんでしょうか。
Q そうですか、「聞いてない!」と言うのですか。たいしたものですねぇ、その顔の厚さは。そういう人たちだから、組織が不祥事を起こしても、誰も責任取らないのでしょうね。
A それだけではないでしょうが、それもひとつでしょうね。
Q いっそのこと、今の年金制度を廃止することは出来ないですか?
A それは、あまりに非現実的でしょう。仮に、そういう提案を政治家が国会に提出したとしたら、その議員は二度と国会に出られなくなってしまうでしょう。
そうであっても、年金改革案については、いろいろ議論はされています税方式とか、共済・厚生年金の一元化とか、なかには厚生年金を廃止して民間に移して、政府はナショナル・ミニマムとして国民年金の充実を図るとか・・・・・・。そお、いつの世にもアホな御用学者というのは後を絶たないもので、百年安心年金とか言っているひともいますが・・・・・・。
Q そういう既得権益集団がおおいのですねぇ。
A まだまだですねぇ。しかし、少しずつ動いているのも現実です。例えば、企業年金の厚生年金基金というのが在りますが、この制度は40年かけてようよう立ち行かないインフラだと認識され始めたようです。代行返上とか基金解散が進んでおり、新しいフレーム・ワークの確定拠出年金に衣替えしつつあります。ということは、ひとつの制度変更には大変長い時間がかかり、大変な忍耐が必要ということなのでしょう。
Q そうですか・・・・・・・。
A それに、日本人の気質というか、性格、国民性がそのような意識状態にならないと制度変更は無理ですよねぇ。
Q それが変わるのは、
A ええ、10年じゃなく、100年の話でしょう。それに、更に言えば、日本の戦後経済は、共産主義国家よりきつい統制計画経済でしたから、そこから脱出するのは困難を極めます。
Q 日本は社会主義国家なんですか?
A 実態はねぇ、形を変えた、ということです。
Q そうであれば、アメリカ流の観念は日本で通じないのは当然ですねぇ。
A そうですね。でも、通じなくていいのかも知れません。西欧風の合理主義、論理は胡散臭いですから。それよりも、日本の年金制度は三種の神器を構造化した計画経済インフラなのです。これを支えているのが、数理計算による計画主義なのです。年金とは、そもそも「数理が不要な制度」であるべきものだと考えます。数理を使うから、政官財の恣意が入ることになって、年金が弄繰り回されるのです。「5年ごとの財政再計算」というのはまやかしの最たるものです。
Q 大変なことになっているのですねぇ。
A 生半可ではないですよ、こういう風土を形成しているのですから、国民意識が形成しなおされるには時間がかかりますよね。
Q 短兵急にはいかないんですねぇ。
A ええ、不平・不満は多々あるでしょうが、全部懐にしまいこんで、なお日々の改革の積み重ねをプラス思考していくしか、処方箋はないのだろうと思います。
Q そうなんでしょうね。・・・・・・・思わず長時間(1.5時間)になってしまい、ごめんなさい。刺激的なお話が伺えてよかったです。
A とんでもない、こちらがしゃべりすぎました。
Q ありがとうございました。国民年金の手続きをしておいて、再就職できるようやってみます。
A 雇われるのもいいのですが、出来ましたら、この際、ご自分で起業することも視野にいれてくださいね。チャンスは与えられるものではなく、自分で掴むものでしょう。


2006.02.21.
★年金カウンセリング → 倒産、清算会社の年金!

Q 前に務めていた会社が倒産しているので、その分の年金は受けられないのでしょう。
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A 誰がそんなことを言いましたか? ご自分で決めているだけではないですか。
勝手解釈ですねぇ。
たとえ、倒産、清算会社であっても、その当時、社会保険料を納付していれば、その記録は保存されていますよ。社会保険庁は、昭和17年以降の記録を保管していますから。
つまり、その保険料納付に伴う、被保険者の年金加入記録を見つけ出せば、年金は受けられるのです。会社名とか、氏名、和暦生年月日等で社会保険庁のコンピューターから検索できます。
ご主人のような事例で、<別番号の放置>がされています。
・基礎年金番号に全ての記録が入っていると思っていたり、
・別番号を知らないので受けられないと決めていたり、
・年金は加入していなかったと思い込んでいたり、
・年金は難しいのではなから諦めていたり、
・倒産会社だし、被保険者証もないから受けられないとしていたり、
・調べてもたいした額ではないからと投げていたり、
・年金を受ける資格がないと決め込んでいたり、
さまざまな理由で、請求漏れ年金をそのまま放置していませんか? 一度、社会保険事務所に出向いて調べてみるといいと思います。あなたの成功報酬を手に入れるのは、あなたにしか出来ません。
日々、窓口では、無年金の人を数多く年金を受けられるようにしているのも現実です。諦めないことが肝心です。


2006.03.28.
★年金カウンセリング → 勝手解釈

Q 63歳ですけど、昔(昭和30年・40年代)は、女性は「ことぶき退職」といって結婚退職のときに厚生年金は脱退手当金をもらうのが通例でした。ですから、私の厚生年金は無いでしょ?
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A 当時は、日本の年金制度は未成熟で今のような年金が受けられるようになるとは誰も思いませんでしたから、皆さん脱退手当金を取られているようです。
しかし、ここで重要なことはそれが事実かどうか、確かに脱退手当金を受けているかどうかを確認する必要があります。
旧姓と生年月日と勤務先の会社名をそこに書いてください。記録を確認しますので。
3つの会社名がこの記録と合致しますねぇ。これは脱退手当金を受けていませんよ。受けているとおっしゃったのは、勝手解釈のようですねぇ。119ヶ月の厚生年金加入が残っていますねぇ。年間30万円ほどの年金が60歳から終身受けられますよ。遡り分だけでも、100万円ほどになるじゃないですか?
良かったですねぇ、勝手解釈は恐ろしいですねぇ。確認してみるものですねぇ。


2006.04.08.
★年金カウンセリング → 基礎年金番号以外のそれ

Q 社会保険労務士です。お客さんから年金加入暦を確認してほしいとの依頼があるのですが、どういう点に気をつけたらよろしいでしょうか?
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A 社会保険庁では、現在58歳の人には基礎年金番号に基づく年金加入記録を郵送しています。また、インターネットでも見られるようになってきました。
ただ、これらはいずれも基礎年金番号による確認ですから、それ以外に番号を持っている人、基礎年金番号には空白の期間がある人などは、別途確認が必要になります。現実に、基礎年金番号に統合されていない年金加入記録がたくさんあります。
年金加入記録を確認するためには、下記のような事項について情報がないと確認できません。
・氏名(離婚や養子縁組に伴う全ての旧姓、氏名の別の読み方等)
・生年月日(和暦、謄本と違っていた場合はその生年月日)
・勤務先の会社名等(所在地とおおよその勤務期間、出来れば業種、倒産清算会社も)
・海外勤務
・沖縄在住
・海外在住
・生活保護
・結婚
・脱退手当金受給期間
・配偶者の年金加入記録
これらの情報により、コンピューターで検索をかけ、年金資格確認を行うことになります。これを行うことでかなりの確率で、基礎年金番号に統合されていない記録が見つかります。
お尋ねについて、これらの事項を取りまとめた「年金履歴書」を作って見たらいかがでしょう。しかし、一番確実なのは、本人が直接社会保険事務所の窓口で行ったほうがよろしいです。といいますのも、細部については本人でなければ分からないことですので。第三者では限界があります。



誰も知らない厚生年金基金-代行返上前のドキュメント →15

2010年11月10日 | 厚生年金基金
第3章 事例で学ぶ厚生年金基金

  はじめに

これから年金生活の方、主婦の方々、若い人達にお読みいただければ、Q&A方式の事例を通じて、いつの間にか厚生年金基金の年金についてのおおよそがご理解いただけようになります。お暇なおりに、時々パラパラとご覧になってください。
また、このQ&Aについては、日付が入っています。厚生年金保険法等の法律改正によって、それ以降変更されることがたびたびありますので、ここでの回答に対しては、自己責任で対処してください。確認はご自分で行ってください。勝手解釈でケガをされるのはあなたご自身になります。他人に依存する体質は年金では絶対に避けたいものです。


1. 年金のキホン

2005.09.22.
★年金カウンセリング → 年金加入

Q 日本人はみんな年金に加入するのかしら?
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A 日本国籍のある20歳以上の人は、通常60歳くらいまでいずれかの公的年金(国民年金・厚生年金・共済年金等)に加入する法律上の義務があります。
ご自身の最低限のセーフティ・ネットとして不可欠と考えられます。いろいろ問題はありますが。
また、今、年金を受けている人たちも若いときには年金に無関心で来たのですが、おいおい関心を持たざるを得なくなってきたのです。
といいますのも、年金とは別の資産形成は、諸般の事情で難しいことをおいおい認識せざるを得ないのです。
それが分かってくるころに始めたのでは、遅いということがあります。
賢い人は、この辺の認識をしっかり持っている人だと考えられます。
批判は、それからの話でしょう。


2005.10.01.
★年金カウンセリング → 厚生年金基金掛金!

Q 昭和40年代に、給与で「厚生年金基金掛金」というのを控除されていたが、あれはなんだったのだろう?
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A よく思い出しましたねぇ。

それは、企業年金の一種で厚生年金基金という年金です。
国の厚生年金の一部を基金が代行して年金を支払う年金制度です。
原則、当該基金に10年未満の短期加入でしたら、その原資は企業年金連合会(H17.10.01厚生年金基金連合会を改称)に移管されています。
10年以上でしたら、当該基金から年金が支払われます。
加入の事実を確認するには、年金手帳等を持参して社会保険事務所で調べることができます。
これを受け取っていない人が大勢おります。忘れてしまって。
国の年金受給権が発生すれば、終身給付されるのですから、もらわないって事はないでしょう!


2005.11.11.
★年金カウンセリング → 基金って何だった?

Q 厚生年金基金って、結局、何だったのだろう?
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A えっ、そんな質問はあまり無いですよねぇ。それに、問題が大きすぎますねぇ。
それを話すには、まだ、時期尚早でしようねぇ。物事はある程度、時間の経過の波に洗われないと見えてこないのかも知れません。
とはいえ、取り敢えず、基金発足から40年ほど経過して、現状、基金解散や代行返上により、設立基金数は急激に減少しているのが現実です。そういう中で、新しい型の企業年金 → 確定拠出型年金もスタートしています。時代は大きな変革の波に晒されているのも現実です。
こういう中で、基金って何だったのだろうと問えば、当面言えることは、次の4点ほどではないでしょうか。
1.退職一時金という日本の土壌に、年金という考え方を普及させたこと。
2.日本経済の「3種の神器」というフレーム・ワークの限界、または終焉を認識させたこと。
3.日本に科学的資産運用のインフラ・ノウハウを蓄積させたこと。
4.どんぶり勘定(基金の財政)の限界認識と個人勘定への橋渡し。
と、いうことになりましょうか。
後世がどう評価するのか、若い人たちの見識を待ちましょう!


2005.11.30.
★年金カウンセリング → 資産運用は三流国

Q 厚生年金基金の掛金はどのように積み立てられているのでしょうか? 最近、基金の資産運用がうまく行ってないと聞くものですから。
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A 厚生年金基金では、毎月本人負担掛金と会社負担掛金を徴収して、通常、翌月1日に全掛金を資産運用に拠出します。
といいますのも、掛金を預貯金しといても将来の年金給付には不足が発生してしまいます。年金給付は、原則5.5%の付利をして支払うのですから。
預貯金では、不足金になりますので、もっと有利な金融商品に投資しなければならない必然があるのです。
とはいえ、むやみにハイ・リスクな金融商品に全面投資はできません。それでしたら、元本もなくしてしまう危険があります。そうなれば、「受託者責任」も果たせません。
そこで、厚生年金基金では、国際分散投資を目指すことになります。資産配分をリスク計算の上で決定して資産運用をいたします。
たとえば、株式40%・債券20%・外国株式15%・外国債券5%・不動産5%・現金5%とかの資産配分を決めて、金融業者(信託銀行・生命保険会社・投資顧問会社等)に委託します。
ここで、重要なポイントは、個人負担の掛金も会社負担の掛金も、他の加入員分の掛金も1ファンドの集合勘定として運用されるということです。あなたご自身の掛金として色をつけて資産運用されるのではないということです。
この資産運用で、不足金が発生したときは、原則会社が負担することになります。ファンド運営の責任は会社にあるからです。
最近、この資産運用がさまざまな事情で、うまく行かなくなり、会社が不足金のアナを埋められなくなってきています。ここから、基金解散とか、代行返上という事態になりました。
要するに、日本経済は、製造業の国であって、資産運用の点では三流国なのです。


2005.12.18.
★年金カウンセリング → 加入員証

Q もう年金受けているが、家の机の中から「加入員証」が出てきたのだが、これって何か年金に関係あるのかなぁ?
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A ちょっと、見せてください。●●基金ですねぇ。昭和45年4月1日の資格取得で、脱退が49年3月、ということは4年ほど厚生年金基金に加入していたのですよ。この分の年金は受けていないのですか?
Q えっ、年金もらえるのかい!
A もらえますよ。年間7万円位、終身ですよ。
Q ほんと! どうすりゃ、いいんだい?
A この企業年金連合会へ電話してください。請求書を送ってきますから。
Q それを送り返せば、いいのかい。
A そういうことです。ところで、ソーシャル・セキュリティ・カードは有りませんでしたか?
Q 何、それ?
A 米国年金の加入の証ですよ。
Q それはないねぇ。海外には出たことないから。
A そうですか、この10月から、それも年金になるようになったものですから。
Q そお、どうもありがとう。


2006.02.25.
★年金カウンセリング → 基金の資産総額

Q ちょっと変な質問しますが、厚生年金基金の資産ってどのくらいあるのですか?
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A 待ってください、資料があったと思いますので、・・・・・・・、
平成12年度、日本全体の年金資産は、278兆円でした。平成10年度の日本のGDP494兆円でしたから、ほぼ56%でした。
その中で、厚生年金は140兆円(年金資産の50.6%)、
厚生年金基金は60兆円(年金資産の21.6%)、
適格年金は20兆円(年金資産の7.2%)、
国民年金は9兆円(年金資産の3.1%)、
各種共済49兆円(年金資産の17.5%)でした。
これが、厚生年金基金最隆盛時の状況だったと思います。
現在では、厚生年金基金は代行返上や基金解散で大幅に資産減になっています。
詳細は、企業年金連合会のHP等をご覧になってください。


2006.02.28.
★年金カウンセリング → 末日退職と年金支給開始

Q 2月28日生れですけど、この2月で定年になり、厚生年金は2月末日退職でやめますが、年金はいつから支給されますか?
---------------------------------------------------------
A 3月1日、社会保険資格喪失になりますから、年金の支給が始まるのは4月分からです。
Q えっ、それじゃ、3月は給与もなし年金も無しなの? そんなの、ひどいよ!
A と言われましても、これは、厚生年金保険法等の法律によって定められていますので、3月分年金についてはどうにもできません。
A じゃあ、2月27日退職であったら、
Q 3月分から支給されました。
A そうなんだ、聞いてなかったねぇ。
Q 聞いてなかったと、おっしゃっても、たとえば、運転免許証取るときなんかも住民票が必要になるでしょう。聞いてなかったといっても免除されるわけではないですよね。ともかく、提出しなければ免許証はくれませんよ。
聞いてない、というセリフは、ご主人が世間知らずなだけですよ。その世界には、その世界特有の条件があるのですから、聞く耳を持つ必要がありますよね。
Q う~ん、そうなんだろうが、・・・・・・・。
A それに、付け加えれば、年金請求して翌月に年金は振り込まれるなどということはありませんから。3ヶ月程度しないと、口座には振り込まれません。また、年金は後払いだということ。前2ヶ月分が当月15日に振り込まれます。年金は基本的に偶数月の2ヶ月払いになっています。給与みたいに毎月ではありませんからね。
Q そうなの、知らないことばかりだ。
A 実際の年金振込みは、ご主人の場合で、3月に年金請求して6月頃に4・5月分が振込まれるということになると思います。初回だけは、奇数月に振り込まれる場合もあります。
Q この改善策は検討されているのかな。
A ええ、着々と行われてはいますけど、何しろ、大量の事務処理ですから。
Q 様子がおおよそ分かりました。請求書を早く出すようにします。
A 請求書提出は、2月27日以降になりますからね。
Q これにも、決まりがあるんだ! うわ、うわ、だねぇ。


2006.03.15.
★年金カウンセリング → 退職金か確定拠出年金か

Q 会社から退職金にするか、確定拠出年金にするか、選択を求められている50歳ですが・・・・・・・。
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A 退職金も確定拠出年金も、共に制度本来の趣旨からすると、長期勤務を前提にしています。なので、途中退職の場合、不都合が生じることがあります。
何らかの事情で退職することになったとき、退職金はその時点で支給されますが、確定拠出年金は原則60歳以降にならないと支払われません。
この両制度の仕組みを承知しとかなければ、いざというとき、ハタッ!と言うことになり、自営業や起業の際の資金と考えていても払い出しが出来ないということになります。
この話には、次があり、またお話いたします。



誰も知らない厚生年金基金-代行返上前のドキュメント →14

2010年11月09日 | 厚生年金基金

5.基金の見た資産運用環境

この国の資産運用環境に遅れて参加した厚生年金基金は、大蔵省の産業資本調達システムと化している統制市場と風説の流布等により賭場と化している投機市場、<人様のお金>を業者にかっさらうがままにさせている政府・国民の拙劣な資産運用文化の後進性を見せられることになりました。

併せて、基金自体の資産運用文化の度合いを振り返ってみることにもなり、丸投げとも言われる全面的な「お任せ運用」の実態に愕然とすることになりました。

どちらにしても、資産運用に関しては日本全体が0からのスタートであることは変わらないのです。資産運用すべき元手がない<肉体労働>の汗水時代が長く続いてきて、突然、金が積み上がって来たのです。それなのに、政府も行政も学会も金融機関も企業も個人も、そして厚生年金基金も、<資産運用>についてはまったくのド素人であり、プロフェッショナルがいない状態なのです。

厚生省管轄の厚生年金基金制度の中に資産運用という省をまたぐ問題がクローズアップされ、監督当局が縦割り行政の弊害で二つになり、行政の整合性がはかりがたくなっていました(直近ではこれが4省問題になっています)。それが図らずも具現されたのが、先般の紡績業裁判での司法当局の判例と厚生省が推し進めている受託者責任の考え方の相違であります。国の指針のこうも明らかな相違は政治の明確なビジョンが確立していません混迷期特有の試行錯誤の一つかと見るにはお粗末に過ぎやしないでしょうか。法制・行政サイドにも、不勉強な経験のない偏差値秀才しかいなくて、プロと呼べる頑健な者が育成されていない実態が明らかになってしまいました。

さらに、制度発足以来、基金の世界では、信託・生保を資産運用のプロと位置付けてきましたのは、昭和時代の終り頃まででありましたろうか。今にして思えば、基金自体のド素人程度から推し量り相対的にプロでありますと、基金が勝手に責任を押しつける意味で使っていたのであり、護送船団体制の中でぬくぬくと生きてきた者逹の化けの皮が剥がれてみると、ド素人より質の悪い全て金太郎飴のゼネラリストのゴマスリ集団にしか過ぎなかったのです。

一方、年金基金の資産運用を担う役職員はどうかと言えば、行政サイドや金融機関等と同様に単独・連合設立基金では基金事務所の位置付けさえ一般企業ゼネラリストのキャリアの2~3年の通過セクションでしかなく、悪くすればゼネラリストの墓場となっていましたし、総合設立基金の天下り役職員に至っては社会保険行政経験者ではあっても複式簿記すら知らず、ましてや資産運用業務など夢の又夢のような仕事でありました。
つまり、戦後、日本全体が総じてゼネラリストと化していて専門職を育成しなかったのです。ゼネラリストの金太郎飴集団だけで足りるような統制を実行してきました結果、得たものは統制によって囲い込まれた巨額な金融資産と、それに反比例して国民の全体主義的封じ込み、国民の子羊化をもたらしてしまったのです。

このような環境の中で、基金の資産運用能力も行政サイドに封じ込められていて何もない状態でありました。基金経営の観念も資産運用という哲学も金融の実務も、ましてや経営指針も運用方針も運用体制も、さらに戦術的に重要なノウハウ(マネージヤー・セレクション、カレンシー・オーバーレイ、アクティブ・ヘッジ等)もない、まったくのゼロ状態でした。

運河の国オランダの郊外はこんもりとした森の多い国で、1990年に地方小都市の基金事務所を訪問したとき、調査団のバス(UDにあらずベンツ)が訪問先の事務所が森の中で分からなくなってしまい、しばし立ち往生。街角の花屋のガーベラ咲き誇る店先で。



図表30 厚生年金基金の修正総合利回り

*修正総合利回り(%)=(収益受入金+当年度末評価損益-前年度末評価損益)÷(元本平均残高+前年度末評価損益+前年度末未収収益)×100



事務所からの迎えの車に先導され森の中の街路をしばらく行くと、敷地を示す簡素な門を入って森の中の点在する木々の下の芝生が見事に養生された中の曲がりくねった道を5分も走っただろうか、3階建ての事務所の前にバスは止まった。見れば、事務所わきの小屋の前に「PENSIONENFONDS PGGM」とシンプルに記されていました。

ほとんどが森の広大な敷地の中央に3階建ての独立ビルを構えたこの年金基金事務所は加入員数36万人、年金受給者6万3千人というオランダの病院および福祉事業従事者を対象とした基金で、オランダで二番手の大きさの基金とのこと、職員数は600人である。

部屋を薄暗くして行われたプレゼンテーションで印象的だったのは、年金をインフレからまもって保証することを基金の目的にしていること、35年という長期展望のもとに計画をたてていること、分散投資に注力していること、不動産投資で極東・日本にまで投資しているとのこと等々でした。1990年当時の日本の厚生年金基金レベルとは天と地の開きの有る現実に、調査団一同ただただ呆然とするばかり。叩きのめされたようなインパクト!

あれからほぼ10年、グローバルな金融の世界ではいろんなことがあったし、本邦金融機関にも未曾有な事態が押し寄せ、日本の基金サイドの研究・情報収集も進み、資産運用規制もほとんどなくなり運用体制も徐々に整ってきました。資産運用環境の激変はかってないスピードと量で行われています。

マネーの論理は、ついにソビエトの統制経済をも打ちのめしてしまいました。ロンドンには金融のウィンブルトン現象が発生し、東京には純然たる本邦金融機関は無くなりすっかり外資系金融機関と提携するに至りました。ベアリング、米国大和證券、住専、日産生命、山一、託銀、長銀、大蔵省等々、明らかになるのは<旧来組織の疲弊>ばかりです。ブレ幅の大きくなったボラティリティ増大のデリバティブ市場にβの資本資産評価モデルあり、投機に特化した莫迦なヘッジファンドあり、非相関運用あり、世界同時株安で怪しくなってきました国際分散投資理論ありで、市場環境はグローバルでボーダーレス化し、運用技術の多様化・高度化につれ瞬時性を高め、次々と規制・統制を破壊しつつあり、それに連れてリスクは高まる一方です。



【出所:「人様のお金-厚生年金基金は何になるのか」 平成12年】


誰も知らない厚生年金基金-代行返上前のドキュメント →13

2010年11月08日 | 厚生年金基金

4.<人様のお金>

「・・・・・・・アメリカのお金USドルにはコインでもお札でも必ず "In God We Trust" と書かれていることをご存じだろうか。これは日本語にすれば「富を神に信託する」という意味になるでしょう。」と、大場昭義氏は『資産運用ビッグバン』で指摘しています。

日本人にとって「神」は別にしても「 Trust 」は研究するに値する概念でしょう。
発祥は14世紀以来の英国封建時代の領主と領民との争いの判例の積上げで生み出された信託法のようです。

1933年米国ルーズベルト大統領の「今われわれが必要としているのは、他人の財産を預かって運用する銀行や企業、その他機関のマネジメントの責にある人々は、資産を預けた人々の『受託者(trustee)』の立場にあるという、古来の真理を再確認することなのです」(日本経済新聞平成11年11月19日夕刊十字路:井手正介・学び忘れた「受託者責任」)という言葉で信託ということが意識されました。

1960年にハルブレヒトが『年金基金とその経済的な権力』を著し、1974年にエリサ法成立、1976年にドラッカー『見えざる革命』出版、1986年に英国ではIMRO成立。

そしてついに、この日本で1997年厚生省の「受託者責任ガイドライン」が成立し、1998年には厚生年金基金連合会から「受託者責任ハンドブック(理事編)」が追加され理事の行動指針が示され、「受託者責任ハンドブック(資産運用機関編)」(筆者はこのワーキンググループに参加)も2000年4月に発刊の運びとなってきたところであります。

年金法の確立はまだ数年先のことでしょうが、米国に遅れること60年余、エリサ後でも20年余、英国に10年余でようやく研究が始まったばかりです。

日本のtrusteeまたはfiduciaryの観念が育まれていなかった過去の30年余に、厚生年金基金は企業と加入員の拠出金(掛金)を預かって、加入員・年金受給者、それに受給待期者に帰属する資産を資産運用機関と資産保管機関(日本では通常この2つの機能を総幹事会社がはたしている)に預けて管理してきました。

政府の超低金利政策だけで資産保全が図れなかったのではなく、年金積立金に対する様々な見解の相違によって積立金の保全が達成されなかったのも事実です。

それは、日本型資本主義(統制・計画経済手法、株式持ち合い体制、含み資産経営、ゼネラリストの法人代表というフィクション、本来の株主不在、三種の神器等によるインナーサークルに限定された家族主義的資本主義)の「和」に埋没しました「個」の平安という価値観、あるいは個の十全な展開を旨とする欧米風自由主義の効率性とは相違した「和」の観点から全てを取り込む際の効率性等によって、年金積立金の保全は次善のテーマにされ、ないがしろにされてもきたのです。

つまり、日本型資本主義は別の文脈に作り替えるというか、独自な文脈を創造したのであって、西欧風資本主義とは意味の異なる別の言葉を生みだしたのです。
このため、日本型資本主義には理念としての法の精神や会計原則、年金受給権などという考え方は問題にもならなかったし、日本型資本主義のロジックには<人様のお金>という観念は当初から存在しなかったのです。

株主の金でさえも自分たちの金にしてしまう<横領>を官民ぐるみで構造化したインフラストラクチャーを仕組んでいたほどであるのですから。この意味では、法人株主とか金融機関の株式保有などという実態には、巧妙なからくりが仕組まれていると言えばよいのか、とてつもない知恵が含まれていると言えばよいのか、一義的に判断出来ないのかもしれません。

先にも触れましたように、基金の年金積立金、つまり加入員・年金受給者、それに受給待期者に帰属する資産を、功労報奨的退職金と考えたり、社会保障の一環と位置付けたり、法的な信託資産・保険資産と解釈したりしてきたのです。

さすがに、基金の役職員には、年金積立金を基金のものですとあからさまに主張する人はいなかつたようですが、実際の運営の場面ではそのように曖昧な帰属のために、自分の金だとか、会社の金だとかという認識で傲慢になったり、勝手な法解釈を強引に展開したり、保身のために経営サイドに提供したり、危うい場面が幾つもあったことも事実ですし、現に今でも<危うい常務理事または理事長>が散見します。

要するに、ゼネラリストやテクノクラートの恣意的行動が許容されてしまう程度のインフラしか現在のところは確立していないのです。功労報奨的退職金からすれば会社の金だと言う発言も納得出来ますが、退職金の位置付けが一旦後払い賃金ということになれば、またはその一部でも基金の加算型に組み込まれた部分は会社の金だと言うわけにはいかないでしょう。

それでは適格年金はどうかと言えば、会社の金になるのか。通産省なら、そう言うでしょう。それもこれも、退職金の位置付け次第でしょう。これらの混乱の上に代行分の位置付けも曖昧になっているわけです。

世界の常識からすれば、退職金は<後払い賃金>として確定しているようですが、日本もいよいよ国際会計基準の導入、退職給付債務の採用で、有無を言わせず<後払い賃金>説で新しいフレーム・ワークを構築せざるを得なくなってきているのでしょう。ということは、そういう考え方の背景にある世界観の、哲学の変更を求められているということです。

ところで、日本で<人様のお金>と言えば否定的に使われる「人の金」という言い方は別にしましても、また、英語の Other People's Money の文脈(レバレッジを効かしたときに生まれる金? OPM)はいざしらず、<徒や疎かにできない人様のお金>と形容されるのが一般的です。

ここには長い時間をかけて形成されてきた日本人の倫理観、宗教心、商道等の神髄が表明されていると考えても間違いではないでしょう。

と言うのも、我々日本人は聖徳太子のころから、農耕的風土を背景に狩猟民族とは違い人をあやめてはならないと言われるより、人様のものをくすねてはいけないと、ことある毎に教育されてきたのであり、<徒や疎かに>してはならないと、父母からきつく言われ続けてきたのです。これが日本人の心性の基盤を形成しているし、形成してきたのです。

つまり、trusteeやfiduciaryの外来観念で考えるまでもなく、日本語の語感、倫理感覚で<人様のお金>と言えば、含有蓄積された文化・歴史・慣習等から日本人の哲学、宗教、倫理、道徳の神髄に触れる或る規範が自ずと浮上してくることになるということです。ことによると、trusteeの神髄は<人様のお金>なのかも知れません。

例えば、エリサ法における404(a)(1)の忠実義務の条文にある「基金の受託者は基金の加入者及び受益者の利益においてのみ任務を遂行しなくてはなりません。」という規定は、<人様のお金>から考えると至極当然のことで新ためて取り上げるまでもない事柄です。ここから、原資産保全や機関投資家としての行動が始まるのではないでしょうか。プルーデント・マンからプルーデント・インヴェスターへ。

ところが、どうでしょう。日本ではこの心性はバブル経済によって麻痺したと言う以前に、戦後の経済復興を果たす過程で組織的・構造的に奪取されてしまったのです。日本の金融秩序は大蔵省の金融行政とそれに絡まり付いていました銀行、生保、証券、事業法人等によってインモラルの極みに達してしまったのです。

<倫理>などという言葉は久しく聞いたこともなく、<倫理>などと言うものなら、坊主臭いとかで村八分にされるのがおちであります。ましてや、<徒や疎かにできない人様のお金>などというフレーズは死語になってしまっていたのです。



それはいわば「沈黙の規範」とでもいうべきものです。しかし、その「沈黙の規範」としてのアイデンティティさえも失われれば、その社会の経済は、グローバリズムの「浮遊する金融」によって翻弄される以外にない。個人の生もこの「浮遊するもの」の中で浮沈を繰り返すだけである。市場の運動には容易には取り込まれない、また侵食されない「沈黙の規範」だけが、人々をかろうじて「確かなもの」につなぎ止めるのではないだろうか。
「自立した個人」とは、この「沈黙の規範」つまりその内面にアイデンティティを自覚した者でしかないと思われるのである。

    佐伯啓思『幻想のグローバル資本主義』下巻ケインズの予言






恐らく、現在でも大蔵省や銀行、生保、証券、事業法人等の面々にこの言葉はナンセンスそのものであり、この言葉をかけられても能面のような死に顔を返すだけのことでしょう。

人の心の琴線に触れさせるためにも、お蔵入りになっている<人様のお金>という言葉、活字を巷に溢れかえすことも必要かもしれません。新車の売出しのように金融業が軒を連ねる道路に幟を建てますとか、インターネットにバーチャル広告を縦書きで何気無く流すとか・・・・・・・。

戦後日本の経済復興を可能にしました統制・計画経済手法も、平成バブルと日本版金融ビッグバン等を通じて機能不全が明らかになりましたが、そこに現れました非効率・アンフェア・ローカルな数々のモドキ・システムの無残な姿は、隆盛を極めていました金融機関または企業経営の法人論理の終焉を意味していたのです。

持ち合い株の放出、国際会計基準との調整、すなわち退職給付債務の計上、キャッシュ・フロー計算書の導入、時価会計への転換、FCEPS、EV/EBITDA指標等によります企業評価等のインフラストラクチャー整備により含み経営から市場指向経営への転換「不自由・アンフェア・ローカル」(山本昌弘)資本市場のグローバル化達成が急を告げています。


「年金革命」が突き付ける課題は、日本型資本主義と日本的経営そのものの清算的出直しだ。

末村 篤「年金が企業経営を変える」
-「見えざる革命」の日本での展開






アンフェアと言えば、大蔵行政と同様に金融機関や企業経営の法人論理が<人様のお金>に対して、強弁の勝手な論理を構造化して、恰も<自分たちの金>であるかのように行動してきたことは多くの人が知ることになったのです。

「免疫の乏しい基金の人々」が統治・管理している<人様のお金>が、金融・証券業界でターゲットにされ、<自分たちの金>にすり替えられるリスクに晒されているという悲しい現実があります。

それは次々に交替する渡り鳥ゼネラリストでなくても経験も学習もしないでは手玉にとられるのは明らかですし、金融業界・年金業界が善意のモラル溢れる業界であるわけがないし、理事長や常務理事の肩書がセーフティ・ネットになんかなりっこもない世界なのです。

逆に、それを餌に甘言が飛び交う世界なのですし、誘惑・勧誘は一際多く、恐喝、恫喝、窃盗、横領、見えない暴利の搾取等に溢れかえっているのです。御膳立ての世界を生きてきた渡り鳥ゼネラリストにとっては短期間の猛烈な切磋琢磨をするか、或いは、いっそ逃げ出すしか対抗手段の無い世界です。

その一端は、次のような数冊の本だけからでも察知できると思います。

J.ステュアートのミルケン/ボウスキーを追いました①『ウォール街 悪の巣窟』、ウォール街証券マンの実態を書いたレビン/ホファーの②『インサイドアウト』、ウォール街の投資銀行からSEC委員長に就任しインサイダー取引の取り締まりに力を注いだジョン・シャドを書きましたD.A.バイス/S.コルの③『ウォール街から来た男』、ウォ-ル街は巨大な幼稚園ですというM.ルイスの④『ライアーズ・ポーカ-』、デリバティブといいます「怪物」にカモられる日本というパートノイの⑤『大破局(フィアスコ)』、大蔵省権力に羽交締めにされているデモクラシーを活字化した石澤靖治の⑥『ザ・MOF』、日本の金融ゼネラリストと金融官僚の不様な行動を描いた井口俊英の⑦『告白』、ガリバ-を震憾させた男のひとりぼっちの戦い大小原公隆の⑧『野村告発者』、ウォール街1年生のスタイルズの⑨『さよならメリルリンチ』、米国投資銀行のトレーダーで稼いで今は独身・無職・都心マンション暮しの末永徹の⑩『メイク★マネー!』、・・・・・・。


オルタナティブ・インベストメンツのセールスが盛んなようです。
要は、金融法人が逃げ、事業法人もプリンストン債に懲りたので、食い詰めた怪しいセールスマン達が免疫の乏しい基金の人々を狙っているというのが、証券業界側から見た構図です。腹立たしいことではあります。

或る証券マン Eメール私信・2000/1/31





今更ではないのですが、人の心の咎めが外れやすい<人様のお金>は、こういう人間の欲望が活動し易い<おいしい餌>でもあるのです。これもまた、為替リスクなどと同様な基金の経営リスクの一つです。<人様のお金>と読んだら、インモラルに処分してしまいましょうと考えるか、何がしかの慎重さが湧き起こって来るのか、最後は個人個人の内面の問題ということになるのでしょうが、それとは別に単なる無知故にいつの間にかインモラルの世界に巻き込まれてしまうリスクというものもあるでしょうし、現在ではむしろこの無知故にというリスクの方が高いのでしょう。今後の問題として日本でも米国のペコラ委員会のようなものは不可欠になるでしょうし、インサイダー取引に対する厳重な規制も必要になるでしょう。

そうして、一般的にこういう事情を知れば知るほど、語りは暗くシニカルに否定詞で占められることになりますが、人間の生きる意味はおそらくこの否定詞を踏まえてなお肯定の世界を建設していく営為にあるのでしょう。
その意味では、米国のエリサ法や欧州のIMROは一つの金字塔です。日本でも、愈々そのような努力が大蔵省の金融サービス法や厚生年金基金連合会の受託者責任研究会等で始まったところであり、学究の世界での大陸法と英米法の見直し、信託概念の見直し、契約から信認(信任)概念の研究等々が動きだしています。




LBO(レバレッジド・バイアウト)は今また流行している昔からのアイデアで、見事に儲かるが恐ろしいほど簡単なからくりだ。
「レバレッジド」という言葉はOPMすなわち、「他人の金(other people's money)」という言葉を婉曲に表現したもので、「バイアウト」の方はそのままの意味である。

D.レビン/W.ホファー『インサイドアウト』
-ウォール街証券マンの栄光と転落








とは言え、制度や法律等の構築に際して、演繹的に大上段に構えて全てを決定する大陸法的な方法に対して、法的根拠足りえる代替の蓄積、言うなれば判例の積み重ね(エクィティの裁判)という英米法的方法が有りえるとすれば、前者が小人数で<決める>、後者が多数人により<決まる>という方法で、どちらが現状にフィットするのでしょうか。敗戦からの復興計画ではないのですし、官僚が全てを共産主義的に決定するという事態ではないでしょう。敗戦時並の混乱期であるには違いないのですが、現在は自由主義的に決定されるという場面でしょう。



最後に、信認法を1つのカテゴリーとして認めようという主張として加えるべき点は、それが、他の人々の正直さに依拠し信頼するという関係のモデルであるという点です。
アメリカにおける契約は、それと対極にあるものです。それは、不信や独立、自らのみを恃みとすることを表しています。
私たちは、社会のなかでこの両方のモデルを必要としています。しかしながら、私が理解するところによれば、日本では、契約に、信託と信頼の要素が相当に含まれています。
仮にそうであれば信認法に対する需要はそれほど大きくないでしょう。
しかし、アメリカについては、これは本当に決定的なポイントなのです。

樋口範雄『フィデュシャリー[信認]の時代』-信託と契約
T.フランケル教授(1997/5/20東大法学部セミナー)言明






その意味では、「現代」という時代の最大の特徴は多義的であるということです。場面は多面的で輻輳していて価値観は多様ですので、天才とはいえ一人でとり押さえられるものではないのが現実の実相です。

効率市場の株価形成や実需が圧倒的に少ない為替市場のレート決定のように、多数の人間の意思が反映される方式が現代の形式でしょう。それが、NPOであったり陪審制であったり、信認、地方分権、パブリック・コメント等の試行錯誤な活動でありましょう。

その上、これらの活動が従来のそれと違うところは、一様に経過的なもの、アメーバー状の活動だということです。確定したものはなく、確定へ向けての運動ばかりということであります。

付言すれば、日本で<人様のお金>と言われる対象は、確定給付型の厚生年金基金の資金に限定されるものではありません。公的年金、共済年金を始めとして、税金、生保や損保の保険料、株式資本、証券、預貯金、信託、社会保険料、弁護士料、訴訟費、地方交付税、財投資金、税金、PKO原資、為替介入資金、公債・国債、海外経済協力資金・・・・・・・等々も<人様のお金>であり、要するに経済活動のほとんど全般を網羅していると考えられます。むしろ、純然たる<自分の金>のほうが少ないのでしょう。そしてそれらのそれぞれの場面で、新たな問い直しの動きが始まっているようです。金融パニック、円キャリートレードや超低金利政策等の<否定詞を踏まえてなお肯定の世界>へ向かって。



【出所:「人様のお金-厚生年金基金は何になるのか」 平成12年】


誰も知らない厚生年金基金-代行返上前のドキュメント →12

2010年11月07日 | 厚生年金基金
●経営指針達成の方策
一般に基金の世界では「経営指針」とか「経営戦略」を掲げて事業推進を行うなどということはあまり聞かない話しです。しかし、明確な意識、戦略、マーケティング等を持って事業が行われてはいなくても、例えば年金給付は確実に行われなければならないとか、効率的な資産運用の追及とか、中脱者への受給権通知は100%実施するとか、高齢加入員への年金説明会の開催とか、老後生活の福祉の提供とかが個々に行われているのは事実です。

その意味では、基金は確実に運営されているとは言えますが、逆に順法主義の整合性維持のためにハイコストを負担している事例(年金支払通知の都度送付、現況届への市区町村長証明の強制、雇用保険との給付調整、平成10年の非恒久的な公的年金税制改正等)も目立つようになってきています。

また、年金資産の別途積立金の取り崩し、再計算等の財政状況開示、資産運用委託先決定、同シェア変更等々の場面における客観性・透明性確保について受託者責任に抵触します事例も出てきています。

更に、基金には、規約に始まって各種の規程・契約が数多く整備され法制体系は整ってはいますが、如何せん従来手法によるものなので、官主導が強すぎたり、時代錯誤でしたり、なにも規定してない規程であったり、時代にそぐわなくなってきてもいます。

そのような中で、受託者責任ガイドラインが示されて、5.3.3.2規制の撤廃を受け資産運用基本方針も改訂され、基金会計の時価会計移行を踏まえて新規に財政運営規程も制定される等々、新しい基金のフレーム・ワークの決定が着々と進んでいます。
これら多様な事項を個々に判断する際に、基金事務局では、ベースになる考え方を「基金」に対する各役職員のイメ-ジから発した各々の状況の読み取りに個々人の政治的・政策的な取捨を加えて形成しているものと思われます。

ということは、事務局内の個々人とのボトムアップ的調整によって良くも悪くも平均化(民主主義?)されたスキ-ムとなってしまい、レンズによって集約された太陽の光りの一点のような高エネルギーを秘めたものにはなっていません。

そこで、基金を動かしていくうえに重要になってくるのが、上記<レンズ>の機能を果たす「基金の経営指針」であり経営戦略です。これはもとより基金の哲学、ビジョンが背景にあることは論を待たないことです。総論として、ある程度普遍性のある基金一般として考えられる経営指針を基金制度発足30年の歴史と経験を踏まえて「似たような経験の蓄積」(R.ジアモ)が行われてきました基金の現場から帰納的に導きだすと、ひとつの事例として次のようなことになりましょう。


基金の経営指針

1.基金設立趣旨達成のため、経営資源の有機的連結により年金受給権の確保、並びに年金給付水準と福祉の向上を図り、加入員等の老後生活保障機能を実現する。
2.この原資を確保するため、合理的かつ効率的な資産運用を推進する。
3.これにより、加入員、年金受給者等、並びに母体企業(株主)に、老後生活保障を低コストで提供する。




当然、経営サイドからすれば一家言があって良いのですが、残念ながら現今の本邦経営者にこの問題について発言する人物は今のところ見当りません。というより、残念なことに本邦経営者に年金問題について認識している人が少ないということ。退職給付を「功労金」と位置付けたまま「労働の対価」とは認識せず、退職手当引当金を引き当てていれば足りるという認識です。引当金という認識から年金債務という認識への移行には大きなギャップがあり、時代の変化がそのまま写しだされているようです。

振り返ってみれば、退職金の年金化(適格年金でしょうと厚生年金基金でしょうと)は、単に経営者が節税効果や経費の平準化効果を享受できただけには終わらず、年金債務を背負ったということです。問題の所在は認識されつつあるようですが、とてもビジョン形成にまでは至っていないようです。そうではあっても、今後、1、2年で導入される国際会計基準等のグローバル・スタンダードにより本邦経営者はそれを強制されることになります。後追いでは事業は成功しません、直ちに経営者のビジョン形成、ビジョン呈示を期待したいものです。たった今の本邦で、トップダウンが示されない経営土壌であれば、現場の基金事務所からボトムアップの上記のような<基金の経営指針>で対処せざるを得ないでありましょう。緊急とはいえ、このことは余りにもおこがましいことなのか、それとも問題がそういうことを内包しているのでしょうか。多分、僭越云々というレベルを遥かに超えたところに問題は所在しているのでしょう。

それは、我が国が戦後の復興を果たし国民の個人資産1200兆円を積み上げた時点で発生した従来手法の頓挫から新手法への移行、新しい社会経済構造の構築、我が国の文化の再建という一大イベントです。この壮大な企画を実現する端初を「企業年金」に見ている論者が少なくとも二人(加藤寛「日本の構造改革と企業年金改革」ライフデザイン研究所『平成9年版企業年金白書』・末村篤「年金が企業経営を変える」日本投資信託制度研究所『FUND MANAGEMENT』№9.10)はいるということは僭越云々を案じることではないのでしょう。問題が問題である認識を持てばおこがましさを反転できるでありましょう。

仮に、おこがましいという感覚が基金事務局に残存しているとすれば、それはサラリーマン根性、傭われ人、ゼネラリストの感覚であり、そういう者逹の思考回路の内部にも延長線の上にも、この問題に取り組む足掛かりは無いでしょう。
先に筆者が述べてきました「運営から経営」というのは、「ゼネラリストからオーナーへ」ということでもあり、それはこの問題への関わり方を<我が身に近付けて>行うと言うことです。つまり、意識改革が必要なのです。住み分け、分の弁えなどという謙譲の問題ではなく、このことは国民一人一人の個人の重要課題であり、例え政府だとか、ましてや官僚、或いはオ-ナ-などに譲ってはならない事柄です。一人一人が自分の考えを、ビジョンを、哲学を持つべき事項であり、そのために先ず自主性とか主体性というより「個の確立」が求められるのです。

図表29 日本版ビックバンの内部構造






この意味では、日本には長いこと己れ自身で物事を考える(哲学)という思考習慣が育っていなかったと言えるでありましょう。お仕着せの哲学もどき(統制経済、終身雇用・年功序列・国民総サラリ-マン等々)の下、日々の食の確保に汲々とし身を投げ出して(ゼネラリスト・単身赴任・うさぎ小屋等)働いてきて、ようよう国民資産1200兆円となったとき従来手法に待ったを掛けられ、新たなビジョンが要請されるようになり、いよいよ<哲学>の出番になったということでしょう。
しかも、その哲学は伝統的な機能・演繹の二元論ではなく、「似たような経験の蓄積」(R.ジアモ)の果てに生じる統合された直感によって構想される類いのものでしょう。

さてさて、本論「経営指針達成の方策」に入りましょう。厚生年金基金の経理は、複式簿記(平成10年度からは時価評価)で行われます。健康保険組合を初めとして一般に日本の官庁簿記は単式簿記(俗に小使い帳方式)で行われています。このことが財政運営の上で、運営主体の独立性確保に際して大きな影響力を生み出してきます。例えば、健康保険組合の老人保険拠出金のような国家経理が直接一民間健康保険組合に侵入するのを許さざるを得ないようになっています。

ここでは官庁簿記は別のことにして、基金で行われている複式簿記の貸借対照表と損益計算書による経理の考え方について触れてみます。

基金は一般的に、貸借対照表の借方の資産を守り、貸方の債務を果たすことで、加入員等の老後生活を保障することを設立趣旨としています。つまり、資産の保全と債務の遂行のために基金は掛金を徴収し、年金を支払うことになります。これを全うするために、受給権を保護し、受託者責任を果たさなければなりません。このことは、基金は常に資産と債務のバランスを視野に入れました<最良執行>を求められているということになります。基金は<最良執行>を達成し、事業主と加入員等にローコスト・ハイリターンの老後生活保障を提供することになります。

これを達成するために基金事務所ではミクロの積み上げが重要になってきます。とは言え、ミクロを単発で個々バラバラに行っていては基金の顔が見えて来ないことになりますし、そういう基金の多いことも実態ではありますが、そこで、重要になってくるのが「経営指針」に基づく資源の集中化・集約化、経営資源の有機的連結による資本のシナジ-効果を高めることであります。

具体的には、<資産運用>を中心にして衛星的に<給付改善>と<福祉事業>と<広報事業>を配置し、これらの有機的連結によってローコスト・ハイリターンの老後生活保障を実現することになります。

一例として、業務の機械化により基金の自主性を確保しローコストを実現しインフラの武装集団に変貌させます。実務的には、Ⅱ型の業務委託をⅠA型に移行し、総幹事委託から指定法人委託に切り替えます。 次いで、<給付改善>の一環としてハイコストを内包している代行型を加算型に変更します。その上、母体企業の財務体質を悪化させている退職金制度を基金に取り込み、母体企業の財務体質改善に寄与すると共に基金の資産規模を増大させます。その延長線上に、単独設立を関係会社の事業所編入により連合設立へ移行し、基金の資産規模を一層拡大し資産運用効果を増大させます。



劣悪な市場と天動説経営を続ければ、ジリ貧の悪循環から抜け出せな
いことは明らかだ。年金を中心とする国民の資産運用の観点から、金融
・證券市場と企業経営を捕らえ直せば、日本の現実、日本的経営と日本
型資本主義は「革命的」な転換を遂げねばならないことが分かる。

末村 篤:年金が企業経営を変える~年金から見た日本資本主義論~
㈱日本投資信託制度研究所「FUND MANAGEMENT」 '97.夏季号





<福祉事業>の原資は原則資産運用の利差益とし、各種補助金を始めに高齢加入員向けの老後生活設計作成の機会提供、OB会運営、遺児育英資金提供等々を行い、加入員等の視線を自然に基金に向けさせるよう仕掛けを作ります。更に、<広報事業>の展開において、経営指針の理解徹底を期してポリシー溢れる編集を企画し、ディスクロ-ズを高めつつ、<我身に近い>、「同心而離居」なものを醸成していき、年金額の嵩に変えられない或るものを作り出します。年金受給者がここの基金に加入していて良かったと思ってくれるような、そういう或るもの。最後に、<資産運用>の最良執行を図るために、猛烈な金融関係の学習と運用改善の実施、コストダウンの追及を行い、運用実績を高めていくこと。

とは言え、これらのミクロの事象を個々バラバラに戦略もポリシーもないまま行うのではなく、加入員・年金受給者等に意味付けを与えつつ、同時並列的に有機的連結を維持しつつ、包括的に再々継続的に事業実施をすることで「似たような経験の蓄積」を高めて基金理解のインセンティブ(誘因)を醸成することが必要です。そうして始めて、当初の経営指針は達成されるのです。



【出所:「厚生年金基金事務長奮闘記」 平成12年】
【出所:「人様のお金-厚生年金基金は何になるのか」 平成12年】

誰も知らない厚生年金基金-代行返上前のドキュメント →11

2010年11月06日 | 厚生年金基金
  ●代行の本旨
厚生年金と退職金の調整という代行方式は、フレーム・ワークの観点から国の社会保障制度の一環としての社会保険と位置付けるか、民間企業の従業員福祉・厚生なのか、立場により議論の分かれるところです。といいましても、代行方式であるかぎりそれら両方の性格を併せ持っているというのが現実でしょう。その現実が代行問題を複雑にしているということもまぎれもない事実です。加えて、政治と行政介入による制度維持が複雑さを増進させてしまいました。<調整年金>などという政・官・民の現実癒着的な妥協が許され、それなりに機能しました制度発足時の国民意識は30年の時の経過につれて深まり広がったのでありましょうか。その点では、代行を担保した制度ゆえに官僚の過剰なかたくなな行政介入を容易にし、逆にそれが国民の依存体質を増してしまったのではないでしょうか。危険な兆候ではありますが、官僚自身に解決すべき責任があるとさえ考える自主・自立心の欠落した国民意識を醸成してしまったのではないでしょうか。

このように、社会保障と企業福祉の性格を併せ持ってスタートした厚生年金基金制度は、代行部分があるために国の社会保険行政との整合性を強要されてきたという背景を持っていました。併せて、確定給付制度ゆえに民間企業の雇用・賃金・人事等からの影響を直接受ける構造にもなっていました。この二つのフレーム・ワークの現象とは別に、積立金が積み上がる迄はとくに問題にもなっていなかったのですが、不足金が恒常的になってくるにつれて隠されていた本来のものが顕在化しつつ基金制度(代行方式)の本質が徐々に明らかになってきました。

それはつまり、厚生年金と退職金の調整という機能を負託された代行方式は当初から合成の誤謬だったのであり、その内部に組み込まれていた積立金の性格について制度発足時には官僚にも企業にも金融機関にも認識不足・ミスリードがあり、断定的固定的に一律5.5%の付利を予定するだけで足りるとみなし放り置いた経緯があります。日本人一般が資本などというものはガサガサといじりまわせば湧き出て来ると考える程度の傲慢な世間知らずな認識レベルでしたのであります。積立金を資本の価値、今風に言えばROE(株主資本収益率)やEVAの視点で見るなどということが全く無かったのであり、<積立金の資本性行>についての認識が欠落していたということです。このことが代行方式の頓挫を招き、凍結などという事態に立ち至ったということです。これは、完全に計画統制経済方式の裁量行政が立ち行かなくなったということになりましょう。

要するに、代行制度の本旨は<資産運用マター>であるということ。社会保険でも、退職金制度でもないですということ。携わるのは行政エリートでも、サラリーマン・ゼネラリストでもなく、資産運用のスペシャリストになります。<政府マター>でも、<運営マター>でもなく<経営マター>であるということです。一例として、日米のROEにそのような経営姿勢・経営手法の相違による格差が典型的に顕れていると考えられます。


世界の中で行動する日本企業が、国内での閉鎖的な場を行政の力で作ることはアンフェアと言われても仕方がない。すなわち、行政指導によって国内業者の協調を 維持することは、閉鎖的な構造にならざるを得なくなる。透明性と開放性が要求される中、これを実現することが喫緊の課題となる。

吉田和男『官僚集権からの脱出』




図表26 世界主要企業のROE比較






  ●代行故の官の介入
厚生年金本体との整合性維持で、厚生年金基金制度が免除保険料率等の凍結などといいます<駝鳥の保身>のような末期症状を呈する事態に立ち至りましたのは悲しむべき事態の成立というより、穴中の頭部の外はほとんど全身を危険に晒したまま内外条件の整備を待ちつつ制度の本来の姿へ展開する一プロセスなのだと見る方が客観妥当性は高いのではないでしょうか。つまり、この凍結措置は慶事なのです。とは言え、内外条件の点検・見直しは不可欠ですが。

厚生年金と退職金の調整という代行方式の中核は、30年経過してどうなっているのでしょうか。<調整機能>は達成されているでしょうか。本来、制度発足の主旨からすれば代行型は皆無で、全基金が加算型で、それも退職金は100%移行されていてもよいはずですが、事実はそうなっていないようです。単独・連合基金でも代行型のままの基金も多く、退職金の移行も大半(年金給付の理論値プラス・アルファ40%~50%に集約)は一部移行留まりです。少数ながら、利に聡く、財務内容の善い企業は退職金を100%移行し企業財務に退職金勘定がない状態を作り出し財務の効率性を高め、<調整機能>を達成しているところもあります。更に、国際会計基準の導入が間近になり、退職金を100%移行しているか否かで退職給付債務のPBO不足金の格差を広げ、財務体質、格付けを改善しているところもあります。

一方、民間活力の活用で制度発足しました基金業務の<民活度>は高まったのでしょうか。

これも、行政サイドの法令・通知・指導という体系に全面的にからめ取られ、気がついてみれば、厚生年金基金制度は「死に体」となっていたのです。それは、基金が日本の社会・経済構造の軋みの典型になったという意味なのではありますが。

 というのも、超少子・超高齢化のインパクト、国の統制・計画経済方式による立法・司法・行政の疑義多発、政府の金融・財政政策の行き詰まり、本邦金融制度の後進性露呈、社会保障の機能頓挫、企業活動のグロ-バル化に伴う構造改革、官離れを始めた国民意識の刷新等々、諸々の軋みが総じて基金問題に噴き上がってきているからであります。

この間、基金の現場では様々な場面、例えば免除料率の改訂、給付改善、業務の機械化、代議員会等の運営、福祉施設事業の展開等々の場面で行政サイドとの折衝経験は蓄積されてきましたが、行政判断のブラツクボックスは透明化されず、この辺り、あの線まで、こういう組み合わせであれば等という疑義申立ての類推・想定のレベルでしか行政を動かし得ず、事務局レベルで多少の業務改善(代行型から加算型への移行、業務委託Ⅱ型からⅠA型への移行、退職金の基金への一部移行、数理業務の指定法人化、総幹事離れの達成等)は行えたものの、大半は<社会保険行政>の中に取り押さえられたままなのが実態でした。

一方、厚生省の審議会方式や厚生年金基金連合会等の委員会組織を通じての熱心・執拗な改善申立て、要望書の上申等の方式で実現されたものは、資産運用の規制撤廃インフラ整備等の面で多大なノウハウの蓄積・経験を果たしましたが、基金制度そのものの前提を廃棄するような制度改革の進展がないまま推移してきてしまったのも事実です。そのほかに、圧力団体陳情方式や政治献金方式、接待攻勢方式等、様々な方式が試されてきたのがこの30年の経験です。

しかし、社会保険制度の一翼と位置付けられた代行制度に対する裁量行政そのものの妥当性はあらゆる場面を通じて間接的に再々問題にされてはいましたが、直接問い質されることがなかったのも事実でしょう。それが、社会・経済の軋みの高まりにつれて誰の目にも裁量行政の機能不全が明らかになってきたのです。数年前から厚生省も自ら行政の隠れ蓑として使われていたと噂の年金審議会を廃止し<裁量行政から事後監視型行政>への転換を表明しつつあるようです。こういう動きは、厚生省のみのことではなく、総務庁を始め大蔵省、通産省等にもみられる行政サイドの一般的な現象となってきたようです。

要するに、最近の規制緩和により「民活度」は様相を一変してきました面もありますが、代行ゆえの厚生年金本体との整合性維持の介入も極まり、凍結の事態になったということでありましょう。


フリードマン 私たちはよく、一国社会を政治的機構を通じて組織化すべき  か、それとも経済機構を通じてか、といったことを抽象的に論じます。あるいは命令 経済ないしは計画経済対交換経済、といった抽象的な次元で議論します。しかし、事
実そのものに即して調べてみれば、命令機構にその大半を依存して実際上組織化で
きた社会なんぞ、人類史上に一つもありません。そんなことをするのには、人びと
はあまりにも多様であり、問題があまりにも複雑だからです。

西山千明編著『M.フリードマンの思想』




  ●最良執行
 厚生年金基金は、その設立主旨(加入員の老後生活安定の一助に年金給付を行う)の達成を図るため、最善を尽くす<最良執行>を求められています。

 それは単に、職員の人件費削減、または業務費のコスト削減などという管理・運営レベルのものばかりではなく、経営体としての高度な質、受託者として委託者(株主・企業・社員等)にローコスト・ハイリターンな還元を行うこと、インフレやデフレの経済環境を越えて長期に渡る老後生活安定の方策を提供する統治(ガバナンス)が求められています。

 つまり、金融ビジネスとして利害関係者に付加価値を提供するように経営することが課せられているのです。
これを達成・成就するために、行政サイドからは厚生年金本体との整合性維持を求められ、民間サイド(母体企業)からは費用対効果での成果を要求されます。



図表27 厚生年金基金業務委託費比較表






そのうえ、基金自身は給付の安定性確保のために、様々な社会・経済状況の影響をクリアーしていかなければならないように仕組まれていますので、加入員の激減、資産運用手数料・業務委託費のハイコスト、総幹事制の恫喝営業、業者の横並びによる競争メリット享受の排除、持株の政策運用が力を持つ資産運用、受給権保護、裁量行政下の民間活力発揮、金融パニック下の資産保全策、政府の統制経済(低金利政策等)下、制度維持対策等々の場面で、クオリティの高い最良執行が求められることになるのです。

 しかし、残念なことにこれらの圧倒的な力に立ち向かうには基金の最良執行達成能力は余りにも弱体でしたし、限界がありました。

 基金の事務所体制は、ゼネラリストの2、3年の人事ローテーションがまかりとおるのが一般であって、とても、強固なかたくなな規制を行ってきました行政サイドと大蔵省の虎の威を借りて金融プロを詐称していた業者等に、対抗できる力を充分に蓄積できなかったのが現実です。

 それは、たとえ理事長であってもゼネラリストの超短期なローテーションではノウハウと経験を持ち合わせず、行政の規制で身動き取れないまま、業界の事情にも通じていないので運営もままならず、ましてや経営も統治も出来る世界ではなかったと言えるのです。つまり、構造的に基金の最良執行達成の経営権は没収されていたということです。

一方、この<基金の経営権>確立のために、個々の基金の限界を踏まえた団体としての政治的な活動も継続的に熱心に行われきました。

 各都道府県の厚生年金基金連絡協議会、厚生年金基金連合会の各種委員会・研究会、単独連合厚生年金基金協議会、総合厚生年金基金協議会等々で制度の研究が継続され、厚生省等へ基金のあるべき姿・将来の方向等の要望が再々行われてきました。

 個々の場面毎の困難さとは別に、長期的な観点から見ると、このような基金を取り巻く環境の中で、基金の最良執行を方向付ける<経営指針>はおもむろに立ち上がってきたと言えるでありましょう。

 官僚やゼネラリストお得意の「決める」という性急・無知な手法ではなく、社会情勢の変化、諸団体の民意反映の改善要望等と相俟って、小さな基金の30年という長い時間と理事長7、8人、常務理事5人、事務長5人、それに代議員300人程等々の多数の関係者の手を経て、その時々、場面、場面で大勢の人々の英知が現実と再々の対決をすることで<経営指針>が「決まってきました」とは言えるでしょう。

 これは多数者構成の市場では、<決める>ではなく<決まる>というのがセオリーになっていることと同じと考えられるのではないでしょうか。

このようにして、個々の基金に蓄積されつつある知識と経験とノウハウは、他の業界に見られない独自なもの、つまり広く日本の資産運用一般を考えたとき、他に例を見ないインフラとノウハウを築き上げたということは間違いのないところでしょう。<決まった>というレベルではなく経過的、途上にあるものですが。



図表28 信託銀行の厚生年金基金戦略に対する厚生年金基金の戦略













 30年余の経験と執拗な意欲によって、諸々の環境が徐々に整備されるにつれて、掛金徴収団体の<運営意識>は、グローバルなボラティリティの高い金融環境の中で、負の遺産の精算を思案しつつ掛金と給付のバランスをとる生産性の高い<経営意識>に変わりつつあります。

 母体企業または加入員・年金受給者等にローコスト・ハイリターンな還元が行える場面に到達したということは、まさに<経営の時代>に突入したということでしょう。


誰も知らない厚生年金基金-代行返上前のドキュメント →10

2010年11月05日 | 厚生年金基金
3.代行の金縛り

●代行の由来
基金制度が考えられた背景には、昭和30年代後半の物価上昇や人手不足等により賃金が上昇し、併せて退職金も年々上昇、企業は財政上その支払いに振り回され、経営が不安定になっていたという事情がありました。

そこへ厚生年金と退職金の費用負担の調整が経営サイドから浮上し、税の優遇を受けた資金手当の平準化が可能な企業年金制度が創設されたのです。初めに税制適格年金が厚生年金基金制度の発足までのつなぎ措置で昭和37年にスタート、昭和41年には厚生年金基金制度が厚生年金の一部代行という世界に類をみない方式でスタートしたのです。

これは、言ってみれば一方的に経営サイドの要望によって創設された制度なのです。自らの意思で基金設立を認可申請した企業は、本体代行・確定給付・事前積立て財政・5.5%の予定利率・独立法人方式等々で契約し、事務負担・債務負担を承知の上で給付を約束したのです。

制度がスタートしてからは、大蔵省の産業資本調達の統制計画経済をバックグランドに厚生省の裁量行政が始まり、大蔵省に通じていた信託・生保の各種の既得権益確保も制御出来ずに、信託・生保の恫喝営業(例えば、持株比率によるシェア分配強要、持株を餌に解約拒絶、信託・生保の一営業員がアポも取らずに社長面談要求、事務局に対して上の方で決定しているのですからと理事長印を求めたり・・・・・・)も見ぬ振りを通したり、俗に言います箸の上げおろしにまで法的根拠の無い厚生官僚の裁量により介入したり、経験者でなかったらばわからない数々の実態(たとえば、業務委託指定法人のカンバンだけ営業、実際には事業を行う人的・物的設備のないままカンバンだけだしているのを承知もせず、申請がありますから指定法人にしているだけという厚生官僚とか、総幹事制度での掛金拠出・年金給付業務のとりまとめに対する報酬はお幾ら? に答えられる官僚も信託・生保も常務理事もいないというのが実態であり、答はせいぜい別体系と言い逃れるだけとか)があります。

結局、日本の厚生年金基金制度というのは、厚生年金と退職金との「調整手法」の代行という妥協の産物に、官僚が民間の要望を信託・生保に利便を提供するという形で成立した政府の政策マターで始まり、政治家の集票のために再々の年金引上げにより社会保険マターとなり、ここにきて内部に仕掛けられていた本来の金融マターとしての<代行>というのが明らかになってきたということでしょう。



公共的な便益のための手段が整備されればされるほど、それらを民間
の手で実現しょうとするインセンティブは少なくなることを知らなくて
はなりません・・・・・・。
自立心は他へ依存する度合いが高まるにつれ徐々に弱められていくの
は確かである。

C.P.キンドルバーガー『金融恐慌は再来するか』





そういう由来をもつ基金制度ですが、最近の財政逼迫に際して、30年前の契約の無効を政府にすがって免除してもらおうとする者、又は、契約破棄を望む者がやたらに多いということは、或る意味では、日本の法治国家としてのレベルの低さを表すとともに、法を捩じ曲げても自分の主張を通おそうとするのは、先般の大蔵省・銀行・証券会社等を巡る一連の不始末で明らかになった日本の経済・社会構造と同一の他者依存体質を未だに残存させているということではないでしょうか。

これは、別に言えば、戦後から50年に及ぶ統制経済の裁量行政の強権下で、聞く耳を持たなかった頑なな行政サイドの対処の仕方に対して国民がすっかり対抗的に官依存体質を固めてしまい、官が問題解決をするのが当然の義務とする風潮を生み出しているのかもしれません。そうであるとするなら、そのような官を育ててきたということで国民はまたまたここでも高額納税を強いられることになりましょう。堂々巡りの非効率の極みです。こう言うのを<国民的ロス>というのでしょう。


●代行型はハイコスト!
厚生年金基金は、国の厚生年金(老齢年金)の一部を代行して支給するため、厚生年金保険料の一部を厚生年金本体に納付することが免除されています。この免除される厚生年金保険料率は<免除保険料率>と呼ばれて、従来は全基金一律に定められていました。

しかし、各基金の年齢構成等の違いから各基金が代行給付に必要なコストは異なり、基金間に負担の格差が生じていることから、その是正を図るために平成8年4月から<免除保険料率>が、各基金が代行に必要な保険料率(代行保険料率)に基づいて一定の範囲で複数化されることになりました。(最終的には個別免除保険料率に移行の予定)

基金を設立・加入した社会保険適用事業所の厚生年金保険料は、免除保険料率の保険料を厚生年金に納付せず基金へ納付します。このため、厚生年金保険料は平成8年度現在月額給与の17.5%ですから、基金設立のある場合は免除保険料の、例えば3.6%であれば、3.6%がマイナスされて13.9%を国庫へ厚生年金保険料として納付することになります。厚生年金保険料は、事業主との折半負担となっているので、本人負担保険料は6.95%となります。当然、事業主は、折半負担の6.95%を会社負担して厚生年金保険料を納付します。

一方、免除された厚生年金保険料(先の例では3.6%、事業主負担1.8%・本人負担1.8%)は、基金の代行分以外の給付(プラス・アルファ分と呼ばれています)のための基金掛金を一般的に全額事業主負担で上乗せして基金に納付します。
結局、本人負担は基金が設立されていても設立されていなくても同じ負担で、プラス・アルファの負担は基金設立を行った事業主が行います。




図表25 掛金負担率の事例





上記の事例のアミカケの部分で、基金が設立されていても無くても、加入員の負担率は8.675%で同率ですが、事業主の負担率は基金設立があると14.675%-8.675%で、6.0%上乗せ負担が行われています。代行型の基金であれば、加算年金部分がないので、基本掛金の部分のみとなり2.3%と1.8%の差0.5%の上乗せ負担が行なわれます。

さて、基金制度発足から30年に及んで免除保険料率の決定は、厚生年金の被保険者全員を対象としました基金が現時点で発足したと仮定したときに必要となる代行部分の平準保険料率ということになっていました。つまり、保険学の母集団としての厚生年金の平均値を、個別の財政運営を行っている基金に適用していたということです。このため、基金の仲間内では代行部分を賄うのに必要な掛金(基金は保険料と言わず、掛金という言い方をする)率が、免除保険料率より高い基金もあれば低い基金もあり、早くからその不合理が指摘されていました。

端的に言えば、大企業の製造業基金では社員の平均年齢が低いため代行に要す掛金率が低く一律免除料率では余剰が出るが、繊維業等の不況業種や慢性的に高齢化業種である運輸業等では逆の現象で一律免除料率故の代行不足料率が大きく毎年不足金が発生し、それを避けるため事業主は高負担を強いられるということが、平成8年度に免除料率の複数化が導入され不合理の一部が改まるまで、制度発足から30年間続いていたことになります。さき頃解散した紡績業基金の解散はおそらくこの免除料率の全基金一律適用によるガン細胞が仕組まれていた為ではないでしょうか。

この<全基金一律の免除保険料率適用>のため、不利益を被っている基金と利益の付替を受けている基金が全国一律の平均値を使うことによってバランスがとれているというのが官僚的思考回路です。「平均値」の抽象世界でこと足れりとする頭脳が把握する現実認識に対して、官僚的思考経済方式の「平均値」で切り捨てられる部分にこそ、本来の現実があるとするのが民間の見方でしょう。この<全基金一律の免除保険料率適用>について「一点豪華方式」の死守という行政手法を30年も維持してきて、この度ようよう「一点豪華方式」の弊害、官僚の「決め事」以外の世界にこそ現実があるということが現実(紡績業基金等の解散)になり、さすがに頭脳明晰を誇る官僚集団も自分たちの頭脳が視野狭窄に陥っていたことを認識しはじめたようです。「一点豪華方式」(リ-ガル・リスト方式)から「上限-下限方式」のグローバル・スタンダードへシフト替えをせざるをえなくなってきています。

ABC基金は給付乗率11.4/1000の代行型で設立され、平成元年に代行型資産の有効配分(横滑り)により①加算型に移行しましたが、加算型移行の一般的な方式の企業の退職金の移行は必要ありませんでした。ついで、平成4年には、会社の退職金の10%を基金に移行し②第2加算年金制度を導入しました。更に、再々申請していました③「60歳無条件給付」が平成7年には導入出来、一応年金給付のフレーム・ワーク改善は達成されました。

ABC基金は昭和54年頃から給付改善の課題に取組み始め、平成7年まで17年間かかっていますが、この間に「事が成る」という不思議な経験を度々させてもらっています。というのも、「事」というのは一朝一夕に成立するものではないですという当たり前のことの経験なのですが、諸般の事情、つまり人的配置、法律改正事情、継続的な改善熱意、財政事情の好転、無関係な部分からの突然の後押し等々が合い絡まって、「事が成る」という時はあれよ、あれよという間に成立するものです。懸命に意図的に成立を目指す時よりも、むしろ、なかば諦めた時にこそ「成る」という事態は起きるようです。そういう観点で、通貨マフィア行天豊雄氏が言う統制・計画経済の手法<決める>ではなく、<決まる>という考え方があるという考察は共感できるところがあります。

昭和50年代から平成5年位までの免除保険料率は千分比で<30/1000から32/1000>の全基金一律時代でした。

ABC基金は運輸業の業態故に社員の高齢化は製造業より10歳ほど進んでいました。このため、毎年度、数理人から報告される「代行に要す掛金率」が免除保険料率を大幅に上回っていました。(平均年齢のみをここでは抽出しているが、他にも脱退率、昇給率等の数値が保険料計算には用いられる)

つまり、代行型を維持するために運輸業の事業主は高負担を強いられていたのです。<全基金一律の免除保険料率適用>下の代行型は、運輸業等の社員の平均年齢の高い業態では全基金一律故にハイコストが組み込まれていたのです。逆に、大企業の製造業等にはロ-コストが制度化されており、大企業優遇、強いて言えば中小企業からの収奪がセットされていたのです。

この間のABC基金の不足免除保険料率は▲1.6‰から▲5.3‰程度で、年間保険料にすると、▲11百万円から▲45百万円(ABC基金の年間掛金の3%から10%に相当)の不足が内在していました。

ABC基金では、代行型(給付乗率11.4/1000、内、事業主の上乗せ給付乗率は1.4/1000)の給付を維持するため、設立から加算型へ移行するまでの19年間に掛金総額44億66百万円の内、免除料率不足に伴う給付維持総額11億21百万円を事業主は基金に払い込んでいました。

この給付維持額11億21百万円の年平均額は62百万円となり、この間の年間掛金平均2億48百万円の<25%>に相当します。つまり、代行型基金の法人維持のため、厚生省は<25%>の負担増を強いていたことになります。

ということは、代行型給付を維持するためのコストとして事業主は基金掛金の<4分の1>(免除不足料率3.78/1000と本来負担料率7.22/1000の全体掛金率43/1000に占める率)を負担せざるを得ない状態になっていたのです。この<4分の1>の絶対値としての大小は計り難いのですが、せめて10%以下であれば経済値として許容値足りえるのに免除料率不足に伴う給付維持額としては過大に過ぎないでありましょうか。
この点と、先の全基金一律方式のまやかし等を考えると

  代行型はハイコストが仕組まれている!


と、結論付けて間違いはないでしょう。(中にはローコストの基金もありますが。)
これに対してハイコストを避けたいのであれば、社員の平均年齢の引き下げに努力されたい」というのが、従来の官僚行政のテクニックである。とは言え、業態故の社員の高齢化を改善する等ということは一企業にとって至難の業です。そうかと言っても、ハイコストを負担する方はそれでは済まされません。一方で、連合会を通じての厚生省への「要望」という手法での個別免除料率導入への道は前途の展望が開けない状況にありました。このような状況で、ここにニッチはないですかと研究するのが、民間の活力ということでしょう。

さて、代行給付維持の観点を離れて、<全基金一律免除料率適用>に対する行政手法のまやかしを問う観点から免除不足による事業主の<超過負担額>を推定してみましょう。ABC基金では、これを問うことにより代行型から加算型へ移行することを成し遂げたのです。

行政手法のまやかしとは言いますが、現今の日本の年金は「平均的に62.5歳支給開始」が一般的であるとの行政の決め事がたまたまABC基金の現実は99%が「60歳支給開始」である故に生じる言い方ではあります。62.5歳という一点豪華主義行政と60歳の現実の相違により、そこに統計数値の平均化によりまやかしが現象することになります。

<全基金一律免除料率適用>が続いたABC基金の26年間の掛金総額84億5百万円の内、8億81百万円(10.5%)が免除料率の不足による超過負担額です。


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2010年11月04日 | 厚生年金基金
  ●事務長の読んだ金融本

筆者の基金事務所への通勤時間は片道1時間程ですが、往復の実質1時間が日々の貴重な読書時間です。通勤途上の読書中は次からつぎに出現するエキサイティングな本に夢中になり、東海道線東戸塚駅の高層ビル建設ラッシュを知らずに過ごしていたほどです。

その読書も、平成時代に入るまではもっぱら個人的な嗜好の哲学関係の本ばかりでありましたし、昭和62年末に10年かかった前著『情緒の力業』を脱稿し終わったところで、読書については虚脱状態でした。

 ちょうど、そのタイミングに日本経済は長期に渡る低成長に突入し、あわせて年金基金の資産運用がかんばしくなくなり、金融関係の読書が始まります条件が整ったことになりました。

しかし、金融だとか、経済とかの実業の世界は、高校は電気、大学は哲学という筆者にとってまったく不案内の世界で、方法も手段も、概念も歴史も承知しないまま、やみ雲に目に触れたものから読み始めるという原始的な方法でスタートすることになりました。

本の世界は現実の世界とは違いますが、本の世界のインスピレーションは現実の展開の起爆剤となりえますし、本の世界の現実を揺さぶる力、別の現実の喚起力はどのようなメディに比べても数段力強いようです。筆者も前著に至る読書経験で、数多くの本が或るとき核融合を起こすように一つのメッセージに結晶するという至福を頂き、<哲学よ、さらば>と言い終わったところでした。

ところで、一般に基金事務所と<金融>の関係は「お任せ運用」と表現されるように全面委託方式であり、<金融>との接点が薄い社会保険の世界でした。筆者も経済のこともさることながら<金融>のことはまったくのド素人でした。事務所に<金融>の<金の字>もない状況であったのです。あの低成長経済突入のころには。

それでも、昭和60年厚生年金基金連合会の資産運用研修会が始まり、欧米の資産運用調査が毎年30基金ほど参加して行なわれだし、平成2年資産運用拡大の認定が行なわれるようになり、基金の世界にも<金融>が入りだしました。平成2年、筆者も機会を頂き2週間の欧州年金事情調査に参加させていただきました。とは言っても、<金融>の事柄は常務理事とか、事務長の特定者に限定されていてなかなか理事長とか、職員を含めた事務所全般に広がりませんでした。ましてや母体企業役員や人事・財務の管理職、それに代議員等には尚更のこと。

或るとき、金融関係読書を筆者だけで終わらせることなく事務所全体に広げ、金融関係の共通経験を図り、事務所全体のレベル向上を目指すような、インセンティブ(刺激)を与えるような何かうまい方法がないかということで、事務所で昼職後の休憩時間にぼんやり考えていましたところ、突然<ひらめき>が走りました。

思えば、昼職後の休憩時間というのは新しいアィデァ、突然の視線の変更、<ひらめき>等の出やすい幽霊時間かもしれません。

その<ひらめき>というのは、ワープロの報告書形式で読書感想文を1、2枚作成し、事務所の皆さん全員に読んでもらったらどうであろうか、というものでした。

というのも、筆者の事務所では、事業実施に際して「伺書」(会社の決済書、稟議書)を、研修会や説明会の出張の際には事後に「報告書」を提出し、事務所全員に回覧することになっています。これも、以前は手書きで半日はかかる代物でした。最近は、パソコンによるペーパーレスまでは進んではいませんが、ワープロの複写機能を使って、全員が同じフォーマットで簡単に作成できるようになっています。これを使ってみてはどうでしょうという<連想>であります。

試験的に、その昼休みにワープロを使って読み終わっていました『ウォール街のランダム・ウォーク』について読書報告を書いてみました。そして、それを職員二人と常務理事、理事長に回覧してみました。

以後、一冊金融本を読み終わると、昼休みに報告書を書いて回覧することが始まりました。

平成5年9月から平成8年2月(或る事情が出来て中止)まで、2年6ケ月、報告回数140回を数えました。昼食後の1日30分ということは年間70時間になります。時間はひねりだすもののようです。

「継続は力なり」ということを89番目の報告書で書いていますが、報告回数140回という物量は、単に物理的次元を越えて、或る発言をするようになるものです。VHSの高野鎮雄さんのメッセージではないですが、<熱中が命>ということでしょうか。





【出所:「厚生年金基金事務長奮闘記」 平成12年】



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2010年11月03日 | 厚生年金基金
  ●フレーム・ワークの刷新
一般に、厚生年金基金制度のフレーム・ワーク(給付建て年金・設立形態・給付形態・業務委託形態等々)は年金問題に国民の関心が薄い時代に行政と金融機関により厚生年金と退職金との「調整年金」として創出されたものです。

それも、制度創出の大宗は金融機関ベースで企画・提案され、法律として決定されたのであり、ましてや、基金自体の関わりはなかったのです。

こういう背景のため、基金は事業展開において全てを所与のものとして、金融機関が提案しましたフレーム・ワークに沿った法律や通知で与えられているのであって、事後的に生み出された団体として受動的に事業展開をせざるをえないことになっていました。

また、母体企業との関係上も人的、物的、金銭的場面で保守的に振る舞わざるを得ないことになっています。ましてや出向人事の総合職の配転が再々行われる事務所に、ノウハウの蓄積も継続的な経営ポリシーの維持等も達成されないままでしたし、そういう隙間に長いこと総幹事会社(信託銀行と生命保険会社の独占)から金融インフラ(数理業務・法制維持・資産運用管理・バックオフィス業務等)の提供があったため、行政と業者の基金育成という美名の下に総幹事会社の政策的な支配を許してきた面もあります。



(アメリカン・カフェ・チェーン創始者ロバート・)ジアモにとっての直感とは、「似たような状況において蓄積された経験であり、いわば内面から湧きあがってくる推測のようなもの」であった。そして「直感そのものは内なるロジックをもっているが、そのロジックは言葉で表現できるものではない。それは内在している数多くの情報であり、その人の中にある何かによって、その内的情報が互いに結びつけられて経験へと変換していく。その経験とは、問題解決に向けての分析の統合でもある。」と説明してくれた。

R.B.タッカー『価値革命への挑戦』
-価値イノベーターのマーケティング戦略




要するに、基金は独立の公益法人として税法上も優遇されてはいますが、与えられましたフレーム・ワークのみでは自主性・独立性は無いに等しいのです。それ故に、「基金運営」とは言いますが、「基金経営」と言う人は皆無なのです。基金は、フレーム・ワークの拡張を意図すべきですが、たった今、基金にはその背景をなすフイロソフィもマネジメントもマーケティングもないのが現実です。<基金の哲学>、つまり<経営指針>がないのです。

このことが、経営資源の有機的連結を生みださず資本の効率的集中化を阻んでやることなすことが、単発で分散してしまい相乗効果を産み出していないで、結果的に基金のハイコスト・ハイリスク体質を慢性化し温存してしまい、強いて言えば財政の悪化の元凶となっているとさえ考えられます。年金基金の積立不足は単に運用利回りの低下という直接的な顕在的事由のみではないということです。

日本の年金基金は、30年の長きにわたって厚生省の規制と金融関係についての大蔵省の影によって経営の自由を奪われたまま、基金自体の無知・弱体故に金融機関による基金支配を許したことも併せ重なって積立金不足の財政悪化を招来してしまいました。この背景に、最近でこそ国の政策を操作する大蔵行政と金融機関の戦略が功罪透けて見えるようになってきていますが、制度発足以来の信託銀行・生命保険会社による縦割り行政の「総幹事会社の独占」に伴う基金にとっての弊害も明らかになりつつあります。

社債の起債引受団を形成するシンジケートの世界にも「幹事会社」はありますが、起債が終わってツームストーン(墓石広告)を出してしまえば消滅することになっているようですが、基金の「総幹事会社」の方はよほどのことが無い限り解約・交替ということすらなく、<30年>も続く制度となっています。また、社債の「幹事会社」の業務内容は起債という一点に限定されていてシンプルです。基金の「総幹事会社」の方は<数理計算・数理資料の管理・中途脱退者年金現価移管事務・年金等給付事務・政府負担金に関する事務>等を行い非常に多様複雑であり包括的です。信託銀行・生命保険会社はこれらの業務をワン・セットで基金に提供し、基金の育成を図ってきたことも無視し得ないのですが、併せて資産運用業務を絡めた金融インフラとして<基金の無知・弱体>につけ込んで有無を言わせないファッショ的囲い込み経営を行ってきたのも事実でありましょう。それは、信託銀行や生命保険会社の日々の営業活動の言行の場面で彼らの強圧的な態度や殿様商売に接した時に、基金サイドが彼らの背後に大蔵省の嵩・威光を見破ることで談合構造が浮上してくるのです。

こうは言っても、ほとんどの基金でこの信託・生保のファッショ的囲い込み経営が意識すらされていないのが実態でしょう。それに乗ることをアウトソーシングですと誤解している基金関係者も多く、総合職の渡り鳥が大半を占める基金事務所でボトムアップ的に基金経営を展開するにはそれを受け止める経営者の認識(隠れ年金債務、年金債務のオン・バランス、金融子会社等々について)もまた希薄に過ぎますし、ましてやトップダウンの戦略も示されないままです。製造業中心の日本経済の経営者の発想の中には金融資産にたいする経験も意識もなく、あるとすれば数年前に素人として行った一本釣り手法の財テクの失敗の恐怖感だけであり、出来うれば自分の任期中は避けて通したいという願望だけであります。

このことがまた行政の規制と相俟って基金に対する金融機関支配が続いてきた理由でもあります。護送船団方式により過保護された金融機関が行政と談合社会(大蔵省・日銀の業者との癒着)を形成し競争を回避して横並びのサービス提供をすることで、基金に対して統制経済の情報操作を行ってきたのです。

今でこそ、信託銀行・生命保険会社に対して「資産運用のプロ」などという金融に無知な基金が勝手に奉りました尊称は使いませんが、10年程前の<お任せ運用>の時代にはそれが常識になっていたのです。ということは、一方で金融に関する<総合職の無知>がありましたということであり、大蔵行政の鎖国政策(無数にある中からひとつだけ例を上げれば、「円転」)による情報遮断が功を奏していたということでしょう。国税当局も鎖国政策のハイコストは必要経費と認定していたということです。

断っておきますが、ここでの「資産運用のプロ」という意味は、基金に体する金融支配のインフラ・ノウハウを政治・行政を抱き込んで組織的に談合構造を仕組んだ戦略に限定され、けっして資産運用能力そのものを対象としてはいません。本来の経験豊富な専門家としての「資産運用のプロ」は、金融文化が確立されている欧米の金融界にこそ存在し、本邦系金融機関にはまがいものの総合職の渡り鳥集団達のサラリーマンだけが存在しているというわけです。当然、個々の個人レベルではプロと称される人もいらっしゃるのではありますが。

さて、日本は戦後の右肩上がり経済の成功の中に共産主義国以上の統制を構造化しハイコスト、実はハイリスク体質を定着させてしまったということは、平成10年の今となってはおそらく国民の大半のコンセンサスとなっているでありましょう。しかし、一部に既得権益集団が「建て前」を別にして、本音で日本風の解決策があるはずですと言いながら抵抗しているということがあります。確かに、戦後の経済復興は日本風の統制経済でなかったら達成出来なかったかも知れませんが、今となってはどこもかしこもハイコストを温存・累積してしまい、どこもかしこも機能不全に陥ってハイリスクな危うい状態になっています。

未曾有な状態に突入している年金基金にとっても、この辺の状況認識と意識改革が初めに行なわれるべき何にもまして重要なテーマとなってきています。フレーム・ワークの隠された意味をボトムアップ的に明らかにしミクロ的に刷新していくか、或いは新規のフレーム・ワークを理念・哲学に基づいてマクロ的に構築するか、という二者択一ではなく、おそらくそれは「似たような状況において蓄積された経験」(R.ジアモ)の統合された直感によって把握することになるのでしょう。そこで、年金基金はローコストで老後資金を提供するために一層の資本の生産性向上を図らなければなりませんが、まず足下を確実にするミクロベースでの基盤形成として「基金の独立性確保事業」が基金経営の継続的な重要テーマとなります。それには現行のフレーム・ワークの刷新が不可欠な課題となりましょう。

さて、基金のフレーム・ワークを形成するものは、一般的に確定給付(平成10年4月現在、確定拠出は認められていません)であり、設立形態は単独・連合・総合、給付形態は代行型・加算型・共済型、業務委託形態はⅡ型・ⅠB型・ⅠA型・指定法人、資産運用方式はお任せ運用・運用拡大・適用除外(平成9年12月5.3.3.2規制撤廃により廃止されました)等々が厚生年金保険法により選択肢として与えられています。

 始めに法律により条件が与えられている世界において、基金事務所の体制が弱体なうえ「総幹事会社」の圧倒的なインフラ提供が組み込まれています。「基金の独立性確保事業」を推進するには、事務所の職員数が限定されており人工を要する単純業務が多いことに加えて加入員記録等の長期間の記録保全が不可欠ですなどという条件から、帰納的に導きだされるのは<基金業務の機械化>であります。そうしてこの延長線上に、現行のフレーム・ワークの刷新が動きだすことになります。


図表21 フレーム・ワークの刷新



ABC基金では設立以後、経営サイドの理解により事業の継続性が保たれたため、一般の基金に比べてフレーム・ワークの刷新は下記のように再々実施出来ました。


図表22 ABC基金の事業展開



又、総幹事会社のフル・サービス戦略にたいしても、長い時間をかけてではありますが、包括的に提供されている業務の分離を推進して「基金の独立性確保」を行っています。

図表23 基金の独立性確保



  フレーム・ワークを変えてみないことには、見えないものがあります。



スワップの登場は、革命的な影響を国債金融市場にもたらした。
スワップの市場さえ存在していれば、発行体は必要な通貨や資金の種類に関係なく、資金調達がもっとも有利な市場で起債し、スワップの技術を使うことにより、必要な資金に作り替えることが可能になるのである。つまり発行体にとり発行規制のないあらゆる市場で資金調達が可能になり、スワップを通じた市場間の裁定が可能になったのである。

多胡秀人・大久保勉『スワップ革命』






その典型が上記の平成7年の指定法人採用でした。これをして明らかになったことは、<基金の独立性確保>に如何に総幹事制度が足枷になっているかということです。

一般に総幹事会社は、基金に対して基金業務へのフル・サービス(事務管理・数理業務・資産配分・証券保管等)を提供すること(年金信託契約)で、年金基金の育成を図りますとしつつ、実は運用資産の独占を図ることを経営戦略としてきたのです。信託・生保の経営戦略の構造的な仕組みを読み解くと、行政と組みました基金の<無知・弱体>につけ込んだ知らしめずの情報操作、認可行政の鎖国主義による統制経済等によって業者間の競争をまったく排除し内部に巧妙にハイコスト・ハイリスクをリンクした状態を忍ばせてあるのが判然としてきます。例えば、「円転」、「銀貸し」、「資産配分」、「預かり証」、「現金移管」、「受渡しベース」、「信託報酬一律方式」、総幹事会社へのキック・バックシステム、外物のリサーチソース、単線思考のヘッジ手法、合同口による責任分散システム、切磋琢磨の欠けました運用手法等々。

ⅠA型基金が指定法人を採用(業務委託費は指定法人に支払うことになる)してみると、業務委託契約が宙に浮き、それ迄裏に隠れていました総幹事会社の資金決済業務(基金掛金の拠出に際しての収納と他の運用機関への振り分け、年金給付の際の資金のとり纏め業務等)を総幹事会社は無料(と言ってもこんなシンプルな決済業務で料金は発生しません)で行わざるを得ないことになるなど、総幹事制度が時代から取り残されている状態が焙り出されることになります。つまり、信託・生保の基金囲い込み戦略である「総幹事制度」のインフラ制覇が、フレーム・ワーク刷新の中枢概念である「基金業務の機械化」(Ⅱ型からⅠA型)によって基金自体がインフラを持つことになり、更に一段勧めて指定法人採用をすることで始めて「総幹事制度」が機能不全を起している事実が見えてくることになります。

ここまで来て始めて、基金の自主・独立性は基金事業の基盤である業務レベルで名実共に確保、確立されることになります。というのも、ⅠA型であれば業務委託は数理業務だけなので、数理データは基金で作り、基金で3.5インチFDD等にアウトプット出来ることになり、「年金ALM」とか任意のシミュレーション・FAS計算等が、とかく不明朗な噂(包括サービス提供戦略によるハイコストリンクとデータの戦略的操作、ファッショ的囲込み戦略等)のある総幹事会社とは別の業者(指定法人とかコンサルタント会社)で行えます。そうであれば、料金・納期等の個別交渉も、総幹事会社の行政との談合サービスも不要に出来るし、総幹事会社を牽制することも出来るようになります。結果、基金の業務展開のイニシァティブを総幹事会社から奪取出来ることになります。これを達成することで、<基金業務の運営>から脱却して<基金業務の経営>のレベルに移行できることとなります。

最近、基金で流行ものになっている「年金ALM」とか「指定年金数理人」等のサービス提供に際して、多くの基金で総幹事会社の戦略のまま唯々諾々と採用・実施していますが、Ⅱ型やⅠB型の基金では肝心の数理データを信託・生保に握られているのですからやむを得ないことです。更にこういう話しもあります。Ⅱ型やⅠB型の基金では信託・生保に数理データ(自基金の、自基金がコスト負担しているもの)の提出を求めますと、拒まれるとか嫌な顔をされるとか、中には恫喝する者もあるという、とんでもないことがまかりとおっているのです。

そのような信託・生保に対して、関西の基金では常務理事・事務長がどやしつけるそうですが、関東の基金は皆さん紳士(実は、総合職の成れの果て!)ですから丸く納めてしまうのだそうです。又、それを許容している基金の体質を考えると、道は遥か彼方、「受託者責任」とか、「ディスクローズ」とか「給付改善」とか「資産運用の効率化」等は夢の又夢のことに思えます。そういう、立派なことを言う前に、直ちに基金事務局の足下を固める意味で常務理事・事務長は自基金のⅠA型移行、更に出来うれば指定法人採用等を断行しなければ職責を全うしたと言えないかもしれません。始めに、<基金業務の機械化>ありき、なのです。未だに、会計の預貯金出納長・支出実績簿・補助簿・総勘定元帳の手書き(担当者がうんざりしているはずです)のハイコストや、年金予算の電卓算出(数年前からパソコン予算システムが総幹事や指定法人から無料提供されている)や、Ⅱ型やⅠB型の業務委託費のハイコスト(下表参照)等を残存させているのであれば、資産運用の効率化などとても出来たものではありません。


図表24 業務委託費比較表



また、母体企業や加入員等へどう言い訳するのか、どう受託者責任を果たすというのでありましょうか。こういう実態は、とてもディスクローズなどし得ないでありましょう。知らしめずの素知らぬ振りを押し通すことになるのでしょう。指摘されたときには言い抜けが用意されていて、基金の業務委託に関する料金・機械・総幹事・指定法人・官庁事務等々の実態に疎い常務理事・事務長が「アウトソーシング」ですと言うのです。一部にⅠA型等からⅡ型又はⅢ型(?)等に戻る基金が出てきているように聞きますがアナクロニズムも極まったということではないでしょうか。純正アウトソーシングならともかく。
つまり、<基金業務の機械化>を端初にして基金自体がインフラを持つことで、人的・物的に弱体と言われる基金事務所の基盤は確立されます。併せて、ⅠA型基金の年金支払業務を含めました全業務(適用・中脱・掛金・裁定・給付・会計・福祉等)は、単独設立型基金の平均的な規模の加入員3500人・年金受給者1500人程度であれば、事務長と職員1人でどうにか対応でき(機械化されていなければ職員3人は必要)、ローコスト事務所に変貌出来るのです。ましてや、資産運用の効率化を一層推し進めなければならないときに足下を固めていないまま、狩猟民族の跋扈するグローバルな金融の世界に立ち向かっていくのは余りに無謀・ハイリスクです。基金の資産運用業務が重要度を増している中で、戦略武装を確保するためには<基金業務の機械化>は必須になるのです。



しかもこの際、スポンサー自身が運用効率をあげることによって掛金負担を軽減しようとする意欲が薄れるようなことであれば、最終的には年金費用を含めた総人件費の拡大を押さえることも難しくなってしまうのである。その結果、給付が約束された確定給付年金であるにもかかわらず、加入者が年金給付を手にできるかできないかということすら起りかねないのである。

Koen De Ryck 「年金運用の潮流」-到来するプロの時代
     証券アナリスト・ジャーナル1997年6月号




要するに、<基金業務の機械化>に始まり、代行型から加算型へ、単独設立から連合設立へ、総幹事から専門業者へ、運営から経営へ、総合職から専門職へ、企業財務のオフ・バランスからオン・バランスへ、掛金引上げから資産運用効率化へ、総利回り指向からデフォルト回避指向へ、お任せ運用から戦略アセット・ミックスへ、本邦系運用機関から外資系運用機関へ、5.3.3.2運用商品からオルタナティブ運用・商品ファンド・401(k)へ等々、フレーム・ワークの刷新を勧めることで、これに派生・付随して基金の独立性・自主性が醸成され、その上に<基金経営のビジョン、基金哲学>が確立されてくることになるのです。




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2010年11月02日 | 厚生年金基金
2.厚生年金基金経営の有機的連結

  ●事業運営
厚生年金基金の事業運営は、半官半民の法人性格、法人維持の多様な業務、少人数のスタッフ等々と特徴づけられます。厚生年金の一部代行給付をフレーム・ワークとするため行政との関わりが強い、あるいは行政と同様な業務を行なわざるを得ないこともあります。民間人が国の社会保険行政を一部代行しているのです。

基金の実務は、青色申告の小さな商店のように多様さを極めますが、その各々の業務の奥行きというか専門性はそれほどでもありません。

基金の役職員は、単独・連合設立の基金であれば母体企業からの出向者で構成され、総合設立基金であれば、行政出身の常務理事以下職員も大半が行政出身者で占められているのが一般です。


図表16 天下り役職員



このような条件のもと、日々の事業運営が行なわれていますが、慢性的なスタッフ不足と役所的な職場環境、単独・連合の基金であれば更に出向者という島流しにあったような職場環境等々のため、基金事務所には一般的に沈滞ムードが漂っており、組織の活力とかバイタリティが云々されることはありません。

さらに、社会保険行政一般に言えることですが、業務全般がいわゆる<お役所仕事>であって、単純な人工提供のような業務(例えば、毎年8月になると、加入員の標準報酬月額の改訂作業というのがあり、一人一人の加入員台帳に標準報酬月額を転記する<盛り込み>という作業があります。全加入員分を盛り込むのにただひたすら盛り込んで1週間もかかります。)が大半であり、業務の機械化の余地が多い部門です。

<お役所仕事>の形式的とか投げ遣りとかの否定面を云々するのではなく、仕事に対するきらめき、ひらめきなどという職員の創造的な取組みを押し潰すような職場環境であるということだけは言っておきたいものです。

そもそも、社会保険行政一般といわず、現在の行政組織において、中央と、出先といいますか、地方での相互の命令系統は絶対であって、お上から通知される業務を誤り無く速やかに実施するだけなのが地方官僚の仕事になっています。

つまり、中央官庁の出先機関として位置付けられているのが社会保険行政であって、「通達」、「通知」という逆流がない一方向的スタイルが最大の特徴です。「疑義」という手段は残されていますが、「通知」という方式は従来手法の典型であって、「通知」を発する者の全知全能が、つまり東大法学部出身の優秀な官僚という神話が前提されており、一方に唯々諾々と実施する羊のように勤勉な機械のような地方官僚が構造化されています。

このような世界では、先端的民間企業の手法である<きらめき、ひらめき、試行錯誤>などというものは排除され、中央官僚の意志(これを国政というらしい)実現が最大の務めとなっています。

半官半民の厚生年金基金は、このような二重人格を併せ持って日々の業務を推進していますが、この基金の二重人格性故に基金の問題は二重のスポットライト、官・民のスポットライトが当たって問題の中心点、問題の稜線が鮮明に浮上することになります。厚生年金の民営化とまでは言わなくても、厚生年金の一部代行という民間活力の有効活用にはこのような年金問題の先鋭化が実現する位相が内在しているのです。

例えば、<慢性的な基金のスタッフ不足は、調査・研究業務の先行投資を出来がたくする>という民間の危機意識に対して、<慢性的な基金のスタッフ不足は、職員配置基準で定められていますので万やむなし、調査・研究業務は不要>という地方官僚の考え方が対峙することになります。

自分たちで作っていこうという民間の姿勢と、中央でやっているはずだという他者依存というか、始めからの放棄、別世界事という地方官僚の観念がぶっつかりあうことになります。

  ●厚生年金基金の変貌
さて、基金の変貌が関係者の地道な努力により着実に進行していたのも事実ですが、この度、年金資産積立不足の<未曾有な事態>を迎えてこの変貌は強権力のように厚生年金基金におおいかぶさってきています。金融ビックバンのようなことが基金の世界にもやってきているのです。それは待った無しに、有無を言わせずグローバル・スタンダードへのシフトを強要するかのようであります。


図表17 厚生年金基金の変貌



筆者が母体企業の社会保険担当から基金へ出向したとき、ABC厚生年金基金は<単独・代行・Ⅱ型>という最もベーシックな形態で設立されて、6年が経過したところでした。

設立後まもなくで、前任者の立ち上げ作業が続いている最中でした。資料が何処にあり、用紙は何処に保管されているのか、作業手順書はどうなっているのか、書類の分類・保管はどうなっているのか、健保組合と兼務であった当時の基金職員はとりあえず当面の業務を処理するだけで手一杯で、整理とか、分類とか、保管とかはされていなかったのが実情でした。あっちこっちに書類が山積みされていました。

筆者は基金というのがどう言うものか、事前に何も承知していなかったので、まず始めに取りかかりましたのが敵を知るための作業、<基金とは何ぞや>を具体的に承知しますため基金業務の<整理・分類・保管の体系化>というラベル貼りから始めたのでした。

業務分掌、資料分類、年度業務スケジュ-ル、作業手順書の整備、作業進行票の作成等と。その後、日本経済の右肩上がり進展の中、厚生年金基金も業容の拡張は著しく、昭和の時代と平成の時代では様相が一変したと言っても良いのではないでしょうか。


図表18 基金業務の多様性



また、基金の業務を時間の観点から分類すると、概略次のようになるでしょう。


図表19 厚生年金基金の業務時間サイクル



  ●「経営など、したこともない!」
企業業務の傍らの「基金兼任理事長」が、民間感覚で過去に時々基金業務に発言することがありましたが、事務局からかくかくしかじかになっていますという説明・助言を受けて言うことには、「誰が責任者なんだ!」、「誰が経営しているのか!」という怒りの声でした。

 規制・指導で雁字搦めになっていて裁量の余地を残してない基金制度について、基金事務所は<役所の出先>なのか、とよく叱られたものです。



ヘッジファンドは投資収益の絶対水準のみを追求し、例えば株価指数
などの収益差などには関心がない。・・・・・・・。最近では、少数の銘柄の
株式、特定の通貨や債券に集中的に投資することは一般的には主流では
ないが、成功しているヘッジファンドは、自分たちが自信を持っている
集中投資の戦略を堅持している。
つまり、ヘッジファンドは、どこでもマーケットが動けば収益が上が
るといった楽観論に基づいて投資をするゼネラリストではない。明確な
戦略に基づいて投資を行うスペシャリストなのである。

米タイガー・マネジメント社M・Dイェスパー・コール
「ヘッジファンド対策」日本経済新聞社:経済教室 99.4.23




というのも、理事長交替のたびに、基金業務の認可・指導行政の実態説明、大蔵省にべつたり張り付き厚生年金基金制度の直接の所管官庁の厚生省を無視した本邦金融機関の護送船団体制感覚、厚生省と民間の狭間で身動きが容易でない厚生年金基金連合会の実態、基金業界に蔓延する保守主義等々を説明し、ニッチがほとんどない実態を理解してもらうのに苦労したものです。

筆者は8人にのぼる理事長交替を経験してきましたが、代々の理事長の発言趣旨を要約すれば、各理事長は、基金の「経営など、したこともない!」ということになりましょう。

 今でも、<経営>などと基金業界で言い出すと、何処からともなく「<行政>なんだよ」、と聞こえてくる始末です。別の人からは、「国の委託業務を粛々とこなすだけ」などという、第三セクター並みの発言を耳にしたこともあります。国が最終責任を取ってくれるという負け犬の姿勢、他力本願のゼネラリストの責任霧散体質が、このたびの資産運用利回りの低下による積立不足を身動き出来ない状態にまで引きずりこんでしまったということでしょう。

30年余の長きにわたり国の委託業務のオペレーションで運営されてきた厚生年金基金には、経営主体など在りえようがなかったのです。経営権を剥奪されたまま、官僚の遠隔操作によってお祭りをしてきただけともいえるでしょう。
図表20のような組織機能は平成10年以降徐々に導入され始めたにすぎません。


図表20 厚生年金基金経営の組織機能

*筆者による一部補正< >があります。


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2010年10月30日 | 厚生年金基金
第2章 厚生年金基金の展開

1.ブレイク・スルーな事態

この項は、筆者の母校・東洋大学(哲学科)白山哲学会の依頼を受けて、平成8年10月26日に講演したものです。講演の内容をそのまま転載しましたのは、ここに筆者の発想の原点がほとんどと言っていいくらいに盛り込まれているからです。そのため、この章をお読みいただけると、以下に筆者が体験しました厚生年金基金制度に対するドメスティックな批判、またはマドリング・スルーな論評等について、ご理解を得やすいものと考えたからであります。


事務局から与えられました時間は30分ということですので、早速、本論を始めさせて頂きますが・・・・・その前に、皆さん不思議に思われていることでしょうから、一言お断りしておきます。

私は、ここの学部を昭和42年に卒業して、以来民間企業で30年ほど働いております「会社人間」です。その会社での担当業務は<厚生年金基金>という企業の年金でして、20数年同一の仕事を行なっています。ということで、20数年同一の仕事をするなどというのは一般企業では希なことであって、典型的会社人間というよりアウトサイダ-的会社人間ということになります。

「白山哲学会」のような学究的世界に、私のような会社人間が厚かましくもしゃしゃり出てきましたにつきましては、こちらの針生教授に、今年の7月に発行された校友会報に拙著『情緒の力業』の紹介を書いて頂いておりますので、そちらをご参照頂けたら幸いです。私の本の出版を機会に、少々大袈裟に言えば異業種交流が図られたとでもお考え頂いたら宜しいかと思います。

そういうことで、以下、私が皆さんにお話することは、皆さんのような学究的な方々にはラチもない三百代言であって、普段親しまれているエレガントなベグリッフの世界からはほど遠い内容かも知れません。ここで、お話させて頂くについては、やはり<哲学>について皆さんの前で話すべきかとも考えましたが、早々に私の任にあらずと断念致しました。むしろ、会社人間として実業の世界の一端でもお話した方が皆さんにはエキサィティングだろうと考えるに至りました。

さて、本日のお話の構成は、アリストテレスの「三段論法」でもなく、ヘーゲルの「正・反・合」でもなく、花伝書の「序・破・急」に沿ってお話してみたいと考えました。

といいますのも、常々、私は「三段論法」や「正・反・合」の西洋合理主義の論理構成、つまり<1+1=2>に対して、何か胡散臭さ、でっち上げの意図を感じておりました。それは、ただ単に論理展開ツ-ルとしての仮定にしか過ぎないのではないかと、不信の念に捕らわれていました。

しかし、現代哲学で支配的な考え方は、あくまでも、知的、客観的、科学的合理性追求の姿勢でありましょう。しかし、会社人間の私が日夜格闘していますのは「結論・背景・効果」というような性急なスタイルです。そういうことで、実業の世界には、一片たりとも知的、客観的、科学的合理性追求の姿勢はありませんと断言してもよいようなドロに塗れた世界です。その逆がまかり通っているのが現実です。もちろん、私自身のプライベートな考え方は、著書のタイトルのように、『情緒の力業』なのですが。

ところで、先日、私のところの事務所で、或る外資系投資顧問会社のうら若き女性営業員とお話していたとき、その方が次のように話されたことがありました。

「外資系企業に入社しようと思って、<英検>の勉強をしていましたときに、<英検>そのものには受かりましたのですけど・・・・・何んとなく、英語というものが分からず、もやもやしていたのです。
或る日、友人の外人家庭に遊びに行ったとき、パーティーの席で、夢中になって友人の家族みんなと話している自分に気がついたの!
その瞬間、こんな太い角材でガツンと殴られたかのように分かったの。IT'S A ENGLISH, ENGLISH !と叫んでいたわ、その時! 」

その方は、この経験、立ちふさがっていたもやもやしたものが破れ、向う側へ突破したことを英語では「ブレイク・スルー」と言うと教えてくれました。
偶々、私も拙著『情緒の力業』の中で、同様な事例を数多く採集していましたので、その内の幾つか、とくに宇宙飛行士逹の経験(立花隆『宇宙からの帰還』)を話して尽きるところがありませんでした。

この経験にはどんな意味があるのかということで、40代の全部を使って私は『情緒の力業』を書いたことになりましたが、この話しを聞いた頃、この本の出版の準備をしていましたので、本の帯に「ブレイク・スルー」という言葉を使わせてもらいました。

一方、実業の厚生年金基金業務展開の方でも、もやもやしたものがありました。厚生年金基金の仕事は、お陰様で20数年継続させてもらいましたので、その間に数多くの業務改善も実現致しました。しかし、最近ではこの業務改善の思考スタイルの限界を意識していました。といいますのも、この「カイゼン」は英語になっているそうですが、基本的に線形論理で構成されていて、改善に改善を重ねて一直線上をひた走ることになります。硬直的でスタティックなこの業務改善の思考方法では、動的な現実に対応出来なくなっています。そこへ、この「ブレイク・スルー」な思考スタイルが浮上してきました。コンセプトの拡張はこれで達成されることでありましょう。

「序」はこの程度に致しまして、次いで花伝書の「破」と行きましょう。そこで「破」らしく日本の金融の機能不全についてです。

世界がグロ-バル化している事態については皆さんもご承知のことと存じます。技術は世界を一つにしてしまいました。国境が無意味になりつつあります。鎖国政策や共産主義はロ-カル視されて立ちいかなくなりつつあります。恣意的なスタンドプレーや個人や国家の作為が成り立たなくなっています。共産主義はニクソンが為替のフロート制移行を決意したことで簡単に崩壊してしまいました。赤い血を見ることもなく。

世界のグローバル化は、金融の世界に端的に表れています。金融界のグロ-バリゼィションの進行は、金銭の決済場面で典型的に表れています。ロンドンからニューヨーク、そして東京、香港と巨大マネーが<資本の論理>によって瞬時のうちに移動します。1円の円高ドル安で一企業のレベルで百億円単位の損益のブレが発生します。1ドル80円にでもなれば、日本で製造業は成り立たなくなるそうです。そうなれば、雇用はますます悪化し、ますます少子社会となり、年金も学校も従来通りには成り立たなくなるでしょう。

それなのに、日本の金融は95年に次々に発生した金融事件の対応に示されたように、従来体制の無能力、当事者能力が無い既得権益集団であることを公開し、機能不全そのもので金融危機の様子を見せ始めています。超低利金融政策による銀行救済と年金生活者潰し、それに中高年、女子大生等の就労機会を奪っています。厚生年金基金でも、低利回りの資産運用のため、積立不足基金が続出し、解散する基金も出始めています。

金融を中心にして、日本の経済はどん詰まりにきて、ターニング・ポイントに近づきつつあるようです。かっての日本経済の勢いはすっかり失われ、身動きの出来ない状態に陥っています。このことは経済界だけのことではなく、日本全体が陥っている閉塞状況であろうと考えられます。そして、これを現象させたのが、従来手法の機能不全ということです。

最後に、花伝書の「急」と行きましょう。日本全体の閉塞状況、つまり従来手法の機能不全の根本原因は<国民の総サラリーマン化>によるものと考えられます。

役人から始まって、政治家も会社人間も、教育界もスポ-ツ界も、商売人も経営者も、農家も大工も、・・・・・・・日本のあらゆる場面で、人々はすっかりサラリーマンとなってしまいました。サラリーマンをやっていれば、どうにか事は回っていましたし、どうにか食えたし、また別の意味では、それがあまりに長く続いたことで事を荒立てる必要が無くなってしまったのであります。

このサラリーマンの手法というのが出る釘は打たれる、横並び発想、群れ思考、角は丸めること、光は削ぐこと、アィディアは殺すこと、農耕村落的発想等々言われているものであります。つまり、最終的には<何もしないこと>がサラリーマンの鉄則となっているのです。こういう手法で、グローバル化した世界に立ち向かうというのは何ということでしょう。

農耕民族の仲良しクラブで鎖国政策を維持・継続しようとも、グローバル化した世界では狩猟民族の切磋琢磨にとても勝ち目はないでしょう。

従来手法の機能不全がこのように、国民の総サラリーマン化によって生み出されたとすれば、それを生み出しました母体は何であったのでしょうか。

それは、農耕民族である日本の土壌の上に、戦前「満州国」で実験され、日本に持ち込まれた官僚による統制経済、共産主義国家よりも過重な計画経済の導入であったろうと考えられます。官僚による統制は、日本国民の農耕的資質にマッチして国民の自主性をスポイルしてしまい、ハシの上げ下げまで人に言われなければ出来ないような主体性のまったくないロボット人間を大量に作りだしてしまったのです。自らの好き嫌いの判断を行動に示すのではないドブネズミ色の背広集団を作りだしたのです。

統制・計画経済の手法は、<決める>ということであって、物事が<決まる>ということについては無知であり、<決まる>ということを認めることは論理矛盾でもあります。

この<決まる>ということを言っている方は、通貨マフィアでもあったかっての大蔵官僚の行天豊雄氏ですが、行天氏は外国との為替交渉の経験からこのような知恵を得られたとのことであります。それなのに、大蔵行政の日々の業務は逆に<決める>ばかりが先行し、あらゆる場面で物議をかもしています。

世の中には、相手の主張を論破して<決める>という論理形式に対して、浮遊させたまま結論を急がず<決まる>まで放り置くという形式も有りえるのでしょう。
ただ、今ここで私が考えている「序・破・急」の論理も、そういう<決まる>という事態を前提に、素材をそこへ提供するだけに限定していて、皆さんと議論を戦わしたいと望んでいるわけではありません。

さて、今、日本は閉塞状況にあって、従来手法の機能不全を招いている場面でいろんなモヤモヤが重く立ちこめています。まだまだ向う側へブレイク・スルーしていないプレ・ブレイク・スルーな事態にあるのでしょう。唐突ですが、おそらく明治維新前と同じでありましょう。明治時代の人たちには良きにつけ悪しきにつけ、なんと「人物」が多かったことでしょう。あの時代には、人々にビジョンが充満していたし、人が生きるというベーシックな次元からの高邁な生が日々の生活に具現していたようです。そこから類推すれば日本人にもそのような品性があるようです。今は何処かに置き忘れているのかも知れません。

昔、ドイツの哲学者フィヒテは「ドイツ国民に告ぐ! 」と高らかに叫んだことがありました。今や、日本は戦後の手法の末期症状を呈し、ブレイク・スルーを目指して何かが必要になってきたようであります。どなたか、この会場の中からでも「日本国民に告ぐ! 」と叫んでもらいたいと思います。そういう伝統が、この「白山哲学会」には脈打っているものと信じております。

つまらない話しを申し上げました。 ご静聴、誠に有難うございました。



【出所:「厚生年金基金事務長奮闘記」 平成12年】


誰も知らない厚生年金基金-代行返上前のドキュメント →5

2010年10月29日 | 厚生年金基金

  ●退職給付会計
 昭和27年(1952)にはじまった退職給与引当金制度は、企業サイドとって非常に使い勝手のよい仕組みであり、あえて言えば戦後の経済復興の隠れ宝刀でした。たとえば、退職するまで内部留保できる資金で、工場建設資金等に流用できました。その中心理念は退職金の功労報償性でした。

この内部留保の資金(退職資金)の税制優遇を受け続けるためには、昭和37年(1962)適格退職年金、昭和41年(1966)厚生年金基金に外部保全することを求められました。

 しかし、経営者はこの内部留保の資金(退職資金)を手放すことに消極的で、
多くの企業で退職金の外部保全は達成されないままでした。
平成10年、企業会計審議会の意見書により、平成12年(2000)4月以降に始まる会計年度から、退職一時金や企業年金など退職給付に係る新しい会計基準が導入されました。

 この新しい退職給付会計では、グローバル・スタンダードに沿って退職給付の性格を「功労報償」から「賃金の後払い」と捉えました。つまり、当期までに発生した(とみなされる)将来の退職給付の現価相当額を「退職給付債務」として認識することになりました。

退職給付制度のうち企業年金に関しては、退職給付債務に対する積立不足を「退職給付引当金」として母体企業のバランスシート(負債)に計上し、同時に、当期の発生に属する部分は「退職給付費用」として損益計算に反映させます。しかも、この資産評価は国際会計基準との整合性を図る意味により時価ベースで行われることになりました。


図表13 退職給付会計

出所:企業年金連合会「企業年金に関する基礎資料」平成14年9月 P.8


この退職給付会計の導入は、突然巨額債務の発生を生み出し、企業に大変な衝撃を与え、後に続く年金改革を導く導火線となりました。つまり、それが確定拠出年金法と確定給付企業年金法の成立であり、厚生年金基金制度で義務付けられていた厚生年金の代行を行わなくてよい法律が出来たこと、これが代行返上です。



  ●基金解散と代行返上
 基金制度は、次の場合に終了(解散)します。
・代議員定数の四分の三以上の多数による代議員会の議決
・基金事業の継続の不能
・大臣の解散命令

とはいえ、基金が解散するには、母体企業の倒産や基金の財政悪化等の理由が必要であり、また、労使合意が困難であるとか、代行部分だけでなく企業独自の上乗せであるプラス・アルファ部分の清算も伴うため、現実には解散は不可能に近い仕組みでした。制度発足から30数年この仕組みが継続し、受給権保護には寄与しましたが、一方で過大な積立不足金を生み出した元凶のひとつでもありました。

厚生年金基金は、加入員の給与や勤続年数等により将来の給付額が予め確定している確定給付型の年金です。このため年金給付に必要な掛金を年金数理計算により算出し、計画的に積み立ててその積立金を資産運用します。基金制度を持つ企業では、月収(標準報酬月額)の17.35%の国に納めるべき厚生年金保険料のうち、3.2~3.8%分が免除保険料として基金に拠出します。

この免除保険料は、予定利率を5.5%として計算されていたので、かつて運用利回りが5.5%を超えていた時代には、この利ざや分が基金設立のメリットの1つでありました。実際、この利ざやを原資に、手厚い独自給付を上乗せしたり福利厚生施設がつくられたりしました。

しかし、最近は運用環境の悪化によって、いままでのメリットはデメリットになってしまいました。つまり、資産運用利回りの低下や成熟度(受給者数/加入員)の上昇(新規加入員の減少・右肩上がり経済の終焉)等により、年金数理の計画経済的手法は崩壊して年金財政が悪化し、多くの基金では積立不足が発生しています。この積立不足は、最終的には企業が掛金を追加拠出して補填しなければなりません。

さらに、会計基準の変更がデメリットを拡大しました。平成12年4月に導入された退職給付会計では、国の年金の一部である代行部分も企業の退職給付債務に含むとされました。

また、その債務の割引率は「長期債券の利回り」とされ、厚生年金保険法の予定利率とは異なる基準(ダブル・スタンダードの成立)となりました。
最近の低金利下では会計上の割引率の方が低いため、退職給付債務が膨らみ、厚生年金保険法上の最低積立基準をクリアーしていても、会計上は未積立の退職給付債務が発生するような事態となっています。

こうした中、平成14年4月の確定給付企業年金法の施行に伴い、代行部分は国へ返上し、上乗せ部分のみで企業年金を継続することが可能になりました。


図表14 代行部分の取扱い

出所:企業年金連合会「企業年金に関する基礎資料」平成14年9月 P.17



ところで、解散が成立した場合の年金給付は次のように行われます。

解散基金加入員に対しては企業年金連合会から「代行年金」が支給されます。代行部分に併せて、残余財産を移換した場合は、平成17年9月以前に解散した基金の解散基金加入員に対しては「代行加算年金」、平成17年10月以降に解散した基金の解散基金加入員については、「通算企業年金」がそれぞれ上乗せして支給されます。

実際の代行返上は、次のように二段階で行われます。

まず、将来分の代行部分の返上(停止)を行い、厚生年金基金と国のデータを突合(とつごう・銀行の日々の〆のように1円まで合わせます)した後に、過去分の代行部分に相当する資産を国へ返上します。

将来返上の認可申請には、厚生年金基金の代議員会の定数の4 分の3 以上の多数による議決を要します。

なお、事前に以下の手続きも必要になります。
・ 事業主の同意:代議員会の議決前1月以内現在の全設立事業所の事業主の4分の3以上の同意を得ていること
・ 加入者の同意等:代議員の議決前1月以内現在の加入者総数の4分の3以上の同意等を得ていること
・ 受給者への説明:代議員会の議決前に、全受給者に対して、代行返上理由等に係わる説明を文書または口頭で行っていること
・ 労働組合の同意:設立事業所に使用される加入者の3分の1以上で組織する労働組合がある場合は、その労働組合の同意を得ていること

 厚生年金基金が解散する時には、加入者や受給者等への年金支給のため、少なくとも代行給付に係わる資産に相当する額(最低責任準備金)を確保することが必要です。もし、積立不足があった場合は、基金が母体企業から不足額を一括徴収し、不足解消後に解散することになります。

すなわち、基金の解散には、最低責任準備金が確保されていることが認可の基本的な基準の一つになっているのです。

つまり、基金の保有する年金資産が最低責任準備金未満(いわゆる代行割れ)で、かつ母体企業が不足額の一括拠出が困難な場合は、基金が解散しようにもできないという状況になります。こうした基金は総合設立(地域や業界による組織団体等で厚生年金基金を設立)を中心に少なくありません。

こうした状況の中、解散を前提とした将来返上の措置も認められるようになりました。
これは、解散を希望する代行割れ基金のうち、最低責任準備金の不足分を一括で補填することが困難な基金について、まず、代行部分の将来返上を行い、その後計画に基づき一定期間で過去分の代行部分相当資産の不足を補填した後、解散を行うものです。


  ●確定給付年金と確定拠出年金の相違点

図表15 DBとDCの相違点








誰も知らない厚生年金基金-代行返上前のドキュメント →4

2010年10月28日 | 厚生年金基金
  ●受託者責任

基金の年金積立金の運用に当たっては、基金の役員や運用受託機関は基金加入員・受給者の利益のみのために、「忠実義務と注意義務」に基づく職務を果たすことが求められています。しかし、現行法(平成8年以前)では具体的な内容が明確ではありませんでした。

このため、とくに基金の役員について、受託者責任の明確化を図るため、平成8年(1996)「厚生年金基金の資産運用に係る受託者責任ガイドライン研究会」が設置され、平成9年に報告書がまとまりました。厚生省では、これを「厚生年金基金の資産運用関係者の役割及び責任に関するガイドライン」として通知しました。


「厚生年金基金の資産運用関係者の役割及び責任に関するガイドライン」概要

1.このガイドラインの目的等
・基金の資産運用関係者の責任意識の醸成等を目的

2.基金の資産運用関係者の役割分担
・理事は、基金から委任を受けて理事会において管理運用業務に関する意思決定を行う。
・基金自らの判断で管理運用業務の意思決定を行う。
・外部に委託した業務については外部機関に責任があるが、その選任・管理については理事に責任

3.理事
(1) 一般的な義務
・基金に対する善管注意義務およぴ忠実義務
・特に管理運用業務の執行を行う理事は当該業務に精通している者が通常用いるであろう程度の注意を払う必要
・もっぱら加入者等の利益を考慮
(2)基本的な留意事項
・分散投資、リスク・リターンの重視、四半期ごとに資産状況を時価で把握
(3)運用の基本方針
・基本方針(政策的資産構成割合の策定を含む)を基金自らの判断で策定
(4)運用の委託
・運用受託機関の定量・定性評価、基本方針・運用ガイドラインの提示、
運用実態等の報告の請求
・一定期間の運用実績を予め提示した基準で評価、基金自らの判断で掛金払込割合を変更
(5)資産管理の委託
・信用力、管理体制等の説明の要求、資産の分別管理状況の確認
(6)運用コンサルタント(運用助言会社)等の利用
(7)自己研鑽
(8)利益相反
・母体企業と資本関係等がある運用受託機関との間で、適正な評価を行わず契約を締結すること等は忠実義務違反のおそれ
(9)理事の責任
・義務履行の判断は運用実績ではなく、職務遂行の過程が適切か否かで判断

4.代議員・監事・資産運用委員会

5.記録、情報提供


出所:厚生省年金局監修「平成9年度版年金白書‐21世紀の年金を「選択」する」㈱社会保険研究所 平成10年 P.89


  ●年金給付

図表9 厚生年金基金の年金給付の仕組み

*「厚生年金基金連合会」は、昭和42年に設立され、平成16年に「企業年金連合会」と名称変更しました。


  ●加入員台帳
加入員台帳は、加入員一人一人に作成される基金業務の中心に位置付けられる重要な書類です。
この台帳に基づいて、加入員の年金額が計算されますし、掛金計算の基礎資料でもあり、会計上の責任準備金の算出とかが行われます。
 この台帳が機械化されていない場合、毎年、基金事務所では全加入員の標準報酬給与の盛り込みという作業をします。いわゆる給与改訂があったとき、それを台帳に反映させます。個人別台帳にその方の標準報酬給与を手書きします。
機械化されている基金では、下記の台帳のように機械処理されて台帳が作成されます。


図表10 単独・加算・ⅠA型基金の加入員台帳



  ●年金計算
基金の年金計算は、次のような計算式によって算出されます。

平均標準給与月額×給付乗率×総加入員期間数

まず始めに、加入員台帳等から総給与(標準給与月額総計)を求め、それをその間の総加入員月数(加入員期間総月数)で除します。
それがその間の平均給与(基準標準給与月額)ですので、それに当該基金の年金給付乗率(例えば、11.4/1000とか12.5/1000とか)を乗じて得た数値に、先の総加入員月数を乗じたのが年金額になります。

なお、加算型基金であれば、これに加えて加算部分の年金が付加されます。
次の年金額算出計算書(基本部分)を参考にしてください。

図表11 年金額算出計算書

出所:厚生省年金局企業年金課監修「厚生年金基金事務の手引」年金研究所 平成2年 
P.164

  ●中途脱退
基金は、企業単位の年金制度ですから、当該企業に短期間勤めた人については本来的な年金(原則10年以上加入、中には15年以上)を受けるために必要な加入期間を満たさないで退職する人も出てきます。

しかし、この人たちは、加入員であった期間に応じた年金を受ける権利を有しているので、例え1ケ月の加入でも基金はこの年金を支給する義務があります。
更に、この人たちがB社、C社と転職し、同じように短期間の基金加入がある場合、A基金、B基金、C基金と基金ごとにこま切れの年金を受けることになります。


加入員 現在加入中の者
年金受給者  現在受給中の者
待期者(待機期間者)  本来的な年金受給期間を満たし、当該基金で支給開始を待っている者
中途脱退者  短期勤務者で、将来連合会から年金を受ける者



この煩雑さは加入員であった人にとっては面倒・不便極まりないことですし、未請求者を出し勝ちです。この解決策として、短期加入者の年金給付の支給義務を基金から企業年金連合会に移転し、連合会においてこのこま切れ年金をまとめて一本で支払うという仕組みが作られています。

基金では、加入員資格喪失の翌月から3ケ月目の15日までに加入員台帳を添付(機械処理の基金は、テープまたはフロッピー添付)した移転申出書を企業年金連合会に提出し、そののち連合会から受理通知を受けて、年金現価相当額を連合会に移転することを法律で義務付けられています。

基金が企業年金連合会に対して、年金現価相当額の交付を済ませると、その時点で当該中途脱退者の年金支給義務は連合会に引き継ぐことになります。

この事務処理が済むと、通常退職から6ケ月後に連合会は当該中途脱退者に対して、「年金支給義務承継通知」を郵送(退職時の住所宛)します。


図表12 「年金支給義務承継通知書」

出所:企業年金連合会ホームページ http://www.pfa.or.jp/


この通知書は、年金受給開始時点では紛失(あるいは未着)という人が大勢おり、受けられる年金を未請求のまま放置することになります。例え、紛失でも未着でも、企業年金連合会に連絡すれば受給出来ますので、国の年金を受け始める時には、連合会に問合せましょう。


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