「みんなの年金」公的年金と企業年金の総合年金カウンセリング!                 

このブログ内検索や記事一覧、カテゴリ-等でお楽しみください! すると、あなたの人生が変わります。

誰も知らない厚生年金基金-代行返上前のドキュメント →5

2010年10月29日 | 厚生年金基金

  ●退職給付会計
 昭和27年(1952)にはじまった退職給与引当金制度は、企業サイドとって非常に使い勝手のよい仕組みであり、あえて言えば戦後の経済復興の隠れ宝刀でした。たとえば、退職するまで内部留保できる資金で、工場建設資金等に流用できました。その中心理念は退職金の功労報償性でした。

この内部留保の資金(退職資金)の税制優遇を受け続けるためには、昭和37年(1962)適格退職年金、昭和41年(1966)厚生年金基金に外部保全することを求められました。

 しかし、経営者はこの内部留保の資金(退職資金)を手放すことに消極的で、
多くの企業で退職金の外部保全は達成されないままでした。
平成10年、企業会計審議会の意見書により、平成12年(2000)4月以降に始まる会計年度から、退職一時金や企業年金など退職給付に係る新しい会計基準が導入されました。

 この新しい退職給付会計では、グローバル・スタンダードに沿って退職給付の性格を「功労報償」から「賃金の後払い」と捉えました。つまり、当期までに発生した(とみなされる)将来の退職給付の現価相当額を「退職給付債務」として認識することになりました。

退職給付制度のうち企業年金に関しては、退職給付債務に対する積立不足を「退職給付引当金」として母体企業のバランスシート(負債)に計上し、同時に、当期の発生に属する部分は「退職給付費用」として損益計算に反映させます。しかも、この資産評価は国際会計基準との整合性を図る意味により時価ベースで行われることになりました。


図表13 退職給付会計

出所:企業年金連合会「企業年金に関する基礎資料」平成14年9月 P.8


この退職給付会計の導入は、突然巨額債務の発生を生み出し、企業に大変な衝撃を与え、後に続く年金改革を導く導火線となりました。つまり、それが確定拠出年金法と確定給付企業年金法の成立であり、厚生年金基金制度で義務付けられていた厚生年金の代行を行わなくてよい法律が出来たこと、これが代行返上です。



  ●基金解散と代行返上
 基金制度は、次の場合に終了(解散)します。
・代議員定数の四分の三以上の多数による代議員会の議決
・基金事業の継続の不能
・大臣の解散命令

とはいえ、基金が解散するには、母体企業の倒産や基金の財政悪化等の理由が必要であり、また、労使合意が困難であるとか、代行部分だけでなく企業独自の上乗せであるプラス・アルファ部分の清算も伴うため、現実には解散は不可能に近い仕組みでした。制度発足から30数年この仕組みが継続し、受給権保護には寄与しましたが、一方で過大な積立不足金を生み出した元凶のひとつでもありました。

厚生年金基金は、加入員の給与や勤続年数等により将来の給付額が予め確定している確定給付型の年金です。このため年金給付に必要な掛金を年金数理計算により算出し、計画的に積み立ててその積立金を資産運用します。基金制度を持つ企業では、月収(標準報酬月額)の17.35%の国に納めるべき厚生年金保険料のうち、3.2~3.8%分が免除保険料として基金に拠出します。

この免除保険料は、予定利率を5.5%として計算されていたので、かつて運用利回りが5.5%を超えていた時代には、この利ざや分が基金設立のメリットの1つでありました。実際、この利ざやを原資に、手厚い独自給付を上乗せしたり福利厚生施設がつくられたりしました。

しかし、最近は運用環境の悪化によって、いままでのメリットはデメリットになってしまいました。つまり、資産運用利回りの低下や成熟度(受給者数/加入員)の上昇(新規加入員の減少・右肩上がり経済の終焉)等により、年金数理の計画経済的手法は崩壊して年金財政が悪化し、多くの基金では積立不足が発生しています。この積立不足は、最終的には企業が掛金を追加拠出して補填しなければなりません。

さらに、会計基準の変更がデメリットを拡大しました。平成12年4月に導入された退職給付会計では、国の年金の一部である代行部分も企業の退職給付債務に含むとされました。

また、その債務の割引率は「長期債券の利回り」とされ、厚生年金保険法の予定利率とは異なる基準(ダブル・スタンダードの成立)となりました。
最近の低金利下では会計上の割引率の方が低いため、退職給付債務が膨らみ、厚生年金保険法上の最低積立基準をクリアーしていても、会計上は未積立の退職給付債務が発生するような事態となっています。

こうした中、平成14年4月の確定給付企業年金法の施行に伴い、代行部分は国へ返上し、上乗せ部分のみで企業年金を継続することが可能になりました。


図表14 代行部分の取扱い

出所:企業年金連合会「企業年金に関する基礎資料」平成14年9月 P.17



ところで、解散が成立した場合の年金給付は次のように行われます。

解散基金加入員に対しては企業年金連合会から「代行年金」が支給されます。代行部分に併せて、残余財産を移換した場合は、平成17年9月以前に解散した基金の解散基金加入員に対しては「代行加算年金」、平成17年10月以降に解散した基金の解散基金加入員については、「通算企業年金」がそれぞれ上乗せして支給されます。

実際の代行返上は、次のように二段階で行われます。

まず、将来分の代行部分の返上(停止)を行い、厚生年金基金と国のデータを突合(とつごう・銀行の日々の〆のように1円まで合わせます)した後に、過去分の代行部分に相当する資産を国へ返上します。

将来返上の認可申請には、厚生年金基金の代議員会の定数の4 分の3 以上の多数による議決を要します。

なお、事前に以下の手続きも必要になります。
・ 事業主の同意:代議員会の議決前1月以内現在の全設立事業所の事業主の4分の3以上の同意を得ていること
・ 加入者の同意等:代議員の議決前1月以内現在の加入者総数の4分の3以上の同意等を得ていること
・ 受給者への説明:代議員会の議決前に、全受給者に対して、代行返上理由等に係わる説明を文書または口頭で行っていること
・ 労働組合の同意:設立事業所に使用される加入者の3分の1以上で組織する労働組合がある場合は、その労働組合の同意を得ていること

 厚生年金基金が解散する時には、加入者や受給者等への年金支給のため、少なくとも代行給付に係わる資産に相当する額(最低責任準備金)を確保することが必要です。もし、積立不足があった場合は、基金が母体企業から不足額を一括徴収し、不足解消後に解散することになります。

すなわち、基金の解散には、最低責任準備金が確保されていることが認可の基本的な基準の一つになっているのです。

つまり、基金の保有する年金資産が最低責任準備金未満(いわゆる代行割れ)で、かつ母体企業が不足額の一括拠出が困難な場合は、基金が解散しようにもできないという状況になります。こうした基金は総合設立(地域や業界による組織団体等で厚生年金基金を設立)を中心に少なくありません。

こうした状況の中、解散を前提とした将来返上の措置も認められるようになりました。
これは、解散を希望する代行割れ基金のうち、最低責任準備金の不足分を一括で補填することが困難な基金について、まず、代行部分の将来返上を行い、その後計画に基づき一定期間で過去分の代行部分相当資産の不足を補填した後、解散を行うものです。


  ●確定給付年金と確定拠出年金の相違点

図表15 DBとDCの相違点








最新の画像もっと見る

コメントを投稿