日本人はなぜ無宗教なのか 阿満利麿

日本人の宗教観を考える上で、明治時代の近代化が影響していることを取り上げ分かりやすく解説

している。日本人の無宗教という観念は西洋でいう無神論とは違う。何しろ日本人は年が明ければ

神社仏閣に参拝し、葬式には仏式、神式があり、キリスト教信者でもないのにクリスマスを祝う。


元々日本人には著者が指摘する「自然宗教」が根付いており、自然と共に生きてきた歴史があった。

それが近代化に伴い国民を統御する為に、天皇を中心とした神道を推し進め、尚且つ神道は風俗習

慣であり、宗教ではないと詭弁を弄することによって、現在の神々を崇める心を持ちながら創唱宗

教とは一線を画す日本人像を表している。


後半では地方に息づいている宗教を紹介し、現在の日本人における宗教とのかかわりをリポートし

ており、日本人の宗教観を見事に伝えている。日本人の「無宗教」とは何なのか本書の結論によっ

て目から鱗が落ちたようだ。


日本人はなぜ無宗教なのか　　　　阿満利麿　　　　ちくま新書