ケセランパサラン読書記 ー私の本棚ー

◆『少女たちの19世紀 人魚姫からアリスまで』  脇明子 著   岩波書店

                       


 アンデルセンの『人魚姫』は、だれでも知っていると思う。
 人魚姫が、王子に恋い焦がれて人間の姿になるが、結局、王子に捨てられ、悲哀の中、海に泡となって消えてしまうという物語である。

 実は、この人魚姫が人間に姿が変わった時、王子が人魚姫の為に男装をさせて馬の遠乗りに従えさせたいうのが、アンデルセンの原作なのだ。
 脇明子は、この描写に言及し、いわゆるフェミニズムという捉え方をしている。


 私は、ちょっと違うような気がする。
 人魚姫が、ジュルジュ・サンドのように、自らの意志で男装を選択したのであれば、そういう風にも考えられよう。
 しかし、あくまでも王子の意志による男装なのである。
 
 アンデルセンの他の作品と読み比べて見ても、フェミニズムという考え方には違和感を覚える。



 
 ただ、脇明子が指摘するように、
 伝統的に、水の精がもつ、長い髪、美しい歌声、男性を水のなかにひきずりこみ破滅させるという、ホメロスの『オデュッセイア』やハイネの「ローレライ」の詩の水の精の話では、視点が人間の男性側にあるのに対し、アンデルセンの『人魚姫』は水の精の側から語られた話である点に、物語の新しさがあるというのは、その通りだと思う。

 そのかわりにというか、人魚姫は、王子に破滅させられ、海の泡となって消えてしまう。

 まるで、ホメロスやハイネの水の精に、恨みでもあるのかのようではないか。(^_^)v (^_-)







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                 甘長ピーマンと、切り干し大根の煮物。 

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