goo blog サービス終了のお知らせ 

横浜市都筑区耳鼻咽喉科

南山田(センター北と北山田の間)の耳鼻咽喉科院長のブログ。

小児鼻副鼻腔炎の診断と治療

2010-09-15 19:40:52 | 院長ブログ
今、医事新報という雑誌に依頼された原稿を書いています。テーマは小児鼻副鼻腔炎の診断と治療です。

今年、日本鼻科学会から急性鼻副鼻腔炎ガイドライン(2010)が出されました。これが先月の学会の大きな話題のひとつでした。副鼻腔炎という病名からして、欧米のように鼻副鼻腔炎(Rhino-sinusitis)と呼ぼうということになりました。
今回のガイドラインの眼目は、抗生物質を、必要ないときには使わず、必要なときにはしっかり効く薬を選んで投与しましょう、ということです。小児の鼻副鼻腔炎は、1ヶ月以上続く経過の長いものであっても、成人の慢性副鼻腔炎とは違って、細菌感染の繰り返しであることが多いので、今回のガイドラインは参考になります。もっとも、副鼻腔炎と中耳炎の起炎菌はほぼ同じなので、既にある急性中耳炎のガイドラインに準じて抗生物質を使っていた当院の治療方針に大きな変化はないと思います。

しかし、どのガイドラインもそうですが、このガイドラインは完全なものではなく、すべての患者さんがこのとおりに治療すれば治るというものではなく、また新しい知識が情報が出てくれば、それに沿って改訂されていくものでもあります。
ガイドラインは、主に権威のある学術雑誌(英語)に載った論文をまとめてつくられるのですが、日本からの副鼻腔炎に関する英語論文がほとんどなく、日本の実情を必ずしも反映していないというところもあると思われます。また、小児の鼻副鼻腔炎はほとんど開業医が診ているのに、ガイドライン作成委員はほとんど大学の先生であることも、難しいところです。
私がまず疑問に感じて学会でも質問したのは、画像診断(レントゲンなど)の必要性をあまりにも軽視しているところです。耳鼻科開業医なら皆そうだと思いますが、日常の診療で画像診断が必要なことが多いことは、明らかに実感されるからです。もうひとつは、受診までの期間を全く無視していること。同じ症状であっても、発症してからの時間や受診するまでどのような治療を受けていたかで、方針が異なるはずだからです。

医事新報の原稿は、このガイドラインの概説と、副鼻腔炎の超音波検査について解説するものです。小児鼻副鼻腔炎については、多くの場合、超音波検査がレントゲンのかわりになります。まだ、広くは行われていない検査ですが、私はできるだけレントゲン検査は行わずに、より安全で繰り返し行うことが可能な超音波検査を行っています。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする