Cyber Night Syndrome

あまねく夜光生命に捧ぐ

寝ている人をおんぶすると重く感じる理由

2008年10月26日 | 理系
昔、母が「○○(僕)や△△(僕の妹)をおんぶしている途中で寝ると重くなる」と言っていた。
自分も小学生の頃、妹をおんぶしていてそういう経験があったように思う。
逆に、寝ている子の方がおんぶするのが楽だ、という人もいる。
いずれにせよ、実際に体重が増えるわけではない。
この現象について少し考えてみた。

以下、おんぶする人を親、おんぶされる人を子と呼ぶことにする。

起きている子と寝ている子の違いは、
起きている子は体のいろいろなところに力が入っているが、
寝ている子はその力のほとんどが抜けてしまう、というところにある。

子が起きているときに、どのように力を入れるか。
おとなしい子は、落ちないように腕を親の肩ごしに巻きつけて、
胸や腹を背中に密着させるだろう。
そのような姿勢をとることで、親の負担は軽くなる。
なぜなら、子の体重が親の上半身全体に分散するし、
さらに親の体からみた力のモーメントが小さくなるからである。
(力のモーメントについては後で説明する。)

寝ている子は、そのような制御が効かなくなってしまい、
体重のより多くが、親の腕に集中してしまう。
その結果、親の腕にかかる負担が大きくなる。
これは、肩や背中より筋肉の量が少ない腕にとっては厳しい状況である。

さらに、やかましい子ならば、両手や頭を振り回したり、
背中をのけぞらしてみたりするだろう(危ない限りである)。
こうなると、全体重が親の腕に集まり、親の腕はつってしまうかもしれない。

ぼくや妹は、親に楽におんぶをさせる「よいこ」だったということだ。

というのは冗談であるが、子が重くなったとか、寝ている方が楽だという理由は、
1.体重が親の体のどこにかかっているか、どのくらい分散しているか
2.子の、親の体から見た力のモーメントがどれくらいか
この二つにあるように思う。

さて、ここで力のモーメントについて説明する。
簡単に言えば、「てこの原理」を数字で表したもので、
力のモーメント = 力 × 力のかかる点までの距離
である。

たとえば、2リットルの中身の入ったペットボトルを手で持ってみよう。
胸の前で抱えるのに比べて、腕を目一杯横に伸ばして持つのでは、
後者の方がはるかにきつい。腕がぷるぷる震えてくる。
これは、重さがからだの筋肉から前者より遠いところにあるからである。

逆にいうと、同じ重さのものでも、
からだに引きつけるほど、楽に支えることができる。
手さげバッグよりも、リュックサックの方が楽だし、
リュックサックでも、腰のベルトを使ったり、
中身が背中に密着するように肩ベルトや中身の入れ方を調整した方が
さらに楽になる、というわけである。

10kg痩せて、「今まで米袋一袋背負っていたんだものなあ、軽いわけだ」
という人がいる(?)が、力のモーメントまで考慮に入れるならば、
10kg分の米粒が腹や尻や内臓に(脂肪のあった場所に)くっついて
いたのである。米袋を背負うよりは楽なはずだ。


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