人間、動物、植物、石、太陽、空気、水といった物質はすべて、
どんどんミクロな視点で観察していくと「原子」に分解できます。
この世は大きさや形の種類が数え切れないほど多様なモノであふれていますが、
それらを原子のレベルまで分解すると、その種類は100と少しくらいしかありません。
原子時計のしくみを理解するには、原子とはいったい何なのか、
その中身まで少し踏み込んで見る必要があります。
昔は、原子が物質を構成する最小単位で、これ以上細かく分けることが
できないものと考えられていましたが、実はもっと細かくすることができます。
さらに一段階掘り下げて原子を見てみると、「原子核」と「電子」に分けることができます。
ごく素朴なイメージとしては、
原子核が原子の中心にあり、そのまわりをいくつかの電子がくるくると回っています。それは
太陽が太陽系の中心にあり、そのまわりをいくつかの惑星がくるくると回っているのと似ています。
太陽と惑星の場合、両者を結びつけているのは万有引力(重力)です。一方、
原子核と電子とを結びつけているのは電気力です。
原子核のまわりを電子がどのように回っているか。それが原子時計の話につながるポイントです。
陸上競技場のコースを想像してください。競走をする場合、第1コース、第2コースと走るべき
コースが決められていることがあります。それをはみ出して走ってはいけないというルールなのです。
電子が原子核を回るやり方も、これに似ています。電子が回れるコースは、決まっているのです。
好き勝手に回ることはできません。なぜそういうルールなのか、それを研究し、解明したのが
「量子力学」という学問なのですが、今回はその中身には踏み込みません。
ともかく、電子は好き勝手に原子核の周りにいるのではなく、
第1コース、第2コースと走れるコースが限られている、ということだけ知っていてください。
そして、このコースのことを専門用語では「準位(level)」と呼びます。
今度はデパートのビルに例えてみましょう。さっきの第1コース、第2コースというのを
ビルの1階、2階に置き換えてみます。1/3階とか2/5階、というのは床がないのだから
歩くことができません。電子も同じで、1階、2階にはいられても、その途中に落ち着くことはありません。
この1階、2階が先ほども出てきた「準位」です。
さて、皆さん買い物に来て、最初は1階に入りました。(地下のことは忘れてください)。
ところが1階に欲しいものがなかったので2階に行くことにしました。そのときどうしますか?
階段か、エスカレータか、エレベータを使いますね。
エレベータで考えましょう。
普通エレベータはぴったり1階や2階の床の高さと合わせて止まるように作られていますが、
今考えるエレベータは「ここから何メートルだけ上れ」という命令しかできないとします。
そうすると、例えば1階と2階の間が4メートルの場合、「4メートル上がれ」と言わないと
2階にはたどりつけないわけです。「2メートル上がれ」としてしまうと扉を開けても行き先がありません。
(「3.99メートル上がれ」といえば、1センチしか違わないのでたぶん2階に行けるでしょう。これ伏線です)
このエレベータこそが、原子にとっての電磁波の正体です。つまり、電子のいる高さを1階から2階に
持ち上げたり逆に下ろしたりするように働きかけるものです。「何メートル」という数字は、電磁波でいう
「何ヘルツ」という周波数に対応しています。
ここまでくれば、このシリーズの内容を理解してくださっている方ならわかるかもしれませんが、
電子がエレベータに乗って(電磁波を当てられて)1階(下の準位)から2階(上の準位)に上がる現象が
共鳴です。電磁波の周波数は何でもよいわけではありません。1階と2階の高さの差に比べて、
ある程度ピッタリと合わせてやらなくてはいけないのです。
原子は普段は1階にいます。しかしある時に共鳴に相当する電磁波を当てられると、2階なり3階なりに
上ります。ビルのフロアの高さというのは古くなったり地震で壊れたりしない限り変わるものではありません。
だから、エレベータには「4メートル上がれ」と命令すれば、いつでも1階から2階に行けるわけです。
原子の準位も同じで、いつでも同じ周波数の電磁波を当ててやれば共鳴を起こします。本当は逆で、
共鳴を起こしたということは、この電磁波の周波数は何ヘルツで一定なんだな、と判断します。
原子のすごいところは、例えばセシウム原子で、と決めてやれば、おそらく世界のどこでも、いや
宇宙のどこでも共鳴の周波数は一緒だと思えるところです。つまり、原子というのは種類を決めてやれば
どこに行っても同じ性質をもっているだろうと思うのです。
そしてさらにすごいことは、電磁波の周波数がめちゃくちゃ精密でないと共鳴を起こさないということです。
さっきの「4メートル上がれ」のたとえでいうと、「3.99メートル」でも「3.999メートル」でも
全然だめで、「3.99999999999メートル」でやっとOK、とかそういう厳しさです。
もちろん「4.00000000000メートル」なら完璧です。
これが、原子時計が世界一の時計になりえる理由です。
いよいよ原子時計の精度や安定度といった話に突き進む段階に来たようです。
どんどんミクロな視点で観察していくと「原子」に分解できます。
この世は大きさや形の種類が数え切れないほど多様なモノであふれていますが、
それらを原子のレベルまで分解すると、その種類は100と少しくらいしかありません。
原子時計のしくみを理解するには、原子とはいったい何なのか、
その中身まで少し踏み込んで見る必要があります。
昔は、原子が物質を構成する最小単位で、これ以上細かく分けることが
できないものと考えられていましたが、実はもっと細かくすることができます。
さらに一段階掘り下げて原子を見てみると、「原子核」と「電子」に分けることができます。
ごく素朴なイメージとしては、
原子核が原子の中心にあり、そのまわりをいくつかの電子がくるくると回っています。それは
太陽が太陽系の中心にあり、そのまわりをいくつかの惑星がくるくると回っているのと似ています。
太陽と惑星の場合、両者を結びつけているのは万有引力(重力)です。一方、
原子核と電子とを結びつけているのは電気力です。
原子核のまわりを電子がどのように回っているか。それが原子時計の話につながるポイントです。
陸上競技場のコースを想像してください。競走をする場合、第1コース、第2コースと走るべき
コースが決められていることがあります。それをはみ出して走ってはいけないというルールなのです。
電子が原子核を回るやり方も、これに似ています。電子が回れるコースは、決まっているのです。
好き勝手に回ることはできません。なぜそういうルールなのか、それを研究し、解明したのが
「量子力学」という学問なのですが、今回はその中身には踏み込みません。
ともかく、電子は好き勝手に原子核の周りにいるのではなく、
第1コース、第2コースと走れるコースが限られている、ということだけ知っていてください。
そして、このコースのことを専門用語では「準位(level)」と呼びます。
今度はデパートのビルに例えてみましょう。さっきの第1コース、第2コースというのを
ビルの1階、2階に置き換えてみます。1/3階とか2/5階、というのは床がないのだから
歩くことができません。電子も同じで、1階、2階にはいられても、その途中に落ち着くことはありません。
この1階、2階が先ほども出てきた「準位」です。
さて、皆さん買い物に来て、最初は1階に入りました。(地下のことは忘れてください)。
ところが1階に欲しいものがなかったので2階に行くことにしました。そのときどうしますか?
階段か、エスカレータか、エレベータを使いますね。
エレベータで考えましょう。
普通エレベータはぴったり1階や2階の床の高さと合わせて止まるように作られていますが、
今考えるエレベータは「ここから何メートルだけ上れ」という命令しかできないとします。
そうすると、例えば1階と2階の間が4メートルの場合、「4メートル上がれ」と言わないと
2階にはたどりつけないわけです。「2メートル上がれ」としてしまうと扉を開けても行き先がありません。
(「3.99メートル上がれ」といえば、1センチしか違わないのでたぶん2階に行けるでしょう。これ伏線です)
このエレベータこそが、原子にとっての電磁波の正体です。つまり、電子のいる高さを1階から2階に
持ち上げたり逆に下ろしたりするように働きかけるものです。「何メートル」という数字は、電磁波でいう
「何ヘルツ」という周波数に対応しています。
ここまでくれば、このシリーズの内容を理解してくださっている方ならわかるかもしれませんが、
電子がエレベータに乗って(電磁波を当てられて)1階(下の準位)から2階(上の準位)に上がる現象が
共鳴です。電磁波の周波数は何でもよいわけではありません。1階と2階の高さの差に比べて、
ある程度ピッタリと合わせてやらなくてはいけないのです。
原子は普段は1階にいます。しかしある時に共鳴に相当する電磁波を当てられると、2階なり3階なりに
上ります。ビルのフロアの高さというのは古くなったり地震で壊れたりしない限り変わるものではありません。
だから、エレベータには「4メートル上がれ」と命令すれば、いつでも1階から2階に行けるわけです。
原子の準位も同じで、いつでも同じ周波数の電磁波を当ててやれば共鳴を起こします。本当は逆で、
共鳴を起こしたということは、この電磁波の周波数は何ヘルツで一定なんだな、と判断します。
原子のすごいところは、例えばセシウム原子で、と決めてやれば、おそらく世界のどこでも、いや
宇宙のどこでも共鳴の周波数は一緒だと思えるところです。つまり、原子というのは種類を決めてやれば
どこに行っても同じ性質をもっているだろうと思うのです。
そしてさらにすごいことは、電磁波の周波数がめちゃくちゃ精密でないと共鳴を起こさないということです。
さっきの「4メートル上がれ」のたとえでいうと、「3.99メートル」でも「3.999メートル」でも
全然だめで、「3.99999999999メートル」でやっとOK、とかそういう厳しさです。
もちろん「4.00000000000メートル」なら完璧です。
これが、原子時計が世界一の時計になりえる理由です。
いよいよ原子時計の精度や安定度といった話に突き進む段階に来たようです。