Cyber Night Syndrome

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2個のサイコロを同時に振る、確率の問題 (上)

2008年06月21日 | 理系

某予備校関連である業務を担当していますと、
しばしば数学の確率の問題に出会います。
たとえばこんな感じ。

問1
「2個のサイコロを同時に振るとき、出た目の和が7になる確率を求めよ。」

問2
「2個のサイコロを同時に振るとき、出た目が等しい確率を求めよ。」

これらの標準的な答えは、

問1の正答例
「全ての目の出方の場合の数は6×6=36通り。そのうち和が7になる目の
出方の組み合わせは(1,6), (2,5), (3,4), (4,3), (5,2), (6,1)の6通り。
したがって求める確率は6/36 = 1/6である。」

問2の正答例
「全ての目の出方の場合の数は6×6=36通り。そのうち目が等しくなる
出方の組み合わせは(1,1), (2,2), (3,3), (4,4), (5,5), (6,6)の6通り。
したがって求める確率は6/36 = 1/6である。」

これが正しいのは、
以下のような2つの前提があるからです。

前提1
サイコロの1から6までの目が出る確率は等しい。

前提2
2個のサイコロは区別がつくものである。

実は、どちらも受験数学サイコロ確率業界では当たり前の前提として、
問題文から省略されます。
したがって、受験数学的には以上でおしまいです。



しかし、物理的、つまり現実的にはどうなのか?
そこのところをちょっと考察してみます。

前提1「サイコロの1から6までの目が出る確率は等しい。」について

中身に偏りがなく、形も立方体になっていて、
サイコロを手の中でよく振ってから床に放り投げれば、
サイコロの運動はカオス(初期条件のわずかな違いが
極めて大きな結果の違いをもたらす)的ふるまいを示して、
ランダムかつ均等な出目が期待できます。
実験したことはありませんが、よいサイコロなら
1,000,000回サイコロを振れば、1の目は166,666回±1,000回
くらい出ることでしょう。
逆に1の目が200,000回も出るようなら、おそらくイカサマサイでしょう。
実際のサイコロは、目の部分が掘ってあって重心が中心になかったり、
形がいびつだったりするでしょうから、均等でないこともあるでしょう。

前提2「2個のサイコロは区別がつくものである。」

この前提を知らず(または理解できず)解答を間違う人は
高校生にも大人にもいます。
紛れのないように問題文に「大小2個のサイコロを・・・」
書く場合もあるくらいです。

もし、サイコロは区別がつかないと誤解したならば、
問1の誤答 1/6ではなくて1/7
問2の誤答 1/6ではなくて2/7
となるのです。

さて、物理的に、まったく区別のつかないサイコロというのはありえるでしょうか?

ありません。サイコロとは区別がつくものである、といえましょう。

どんなに腕のよい職人が素晴らしくそっくりなサイコロを2個作っても、
目 に み え る ほ ど 大 き い サ イ コ ロ では
全然ダメです。

2個並べた時点で、こっちがAでこっちがBで、と区別がつけられます。
2個のサイコロは何が違うのか。少なくとも、
並べたときに置いてある場所が違います。

バカなことを、と思ったかもしれませんが、実はここからが本題です。

原子以下のレベルまで物質を分解していくと、
なんと場所から大きさから何からすべて、「状態」が「同じ」、
つまり全く区別がつかない、つけられないというイベントが起こる、
ということが数々の、実験で確かめられているのです!

いったいどんな実験をして、そして出た結果を
どういう根拠にもとづいて解釈すれば、
区別がつかない、つけられない現象であると見なせるのか。

それは・・・次回につづく!

(2016/10/9 一部を修正)