Cyber Night Syndrome

あまねく夜光生命に捧ぐ

体感温度

2006年02月16日 | 理系

冬の日、外に出て金属の手すりに触れるとすごく冷たく感じる。
同じ温度のはずなのに、プラスチックに触れるとそれほど冷たくない。
この違いは何が原因なのだろう。

原因は、その物体固有の熱の伝わりやすさにある。

わかりやすさのために大雑把な数字を使って説明する。
仮に物体の元々の温度を10度、人間の体温を36度とする。

熱の伝わりにくいプラスチック等は、触れるとその部分が
すぐに人間の体温に近づくために、ほとんどの部分は10度のままで、
触れている部分だけは30度近くになる。

熱の伝わりやすい金属は、触れるとその部分に指から熱が伝わるが、
その熱は物体全体に速やかに拡散して全体として均一な温度になろうとする。
だから、全体が12度になって、触れている部分も12度のままになる。
したがって、指から熱がどんどん奪われて指が冷たくなる、というわけだ。

さて、この熱の伝わりやすさの違いは何に由来するものか?

金属とプラスチックの場合、決定的な違いは「自由電子」にある。
金属の中では、多数の電子が固体の中を自由に飛び回っていて、
これらが主な熱の運び手になっている。
一方、プラスチック等は自由に飛びまわれる電子はいない。

この自由電子の有無は、電圧をかけたときの電流の流れ方と直結する。
自由電子の有る金属は電流をきわめて流しやすいが、
自由電子の無いプラスチックは電流を流しにくい、いわゆる絶縁体である。

このことから、
触ると冷たく感じる物体は電流を流しやすい、
触っても冷たく感じない物体は電流を流しにくい、
という関係が多くの物体に成り立つといえる。
身近なものに当てはめて、本当にそうだろうかと考えてもらえると幸いである。

ちょっと話を変えて、タイトルにある体感温度について。

上の例でわかるとおり、
結局、人は体で触れる物体そのものの温度を感じているのではなく、
物体と熱のやりとりをした結果の自分自身の温度を感じているといえる。

服を着ると温かくなるのは、体の周りに自分とほぼ同じ温度の空気層を
つくるからであり、風が吹けば寒くなるのは、そういった空気層を風が
吹き飛ばしてしまい、10度とか20度といった空気が体の熱を奪うからである。

逆も考えられる。サウナに入って、息を腕に吹きかけてみよう。
めちゃくちゃ熱い。これは、体の周辺にできている体温程度の空気層を
息が吹き飛ばしてしまって、70度とか80度といった空気が
腕を直撃するからである。

ここで問題です。33度の東京はうだるような暑さですが
33度のお風呂はぬるくて湯冷めしそうです。なぜでしょう?

科学の恩恵のひとつは、ある例から一般になりたつ仮説を立てて、
それを元に他の(未知の)現象を説明できることにあるのです。