芳野星司 はじめはgoo!

童謡・唱歌や文学・歴史等の知られざる物語や逸話を写真付でエッセイ風に表現。

自由貿易TPP

2016年03月03日 | コラム

 NHKのアナウンサーが淡々とニュース原稿を読む。「経済成長には自由貿易が欠かせないことから…」
 ちょっと待て。経済成長をすれば貿易が増えることはある。しかし貿易が増えると経済成長するとは証明されていない、というのが近年の世界の経済学者たちの説なのである。また「経済成長には自由貿易が欠かせないことから…」WTO、TPP推進というのは、NHKの一経済記者が書いた原稿だろう。彼は記者クラブに配布された経産省か経団連あたりのレリースを、リライトしただけだろう。それとも一経済記者か一報道部員が自説を視聴者に押しつけたのか?

 経済理論のほとんどは、あり得ない仮説が成り立つことを前提の上に成り立つ。つまり、あり得ない机上の空論、虚妄なのである。しかしその仮説が、現実の枝葉や例外や雑駁な事柄や時間の進行や時空間や距離等を、全て捨象しているがために、大変解りやすく、俗耳に入りやすい。いったん脳や体内に取り込まれると、人を信念的に頑迷に奔らせる。

 例えば、自由貿易は常に正しく、自由貿易は経済成長をもたらす、自由市場原理のみが正しい、自由市場原理は極めて民主的である…。一国の首相、総理を誰にすべきかは「それは市場が決めることです」と言い放った某外資系アナリストがいた。彼女は現自民党の国会議員である。
 それらの根拠の淵源はアダム・スミスであり、デヴィッド・リカードである。リカードの「比較優位」はヘクシャー=オリーンの定理で理論構築され、今日に至っている。しかし、リカード、ヘクシャー=オリーンの定理は、現実には絶対あり得ない仮説が前提なのである。

 先ず、世界には二国、二財、二種の生産要素(資本と労働)があるとする。その生産は規模に関し収穫不変であること(つまり生産要素を二倍にすると収穫も二倍になり、五倍にすると収穫も五倍になる)。生産要素は「完全雇用」であること。生産要素は国内の産業間を自由に移動でき、その調整費用はかからず、国際的な移動はしないこと。国内市場は生産物市場も生産要素市場も完全競争であること、国際貿易の運送費用はかからぬものとすること。両国間で資源の相対的な賦存度は異なり、両国の各効用関数は同じ、とすること。…これらが定理の成立する前提条件なのである。

 そもそも完全雇用なぞはあり得ない。生産要素、例えば労働が国内の産業間を自由に移動できることなぞはあり得ない。ずっと農業とか漁業とかに従事していた中高年が、減反政策や漁業の不振から離職し、そのままIT産業や金融などの産業に移動するなんてあり得ない。またグローバル時代に国際的な移動がないとはあり得ない。完全競争もあり得ない。国際貿易の運送費用がかからないなぞ…あり得ない。

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