エルミタージュ、宮殿広場側直下の地下室。
ここには、ジェシカとモニカと、この子が住んでいる。
せっかく名前を聞いたのに、この子の名前を忘れてしまった。
タチヤナさんとネコたちの会話に興味をひかれたからだ。
結局、モニカは出て来なかった。
それでも、タチヤナさんが「モニカ、モニカ、モーニャ!、モーニャ!!」と大声で
叫び続ける。
果たして、聞こえたら本当に出て来るんだろうか。。。?
ゾロにも、話しかけていた。
「あんたそんなところにいたの。私の部屋に来なさい。ご飯あげるから。」
と言って通り過ぎた。
ゾロがついて行こうとすると、何かを思い出して突然振り返り、
「あ、ごめんごめん!今は部屋に行くんじゃなかった。ごめんごめん、今は来ちゃだめ。」
って必死で言い聞かせて追い返している。
果たして、ゾロは理解したのだろうか。。。?
私も時々、ネコに話しかけることはあるけれど、ここまで、迷いなく自信を持って話しかけたことはあまりないように思う。
話しかけてみるものの、心のどこかで、「まあ、言っても分かるわけないっか。」、と信じていないところがあるのが本音。
(言葉による会話手段以外で、心が通じ合うことがあるとは信じている。)
タチヤナさんを見ていると、本当にネコと話が通じているように思えることがある。
ところで、この人はネコをいわゆる、ネコ可愛がりしない人だ。自宅にはネコがたくさんいるかと思いきや、自宅には犬二頭がいるだけ。
ただ、捨てられてひどい目に遭っているネコを見ると、とにかく放っておくことができないそうなのである。
『三月の猫の日』会場にも姿を現さなかった。
毎年のこの催しを特段楽しみにしているわけでもない。
他のネコ係りのおばちゃんたちも全く会場には来ていないようだった。
真っ先に表彰されてもいいのは、あの人たちだとも思うのであるが、きっとそんなことしようとしても、「嫌よ。よしてよ、そんなの。」と言って、誰も出て来そうにない。
タチヤナさんに至っては、「もう疲れたから、先に帰るわ。」だって。
これは言葉で言い表せないものがある。もちろん、思い入れがないわけではない。可愛がっていないわけではない。いつだってネコたちのことを心配している。自然体に近い付き合いというものなのかもしれない。これくらいが、ネコたちとのちょうど良いスタンスなのかもしれない。
たぶん、ご本人はそんなこと意識したこともないのだろうけど。