エルミタージュ美術館の小さな番人たち

サンクト・ペテルブルグ市にある世界三大美術館のひとつ『エルミタージュ美術館』で暮らすネコたちの様子をお届けします。

ネコたちの住処

2008年08月30日 | Weblog


 さて、ここまで約20匹のエルミタージュ美術館のネコたちをご紹介させていただいた。この広いエルミタージュの敷地内で、最も多くのネコたちがいるのは、お気付きの通りで、一番大きな冬宮と小エルミタージュの間、そして、新旧エルミタージュと小エルミタージュの間である。今日は、ちょっとその全貌を見てみたい。
ネコたちは、どこかに小粒に映りこんでいるかも。

 まずは、現在工事中の冬宮の目の前に広がるの宮殿広場。ロシア革命の舞台にもなった場所として有名。真ん中に立っている円柱は、高さが47メートルもあり、これはナポレオン戦争に勝利したときに記念に建てられたもの。本当は、ここからエメラルドグリーンに彩られたエルミタージュを一緒に写真に収めたかったのだが、いかんせん工事中なので。ところで、まだ、この宮殿広場ではネコに出会っていない。かつては、早朝や夜間などにはここまで出て来て、散歩を楽しむネコもいたそうなのだが。人も多いし、観光用の馬車も通るので、日中に出てくることはまずないだろう。




これは、美術館内から撮った写真で、冬宮と小エルミタージュの間の空間。窓ガラス越しに広角レンズの引きで撮っているので、視認性が悪いが、よく見ると5匹以上のネコたちが見える。真っ直ぐ進むと、宮殿広場とは反対のネバ川側に通じる。しましま親分、茶トラ、だぶだぶ君などが乗り越えてくる鉄柵も遠くに見える。鉄柵の近くにある小さな建物は見張り小屋。監視カメラも4台ほど設置されている。(そんなことまで調べて何をする気だ私は。。。)




ここは、小エルミタージュと旧エルミタージュの間。先ほどの冬宮と小エルミタージュの間よりはネコの数は少ない。一般人の立ち入りはできないが、左側の壁には、なにやら立派そうな彫刻たちが並んでいる。ところで、この2つの空間は、それぞれつながっている。ネコたちのために、ドアに小さな穴が開けられており、そこを通って、自由に行き来できるようになっている。神出鬼没のクロネコのゾロなどが、あっちに現れたり、こっちに現れたりするのはそのためなのである。




これは旧エルミタージュの中庭。現在は、外壁工事のため、全面的に足場が組まれてしまっている。これは、7月中旬の写真。奥のドアの前でネコが1匹寝ている。ここは工事が始まる前までは、ほとんど人が来ないところだった。たまに、職員のおじさんがタバコを吸いに来る程度で、人の往来は極めて少なかった。ネコたちが静かにしているので、撮影もしやすかったポイントである。
 
さて、ここまでが、一般的な住処なのであるが、実は寝床はこの広大なエルミタージュの下にある、巨大地下ラビリンスにある。前にもちょこっとご紹介したが、その地下迷路には、電線、水道官、電話線、下水道、余った建築資材、正体不明の木箱などが詰まっている。現在のエルミタージュ美術館に至るまでに、実に様々なことがあった。帝政ロシア時代末期には、なんとエルミタージュ内に発電所が作られ、実際にその電源で館内の明かりを灯したり、エレベーターなどを動かしていた。ロシア革命後の戦時中には、負傷者や病人のためにベッドがずらりと並べられたこともある。
そんなわけであるから、忘れ去られた正体不明なものがたくさんあるし、ひょっとしたら、秘密の地下通路の1本や2本くらいは存在しているかもしれない。

当然、食料庫などもあり、暖かくて湿った暗い闇には、ネズミたちが発生する。食糧危機の時には、大切な絵画の木枠や彫刻などもかじって食べてしまおうとした。ネズミ捕りの罠など置いてみても、ネズミの絶対数はなかなか減るものではない。

そこで、「ネズミ退治といえば、やっぱりネコでしょ」ということで、エルミタージュにネズミの天敵であるネコたちが、様々な時代に渡って連れてこられたというわけなのである。



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