ここ数年、スーパーなどでも見かけることが増えた「水素水」。中には普通のミネラルウオーターの3倍以上の値段で売られているものもある。医薬品ではないので効果・効能の表示はできないが、何らかの健康効果を期待して購入する人が多いようだ。実は「水素水」は、かつて別の名前で売られていた。なぜ今、水素が注目されているのだろうか。(平沢裕子)
現在の水素ブームは、平成19年に日本医科大の太田成男教授(細胞生物学)の研究チームが「水素ガスが有害な活性酸素を効率よく除去する」とする論文を「ネイチャー・メディシン」(電子版)に発表したことがきっかけとされる。
活性酸素は、細胞や遺伝子を傷付け、がんや多くの生活習慣病を引き起こす元凶とされるだけに、ラットでの研究とはいえ、水素ガスの効能に注目が集まった。この論文の発表が報じられて以降、水素ガスを発生させて水素水を作る機器や水素を含むサプリメント、化粧品など水素をうたった商品が次々と登場した。
このうち、最もよく見かける水素水は、水素ガスが溶け込んだ水のこと。ネット通販やコンビニなどで水素水を販売する飲料メーカーは「水素は健康で話題の素材。今のところ効果は分からないが、人への研究がいろいろ進んでおり、素材としての価値が高い」と説明、売り上げも好調という。
水素水は医薬品ではないので、商品の宣伝として健康や美容への効果をうたうことはできない。だが、ネット上には「がんが好転した」「ダイエットにいい」「うがいをすると口臭予防になる」など、一般論として水素水にさまざまな美容・健康効果があることをうたったサイトが多数存在する。
こうした中、明治大情報コミュニケーション学部の石川幹人教授は、水素水(活性水素水、電解還元水)に一般に言われるような美容や健康への効果があるかを評定。「疑似科学である」と結論付け、運営するサイト「疑似科学とされるものの科学性評定サイト」に1月、公表した。疑似科学は「ニセ科学」とも呼ばれ、科学的表現で科学を装っているが、とても科学とは呼べないものを指す。
『なぜ疑似科学が社会を動かすのか』(PHP新書)の著書もある石川教授は、「今話題の水素水の多くは、電解還元水のことで、かつてアルカリイオン水と呼ばれたもの」と指摘。水素水の評定をしたことについて、「キャッチーな『水素』という言葉をつけることで、売り上げを回復しようという意図が見えたから」と説明する。
アルカリイオン水は、アルカリ性の電解水のこと。一般的な水は、水素と酸素からできており、それを電気分解すると、酸素を多く含んだ水「電解酸性水」は陽極側に、水素を多く含んだ水「電解水素水」は陰極側に生成される。この陰極側に生成された電解水素水は、以前は「アルカリイオン水」と呼ばれることが多かったが、今は「水素水」といわれているわけだ。
つまり、中身は変わらないのに、一時期を経て、同じ「水」が名前を変えて売られ、あたかも新しい「水」として注目されているのが実情だ。
アルカリイオン水は、「体内を弱アルカリ性に変え、消化不良や慢性下痢、アトピー性皮膚炎に効果がある」などとされ、健康ブームに乗って、平成4年ごろから生成器が、15年ごろからボトル詰めの水が、それぞれ急激に売り上げを伸ばし、一時は数百億円の市場規模となった。今でもアルカリイオン水の生成器は市販されているが、水素水の勢いに押され気味だ。
また、水素水の中には、水を電気分解するのでなく、濃度の高い水素水を水に溶け込ませるタイプもある。こちらの場合は、アルカリイオン水とは区別される。
市販の水素水について、日本学術会議の副会長時代にホメオパシーなどの疑似科学問題を扱ったことがある東京大の唐木英明名誉教授(薬学、獣医学)は「高濃度の水素といっているが、それでも水素濃度が低過ぎる。飲んだ水素は胃の中で消えてしまうだろう。仮に、水素が血流に乗って体の組織に到達したとして、それがどのような作用を発揮して疾病治療につながるかの説明がない」とし、「水素には何かの効果があるかもしれない。しかし、市販の水素水に効果があるかと言われれば、ゼロだろう」と手厳しい。
「疑似科学とされるものの科学性評定サイト」の評定も、「ヒトへの健康効果についての具体的な研究成果と呼べるものはないといってよい」「仮にヒトに対しての抗酸化作用があったとしても、そこから健康効果に結びつけるためにはまだいくつもの段階を経る必要があり、仮説検証を繰り返し行わなければならない。具体的な疾患への効果などは『まだよく分からない』とするのが妥当」としている。
石川教授は「水素の健康効果はいろいろな研究が行われているというが、結果はまだ出ていない。研究途上のものは、場合によっては効果がないだけでなく、有害という結果が出る恐れもある。一般市民に向けて利用を促してはいけないと科学的に判断すべきだ」と話している。
国民生活センターは今年3月、水素水生成器による活性酸素の抑制機能は、必ずしも体内の活性酸素の量を減らすといった健康面への効果を示すものではないとして、消費者に対し「買う際は慎重に判断して」と注意を促した。同時に、「水道水に含まれる活性酸素の量を抑制する」とうたって水素水生成器を販売する2事業者に対して、水の活性酸素の量を抑制するとどんな効果があるのかを明確に記載するよう要望した。2事業者は同センターに対し、効果については明らかにせず、「法律遵守を徹底していきたい」と回答した。
また消費者庁は今年3月、「がんに効く」などとうたって水素水を販売した事業者に対して、商品の効能に関する不実告知(実際は認められていないのに告知すること)などを理由に一部業務停止命令を出した。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160514-00000526-san-life
<加湿器殺菌剤事件>“オキシーに有利な報告書”ソウル大教授に拘束令状請求=韓国検察
「加湿器殺菌剤」の有害性研究結果を操作してオキシーに有利な報告書を作成した疑いを受けているソウル大学獣医科大のチョ某教授(57)に対し、拘束令状を請求した。
ソウル中央地検の加湿器殺菌剤被害者事件特別捜査チームは6日、オキシー・レキット・ベンキーザー」(現RBコリア)側に有利な報告書を作成した疑いを受けているチョ教授に対して証拠偽造、収賄後不正な措置などの容疑で拘束令状を請求したと明かした。
先立って検察は去る4日、チョ教授の研究室や住居などを家宅捜査していた中、チョ教授を緊急逮捕した。検察はこの日、同様の疑いを受けている湖西大学のユ某教授の研究室や住居なども家宅捜査した。
チョ教授とユ教授は2億ウォン(約1800万円)以上の雇用費を受け取りオキシー側に「加湿器殺菌剤と肺損傷の因果関係が明白ではない」という内容が込められた研究報告書を提出したという疑いを受けている。
検察は彼らがオキシーと共謀して加湿器殺菌剤の有害性研究結果を操作したものと疑っている。オキシーは2011年11月、疾病管理本部が「加湿器殺菌剤は人体に有害だ」と発表すると、これに反論するためにソウル大と湖西大に実験を依頼した。
http://www.wowkorea.jp/news/korea/2016/0506/10165638.html